八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ
新古今和歌集のデータベース
やまと歌は、むかし天地ひらけはじめて、人のしわざいまださだまらざりし時、葦原中つ國の言の葉として、稻田姬、素鵞の里よりぞ傳はりける。しかありしよりこのかた、その道さかりにおこり、そのながれいまに絕ゆることなくして、色にふけり心をのぶるなかだちとし、世を治め民を和らぐる道とせり。
新古今和歌集 – 仮名序
新古今和歌集とは
- 新古今和歌集は古今から続く、八代集最後の勅撰和歌集であり、後鳥羽院の勅命により編纂された。
- 源通具・六条有家・藤原定家・藤原家隆・飛鳥井雅経・寂蓮の6人が撰者となり、1205年成立。
- 巻二十から成り、全約1970首(伝本によって異なる)
新古今和歌集の構成
春上 | 春下 | 夏 | 秋上 | 秋下 | 冬 | 賀 | 哀傷 | 離別 | 羈旅 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
数 | 98 | 76 | 110 | 152 | 114 | 156 | 50 | 100 | 39 | 94 |
% | 4.9 | 3.8 | 5.5 | 7.6 | 5.7 | 7.8 | 2.5 | 5 | 1.9 | 4.7 |
恋一 | 恋二 | 恋三 | 恋四 | 恋五 | 雑上 | 雑中 | 雑下 | 神祇 | 釈教 | |
数 | 91 | 68 | 85 | 102 | 100 | 152 | 103 | 161 | 64 | 63 |
% | 4.6 | 3.4 | 4.2 | 5.1 | 5 | 7.6 | 5.2 | 8.1 | 3.2 | 3.1 |
- 巻二十から成り、全1978首。
新古今和歌集 言の葉データベース
「かな」は原文と同様に濁点を付けておりませんので、例えば「郭公(ほととぎす)」を検索したいときは、「ほとときす」と入力してください。
歌番号 | 歌 | よみ人 | 巻 | 種 |
---|---|---|---|---|
1 | みよしのは山もかすみてしらゆきのふりにしさとに春はきにけり みよしのは やまもかすみて しらゆきの ふりにしさとに はるはきにけり | 久我建通(後京極摂政) | 一 | 春 上 |
2 | ほのほのとはるこそそらにきにけらしあまのかく山かすみたなひく ほのほのと はるこそそらに きにけらし あまのかくやま かすみたなひく | 太上天皇 | 一 | 春 上 |
3 | 山ふかみ春ともしらぬ松のとにたえたえかかる雪のたまみつ やまふかみ はるともしらぬ まつのとに たえたえかかる ゆきのたまみつ | 式子内親王 | 一 | 春 上 |
4 | かきくらしなをふるさとのゆきのうちにあとこそ見えね春はきにけり かきくらし なほふるさとの ゆきのうちに あとこそみえね はるはきにけり | 後鳥羽院宮内卿 | 一 | 春 上 |
5 | けふといへはもろこしまてもゆく春をみやこにのみとおもひけるかな けふといへは もろこしまても ゆくはるを みやこにのみと おもひけるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 一 | 春 上 |
6 | 春といへはかすみにけりなきのふまてなみまに見えしあはちしま山 はるといへは かすみにけりな きのふまて なみまにみえし あはちしまやま | 俊恵法師 | 一 | 春 上 |
7 | いはまとちしこほりもけさはとけそめてこけのしたみつみちもとむらん いはまとちし こほりもけさは とけそめて こけのしたみつ みちもとむらむ | 西行法師 | 一 | 春 上 |
8 | 風ませに雪はふりつつしかすかに霞たなひき春はきにけり かせませに ゆきはふりつつ しかすかに かすみたなひき はるはきにけり | 読人知らず | 一 | 春 上 |
9 | ときはいま春になりぬとみゆきふるとをき山へにかすみたなひく ときはいま はるになりぬと みゆきふる とほきやまへに かすみたなひく | 読人知らず | 一 | 春 上 |
10 | かすかののしたもえわたるくさのうへにつれなくみゆる春のあは雪 かすかのの したもえわたる くさのうへに つれなくみゆる はるのあはゆき | 権中納言国信 | 一 | 春 上 |
11 | あすからはわかなつまむとしめしのにきのふもけふも雪はふりつつ あすからは わかなつまむと しめしのに きのふもけふも ゆきはふりつつ | 山辺赤人 | 一 | 春 上 |
12 | かすかののくさはみとりになりにけりわかなつまむとたれかしめけん かすかのの くさはみとりに なりにけり わかなつまむと たれかしめけむ | 壬生忠見 | 一 | 春 上 |
13 | わかなつむそてとそ見ゆるかすかののとふひののへの雪のむらきえ わかなつむ そてとそみゆる かすかのの とふひののへの ゆきのむらきえ | 前参議教長 | 一 | 春 上 |
14 | ゆきて見ぬ人もしのへとはるの野のかたみにつめるわかななりけり ゆきてみぬ ひともしのへと はるののの かたみにつめる わかななりけり | 紀貫之 | 一 | 春 上 |
15 | さはにおふるわかなならねといたつらにとしをつむにもそてはぬれけり さはにおふる わかなならねと いたつらに としをつむにも そてはぬれけり | 皇太后宮大夫俊成 | 一 | 春 上 |
16 | ささなみやしかのはままつふりにけりたかよにひけるねの日なるらん ささなみや しかのはままつ ふりにけり たかよにひける ねのひなるらむ | 読人知らず | 一 | 春 上 |
17 | たにかはのうちいつるなみもこゑたてつ鴬さそへはるの山かせ たにかはの うちいつるなみも こゑたてつ うくひすさそへ はるのやまかせ | 藤原家隆朝臣 | 一 | 春 上 |
18 | 鴬のなけともいまたふるゆきにすきの葉しろきあふさかの山 うくひすの なけともいまた ふるゆきに すきのはしろき あふさかのやま | 太上天皇 | 一 | 春 上 |
19 | 春きては花とも見よとかたをかの松のうは葉にあは雪そふる はるきては はなともみよと かたをかの まつのうははに あはゆきそふる | 藤原仲実朝臣 | 一 | 春 上 |
20 | まきもくのひはらのいまたくもらねはこまつかはらにあは雪そふる まきもくの ひはらのいまた くもらねは こまつかはらに あはゆきそふる | 中納言家持 | 一 | 春 上 |
21 | いまさらにゆきふらめやもかけろふのもゆるはるひとなりにしものを いまさらに ゆきふらめやも かけろふの もゆるはるひと なりにしものを | 読人知らず | 一 | 春 上 |
22 | いつれをか花とはわかむふるさとのかすかのはらにまたきえぬ雪 いつれをか はなともわかむ ふるさとの かすかのはらに またきえぬゆき | 凡河内躬恒 | 一 | 春 上 |
23 | そらはなをかすみもやらす風さえて雪けにくもる春のよの月 そらはなほ かすみもやらす かせさえて ゆきけにくもる はるのよのつき | 久我建通(後京極摂政) | 一 | 春 上 |
24 | やまふかみなをかけさむし春の月そらかきくもり雪はふりつつ やまふかみ なほかけさむし はるのつき そらかきくもり ゆきはふりつつ | 嘉陽門院越前 | 一 | 春 上 |
25 | みしまえやしももまたひぬあしの葉につのくむほとの春風そ吹 みしまえや しももまたひぬ あしのはに つのくむほとの はるかせそふく | 左衛門督通光 | 一 | 春 上 |
26 | ゆふつくよしほみちくらしなにはえのあしのわか葉にこゆるしらなみ ゆふつくよ しほみちくらし なにはえの あしのわかはに こゆるしらなみ | 藤原秀能 | 一 | 春 上 |
27 | ふりつみしたかねのみゆきとけにけりきよたき河の水のしらなみ ふりつみし たかねのみゆき とけにけり きよたきかはの みつのしらなみ | 西行法師 | 一 | 春 上 |
28 | むめかえにものうきほとにちるゆきを花ともいはし春のなたてに うめかえに ものうきほとに ちるゆきを はなともいはし はるのなたてに | 源重之 | 一 | 春 上 |
29 | あつさゆみはる山ちかくいゑゐしてたえすききつる鴬のこゑ あつさゆみ はるやまちかく いへゐして たえすききつる うくひすのこゑ | 山辺赤人 | 一 | 春 上 |
30 | むめかえになきてうつろふうくひすのはねしろたへにあはゆきそふる うめかえに なきてうつろふ うくひすの はねしろたへに あはゆきそふる | 読人知らず | 一 | 春 上 |
31 | 鴬のなみたのつららうちとけてふるすなからや春をしるらん うくひすの なみたのつらら うちとけて ふるすなからや はるをしるらむ | 惟明親王 | 一 | 春 上 |
32 | いはそそくたるみのうへのさわらひのもえいつる春になりにけるかな いはそそく たるみのうへの さわらひの もえいつるはるに なりにけるかな | 志貴皇子 | 一 | 春 上 |
33 | あまのはらふしのけふりの春の色のかすみになひくあけほののそら あまのはら ふしのけふりの はるのいろの かすみになひく あけほののそら | 前大僧正慈円 | 一 | 春 上 |
34 | あさかすみふかく見ゆるやけふりたつむろのやしまのわたりなるらん あさかすみ ふかくみゆるや けふりたつ むろのやしまの わたりなるらむ | 藤原清輔朝臣 | 一 | 春 上 |
35 | なこのうみのかすみのまよりなかむれはいる日をあらふおきつしらなみ なこのうみの かすみのまより なかむれは いりひをあらふ おきつしらなみ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 一 | 春 上 |
