遍昭 百人一首の意味と解説「天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ」

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小倉百人一首、12番札についての説明ページです。読み札(絵札)は「フリガナ付き」、取り札は「ひらがな書き」の共に縦書き。縦横比率も実物そっくりの札で百人一首を紹介します。品詞分解も大きな字と縦書きで読みやすく。

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百人一首 12番 「天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ」

もうしばらく、終わらないでいてはくれまいか。

作者 僧正遍昭について

  • 「そうじょうへんじょう」、単に「遍昭」とも。六歌仙、三十六歌仙。
  • 816年~890年。
  • 俗名は良岑宗貞。

僧正遍昭の歌一覧

歌の解説

古今集雑上872 題「五節の舞姫を見てよめる」

僧正遍昭そうじょうへんじょう
あまかぜ
くものかよひぢ
きとぢよ
をとめの姿すがた
しばしとど
をとめのすかたしはしととめむ
  • ひらがな:あまつかせ くものかよひち ふきとちよ をとめのすかた しはしととめむ
  • 現代仮名遣い(読み方)あまつかぜ くものかいぢ ふきとぢよ おとめのすがた しばしとどめん
  • 漢字書き:天つ風 雲の通い路 吹き閉じよ 乙女の姿 しばし留めむ
  • 現代語訳:天を吹く風よ、乙女の姿をもうしばらく見ていたいから、雲の中の帰り道をふさいでくれまいか。
  • 意味と解説:天女とは五節の舞姫をいうのであるが、舞姫たちをまだみていたいという願いが込められている。
  • 出家前の歌で、大変幻想的であり、情景を思い浮かべながら鑑賞するとよい。
  • 五節とは雅楽で唯一、女性が演じる舞。大嘗祭のあとに行われる豊明節会で4、5人の少女によって演ぜられる。
  • 紫式部日記に、豊明節会、五節についての詳しい記述がある。「かからぬ年だに、御覧の日の童女の心地、よもはおろかならざるものを、ましていかならむなど、心もとなくゆかしきに、歩み並びつつ出で来たるはあいなく胸つぶれて、いとほしくこそあれ。さるは、とりわきて深う心寄すべき辺りも無しかし。
  • 五節では少女が顔を晒すことになるが、このようなことは非常に恥ずかしい事であり、紫式部は少女に大変同情していた。対して、遍昭は見ていたいと詠っている。言ってしまえば、ある意味、セクハラ歌である。

品詞分解

三句切れ、見立て(舞姫を天女に見立てている)

格助格助かよひぢ吹きとぢよダ上二(命令)
乙女格助姿しばしとどめマ下二(未然)意思助動(終止)

