平兼盛 百人一首の意味と解説「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」

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八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙枕詞動詞

小倉百人一首、40番札についての説明ページです。読み札(絵札)は「フリガナ付き」、取り札は「ひらがな書き」の共に縦書き。縦横比率も実物そっくりの札で百人一首を紹介します。品詞分解も大きな字と縦書きで読みやすく。

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百人一首 40番 「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は」

作者 平兼盛について

  • 「たいらのかねもり」
  • 光考天皇(15番)の玄孫にあたる。赤染衛門の父と考えられている。
  • ?年~990年

歌の解説

拾遺集恋一622

平兼盛たいらのかねもり
しのぶれど
いろでにけり
わがこい
ものやおも
ひとまで
ものやおもふとひとのとふまて
  • ひらがな:しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
  • 現代仮名遣い(読み方)しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
  • 漢字書き:しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
  • 現代語訳:しのんできたけれど、顔色に出てしまっていた。私の恋は、もの思いをしているのかと問われるまでになっていた。
  • 意味と解説:しのんで隠してきたつもりが、顔色に出てしまっていたことに気づく。人に問われるほどに表情に出てしまっていたのだ。
  • 「色」とは顔色、表情のこと。
  • 「人の問ふまで、色に出でにけり」と、倒置法となっている。
  • 「や」+連体形で疑問の係り結び。
  • 41番と本歌は同じ歌合で詠まれた歌で、勝敗がつかず、帝が口ずさんだことから本歌の勝ちとなった歴史がある。

品詞分解

二句切れ、倒置法、係り結び(や→思ふ)

しのぶれバ上二(已然)接助名詞格助出でダ下二(連用)完了助動(連用)けり詠嘆助動(終止)代名詞格助名詞係助
もの名詞係助思ふハ四(連体)格助名詞格助問ふハ四(連体)まで副助