36 | 見わたせは山もとかすむみなせかはゆふへはあきとなにおもひけん みわたせは やまもとかすむ みなせかは ゆふへはあきと なにおもひけむ | 太上天皇 | 一 | 春 上 |
37 | かすみたつすゑの松山ほのほのとなみにはなるるよこ雲のそら かすみたつ すゑのまつやま ほのほのと なみにはなるる よこくものそら | 藤原家隆朝臣 | 一 | 春 上 |
38 | 春のよの夢のうきはしとたえしてみねにわかるるよこ雲のそら はるのよの ゆめのうきはし とたえして みねにわかるる よこくものそら | 藤原定家朝臣 | 一 | 春 上 |
39 | しるらめやかすみのそらをなかめつつ花もにほはぬ春をなけくと しるらめや かすみのそらを なかめつつ はなもにほはぬ はるをなけくと | 中務 | 一 | 春 上 |
40 | おほそらはむめのにほひにかすみつつくもりもはてぬ春のよの月 おほそらは うめのにほひに かすみつつ くもりもはてぬ はるのよのつき | 藤原定家朝臣 | 一 | 春 上 |
41 | おられけりくれなゐにほふむめのはなけさしろたへに雪はふれれと をられけり くれなゐにほふ うめのはな けさしろたへに ゆきはふりつつ | 藤原頼通 | 一 | 春 上 |
42 | あるしをはたれともわかす春はたたかきねのむめをたつねてそみる あるしをは たれともわかす はるはたた かきねのうめを たつねてそみる | 藤原敦家朝臣 | 一 | 春 上 |
43 | 心あらはとはましものをむめかかにたか袖よりかにほひきつらん こころあらは とはましものを うめかかに たかさとよりか にほひきつらむ | 源俊頼朝臣 | 一 | 春 上 |
44 | むめの花にほひをうつす袖のうへにのきもる月のかけそあらそふ うめのはな にほひをうつす そてのうへに のきもるつきの かけそあらそふ | 藤原定家朝臣 | 一 | 春 上 |
45 | むめかかにむかしをとへは春の月こたへぬかけそ袖にうつれる うめかかに むかしをとへは はるのつき こたへぬかけそ そてにうつれる | 藤原家隆朝臣 | 一 | 春 上 |
46 | むめの花たか袖ふれしにほひそと春やむかしの月にとははや うめのはな たかそてふれし にほひそと はるやむかしの つきにとははや | 右衛門督通具 | 一 | 春 上 |
47 | むめの花あかぬ色香もむかしにておなしかたみの春のよの月 うめのはな あかぬいろかも むかしにて おなしかたみの はるのよのつき | 皇太后宮大夫俊成女 | 一 | 春 上 |
48 | 見ぬ人によそへて見つるむめの花ちりなんのちのなくさめそなき みぬひとに よそへてみつる うめのはな ちりなむのちの なくさめそなき | 権中納言定頼 | 一 | 春 上 |
49 | 春ことに心をしむる花のえにたかなをさりの袖かふれつる はることに こころをしむる はなのえに たかなほさりの そてかふれつる | 大弐三位 | 一 | 春 上 |
50 | むめちらす風もこえてやふきつらんかほれる雪のそてにみたるる うめちらす かせもこえてや ふきつらむ かをれるゆきの そてにみたるる | 康資王母 | 一 | 春 上 |
51 | とめこかしむめさかりなるわかやとをうときも人はおりにこそよれ とめこかし うめさかりなる わかやとを うときもひとは をりにこそよれ | 西行法師 | 一 | 春 上 |
52 | なかめつるけふはむかしになりぬとものきはのむめはわれをわするな なかめつる けふはむかしに なりぬとも のきはのうめは われをわするな | 式子内親王 | 一 | 春 上 |
53 | ちりぬれはにほひはかりをむめの花ありとや袖に春風のふく ちりぬれは にほひはかりを うめのはな ありとやそてに はるかせのふく | 藤原有家朝臣 | 一 | 春 上 |
54 | ひとりのみなかめてちりぬむめの花しるはかりなる人はとひこす ひとりのみ なかめてちりぬ うめのはな しるはかりなる ひとはとひこす | 八条院高倉 | 一 | 春 上 |
55 | てりもせすくもりもはてぬはるのよのおほろ月よにしく物そなき てりもせす くもりもはてぬ はるのよの おほろつきよに しくものそなき | 大江千里 | 一 | 春 上 |
56 | あさみとり花もひとつにかすみつつおほろに見ゆる春のよの月 あさみとり はなもひとつに かすみつつ おほろにみゆる はるのよのつき | 菅原孝標女 | 一 | 春 上 |
57 | なにはかたかすまぬなみもかすみけりうつるもくもるおほろ月よに なにはかた かすまぬなみも かすみけり うつるもくもる おほろつきよに | 源具親 | 一 | 春 上 |
58 | いまはとてたのむのかりもうちわひぬおほろ月よのあけほののそら いまはとて たのむのかりも うちわひぬ おほろつきよの あけほののそら | 寂蓮法師 | 一 | 春 上 |
59 | きく人そなみたはおつるかへるかりなきてゆくなるあけほののそら きくひとそ なみたはおつる かへるかり なきてゆくなる あけほののそら | 皇太后宮大夫俊成 | 一 | 春 上 |
60 | ふるさとにかへるかりかねさよふけて雲ちにまよふ声きこゆなり ふるさとに かへるかりかね さよふけて くもちにまよふ こえきこゆなり | 読人知らず | 一 | 春 上 |
61 | わするなよたのむのさはをたつかりもいな葉の風の秋のゆふくれ わするなよ たのむのさはを たつかりも いなはのかせの あきのゆふくれ | 久我建通(後京極摂政) | 一 | 春 上 |
62 | かへるかりいまはの心ありあけに月と花との名こそおしけれ かへるかり いまはのこころ ありあけに つきとはなとの なこそをしけれ | 読人知らず | 一 | 春 上 |
63 | しもまよふそらにしほれしかりかねのかへるつはさに春雨そふる しもまよふ そらにしをれし かりかねの かへるつはさに はるさめそふる | 藤原定家朝臣 | 一 | 春 上 |
64 | つくつくと春のなかめのさひしきはしのふにつたふのきの玉水 つくつくと はるのなかめの さひしきは しのふにつたふ のきのたまみつ | 大僧正行慶 | 一 | 春 上 |
65 | 水のおもにあやをりみたる春雨や山のみとりをなへてそむらん みつのおもに あやおりみたる はるさめや やまのみとりを なへてそむらむ | 伊勢 | 一 | 春 上 |
66 | ときはなる山のいはねにむすこけのそめぬみとりに春雨そふる ときはなる やまのいはねに むすこけの そめぬみとりに はるさめそふる | 久我建通(後京極摂政) | 一 | 春 上 |
67 | 雨ふれはを田のますらをいとまあれやなはしろ水をそらにまかせて あめふれは をたのますらを いとまあれや なはしろみつを そらにまかせて | 勝命法師 | 一 | 春 上 |
68 | 春さめのふりそめしよりあをやきのいとのみとりそ色まさりける はるさめの ふりそめしより あをやきの いとのみとりそ いろまさりける | 凡河内躬恒 | 一 | 春 上 |
69 | うちなひき春はきにけりあをやきのかけふむみちに人のやすらふ うちなひき はるはきにけり あをやきの かけふむみちそ ひとのやすらふ | 大宰大弐高遠 | 一 | 春 上 |
70 | みよしののおほかはのへのふるやなきかけこそ見えね春めきにけり みよしのの おほかはのへの ふるやなき かけこそみえね はるめきにけり | 輔仁親王 | 一 | 春 上 |
71 | あらしふくきしのやなきのいなむしろおりしくなみにまかせてそみる あらしふく きしのやなきの いなむしろ おりしくなみに まかせてそみる | 崇徳院御哥 | 一 | 春 上 |
72 | たかせさすむつたのよとのやなきはらみとりもふかくかすむ春かな たかせさす むつたのよとの やなきはら みとりもふかく かすむはるかな | 権中納言公経 | 一 | 春 上 |
73 | 春風のかすみふきとくたえまよりみたれてなひくあをやきのいと はるかせの かすみふきとく たえまより みたれてなひく あをやきのいと | 殷富門院大輔 | 一 | 春 上 |
74 | しらくものたえまになひくあをやきのかつらき山に春風そふく しらくもの たえまになひく あをやきの かつらきやまに はるかせそふく | 藤原雅経 | 一 | 春 上 |
75 | あをやきのいとにたまぬく白つゆのしらすいくよの春かへぬらん あをやきの いとにたまぬく しらつゆの しらすいくよの はるかへぬらむ | 藤原有家朝臣 | 一 | 春 上 |
76 | うすくこき野辺のみとりのわかくさにあとまて見ゆる雪のむらきえ うすくこき のへのみとりの わかくさに あとまてみゆる ゆきのむらきえ | 後鳥羽院宮内卿 | 一 | 春 上 |
77 | あらを田のこそのふるあとのふるよもきいまは春へとひこはへにけり あらをたの こそのふるあとの ふるよもき いまははるへと ひこはえにけり | 曽祢好忠 | 一 | 春 上 |
78 | やかすともくさはもえなんかすか野をたた春の日にまかせたらなん やかすとも くさはもえなむ かすかのを たたはるのひに まかせたらなむ | 壬生忠見 | 一 | 春 上 |
79 | よしの山さくらかえたにゆきちりて花をそけなるとしにもあるかな よしのやま さくらかえたに ゆきちりて はなおそけなる としにもあるかな | 西行法師 | 一 | 春 上 |