競技カルタ攻略

      あまつ→を
      あまつかせ くものかよひち → とめのすかた しはしととめむ

      百人一首 言の葉データベース

      札番下の句(取り札)よみ人
      1
      解説
      あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ
      秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
      #後撰集秋 #天皇
      わかころもてはつゆにぬれつつ
      天智天皇
      2
      解説
      はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま
      春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
      #奈良県橿原市 #新古今集夏 #二句切れ #枕詞 #体言止め #天皇 #女流歌人
      ころもほすてふあまのかくやま
      持統天皇
      3
      解説
      あしびきの やまどりのをの しだりをの ながながしよを ひとりかもねむ
      あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ
      #拾遺集恋 #枕詞 #序詞 #係り結び
      なかなかしよをひとりかもねむ
      柿本人麿
      4
      解説
      たごのうらに うちいでてみれば しろたへの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
      田子の浦に 打出でてみれば 白妙の ふじの高嶺に 雪は降りつつ
      #静岡県静岡市清水区由比 #新古今集冬 #枕詞
      ふしのたかねにゆきはふりつつ
      山部赤人
      5
      解説
      おくやまに もみぢふみわけ なくしかの こゑきくときぞ あきはかなしき
      奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
      #古今集秋 #係り結び
      こゑきくときそあきはかなしき
      猿丸太夫
      6
      解説
      かさゝぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
      かさゝぎの 渡せる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける
      #新古今集冬 #見立て #係り結び
      しろきをみれはよそふけにける
      中納言家持
      大伴家持
      7
      解説
      あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
      天の原 ふりさけ見れば 春日なる みかさの山に 出でし月かも
      #古今集羇旅
      みかさのやまにいてしつきかも
      阿倍仲麿
      8
      解説
      わがいほは みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢやまと ひとはいふなり
      わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
      #古今集雑 #三句切れ #掛詞 #係り結び #京都府宇治市
      よをうちやまとひとはいふなり
      喜撰法師
      9
      解説
      はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
      花の色は 移りにけりな 徒に 我が身世にふる ながめせしまに
      #古今集春 #二句切れ #掛詞 #倒置法 #女流歌人
      わかみよにふるなかめせしまに
      小野小町
      10
      解説
      これやこの ゆくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき
      これや此の 行くも帰るも 別かれては 知るも知らぬも 逢坂の関
      #滋賀県大津市 #後撰集雑 #掛詞 #体言止め
      しるもしらぬもあふさかのせき
      蝉丸
      11
      解説
      わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
      わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人にはつげよ 海人の釣舟
      #古今集羇旅 #四句切 #擬人法 #体言止め
      ひとにはつけよあまのつりふね
      参議篁
      小野篁
      12
      解説
      あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
      天つ風 雲のかよひぢ 吹きとぢよ をとめの姿 しばし留めむ
      #古今集雑 #三句切れ #見立て
      をとめのすかたしはしととめむ
      僧正遍昭
      13
      解説
      つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる
      筑波嶺の 峯より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
      #茨城県つくば市 #後撰集恋 #序詞 #係り結び #天皇
      こひそつもりてふちとなりぬる
      陽成院
      14
      解説
      みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
      陸奥の しのぶもぢずり 誰故に みだれ初めにし 我ならなくに
      #福島県福島市 #古今集恋 #四句切れ #序詞 #縁語 #倒置法 #掛詞
      みたれそめにしわれならなくに
      河原左大臣
      源融
      15
      解説
      きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ
      君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
      #古今集春上 #天皇
      わかころもてにゆきはふりつつ
      光孝天皇
      16
      解説
      たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
      立ち別れ いなばの山の 嶺におふる まつとし聞かば 今帰り来む
      #鳥取県鳥取市 #古今集離別 #掛詞 #序詞
      まつとしきかはいまかへりこむ
      中納言行平
      在原行平
      17
      解説
      ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
      ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 唐紅に 水くくるとは
      #古今集秋 #二句切れ #枕詞 #擬人法 #見立て #倒置法 #奈良県生駒郡斑鳩町
      からくれなゐにみつくくるとは
      在原業平朝臣
      18
      解説
      すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
      住の江の 岸に寄る浪 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
      #大阪府大阪市住吉区 #古今集恋 #序詞 #係り結び
      ゆめのかよひちひとめよくらむ
      藤原敏行朝臣
      19
      解説
      なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや
      難波潟 短き葦の ふしのまも あはで此の世を すぐしてよとや
      #大阪府大阪市 #新古今集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #係り結び #女流歌人
      あはてこのよをすくしてよとや
      伊勢
      20
      解説
      わびぬれば いまはたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞおもふ
      侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
      #大阪府大阪市 #後撰集恋 #二句切れ #掛詞 #係り結び