競技カルタ攻略

      しの→もの
      しのぶれど いろにいでにけり → ものやおもふと ひとのとふまで

      百人一首 言の葉データベース

      札番歌/上の句と下の句(読み札)下の句(取り札)よみ人
      1
      解説
      あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
      秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
      #後撰集秋
      わかころもてはつゆにぬれつつ
      天智天皇
      2
      解説
      はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
      春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
      #新古今集夏 #奈良県橿原市 #二句切れ #枕詞 #体言止め
      ころもほすてふあまのかくやま
      持統天皇
      3
      解説
      あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
      あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ
      #拾遺集恋 #枕詞 #序詞 #係り結び
      なかなかしよをひとりかもねむ
      柿本人麿
      4
      解説
      たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
      田子の浦に 打出でてみれば 白妙の ふじの高嶺に 雪は降りつつ
      #新古今集冬 #静岡県静岡市清水区由比 #枕詞
      ふしのたかねにゆきはふりつつ
      山部赤人
      5
      解説
      おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき
      奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
      #古今集秋 #係り結び
      こゑきくときそあきはかなしき
      猿丸太夫
      6かさゝぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
      かさゝぎの 渡せる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける
      #新古今集冬 #見立て #係り結び
      しろきをみれはよそふけにける
      中納言家持
      7あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
      天の原 ふりさけ見れば 春日なる みかさの山に 出でし月かも
      #古今集羇旅
      みかさのやまにいてしつきかも
      阿倍仲麻呂
      8
      解説
      わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
      わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
      #古今集雑 #三句切れ #掛詞 #係り結び #京都府宇治市
      よをうちやまとひとはいふなり
      喜撰法師
      9
      解説
      はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
      花の色は 移りにけりな 徒に 我が身世にふる ながめせしまに
      #古今集春 #二句切れ #掛詞 #倒置法
      わかみよにふるなかめせしまに
      小野小町
      10
      解説
      これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
      これや此の 行くも帰るも 別かれては 知るも知らぬも 逢坂の関
      #後撰集雑 #掛詞 #体言止め #滋賀県大津市
      しるもしらぬもあふさかのせき
      蝉丸
      11わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
      わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人にはつげよ 海人の釣舟
      #古今集羇旅 #四句切 #擬人法 #体言止め
      ひとにはつけよあまのつりふね
      参議篁
      12
      解説
      あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
      天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ をとめの姿 しばし留めむ
      #古今集雑 #三句切れ #見立て
      をとめのすかたしはしととめむ
      僧正遍昭
      13つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
      筑波嶺の 峯より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
      #茨城県つくば市 #後撰集恋 #序詞 #係り結び
      こひそつもりてふちとなりぬる
      陽成院
      14みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
      陸奥の しのぶもぢずり 誰故に みだれ初めにし 我ならなくに
      #福島県福島市 #古今集恋 #四句切れ #序詞 #縁語 #倒置法
      みたれそめにしわれならなくに
      河原左大臣
      15
      解説
      きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
      君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
      #古今集春上
      わかころもてにゆきはふりつつ
      光孝天皇
      16たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
      立ち別れ いなばの山の 嶺におふる まつとし聞かば 今帰り来む
      #鳥取県鳥取市 #古今集離別 #掛詞
      まつとしきかはいまかへりこむ
      中納言行平
      17
      解説
      ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
      ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水くくるとは
      #古今集秋 #二句切れ #枕詞 #擬人法 #見立て #倒置法 #奈良県生駒郡斑鳩町
      からくれなゐにみつくくるとは
      在原業平朝臣
      18すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
      住の江の 岸に寄る浪 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
      #大阪府大阪市住吉区 #古今集恋 #序詞 #係り結び
      ゆめのかよひちひとめよくらむ
      藤原敏行朝臣
      19なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
      難波潟 短き葦の ふしのまも あはで此の世を すぐしてよとや
      #大阪府大阪市 #新古今集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #係り結び
      あはてこのよをすくしてよとや
      伊勢
      20わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
      侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
      #大阪府大阪市 #後撰集恋 #二句切れ #掛詞 #係り結び
      みをつくしてもあはむとそおもふ
      元良親王
      21いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
      今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
      #古今集恋
      ありあけのつきをまちいてつるかな
      素性法師
      22
      解説
      ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
      吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
      #古今集秋 #掛詞
      むへやまかせをあらしといふらむ
      文屋康秀
      23つきみれば ちゞにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
      月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
      #古今集秋 #三句切れ #倒置法 #係り結び
      わかみひとつのあきにはあらねと
      大江千里
      24
      解説
      このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに
      このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに
      #二句切れ #見立て
      もみちのにしきかみのまにまに
      菅家
      25
      解説
      なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
      名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな
      #後撰集恋 #掛詞 #縁語 #滋賀県大津市
      ひとにしられてくるよしもかな
      三条右大臣
      26
      解説
      をぐらやま みねのもみぢば こゝろあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
      小倉山 峯の紅葉ば 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
      #京都府京都市右京区 #擬人法 #拾遺集秋
      いまひとたひのみゆきまたなむ
      貞信公
      27みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
      みかの原 わきて流るる 泉川 いつみきとてか 恋しかるらむ
      #新古今集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #係り結び #京都府木津川市
      いつみきとてかこひしかるらむ
      中納言兼輔
      28やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば
      山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
      #古今集冬 #三句切れ #掛詞 #倒置法 #係り結び
      ひとめもくさもかれぬとおもへは
      源宗行朝臣
      29こゝろあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
      心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
      #古今集秋 #二句切れ #倒置法 #体言止め #係り結び
      おきまとはせるしらきくのはな
      凡河内躬恒
      30ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
      有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
      #古今集恋
      あかつきはかりうきものはなし
      壬生忠岑
      31
      解説
      あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
      朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