80 | 桜花さかはまつ見んとおもふまに日かすへにけり春の山さと さくらはな さかはまつみむと おもふまに ひかすへにけり はるのやまさと | 藤原隆時朝臣 | 一 | 春 上 |
81 | わかこころ春の山へにあくかれてなかなかし日をけふもくらしつ わかこころ はるのやまへに あくかれて なかなかしひを けふもくらしつ | 紀貫之 | 一 | 春 上 |
82 | おもふとちそこともしらすゆきくれぬ花のやとかせ野への鴬 おもふとち そこともしらす ゆきくれぬ はなのやとかせ のへのうくひす | 藤原家隆朝臣 | 一 | 春 上 |
83 | いまさくらさきぬと見えてうすくもり春にかすめるよのけしきかな いまさくら さきぬとみえて うすくもり はるにかすめる よのけしきかな | 式子内親王 | 一 | 春 上 |
84 | ふしておもひおきてなかむる春雨に花のしたひもいかにとくらん ふしておもひ おきてなかむる はるさめに はなのしたひも いかにとくらむ | 読人知らず | 一 | 春 上 |
85 | ゆかむ人こん人しのへ春かすみたつたの山のはつさくら花 ゆかむひと こむひとしのへ はるかすみ たつたのやまの はつさくらはな | 中納言家持 | 一 | 春 上 |
86 | よしの山こそのしほりのみちかへてまた見ぬかたの花をたつねん よしのやま こそのしをりの みちかへて またみぬかたの はなをたつねむ | 西行法師 | 一 | 春 上 |
87 | かつらきやたかまの桜さきにけりたつたのおくにかかる白雲 かつらきや たかまのさくら さきにけり たつたのおくに かかるしらくも | 寂蓮法師 | 一 | 春 上 |
88 | いその神ふるき宮こをきてみれはむかしかさしし花さきにけり いそのかみ ふるきみやこを きてみれは むかしかさしし はなさきにけり | 読人知らず | 一 | 春 上 |
89 | 春にのみとしはあらなんあらを田をかへすかへすも花をみるへく はるにのみ としはあらなむ あらをたを かへすかへすも はなをみるへく | 源公忠朝臣 | 一 | 春 上 |
90 | 白雲のたつたの山のやへ桜いつれを花とわきておりけん しらくもの たつたのやまの やへさくら いつれをはなと わきてをりけむ | 道命法師 | 一 | 春 上 |
91 | しらくもの春はかさねてたつた山をくらのみねに花にほふらし しらくもの はるはかさねて たつたやま をくらのみねに はなにほふらし | 藤原定家朝臣 | 一 | 春 上 |
92 | よしの山花やさかりににほふらんふるさとさえぬ峰の白雪 よしのやま はなやさかりに にほふらむ ふるさとさえぬ みねのしらゆき | 藤原家衡朝臣 | 一 | 春 上 |
93 | いはねふみかさなる山をわけすてて花もいくへのあとのしら雲 いはねふみ かさなるやまを わけすてて はなもいくへの あとのしらくも | 藤原雅経 | 一 | 春 上 |
94 | たつねきて花にくらせるこのまよりまつとしもなき山の葉の月 たつねきて はなにくらせる このまより まつとしもなき やまのはのつき | 読人知らず | 一 | 春 上 |
95 | ちりちらす人もたつねぬふるさとのつゆけき花に春風そふく ちりちらす ひともたつねぬ ふるさとの つゆけきはなに はるかせそふく | 前大僧正慈円 | 一 | 春 上 |
96 | いその神ふるののさくらたれうへて春はわすれぬかたみなるらん いそのかみ ふるののさくら たれうゑて はるはわすれぬ かたみなるらむ | 右衛門督通具 | 一 | 春 上 |
97 | 花そ見るみちのしはくさふみわけてよしのの宮の春のあけほの はなそみる みちのしはくさ ふみわけて よしののみやの はるのあけほの | 正三位季能 | 一 | 春 上 |
98 | あさ日かけにほへる山のさくら花つれなくきえぬ雪かとそ見る あさひかけ にほへるやまの さくらはな つれなくきえぬ ゆきかとそみる | 藤原有家朝臣 | 一 | 春 上 |
99 | さくらさくとを山とりのしたりおのなかなかし日もあかぬ色かな さくらさく とほやまとりの したりをの なかなかしひも あかぬいろかな | 太上天皇 | 二 | 春 下 |
100 | いくとせの春に心をつくしきぬあはれとおもへみよしのの花 いくとせの はるにこころを つくしきぬ あはれとおもへ みよしののはな | 皇太后宮大夫俊成 | 二 | 春 下 |
101 | はかなくてすきにしかたをかそふれは花にものおもふ春そへにける はかなくて すきにしかたを かそふれは はなにものおもふ はるそへにける | 式子内親王 | 二 | 春 下 |
102 | 白雲のたなひく山のやま桜いつれを花とゆきておらまし しらくもの たなひくやまの やへさくら いつれをはなと ゆきてをらまし | 藤原師実 | 二 | 春 下 |
103 | はなの色にあまきるかすみたちまよひそらさへにほふ山桜かな はなのいろに あまきるかすみ たちまよひ そらさへにほふ やまさくらかな | 権大納言長家 | 二 | 春 下 |
104 | ももしきの大宮人はいとまあれやさくらかさしてけふもくらしつ ももしきの おほみやひとは いとまあれや さくらかさして けふもくらしつ | 赤人 | 二 | 春 下 |
105 | 花にあかぬなけきはいつもせしかともけふのこよひににる時はなし はなにあかぬ なけきはいつも せしかとも けふのこよひに にるときはなし | 在原業平朝臣 | 二 | 春 下 |
106 | いもやすくねられさりけり春の夜は花のちるのみ夢に見えつつ いもやすく ねられさりけり はるのよは はなのちるのみ ゆめにみえつつ | 凡河内躬恒 | 二 | 春 下 |
107 | 山さくらちりてみゆきにまかひなはいつれか花と春にとはなん やまさくら ちりてみゆきに まかひなは いつれかはなと はるにとはなむ | 伊勢 | 二 | 春 下 |
108 | わかやとのものなりなから桜はなちるをはえこそととめさりけれ わかやとの ものなりなから さくらはな ちるをはえこそ ととめさりけれ | 紀貫之 | 二 | 春 下 |
109 | かすみたつ春の山へにさくらはなあかすちるとや鴬のなく かすみたつ はるのやまへに さくらはな あかすちるとや うくひすのなく | 読人知らず | 二 | 春 下 |
110 | 春雨はいたくなふりそ桜花また見ぬ人にちらまくもおし はるさめは いたくなふりそ さくらはな またみぬひとに ちらまくもをし | 赤人 | 二 | 春 下 |
111 | 花のかにころもはふかくなりにけりこのしたかけの風のまにまに はなのかに ころもはふかく なりにけり このしたかけの かせのまにまに | 紀貫之 | 二 | 春 下 |
112 | 風かよふねさめの袖の花のかにかほるまくらの春のよの夢 かせかよふ ねさめのそての はなのかに かをるまくらの はるのよのゆめ | 皇太后宮大夫俊成女 | 二 | 春 下 |
113 | このほとはしるもしらぬもたまほこのゆきかふ袖は花のかそする このほとは しるもしらぬも たまほこの ゆきかふそては はなのかそする | 藤原家隆朝臣 | 二 | 春 下 |
114 | またや見んかたののみのの桜かり花の雪ちる春のあけほの またやみむ かたののみのの さくらかり はなのゆきちる はるのあけほの | 皇太后宮大夫俊成 | 二 | 春 下 |
115 | ちりちらすおほつかなきは春かすみたなひく山の桜なりけり ちりちらす おほつかなきは はるかすみ たなひくやまの さくらなりけり | 祝部成仲 | 二 | 春 下 |
116 | やまさとの春のゆふくれきてみれはいりあひのかねに花そちりける やまさとの はるのゆふくれ きてみれは いりあひのかねに はなそちりける | 能因法師 | 二 | 春 下 |
117 | さくらちる春の山へはうかりけりよをのかれにとこしかひもなく さくらちる はるのやまへは うかりけり よをのかれにと こしかひもなく | 恵慶法師 | 二 | 春 下 |
118 | 山さくら花のした風ふきにけりこのもとことの雪のむらきえ やまさくら はなのしたかせ ふきにけり このもとことの ゆきのむらきえ | 康資王母 | 二 | 春 下 |
119 | はるさめのそほふるそらのをやみせすおつる涙に花そちりける はるさめの そほふるそらの をやみせす おつるなみたに はなそちりける | 源重之 | 二 | 春 下 |
120 | かりかねのかへるは風やさそふらんすきゆく峯の花ものこらぬ かりかねの かへるはかせや さそふらむ すきゆくみねの はなものこらぬ | 読人知らず | 二 | 春 下 |
121 | 時しもあれたのむのかりのわかれさへ花ちるころのみよしののさと ときしもあれ たのむのかりの わかれさへ はなちるころの みよしののさと | 源具親 | 二 | 春 下 |
122 | 山ふかみすきのむらたちみえぬまておのへの風に花のちるかな やまふかみ すきのむらたち みえぬまて をのへのかせに はなのちるかな | 大納言経信 | 二 | 春 下 |
123 | このしたのこけのみとりもみえぬまてやへちりしける山桜かな このしたの こけのみとりも みえぬまて やへちりしける やまさくらかな | 大納言師頼 | 二 | 春 下 |
124 | ふもとまておのへの桜ちりこすはたなひく雲とみてやすきまし ふもとまて をのへのさくら ちりこすは たなひくくもと みてやすきまし | 左京大夫顕輔 | 二 | 春 下 |
125 | はなちれはとふ人まれになりはてていとひし風のをとのみそする はなちれは とふひとまれに なりはてて いとひしかせの おとのみそする | 刑部卿範兼 | 二 | 春 下 |