      みをつくしてもあはむとそおもふ
      元良親王
      21
      解説
      いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな
      今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな
      #古今集恋
      ありあけのつきをまちいてつるかな
      素性法師
      22
      解説
      ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
      吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
      #古今集秋 #掛詞
      むへやまかせをあらしといふらむ
      文屋康秀
      23
      解説
      つきみれば ちゞにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
      月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
      #古今集秋 #三句切れ #倒置法 #係り結び
      わかみひとつのあきにはあらねと
      大江千里
      24
      解説
      このたびは ぬさもとりあへず たむけやま もみぢのにしき かみのまにまに
      このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに
      #古今集羇旅 #二句切れ #見立て
      もみちのにしきかみのまにまに
      菅家
      藤原道真
      25
      解説
      なにしおはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
      名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人にしられで くるよしもがな
      #後撰集恋 #掛詞 #縁語 #滋賀県大津市
      ひとにしられてくるよしもかな
      三条右大臣
      藤原定方
      26
      解説
      をぐらやま みねのもみぢば こゝろあらば いまひとたびの みゆきまたなむ
      小倉山 峯の紅葉ば 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
      #京都府京都市右京区 #擬人法 #拾遺集秋
      いまひとたひのみゆきまたなむ
      貞信公
      藤原忠平
      27
      解説
      みかのはら わきてながるる いづみがは いつみきとてか こひしかるらむ
      みかの原 わきて流るる 泉川 いつみきとてか 恋しかるらむ
      #新古今集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #係り結び #京都府木津川市
      いつみきとてかこひしかるらむ
      中納言兼輔
      藤原兼輔
      28
      解説
      やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば
      山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
      #古今集冬 #三句切れ #掛詞 #倒置法 #係り結び
      ひとめもくさもかれぬとおもへは
      源宗于朝臣
      29
      解説
      こゝろあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
      心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
      #古今集秋 #二句切れ #倒置法 #体言止め #係り結び
      おきまとはせるしらきくのはな
      凡河内躬恒
      30
      解説
      ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
      有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
      #古今集恋
      あかつきはかりうきものはなし
      壬生忠岑
      31
      解説
      あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
      朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
      #古今集冬 #奈良県吉野郡吉野町 #体言止め
      よしののさとにふれるしらゆき
      坂上是則
      32
      解説
      やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみぢなりけり
      山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
      #古今集秋 #擬人法 #見立て
      なかれもあへぬもみちなりけり
      春道列樹
      33
      解説
      ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづごころなく はなのちるらむ
      ひさかたの 光のどけき 春の日に しづごころなく 花の散るらむ
      #古今集春 #枕詞 #擬人法
      しつこころなくはなのちるらむ
      紀友則
      34
      解説
      たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに
      誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
      #古今集雑上 #兵庫県高砂市 #二句切れ #倒置法 #係り結び
      まつもむかしのともならなくに
      藤原興風
      35
      解説
      ひとはいさ こゝろもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける
      人はいさ 心もしらず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける
      #古今集春 #二句切れ #係り結び
      はなそむかしのかににほひける
      紀貫之
      36
      解説
      なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ
      夏の夜は まだ宵ながら あけぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
      #古今集夏 #擬人法
      くものいつこにつきやとるらむ
      清原深養父
      37
      解説
      しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
      白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
      #後撰集秋 #見立て #係り結び
      つらぬきとめぬたまそちりける
      文屋朝康
      38
      解説
      わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな
      忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
      #拾遺集恋 #二句切れ #女流歌人
      ひとのいのちのをしくもあるかな
      右近
      39
      解説
      あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき
      浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき
      #後撰集恋 #序詞 #係り結び
      あまりてなとかひとのこひしき
      参議等
      源等
      40
      解説
      しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで
      しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
      #拾遺集恋 #二句切れ #倒置法 #係り結び
      ものやおもふとひとのとふまて
      平兼盛
      41