      #奈良県吉野郡吉野町 #体言止め
      よしののさとにふれるしらゆき
      坂上是則
      32やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
      山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
      #古今集秋 #擬人法 #見立て
      なかれもあへぬもみちなりけり
      春道列樹
      33
      解説
      ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ
      ひさかたの 光のどけき 春の日に しづごころなく 花の散るらむ
      #古今集春 #枕詞 #擬人法
      しつこころなくはなのちるらむ
      紀友則
      34たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
      誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
      #兵庫県高砂市 #二句切れ #倒置法 #係り結び
      まつもむかしのともならなくに
      藤原興風
      35
      解説
      ひとはいさ こゝろもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
      人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける
      #古今集春 #二句切れ #係り結び
      はなそむかしのかににほひける
      紀貫之
      36なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
      夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
      #古今集夏 #擬人法
      くものいつこにつきやとるらむ
      清原深養父
      37しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
      白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
      #後撰集秋 #見立て #係り結び
      つらぬきとめぬたまそちりける
      文屋朝康
      38わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
      忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
      #拾遺集恋 #二句切れ
      ひとのいのちのをしくもあるかな
      右近
      39
      解説
      あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
      浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
      #後撰集恋 #序詞 #係り結び
      あまりてなとかひとのこひしき
      参議等
      40
      解説
      しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
      しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
      #拾遺集恋 #二句切れ #倒置法 #係り結び
      ものやおもふとひとのとふまて
      平兼盛
      41こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
      恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
      #宮城県多賀城市
      ひとしれすこそおもひそめしか
      壬生忠見
      42ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは
      契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは
      すゑのまつやまなみこさしとは
      清原元輔
      43あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
      逢ひみての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
      むかしはものをおもはさりけり
      権中納言敦忠
      44あふことの たえてしなくば なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
      逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
      ひとをもみをもうらみさらまし
      中納言朝忠
      45あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな
      哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
      みのいたつらになりぬへきかな
      謙徳公
      46ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
      由良の門を わたる舟人 梶をたえ 行方もしらぬ 恋の道かな
      ゆくへもしらぬこひのみちかな
      曽根好忠
      47やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
      八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋はきにけり
      ひとこそみえねあきはきにけり
      恵慶法師
      48かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
      風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ 砕けてものを 思ふ頃かな
      くたけてものをおもふころかな
      源重之
      49みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ
      御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ
      ひるはきえつつものをこそおもへ
      大中臣能宣朝臣
      50
      解説
      きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
      君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
      #後拾遺恋
      なかくもかなとおもひけるかな
      藤原義孝
      51かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
      かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを
      #滋賀県米原市
      さしもしらしなもゆるおもひを
      藤原実方朝臣
      52
      解説
      あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
      明けぬれば くるるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
      #後拾遺恋
      なほうらめしきあさほらけかな
      藤原道信朝臣
      53なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
      嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る
      いかにひさしきものとかはしる
      右大将道綱母
      54わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
      忘れじの 行末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな
      けふをかきりのいのちともかな
      儀同三司母
      55たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ
      瀧の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞えけれ
      なこそなかれてなほきこえけれ
      大納言公任
      56
      解説
      あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな
      あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな
      #後拾遺集恋三
      いまひとたひのあふこともかな
      和泉式部
      57
      解説
      めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
      めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな
      #新古今集雑 #縁語 #係り結び
      くもかくれにしよはのつきかな
      紫式部
      58ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
      有馬山 猪名のささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
      いてそよひとをわすれやはする
      大弐三位
      59やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな
      やすらはで 寝なましものを 小夜更けて 傾くまでの 月を見しかな
      かたふくまてのつきをみしかな
      赤染衛門
      60
      解説
      おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて
      大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
      #金葉集雑 #掛詞 #縁語 #倒置法 #体言止め #京都府宮津市 #京都府福知山市
      またふみもみすあまのはしたて
      小式部内侍
      61いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
      古への 奈良の都の 八重ざくら 今日九重に 匂ひぬるかな
      けふここのへににほひぬるかな
      伊勢大輔
      62
      解説
      よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
      夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ
      #後拾遺集雑 #掛詞 #滋賀県大津市
      よにあふさかのせきはゆるさし
      清少納言
      63いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
      今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
      ひとつてならていふよしもかな
      左京大夫道雅
      64
      解説
      あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
      朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木
      #京都府宇治市 #千載集冬 #体言止め
      あらはれわたるせせのあしろき
      権中納言定頼
      65うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ
      恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
      こひにくちなむなこそをしけれ
      相模