126 | なかむとて花にもいたくなれぬれはちるわかれこそかなしかりけれ なかむとて はなにもいたく なれぬれは ちるわかれこそ かなしかりけれ | 西行法師 | 二 | 春 下 |
127 | 山さとのにはよりほかのみちもかな花ちりぬやと人もこそとへ やまさとの にはよりほかの みちもかな はなちりぬやと ひともこそとへ | 嘉陽門院越前 | 二 | 春 下 |
128 | 花さそふひらの山風ふきにけりこきゆくふねのあとみゆるまて はなさそふ ひらのやまかせ ふきにけり こきゆくふねの あとみゆるまて | 後鳥羽院宮内卿 | 二 | 春 下 |
129 | あふさかやこすゑのはなをふくからにあらしそかすむせきのすき村 あふさかや こすゑのはなを ふくからに あらしそかすむ せきのすきむら | 後鳥羽院宮内卿 | 二 | 春 下 |
130 | 山たかみ峯のあらしにちる花の月にあまきるあけかたのそら やまたかみ みねのあらしに ちるはなの つきにあまきる あけかたのそら | 二条院讃岐 | 二 | 春 下 |
131 | やまたかみいはねの桜ちるときはあまのはころもなつるとそみる やまたかみ いはねのさくら ちるときは あまのはころも なつるとそみる | 崇徳院御哥 | 二 | 春 下 |
132 | ちりまかふはなのよそめはよしの山あらしにさはくみねの白雲 ちりまかふ はなのよそめは よしのやま あらしにさわく みねのしらくも | 刑部卿頼輔 | 二 | 春 下 |
133 | みよしののたかねの桜ちりにけりあらしもしろき春のあけほの みよしのの たかねのさくら ちりにけり あらしもしろき はるのあけほの | 太上天皇 | 二 | 春 下 |
134 | さくら色の庭のはる風あともなしとははそ人の雪とたにみん さくらいろの にはのはるかせ あともなし とははそひとの ゆきとたにみむ | 藤原定家朝臣 | 二 | 春 下 |
135 | けふたにも庭をさかりとうつる花きえすはありとも雪かともみよ けふたにも にはをさかりと うつるはな きえすはありとも ゆきかともみよ | 太上天皇 | 二 | 春 下 |
136 | さそはれぬ人のためとやのこりけんあすよりさきの花の白雪 さそはれぬ ひとのためとや のこりけむ あすよりさきの はなのしらゆき | 久我建通(後京極摂政) | 二 | 春 下 |
137 | やへにほふのきはのさくらうつろひぬ風よりさきにとふ人もかな やへにほふ のきはのさくら うつろひぬ かせよりさきに とふひともかな | 式子内親王 | 二 | 春 下 |
138 | つらきかなうつろふまてにやへさくらとへともいはてすくる心は つらきかな うつろふまてに やへさくら とへともいはて すくるこころは | 惟明親王 | 二 | 春 下 |
139 | さくら花夢かうつつか白雲のたえてつねなきみねの春風 さくらはな ゆめかうつつか しらくもの たえてつねなき みねのはるかせ | 藤原家隆朝臣 | 二 | 春 下 |
140 | うらみすやうきよを花のいとひつつさそふ風あらはとおもひけるをは うらみすや うきよをはなの いとひつつ さそふかせあらはと おもひけるをは | 皇太后宮大夫俊成女 | 二 | 春 下 |
141 | はかなさをほかにもいはし桜花さきてはちりぬあはれよの中 はかなさを ほかにもいはし さくらはな さきてはちりぬ あはれよのなか | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 二 | 春 下 |
142 | なかむへきのこりの春をかそふれは花とともにもちる涙かな なかむへき のこりのはるを かそふれは はなとともにも ちるなみたかな | 俊恵法師 | 二 | 春 下 |
143 | 花もまたわかれん春はおもひいてよさきちるたひの心つくしを はなもまた わかれむはるは おもひいてよ さきちるたひの こころつくしを | 殷富門院大輔 | 二 | 春 下 |
144 | ちる花のわすれかたみのみねの雲そをたにのこせ春の山風 ちるはなの わすれかたみの みねのくも そをたにのこせ はるのやまかせ | 左近中将良平 | 二 | 春 下 |
145 | はなさそふなこりを雲にふきとめてしはしはにほへ春の山かせ はなさそふ なこりをくもに ふきとめて しはしはにほへ はるのやまかせ | 藤原雅経 | 二 | 春 下 |
146 | おしめともちりはてぬれは桜花いまはこすゑをなかむはかりそ をしめとも ちりはてぬれは さくらはな いまはこすゑを なかむはかりそ | 後白河院御哥 | 二 | 春 下 |
147 | よしの山はなのふるさとあとたえてむなしきえたに春風そふく よしのやま はなのふるさと あとたえて むなしきえたに はるかせそふく | 久我建通(後京極摂政) | 二 | 春 下 |
148 | ふるさとのはなのさかりはすきぬれとおもかけさらぬ春のそらかな ふるさとの はなのさかりは すきぬれと おもかけさらぬ はるのそらかな | 大納言経信 | 二 | 春 下 |
149 | 花はちりその色となくなかむれはむなしきそらに春雨そふる はなはちり そのいろとなく なかむれは むなしきそらに はるさめそふる | 式子内親王 | 二 | 春 下 |
150 | たかたにかあすはのこさん山さくらこほれてにほへけふのかたみに たかたにか あすはのこさむ やまさくら こほれてにほへ けふのかたみに | 清原元輔 | 二 | 春 下 |
151 | から人のふねをうかへてあそふてふけふそわかせこ花かつらせよ からひとの ふねをうかへて あそふてふ けふそわかせこ はなかつらせよ | 中納言家持 | 二 | 春 下 |
152 | 花なかすせをもみるへきみか月のわれていりぬる山のをちかた はななかす せをもみるへき みかつきの われていりぬる やまのをちかた | 坂上是則 | 二 | 春 下 |
153 | たつねつるはなもわか身もおとろへてのちの春ともえこそちきらね たつねつる はなもわかみも おとろへて のちのはるとも えこそちきらね | 良暹法師 | 二 | 春 下 |
154 | おもひたつとりはふるすもたのむらんなれぬる花のあとのゆふくれ おもひたつ とりはふるすも たのむらむ なれぬるはなの あとのゆふくれ | 寂蓮法師 | 二 | 春 下 |
155 | ちりにけりあはれうらみのたれなれは花のあととふ春の山風 ちりにけり あはれうらみの たれなれは はなのあととふ はるのやまかせ | 読人知らず | 二 | 春 下 |
156 | 春ふかくたつねいるさの山の葉にほの見し雲の色そのこれる はるふかく たつねいるさの やまのはに ほのみしくもの いろそのこれる | 権中納言公経 | 二 | 春 下 |
157 | はつせ山うつろふ花に春くれてまかひし雲そみねにのこれる はつせやま うつろふはなに はるくれて まかひしくもそ みねにのこれる | 久我建通(後京極摂政) | 二 | 春 下 |
158 | よしのかはきしの山ふきさきにけりみねのさくらはちりはてぬらん よしのかは きしのやまふき さきにけり みねのさくらは ちりはてぬらむ | 藤原家隆朝臣 | 二 | 春 下 |
159 | こまとめてなを水かはんやまふきの花のつゆそふ井ての玉河 こまとめて なほみつかはむ やまふきの はなのつゆそふ ゐてのたまかは | 皇太后宮大夫俊成 | 二 | 春 下 |
160 | いはねこすきよたき河のはやけれはなみおりかくるきしの山ふき いはねこす きよたきかはの はやけれは なみをりかくる きしのやまふき | 権中納言国信 | 二 | 春 下 |
161 | かはつなくかみなひかはにかけみえていまか(か=や)さくらん山ふきの花 かはつなく かみなひかはに かけみえて いまかさくらむ やまふきのはな | 厚見王 | 二 | 春 下 |
162 | あしひきの山ふきの花ちりにけり井てのかはつはいまやなくらん あしひきの やまふきのはな ちりにけり ゐてのかはつは いまやなくらむ | 藤原興風 | 二 | 春 下 |
163 | かくてこそ見まくほしけれよろつよをかけてにほへるふちなみの花 かくてこそ みまくほしけれ よろつよを かけてにほへる ふちなみのはな | 延喜御哥 | 二 | 春 下 |
164 | まとゐして見れともあかぬふちなみのたたまくおしきけふにもあるかな まとゐして みれともあかぬ ふちなみの たたまくをしき けふにもあるかな | 天暦御哥 | 二 | 春 下 |
165 | くれぬとはおもふものからふちなみのさけるやとには春そひさしき くれぬとは おもふものから ふちのはな さけるやとには はるそひさしき | 紀貫之 | 二 | 春 下 |
166 | みとりなる松にかかれるふちなれとをのかころとそ花はさきける みとりなる まつにかかれる ふちなれと おのかころとそ はなはさきける | 読人知らず | 二 | 春 下 |
167 | ちりのこる花もやあるとうちむれてみ山かくれをたつねてしかな ちりのこる はなもやあると うちむれて みやまかくれを たつねてしかな | 藤原道信朝臣 | 二 | 春 下 |
168 | このもとのすみかもいまはあれぬへし春しくれなはたれかとひこん このもとの すみかもいまは あれぬへし はるしくれなは たれかとひこむ | 大僧正行尊 | 二 | 春 下 |
169 | くれてゆく春のみなとはしらねともかすみにおつるうちのしはふね くれてゆく はるのみなとは しらねとも かすみにおつる うちのしはふね | 寂蓮法師 | 二 | 春 下 |
170 | こぬまても花ゆへ人のまたれつる春もくれぬるみ山辺のさと こぬまても はなゆゑひとの またれつる はるもくれぬる みやまへのさと | 藤原伊綱 | 二 | 春 下 |