      解説
      こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか
      恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
      #拾遺集恋一 #三句切れ #倒置法 #係り結び
      ひとしれすこそおもひそめしか
      壬生忠見
      42
      解説
      ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑのまつやま なみこさじとは
      契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは
      #後拾遺集恋四 #初句切れ #倒置法 #歌枕 #本歌取り #宮城県多賀城市
      すゑのまつやまなみこさしとは
      清原元輔
      43
      解説
      あひみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもはざりけり
      逢ひみての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
      #拾遺集恋二
      むかしはものをおもはさりけり
      権中納言敦忠
      藤原淳忠
      44
      解説
      あふことの たえてしなくば なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし
      逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
      #拾遺集恋一
      ひとをもみをもうらみさらまし
      中納言朝忠
      藤原朝忠
      45
      解説
      あはれとも いふべきひとは おもほえで みのいたづらに なりぬべきかな
      哀れとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
      #拾遺集恋五
      みのいたつらになりぬへきかな
      謙徳公
      藤原伊尹
      46
      解説
      ゆらのとを わたるふなびと かぢをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかな
      由良の門を わたる舟人 梶をたえ 行方もしらぬ 恋の道かな
      #京都府宮津市 #新古今集恋一 #序詞 #縁語
      ゆくへもしらぬこひのみちかな
      曽根好忠
      47
      解説
      やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
      八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋はきにけり
      #拾遺集 #係り結び
      ひとこそみえねあきはきにけり
      恵慶法師
      48
      解説
      かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな
      風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ 砕けてものを 思ふ頃かな
      #詞花集恋上 #序詞
      くたけてものをおもふころかな
      源重之
      49
      解説
      みかきもり ゑじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ
      御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ
      #詞花集恋上 #序詞 #係り結び
      ひるはきえつつものをこそおもへ
      大中臣能宣朝臣
      50
      解説
      きみがため をしからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな
      君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
      #後拾遺集恋
      なかくもかなとおもひけるかな
      藤原義孝
      51
      解説
      かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを
      かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを
      #滋賀県米原市 #後拾遺集恋一 #四句切れ #序詞 #掛詞 #縁語 #倒置法
      さしもしらしなもゆるおもひを
      藤原実方朝臣
      52
      解説
      あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな
      明けぬれば くるるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
      #後拾遺集恋
      なほうらめしきあさほらけかな
      藤原道信朝臣
      53
      解説
      なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる
      嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る
      #拾遺集恋四 #係り結び #女流歌人
      いかにひさしきものとかはしる
      右大将道綱母
      54
      解説
      わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
      忘れじの 行末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな
      #新古今集恋三 #女流歌人
      けふをかきりのいのちともかな
      儀同三司母
      55
      解説
      たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ
      瀧の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞えけれ
      # 京都府京都市右京区 #千載集雑上 #縁語 #掛詞 #係り結び
      なこそなかれてなほきこえけれ
      大納言公任
      藤原公任
      56
      解説
      あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな
      あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな
      #後拾遺集恋三 #女流歌人
      いまひとたひのあふこともかな
      和泉式部
      57
      解説
      めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな
      めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな
      #新古今集雑 #縁語 #係り結び #女流歌人
      くもかくれにしよはのつきかな
      紫式部
      58
      解説
      ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする
      有馬山 猪名のささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
      #兵庫県神戸市北区 #後拾遺集恋二 #序詞 #掛詞 #係り結び #女流歌人
      いてそよひとをわすれやはする
      大弐三位
      59
      解説
      やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな
      やすらはで 寝なましものを 小夜更けて 傾くまでの 月を見しかな
      #後拾遺集恋二 #女流歌人
      かたふくまてのつきをみしかな
      赤染衛門
      60
      解説
      おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて
      大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
      #京都府宮津市 #京都府福知山市 #金葉集雑 #掛詞 #縁語 #倒置法 #体言止め #女流歌人
      またふみもみすあまのはしたて
      小式部内侍