      66もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし
      諸共に あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし
      はなよりほかにしるひともなし
      前大僧正行尊
      67はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
      春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
      かひなくたたむなこそをしけれ
      周防内侍
      68こゝろにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
      心にも あらで憂世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
      こひしかるへきよはのつきかな
      三条院
      69
      解説
      あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり
      嵐ふく 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
      #後拾遺秋 #見立て #歌枕 #本歌取り #奈良県生駒郡斑鳩町
      たつたのかはのにしきなりけり
      能因法師
      70さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづくもおなじ あきのゆふぐれ
      寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづくも同じ 秋の夕暮れ
      いつくもおなしあきのゆふくれ
      良暹法師
      71ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
      夕されば 門田の稲葉 おとづれて あしのまろやに 秋風ぞ吹く
      あしのまろやにあきかせそふく
      大納言経信
      72おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
      音に聞く 高師の浜の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ
      かけしやそてのぬれもこそすれ
      祐子内親王家紀伊
      73たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
      高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
      とやまのかすみたたすもあらなむ
      権中納言匡房
      74うかりける ひとをはつせの やまおろし はげしかれとは いのらぬものを
      うかりける 人を初瀬の 山おろし はげしかれとは 祈らぬものを
      はけしかれとはいのらぬものを
      源俊頼朝臣
      75ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
      契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋も去ぬめり
      あはれことしのあきもいぬめり
      藤原基俊
      76
      解説
      わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
      わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白浪
      #詞花集雑 #枕詞 #体言止め
      くもゐにまかふおきつしらなみ
      法性寺入道前関白太政大臣
      77
      解説
      せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
      瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
      #詞花集恋 #序詞 #係り結び
      われてもすゑにあはむとそおもふ
      崇徳院
      78
      解説
      あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
      淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守
      #兵庫県神戸市 #金葉集冬 #四句切れ #倒置法 #体言止め
      いくよねさめぬすまのせきもり
      源兼昌
      79あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ
      秋風に たなびく雲の 絶間より もれ出づる月の 影のさやけさ
      もれいつるつきのかけのさやけさ
      左京大夫顕輔
      80ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
      ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ
      みたれてけさはものをこそおもへ
      待賢門院堀河
      81
      解説
      ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
      ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
      #千載集夏 #係り結び
      たたありあけのつきそのこれる
      後徳大寺左大臣(藤原実定)
      82おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
      思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
      うきにたへぬはなみたなりけり
      道因法師
      83よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
      世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
      やまのおくにもしかそなくなる
      皇太后宮大夫俊成
      84ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
      ながらへば また此の頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
      うしとみしよそいまはこひしき
      藤原清輔朝臣
      85よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
      夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
      ねやのひまさへつれなかりけり
      俊恵法師
      86なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
      嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
      かこちかほなるわかなみたかな
      西行法師
      87
      解説
      むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
      村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
      #新古今集秋下 #体言止め
      きりたちのほるあきのゆふくれ
      寂蓮法師
      88なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
      難波江の あしのかりねの 一夜ゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
      みをつくしてやこひわたるへき
      皇嘉門院別当
      89たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よはりもぞする
      玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
      しのふることのよはりもそする
      式子内親王
      90みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
      見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず
      #宮城県松島町
      ぬれにそぬれしいろはかはらす
      殷富門院大輔
      91
      解説
      きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
      きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
      #新古今集秋 #掛詞 #本歌取り #係り結び
      ころもかたしきひとりかもねむ
      後京極摂政前太政大臣
      92わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
      わが袖は 汐干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし
      ひとこそしらねかわくまもなし
      二条院讃岐
      93
      解説
      よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも
      世の中は 常にもがもな 渚こぐ 海人の小舟の 綱手かなしも
      #新勅撰集羇旅 #二句切れ #本歌取り
      あまのをふねのつなてかなしも
      鎌倉右大臣(源実朝)
      94
      解説
      みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
      み吉野の 山の秋風 小夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり
      #新古今集秋 #奈良県吉野町 #本歌取り
      ふるさとさむくころもうつなり
      参議雅経
      95おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで
      おほけなく うき世の民に おほふかな 我が立つ杣に 墨染の袖
      わかたつそまにすみそめのそて
      前大僧正慈圓
      96はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
      花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり
      ふりゆくものはわかみなりけり
      入道前太政大臣
      97
      解説
      こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
      来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
      #新勅撰集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #本歌取り #兵庫県淡路市
      やくやもしほのみもこかれつつ
      権中納言定家
      98かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
      風そよぐ 楢の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
      みそきそなつのしるしなりける
      従二位家隆
      99ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
      人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は
      よをおもふゆゑにものおもふみは
      後鳥羽院
      100ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
      百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
      なほあまりあるむかしなりけり
      順徳院