171 | いその神ふるのわさたをうちかへしうらみかねたる春のくれかな いそのかみ ふるのわさたを うちかへし うらみかねたる はるのくれかな | 皇太后宮大夫俊成女 | 二 | 春 下 |
172 | まてといふにとまらぬものとしりなからしひてそおしき春のわかれは まてといふに とまらぬものと しりなから しひてそをしき はるのわかれは | 読人知らず | 二 | 春 下 |
173 | しはのとにさすや日かけのなこりなく春くれかかる山の葉の雲 しはのとを さすやひかけの なこりなく はるくれかかる やまのはのくも | 後鳥羽院宮内卿 | 二 | 春 下 |
174 | あすよりはしかの花そのまれにたにたれかはとはん春のふるさと あすよりは しかのはなその まれにたに たれかはとはむ はるのふるさと | 久我建通(後京極摂政) | 二 | 春 下 |
175 | 春すきてなつきにけらししろたへのころもほすてふあまのかく山 はるすきて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかくやま | 持統天皇御哥 | 三 | 夏 |
176 | おしめともとまらぬはるもあるものをいはぬにきたる夏衣かな をしめとも とまらぬはるも あるものを いはぬにきたる なつころもかな | 素性法師 | 三 | 夏 |
177 | ちりはてて花のかけなきこのもとにたつことやすきなつころもかな ちりはてて はなのかけなき このもとに たつことやすき なつころもかな | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
178 | なつころもきていくかにかなりぬらんのこれる花はけふもちりつつ なつころも きていくかにか なりぬらむ のこれるはなは けふもちりつつ | 源道済 | 三 | 夏 |
179 | おりふしもうつれはかへつよのなかの人の心の花そめのそて をりふしも うつれはかへつ よのなかの ひとのこころの はなそめのそて | 皇太后宮大夫俊成女 | 三 | 夏 |
180 | うの花のむらむらさけるかきねをは雲まの月のかけかとそみる うのはなの むらむらさける かきねをは くもまのつきの かけかとそみる | 白河院御哥 | 三 | 夏 |
181 | うの花のさきぬるときはしろたへのなみもてゆへるかきねとそみる うのはなの さきぬるときは しろたへの なみもてゆへる かきねとそみる | 大宰大弐重家 | 三 | 夏 |
182 | わすれめやあふひをくさにひきむすひかりねののへのつゆのあけほの わすれめや あふひをくさに ひきむすひ かりねののへの つゆのあけほの | 式子内親王 | 三 | 夏 |
183 | いかなれはそのかみ山のあふひくさとしはふれともふた葉なるらん いかなれは そのかみやまの あふひくさ としはふれとも ふたはなるらむ | 太皇太后宮小侍従 | 三 | 夏 |
184 | のへはいまたあさかのぬまにかるくさのかつ見るままにしけるころかな のへはいまた あさかのぬまに かるくさの かつみるままに しけるころかな | 藤原雅経朝臣 | 三 | 夏 |
185 | さくらあさのをふのしたくさしけれたたあかてわかれし花の名なれは さくらあさの をふのしたくさ しけれたた あかてわかれし はなのななれは | 待賢門院安芸 | 三 | 夏 |
186 | 花ちりし庭のこの葉もしけりあひてあまてる月のかけそまれなる はなちりし にはのこのはも しけりあひて あまてるつきの かけそまれなる | 曽祢好忠 | 三 | 夏 |
187 | かりにくとうらみし人のたえにしをくさ葉につけてしのふころかな かりにくと うらみしひとの たえにしを くさはにつけて しのふころかな | 読人知らず | 三 | 夏 |
188 | なつくさはしけりにけりなたまほこのみちゆき人もむすふはかりに なつくさは しけりにけりな たまほこの みちゆくひとも むすふはかりに | 藤原元真 | 三 | 夏 |
189 | 夏草はしけりにけれとほとときすなとわかやとに一声もせぬ なつくさは しけりにけれと ほとときす なとわかやとに ひとこゑもせぬ | 延喜御哥 | 三 | 夏 |
190 | なくこゑをえやはしのはぬほとときすはつうの花のかけにかくれて なくこゑを えやはしのはぬ ほとときす はつうのはなの かけにかくれて | 柿本人麻呂(人麿) | 三 | 夏 |
191 | ほとときす声まつほとはかたをかのもりのしつくにたちやぬれまし ほとときす こゑまつほとは かたをかの もりのしつくに たちやぬれまし | 紫式部 | 三 | 夏 |
192 | ほとときすみ山いつなるはつこゑをいつれのやとのたれかきくらん ほとときす みやまいつなる はつこゑを いつれのやとの たれかきくらむ | 弁乳母 | 三 | 夏 |
193 | さ月山うの花月よほとときすきけともあかす又なかんかも さつきやま うのはなつきよ ほとときす きけともあかす またなかむかも | 読人知らず | 三 | 夏 |
194 | をのかつまこひつつなくやさ月やみ神なひ山のやま郭公 おのかつま こひつつなくや さつきやみ かみなひやまの やまほとときす | 読人知らず | 三 | 夏 |
195 | ほとときす一声なきていぬるよはいかてか人のいをやすくぬる ほとときす ひとこゑなきて いぬるよは いかてかひとの いをやすくぬる | 中納言家持 | 三 | 夏 |
196 | ほとときすなきつついつるあしひきの山となてしこさきにけらしも ほとときす なきつついつる あしひきの やまとなてしこ さきにけらしも | 大中臣能宣朝臣 | 三 | 夏 |
197 | ふた声となきつときかはほとときすころもかたしきうたたねはせん ふたこゑと なきつときかは ほとときす ころもかたしき うたたねはせむ | 大納言経信 | 三 | 夏 |
198 | 郭公またうちとけぬしのひねはこぬ人をまつわれのみそきく ほとときす またうちとけぬ しのひねは こぬひとをまつ われのみそきく | 白河院御哥 | 三 | 夏 |
199 | ききてしもなをそねられぬほとときすまちしよころ(ろ+の)心ならひに ききてしも なほそねられぬ ほとときす まちしよころの こころならひに | 源有仁(花園左大臣) | 三 | 夏 |
200 | うの花のかきねならねとほとときす月のかつらのかけになくなり うのはなの かきねならねと ほとときす つきのかつらの かけになくなり | 前中納言匡房 | 三 | 夏 |
201 | むかしおもふくさのいほりのよるの雨になみたなそへそ山郭公 むかしおもふ くさのいほりの よるのあめに なみたなそへそ やまほとときす | 皇太后宮大夫俊成 | 三 | 夏 |
202 | 雨そそくはなたち花に風すきて山郭公雲になくなり あめそそく はなたちはなに かせすきて やまほとときす くもになくなり | 読人知らず | 三 | 夏 |
203 | きかてたたねなましものを郭公中々なりやよはの一声 きかてたた ねなましものを ほとときす なかなかなりや よはのひとこゑ | 相模 | 三 | 夏 |
204 | たかさともとひもやくるとほとときす心のかきりまちそわひにし たかさとに とひもやくると ほとときす こころのかきり まちそわひにし | 紫式部 | 三 | 夏 |
205 | よをかさねまちかね山の郭公くもゐのよそに一こゑそきく よをかさね まちかねやまの ほとときす くもゐのよそに ひとこゑそきく | 周防内侍 | 三 | 夏 |
206 | ふた声ときかすはいてしほとときすいくよあかしのとまりなりとも ふたこゑと きかすはいてし ほとときす いくよあかしの とまりなりとも | 按察使公通 | 三 | 夏 |
207 | ほとときすなを一声はおもひいてよおいそのもりのよはのむかしを ほとときす なほひとこゑは おもひいてよ おいそのもりの よはのむかしを | 民部卿範光 | 三 | 夏 |
208 | 一声はおもひそあへぬほとときすたそかれ時の雲のまよひに ひとこゑは おもひそあへぬ ほとときす たそかれときの くものまよひに | 八条院高倉 | 三 | 夏 |
209 | ありあけのつれなくみえし月はいてぬ山ほとときすまつよなからに ありあけの つれなくみえし つきはいてぬ やまほとときす まつよなからに | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
210 | わか心いかにせよとてほとときす雲まの月のかけになくらん わかこころ いかにせよとて ほとときす くもまのつきの かけになくらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 三 | 夏 |
211 | ほとときすなきているさの山の葉は月ゆへよりもうらめしきかな ほとときす なきているさの やまのはは つきゆゑよりも うらめしきかな | 前太政大臣 | 三 | 夏 |
212 | ありあけの月はまたぬにいてぬれとなを山ふかきほとときすかな ありあけの つきはまたぬに いてぬれと なほやまふかき ほとときすかな | 権中納言親宗 | 三 | 夏 |
213 | すきにけりしのたのもりのほとときすたえぬしつくを袖にのこして すきにけり しのたのもりの ほとときす たえぬしつくを そてにのこして | 藤原保季朝臣 | 三 | 夏 |
214 | いかにせんこぬよあまたのほとときすまたしとおもへはむらさめのそら いかにせむ こぬよあまたの ほとときす またしとおもへは むらさめのそら | 藤原家隆朝臣 | 三 | 夏 |