      61
      解説
      いにしへの ならのみやこの やへざくら けふここのへに にほひぬるかな
      古への 奈良の都の 八重ざくら 今日九重に 匂ひぬるかな
      #詞花集春 #女流歌人
      けふここのへににほひぬるかな
      伊勢大輔
      62
      解説
      よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふさかの せきはゆるさじ
      夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ
      #後拾遺集雑 #掛詞 #滋賀県大津市 #女流歌人
      よにあふさかのせきはゆるさし
      清少納言
      63
      解説
      いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
      今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
      #後拾遺集恋三
      ひとつてならていふよしもかな
      左京大夫道雅
      藤原道雅
      64
      解説
      あさぼらけ うぢのかはぎり たえだえに あらはれわたる せぜのあじろぎ
      朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木
      #京都府宇治市 #千載集冬 #体言止め
      あらはれわたるせせのあしろき
      権中納言定頼
      藤原定頼
      65
      解説
      うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひにくちなむ なこそをしけれ
      恨み侘び ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
      #後拾遺集恋四 #係り結び #女流歌人
      こひにくちなむなこそをしけれ
      相模
      66
      解説
      もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし
      諸共に あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし
      #金葉集雑上 #三句切れ #擬人法 #奈良県吉野郡天川村
      はなよりほかにしるひともなし
      前大僧正行尊
      67
      解説
      はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひなくたたむ なこそをしけれ
      春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
      #千載集雑上 #掛詞 #係り結び #女流歌人
      かひなくたたむなこそをしけれ
      周防内侍
      68
      解説
      こゝろにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
      心にも あらで憂世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
      #後拾遺集雑一 #天皇
      こひしかるへきよはのつきかな
      三条院
      69
      解説
      あらしふく みむろのやまの もみぢばは たつたのかはの にしきなりけり
      嵐ふく 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり
      #後拾遺集秋 #見立て #歌枕 #本歌取り #奈良県生駒郡斑鳩町
      たつたのかはのにしきなりけり
      能因法師
      70
      解説
      さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづくもおなじ あきのゆふぐれ
      寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづくも同じ 秋の夕暮れ
      #後拾遺集秋上 #体言止め
      いつくもおなしあきのゆふくれ
      良暹法師
      71
      解説
      ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
      夕されば 門田の稲葉 おとづれて あしのまろやに 秋風ぞ吹く
      #金葉集秋 #係り結び #京都府京都市右京区
      あしのまろやにあきかせそふく
      大納言経信
      源経信
      72
      解説
      おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
      音に聞く 高師の浜の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ
      #金葉集恋下 #四句切れ #掛詞 #縁語 #係り結び #女流歌人 #大阪府堺市
      かけしやそてのぬれもこそすれ
      祐子内親王家紀伊
      73
      解説
      たかさごの をのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
      高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
      #後拾遺集春上 #三句切れ
      とやまのかすみたたすもあらなむ
      権中納言匡房
      大江匡房
      74
      解説
      うかりける ひとをはつせの やまおろし はげしかれとは いのらぬものを
      うかりける 人を初瀬の 山おろし はげしかれとは 祈らぬものを
      #千載集恋二 #擬人法
      はけしかれとはいのらぬものを
      源俊頼朝臣
      75
      解説
      ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あはれことしの あきもいぬめり
      契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋も去ぬめり
      #千載集雑上 #縁語
      あはれことしのあきもいぬめり
      藤原基俊
      76
      解説
      わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ
      わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白浪
      #詞花集雑 #枕詞 #体言止め
      くもゐにまかふおきつしらなみ
      法性寺入道前関白太政大臣
      藤原忠通
      77
      解説
      せをはやみ いはにせかるる たきがはの われてもすゑに あはむとぞおもふ
      瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
      #詞花集恋 #序詞 #係り結び #天皇
      われてもすゑにあはむとそおもふ
      崇徳院
      78
      解説
      あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
      淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守
      #兵庫県神戸市 #金葉集冬 #四句切れ #倒置法 #体言止め
      いくよねさめぬすまのせきもり
      源兼昌
      79
      解説
      あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ
      秋風に たなびく雲の 絶間より もれ出づる月の 影のさやけさ
      #新古今集秋上 #体言止め
      もれいつるつきのかけのさやけさ
      左京大夫顕輔
      藤原顕輔
      80
      解説
      ながからむ こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ
      ながからむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ
      #千載集恋三 #縁語 #係り結び #女流歌人
      みたれてけさはものをこそおもへ
      待賢門院堀河
      81
      解説
      ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
      ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
      #千載集夏 #係り結び
      たたありあけのつきそのこれる
      後徳大寺左大臣
      藤原実定
      82
      解説
      おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
      思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
      #千載集恋三
      うきにたへぬはなみたなりけり
      道因法師
      83
      解説
      よのなかよ みちこそなけれ おもひいる やまのおくにも しかぞなくなる
      世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
      #千載集雑中 #二句切れ #係り結び
      やまのおくにもしかそなくなる
      皇太后宮大夫俊成
      84
      解説
      ながらへば またこのごろや しのばれむ うしとみしよぞ いまはこひしき
      ながらへば また此の頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
      #新古今集雑下 #三句切れ #係り結び
      うしとみしよそいまはこひしき
      藤原清輔朝臣
      85
      解説
      よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
      夜もすがら もの思ふ頃は 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
      #千載集恋二
      ねやのひまさへつれなかりけり
      俊恵法師
      86
      解説
      なげけとて つきやはものを おもはする かこちがほなる わがなみだかな
      嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
      #千載集恋五 #三句切れ #擬人法 #係り結び
      かこちかほなるわかなみたかな
      西行法師
      87
      解説
      むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふぐれ
      村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
      #新古今集秋下 #体言止め
      きりたちのほるあきのゆふくれ
      寂蓮法師
      88
      解説
      なにはえの あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや こひわたるべき
      難波江の あしのかりねの 一夜ゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
      #千載集恋三 #序詞 #掛詞 #縁語 #係り結び #女流歌人 #大阪府大阪市
      みをつくしてやこひわたるへき
      皇嘉門院別当
      89
      解説
      たまのをよ たえなばたえね ながらへば しのぶることの よはりもぞする
      玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
      #新古今集恋一 #二句切れ #縁語 #係り結び #女流歌人
      しのふることのよはりもそする
      式子内親王
      90
      解説
      みせばやな をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず
      見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず
      #宮城県松島町 #千載集恋四 #初句切れ #四句切れ #本歌取り #係り結び #女流歌人
      ぬれにそぬれしいろはかはらす
      殷富門院大輔
      91
      解説
      きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
      きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
      #新古今集秋 #掛詞 #本歌取り #係り結び
      ころもかたしきひとりかもねむ
      後京極摂政前太政大臣
      藤原(九条)良経
      92
      解説
      わがそでは しほひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし
      わが袖は 汐干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし
      #千載集恋二 #序詞 #本歌取り #係り結び #女流歌人
      ひとこそしらねかわくまもなし
      二条院讃岐
      93
      解説
      よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのをぶねの つなでかなしも
      世の中は 常にもがもな 渚こぐ 海人の小舟の 綱手かなしも
      #新勅撰集羇旅 #二句切れ #本歌取り
      あまのをふねのつなてかなしも
      鎌倉右大臣
      源実朝
      94
      解説
      みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
      み吉野の 山の秋風 小夜更けて ふるさと寒く 衣うつなり
      #新古今集秋 #奈良県吉野町 #本歌取り
      ふるさとさむくころもうつなり
      参議雅経
      藤原雅経
      95
      解説
      おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつそまに すみぞめのそで
      おほけなく うき世の民に おほふかな 我が立つ杣に 墨染の袖
      #千載集雑中 #三句切れ #掛詞 #縁語 #本歌取り #倒置法 #体言止め #滋賀県大津市
      わかたつそまにすみそめのそて
      前大僧正慈圓
      96
      解説
      はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
      花さそふ あらしの庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり
      #新勅撰集雑一 #掛詞 #擬人法 #見立て
      ふりゆくものはわかみなりけり
      入道前太政大臣
      藤原公経
      97
      解説
      こぬひとを まつほのうらの ゆふなぎに やくやもしほの みもこがれつつ
      来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
      #新勅撰集恋 #序詞 #掛詞 #縁語 #本歌取り #兵庫県淡路市
      やくやもしほのみもこかれつつ
      権中納言定家
      藤原定家
      98
      解説
      かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
      風そよぐ 楢の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
      #新勅撰集夏 #掛詞 #本歌取り #係り結び #京都府京都市北区
      みそきそなつのしるしなりける
      従二位家隆
      藤原家隆
      99
      解説
      ひともをし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは
      人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は
      #続後撰集雑中 #二句切れ #倒置法 #天皇
      よをおもふゆゑにものおもふみは
      後鳥羽院
      100
      解説
      ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
      百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
      #続後撰集雑下 #掛詞 #天皇
      なほあまりあるむかしなりけり
      順徳院
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