215 | こゑはしてくもちにむせふほとときす涙やそそくよゐのむらさめ こゑはして くもちにむせふ ほとときす なみたやそそく よひのむらさめ | 式子内親王 | 三 | 夏 |
216 | ほとときすなをうとまれぬ心かななかなくさとのよそのゆふくれ ほとときす なほうとまれぬ こころかな なかなくさとの よそのゆふくれ | 権中納言公経 | 三 | 夏 |
217 | きかすともここをせにせんほとときす山田のはらのすきのむらたち きかすとも ここをせにせむ ほとときす やまたのはらの すきのむらたち | 西行法師 | 三 | 夏 |
218 | 郭公ふかきみねよりいてにけりと山のすそに声のおちくる ほとときす ふかきみねより いてにけり とやまのすそに こゑのおちくる | 読人知らず | 三 | 夏 |
219 | をささふくしつのまろやのかりのとをあけかたになく郭公かな をささふく しつのまろやの かりのとを あけかたになく ほとときすかな | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 三 | 夏 |
220 | うちしめりあやめそかほるほとときすなくやさ月の雨のゆふくれ うちしめり あやめそかをる ほとときす なくやさつきの あめのゆふくれ | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
221 | けふは又あやめのねさへかけそへてみたれそまさる袖の白玉 けふはまた あやめのねさへ かけそへて みたれそまさる そてのしらたま | 皇太后宮大夫俊成 | 三 | 夏 |
222 | あかなくにちりにし花のいろいろはのこりにけりな君かたもとに あかなくに ちりにしはなの いろいろは のこりにけりな きみかたもとに | 大納言経信 | 三 | 夏 |
223 | なへてよのうきになかるるあやめくさけふまてかかるねはいかかみる なへてよの うきになかるる あやめくさ けふまてかかる ねはいかかみる | 上東門院小少将 | 三 | 夏 |
224 | なにこととあやめはわかてけふもなをたもとにあまるねこそたえせね なにことと あやめはわかて けふもなほ たもとにあまる ねこそたえせね | 紫式部 | 三 | 夏 |
225 | さなへとる山田のかけひもりにけりひくしめなわにつゆそこほるる さなへとる やまたのかけひ もりにけり ひくしめなはに つゆそこほるる | 大納言経信 | 三 | 夏 |
226 | を山たにひくしめなわのうちはへてくちやしぬらんさみたれの比 をやまたに ひくしめなはの うちはへて くちやしぬらむ さみたれのころ | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
227 | いかはかりたこのもすそもそほつらんくもまも見えぬころのさみたれ いかはかり たこのもすそも そほつらむ くもまもみえぬ ころのさみたれ | 伊勢大輔 | 三 | 夏 |
228 | みしまえのいりえのまこも雨ふれはいととしほれてかる人もなし みしまえの いりえのまこも あめふれは いととしをれて かるひともなし | 大納言経信 | 三 | 夏 |
229 | まこもかるよとのさは水ふかけれとそこまて月のかけはすみけり まこもかる よとのさはみつ ふかけれと そこまてつきの かけはすみけり | 前中納言匡房 | 三 | 夏 |
230 | たまかしはしけりにけりなさみたれに葉もりの神のしめはふるまて たまかしは しけりにけりな さみたれに はもりのかみの しめはふるまて | 藤原基俊 | 三 | 夏 |
231 | さみたれはおふのかはらのまこもくさからてやなみのしたにくちなん さみたれは おふのかはらの まこもくさ からてやなみの したにくちなむ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 三 | 夏 |
232 | たまほこのみちゆき人のことつてもたえてほとふるさみたれの空 たまほこの みちゆくひとの ことつても たえてほとふる さみたれのそら | 藤原定家朝臣 | 三 | 夏 |
233 | さみたれの雲のたえまをなかめつつまとよりにしに月をまつかな さみたれの くものたえまを なかめつつ まとよりにしに つきをまつかな | 荒木田氏良 | 三 | 夏 |
234 | あふちさくそともの木かけつゆをちてさみたれはるる風わたるなり あふちさく そとものこかけ つゆおちて さみたれはるる かせわたるなり | 前大納言忠良 | 三 | 夏 |
235 | さみたれの月はつれなきみ山よりひとりもいつるほとときすかな さみたれの つきはつれなき みやまより ひとりもいつる ほとときすかな | 藤原定家朝臣 | 三 | 夏 |
236 | ほとときす雲井のよそにすきぬなりはれぬおもひのさみたれの比 ほとときす くもゐのよそに すきぬなり はれぬおもひの さみたれのころ | 太上天皇 | 三 | 夏 |
237 | 五月雨の雲まの月のはれゆくをしはしまちけるほとときすかな さみたれの くもまのつきの はれゆくを しはしまちける ほとときすかな | 二条院讃岐 | 三 | 夏 |
238 | たれかまたはなたちはなにおもひいてんわれもむかしの人となりなは たれかまた はなたちはなに おもひいてむ われもむかしの ひととなりなは | 皇太后宮大夫俊成 | 三 | 夏 |
239 | ゆくすゑをたれしのへとてゆふ風にちきりかをかんやとのたち花 ゆくすゑを たれしのへとて ゆふかせに ちきりかおかむ やとのたちはな | 右衛門督通具 | 三 | 夏 |
240 | かへりこぬむかしをいまとおもひねの夢の枕ににほふたちはな かへりこぬ むかしをいまと おもひねの ゆめのまくらに にほふたちはな | 式子内親王 | 三 | 夏 |
241 | たちはなの花ちるのきのしのふ草むかしをかけてつゆそこほるる たちはなの はなちるのきの しのふくさ むかしをかけて つゆそこほるる | 前大納言忠良 | 三 | 夏 |
242 | さ月やみみしかきよはのうたたねにはなたち花の袖にすすしき さつきやみ みしかきよはの うたたねに はなたちはなの そてにすすしき | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
243 | たつぬへき人はのきはのふるさとにそれかとかほるにはのたちはな たつぬへき ひとはのきはの ふるさとに それかとかをる にはのたちはな | 読人知らず | 三 | 夏 |
244 | ほとときすはなたちはなのかをとめてなくはむかしの人やこひしき ほとときす はなたちはなの かをとめて なくはむかしの ひとやこひしき | 読人知らず | 三 | 夏 |
245 | たちはなのにほふあたりのうたたねは夢もむかしの袖のかそする たちはなの にほふあたりの うたたねは ゆめもむかしの そてのかそする | 皇太后宮大夫俊成女 | 三 | 夏 |
246 | ことしより花さきそむるたちはなのいかてむかしの香ににほふらん ことしより はなさきそむる たちはなの いかてむかしの かににほふらむ | 藤原家隆朝臣 | 三 | 夏 |
247 | ゆふくれはいつれの雲のなこりとてはなたち花に風のふくらん ゆふくれは いつれのくもの なこりとて はなたちはなに かせのふくらむ | 藤原定家朝臣 | 三 | 夏 |
248 | ほとときすさ月みな月わきかねてやすらふ声そそらにきこゆる ほとときす さつきみなつき わきかねて やすらふこゑそ そらにきこゆる | 権中納言国信 | 三 | 夏 |
249 | 庭のおもは月もらぬまてなりにけりこすゑに夏のかけしけりつつ にはのおもは つきもらぬまて なりにけり こすゑになつの かけしけりつつ | 白河院御哥 | 三 | 夏 |
250 | わかやとのそともにたてるならの葉のしけみにすすむ夏はきにけり わかやとの そともにたてる ならのはの しけみにすすむ なつはきにけり | 恵慶法師 | 三 | 夏 |
251 | うかひふねあはれとそおもふもののふのやそうちかはのゆふやみのそら うかひふね あはれとそみる もののふの やそうちかはの ゆふやみのそら | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
252 | うかひ舟たかせさしこすほとなれやむすほほれゆくかかりひのかけ うかひふね たかせさしこす ほとなれや むすほほれゆく かかりひのかけ | 寂蓮法師 | 三 | 夏 |
253 | おほ井かはかかりさしゆくうかひ舟いくせに夏のよをあかすらん おほゐかは かかりさしゆく うかひふね いくせになつの よをあかすらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 三 | 夏 |
254 | ひさかたの中なる河のうかひ舟いかにちきりてやみをまつらん ひさかたの なかなるかはの うかひふね いかにちきりて やみをまつらむ | 藤原定家朝臣 | 三 | 夏 |
255 | いさりひのむかしのひかりほのみえてあしやのさとにとふ蛍かな いさりひの むかしのひかり ほのみえて あしやのさとに とふほたるかな | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
256 | まとちかき竹の葉すさふ風のをとにいととみしかきうたたねの夢 まとちかき たけのはすさふ かせのおとに いととみしかき うたたねのゆめ | 式子内親王 | 三 | 夏 |
257 | まとちかきいささむらたけ風ふけは秋におとろく夏のよの夢 まとちかき いささむらたけ かせふけは あきにおとろく なつのよのゆめ | 春宮大夫公継 | 三 | 夏 |
258 | むすふてにかけみたれゆく山の井のあかても月のかたふきにける むすふてに かけみたれゆく やまのゐの あかてもつきの かたふきにける | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
259 | きよみかた月はつれなきあまのとをまたてもしらむ浪のうへかな きよみかた つきはつれなき あまのとを またてもしらむ なみのうへかな | 権大納言通光 | 三 | 夏 |
260 | かさねてもすすしかりけり夏ころもうすきたもとにやとる月かけ かさねても すすしかりけり なつころも うすきたもとに やとるつきかけ | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
261 | すすしさは秋やかへりてはつせかはふるかはのへのすきのしたかけ すすしさは あきやかへりて はつせかは ふるかはのへの すきのしたかけ | 有家朝臣 | 三 | 夏 |
262 | みちのへにしみつなかるるやなきかけしはしとてこそたちとまりつれ みちのへに しみつなかるる やなきかけ しはしとてこそ たちとまりつれ | 西行法師 | 三 | 夏 |
263 | よられつるのもせの草のかけろひてすすしくくもる夕立の空 よられつる のもせのくさの かけろひて すすしくくもる ゆふたちのそら | 読人知らず | 三 | 夏 |
264 | をのつからすすしくもあるか夏衣日もゆふくれの雨のなこりに おのつから すすしくもあるか なつころも ひもゆふくれの あめのなこりに | 藤原清輔朝臣 | 三 | 夏 |
265 | つゆすかる庭のたまささうちなひきひとむらすきぬゆふたちの雲 つゆすかる にはのたまささ うちなひき ひとむらすきぬ ゆふたちのくも | 権中納言公経 | 三 | 夏 |
266 | とをちにはゆふたちすらしひさかたのあまのかく山くもかくれゆく とほちには ゆふたちすらし ひさかたの あまのかくやま くもかくれゆく | 源俊頼朝臣 | 三 | 夏 |
267 | にはのおもはまたかはかぬにゆふたちのそらさりけなくすめる月かな にはのおもは またかわかぬに ゆふたちの そらさりけなく すめるつきかな | 従三位頼政 | 三 | 夏 |
268 | ゆふたちの雲もとまらぬ夏の日のかたふく山にひくらしのこゑ ゆふたちの くももとまらぬ なつのひの かたふくやまに ひくらしのこゑ | 式子内親王 | 三 | 夏 |
269 | ゆふつくひさすやいほりのしはのとにさひしくもあるかひくらしのこゑ ゆふつくひ さすやいほりの しはのとに さひしくもあるか ひくらしのこゑ | 前大納言忠良 | 三 | 夏 |
270 | 秋ちかきけしきのもりになくせみの涙のつゆや下葉そむらん あきちかき けしきのもりに なくせみの なみたのつゆや したはそむらむ | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
271 | なくせみのこゑもすすしきゆふくれに秋をかけたるもりの下露 なくせみの こゑもすすしき ゆふくれに あきをかけたる もりのしたつゆ | 二条院讃岐 | 三 | 夏 |
272 | いつちとかよるは蛍ののほるらんゆくかたしらぬ草の枕に いつちとか よるはほたるの のほるらむ ゆくかたしらぬ くさのまくらに | 壬生忠見 | 三 | 夏 |
273 | ほたるとふ野沢にしけるあしのねのよなよなしたにかよふ秋風 ほたるとふ のさはにしける あしのねの よなよなしたに かよふあきかせ | 久我建通(後京極摂政) | 三 | 夏 |
274 | ひさきおふるかた山かけにしのひつつふきけるものを秋のゆふかせ ひさきおふる かたやまかけに しのひつつ ふきけるものを あきのゆふかせ | 俊恵法師 | 三 | 夏 |
275 | しらつゆのたまもてゆへるませのうちにひかりさへそふとこ夏の花 しらつゆの たまもてゆへる ませのうちに ひかりさへそふ とこなつのはな | 高倉院御哥 | 三 | 夏 |
276 | 白露のなさけをきけることの葉やほのほの見えしゆふかほの花 しらつゆの なさけおきける ことのはや ほのほのみえし ゆふかほのはな | 前太政大臣 | 三 | 夏 |
277 | たそかれののきはのおきにともすれはほにいてぬ秋そしたにこととふ たそかれの のきはのをきに ともすれは ほにいてぬあきそ したにこととふ | 式子内親王 | 三 | 夏 |
278 | 雲まよふゆふへに秋をこめなから風もほにいてぬおきのうへかな くもまよふ ゆふへにあきを こめなから かせもほにいてぬ をきのうへかな | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
279 | 山さとのみねのあまくもとたえしてゆふへすすしきまきのしたつゆ やまさとの みねのあまくも とたえして ゆふへすすしき まきのしたつゆ | 太上天皇 | 三 | 夏 |
280 | いは井くむあたりのをささたまこえてかつかつむすふ秋のゆふつゆ いはゐくむ あたりのをささ たまこえて かつかつむすふ あきのゆふつゆ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 三 | 夏 |
281 | かたえさすおふのうらなしはつ秋になりもならすも風そ身にしむ かたえさす をふのうらなし はつあきに なりもならすも かせそみにしむ | 後鳥羽院宮内卿 | 三 | 夏 |
282 | 夏ころもかたへすすしくなりぬなりよやふけぬらんゆきあひのそら なつころも かたへすすしく なりぬなり よやふけぬらむ ゆきあひのそら | 前大僧正慈円 | 三 | 夏 |
283 | なつはつるあふきと秋のしらつゆといつれかまつはをかんとすらん なつはつる あふきとあきの しらつゆと いつれかまつは おかむとすらむ | 壬生忠峯 | 三 | 夏 |
284 | みそきする河のせみれはからころも日もゆふくれに浪そたちける みそきする かはのせみれは からころも ひもゆふくれに なみそたちける | 紀貫之 | 三 | 夏 |
285 | 神なひのみむろの山のくすかつらうらふきかへす秋はきにけり かみなひの みむろのやまの くすかつら うらふきかへす あきはきにけり | 中納言家持 | 四 | 秋 上 |
286 | いつしかとおきの葉むけのかたよりにそそや秋とそ風もきこゆる いつしかと をきのはむけの かたよりに そらやあきとそ かせもきこゆる | 崇徳院御哥 | 四 | 秋 上 |
287 | このねぬるよのまに秋はきにけらしあさけの風のきのふにもにぬ このねぬる よのまにあきは きにけらし あさけのかせの きのふにもにぬ | 藤原季通朝臣 | 四 | 秋 上 |
288 | いつもきくふもとのさととおもへともきのふにかはる山おろしの風 いつもきく ふもとのさとと おもへとも きのふにかはる やまおろしのかせ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 四 | 秋 上 |
289 | きのふたにとはんとおもひしつのくにのいく田のもりに秋はきにけり きのふたに とはむとおもひし つのくにの いくたのもりに あきはきにけり | 藤原家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
290 | ふく風の色こそ見えねたかさこのおのへの松に秋はきにけり ふくかせの いろこそみえね たかさこの をのへのまつに あきはきにけり | 藤原秀能 | 四 | 秋 上 |
291 | ふしみ山松のかけより見わたせはあくる田のもに秋風そふく ふしみやま まつのかけより みわたせは あくるたのもに あきかせそふく | 皇太后宮大夫俊成 | 四 | 秋 上 |
292 | あけぬるか衣手さむしすかはらやふしみのさとの秋のはつ風 あけぬるか ころもてさむし すかはらや ふしみのさとの あきのはつかせ | 家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
293 | ふかくさのつゆのよすかを契にてさとをはかれす秋はきにけり ふかくさの つゆのよすかを ちきりにて さとをはかれす あきはきにけり | 久我建通(後京極摂政) | 四 | 秋 上 |
294 | あはれまたいかにしのはん袖のつゆ野はらの風に秋はきにけり あはれまた いかにしのはむ そてのつゆ のはらのかせに あきはきにけり | 右衛門督通具 | 四 | 秋 上 |
295 | しきたへの枕のうへにすきぬなりつゆをたつぬる秋のはつ風 しきたへの まくらのうへに すきぬなり つゆをたつぬる あきのはつかせ | 源具親 | 四 | 秋 上 |
296 | みつくきのをかのくす葉もいろつきてけさうらかなし秋のはつ風 みつくきの をかのくすはも いろつきて けさうらかなし あきのはつかせ | 顕昭法師 | 四 | 秋 上 |
297 | 秋はたた心よりをくゆふつゆを袖のほかともおもひけるかな あきはたた こころよりおく ゆふつゆを そてのほかとも おもひけるかな | 嘉陽門院越前 | 四 | 秋 上 |
298 | きのふまてよそにしのひししたおきのすゑ葉のつゆに秋風そ吹 きのふまて よそにしのひし したをきの すゑはのつゆに あきかせそふく | 藤原雅経 | 四 | 秋 上 |
299 | をしなへてものをおもはぬ人にさへ心をつくる秋のはつ風 おしなへて ものをおもはぬ ひとにさへ こころをつくる あきのはつかせ | 西行法師 | 四 | 秋 上 |
300 | あはれいかに草葉のつゆのこほるらん秋風たちぬみやきののはら あはれいかに くさはのつゆの こほるらむ あきかせたちぬ みやきののはら | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
301 | みしふつきうへし山田にひたはへて又袖ぬらす秋はきにけり みしふつき うゑしやまたに ひたはへて またそてぬらす あきはきにけり | 皇太后宮大夫俊成 | 四 | 秋 上 |
302 | あさきりやたつたの山のさとならて秋きにけりとたれかしらまし あさきりや たつたのやまの さとならて あききにけりと たれかしらまし | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 四 | 秋 上 |
303 | ゆふくれはおきふく風のをとまさるいまはたいかにねさめせられん ゆふくれは をきふくかせの おとまさる いまはたいかに ねさめせられむ | 中務卿具平親王 | 四 | 秋 上 |
304 | ゆふされはおきの葉むけをふくかせにことそともなく涙おちけり ゆふくれは をきのはむけを ふくかせに ことそともなく なみたおちけり | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 四 | 秋 上 |
305 | おきの葉も契ありてや秋風のをとつれそむるつまとなりけん をきのはも ちきりありてや あきかせの おとつれそむる つまとなりけむ | 皇太后宮大夫俊成 | 四 | 秋 上 |
306 | 秋きぬと松ふく風もしらせけりかならすおきのうは葉ならねと あききぬと まつふくかせも しらせけり かならすをきの うははならねと | 七条院権大夫 | 四 | 秋 上 |
307 | 日をへつつをとこそまされいつみなるしのたのもりのちえの秋風 ひをへつつ おとこそまされ いつみなる しのたのもりの ちえのあきかせ | 藤原経衡 | 四 | 秋 上 |
308 | うたたねのあさけのそてにかはるなりならすあふきの秋のはつ風 うたたねの あさけのそてに かはるなり ならすあふきの あきのはつかせ | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
309 | てもたゆくならすあふきのをきところわするはかりに秋風そふく てもたゆく ならすあふきの おきところ わするはかりに あきかせそふく | 相模 | 四 | 秋 上 |
310 | 秋風はふきむすへともしらつゆのみたれてをかぬ草の葉そなき あきかせは ふきむすへとも しらつゆの みたれておかぬ くさのはそなき | 大弐三位 | 四 | 秋 上 |
311 | あさほらけおきのうは葉のつゆみれはややはたさむし秋のはつ風 あさほらけ をきのうははの つゆみれは ややはたさむし あきのはつかせ | 曽祢好忠 | 四 | 秋 上 |
312 | ふきむすふ風はむかしの秋なからありしにもにぬ袖のつゆかな ふきむすふ かせはむかしの あきなから ありしにもにぬ そてのつゆかな | 小野小町 | 四 | 秋 上 |
313 | おほそらをわれもなかめてひこほしのつままつよさへひとりかもねん おほそらを われもなかめて ひこほしの つままつよさへ ひとりかもねむ | 紀貫之 | 四 | 秋 上 |
314 | このゆふへふりつる雨はひこほしのとわたるふねのかいのしつくか このゆふへ ふりつるあめは ひこほしの とわたるふねの かいのしつくか | 赤人 | 四 | 秋 上 |
315 | としをへてすむへきやとのいけみつはほしあひのかけもおもなれやせん としをへて すむへきやとの いけみつは ほしあひのかけも おもなれやせむ | 権大納言長家 | 四 | 秋 上 |
316 | 袖ひちてわかてにむすふ水のおもにあまつほしあひのそらをみるかな そてひちて わかてにむすふ みつのおもに あまつほしあひの そらをみるかな | 藤原長能 | 四 | 秋 上 |
317 | 雲間よりほしあひのそらを見わたせはしつ心なきあまの河なみ くもまより ほしあひのそらを みわたせは しつこころなき あまのかはなみ | 祭主輔親 | 四 | 秋 上 |
318 | たなはたのあまのは衣うちかさねぬるよすすしき秋風そふく たなはたの あまのはころも うちかさね ぬるよすすしき あきかせそふく | 大宰大弐高遠 | 四 | 秋 上 |
319 | たなはたの衣のつまは心してふきなかへしそ秋のはつ風 たなはたの ころものつまは こころして ふきなかへしそ あきのはつかせ | 小弁 | 四 | 秋 上 |
320 | たなはたのとわたる舟のかちの葉にいく秋かきつ露の玉つさ たなはたの とわたるふねの かちのはに いくあきかきつ つゆのたまつさ | 皇太后宮大夫俊成 | 四 | 秋 上 |
321 | なかむれは衣手すすしひさかたのあまのかはらの秋のゆふくれ なかむれは ころもてすすし ひさかたの あまのかはらの あきのゆふくれ | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
322 | いかはかり身にしみぬらんたなはたのつままつよゐのあまの河風 いかはかり みにしみぬらむ たなはたの つままつよひの あまのかはかせ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 四 | 秋 上 |
323 | ほしあひのゆふへすすしきあまのかはもみちのはしをわたる秋風 ほしあひの ゆふへすすしき あまのかは もみちのはしを わたるあきかせ | 権中納言公経 | 四 | 秋 上 |
324 | たなはたのあふせたえせぬあまのかはいかなる秋かわたりそめけん たなはたの あふせたえせぬ あまのかは いかなるあきか わたりそめけむ | 待賢門院堀河 | 四 | 秋 上 |
325 | わくらはにあまの河なみよるなからあくるそらにはまかせすもかな わくらはに あまのかはなみ よるなから あくるそらには まかせすもかな | 女御徽子女王 | 四 | 秋 上 |
326 | いととしく思ひけぬへしたなはたのわかれの袖にをけるしらつゆ いととしく おもひけぬへし たなはたの わかれのそてに おけるしらつゆ | 大中臣能宣朝臣 | 四 | 秋 上 |
327 | たなはたはいまやわかるるあまのかは河きりたちてちとりなくなり たなはたは いまやわかるる あまのかは かはきりたちて ちとりなくなり | 紀貫之 | 四 | 秋 上 |
328 | 河水に鹿のしからみかけてけりうきてなかれぬ秋はきの花 かはみつに しかのしからみ かけてけり うきてなかれぬ あきはきのはな | 前中納言匡房 | 四 | 秋 上 |
329 | かり衣われとはすらしつゆふかき野はらのはきの花にまかせて かりころも われとはすらし つゆしけき のはらのはきの はなにまかせて | 従三位頼政 | 四 | 秋 上 |
330 | 秋はきをおらてはすきしつき草の花すり衣つゆにぬるとも あきはきを をらてはすきし つきくさの はなすりころも つゆにぬるとも | 権僧正永縁 | 四 | 秋 上 |
331 | はきか花ま袖にかけてたかまとのおのへの宮にひれふるやたれ はきかはな まそてにかけて たかまとの をのへのみやに ひれふるやたれ | 顕昭法師 | 四 | 秋 上 |
332 | をくつゆもしつ心なく秋風にみたれてさけるまののはきはら おくつゆも しつこころなく あきかせに みたれてさける まののはきはら | 祐子内親王家紀伊 | 四 | 秋 上 |
333 | 秋はきのさきちる野辺のゆふつゆにぬれつつきませよはふけぬとも あきはきの さきちるのへの ゆふつゆに ぬれつつきませ よはふけぬとも | 柿本人麻呂(人麿) | 四 | 秋 上 |
334 | さをしかのあさたつ野辺の秋はきにたまとみるまてをけるしらつゆ さをしかの あさたつのへの あきはきに たまとみるまて おけるしらつゆ | 中納言家持 | 四 | 秋 上 |
335 | 秋の野をわけゆくつゆにうつりつつわか衣手は花のかそする あきののを わけゆくつゆに うつりつつ わかころもては はなのかそする | 凡河内躬恒 | 四 | 秋 上 |
336 | たれをかもまつちの山のをみなへし秋とちきれる人そあるらし たれをかも まつちのやまの をみなへし あきとちきれる ひとそあるらし | 小野小町 | 四 | 秋 上 |
337 | をみなへし野辺のふるさとおもひいててやとりし虫の声やこひしき をみなへし のへのふるさと おもひいてて やとりしむしの こゑやこひしき | 藤原元真 | 四 | 秋 上 |
338 | ゆふされは玉ちるのへのをみなへしまくらさためぬ秋風そふく ゆふされは たまちるのへの をみなへし まくらさためぬ あきかせそふく | 左近中将良平 | 四 | 秋 上 |
339 | ふちはかまぬしはたれともしらつゆのこほれてにほふ野辺の秋風 ふちはかま ぬしはたれとも しらつゆの こほれてにほふ のへのあきかせ | 公猷法師 | 四 | 秋 上 |
340 | うすきりのまかきの花のあさしめり秋はゆふへとたれかいひけん うすきりの まかきのはなの あさしめり あきはゆふへと たれかいひけむ | 清輔朝臣 | 四 | 秋 上 |
341 | いとかくや袖はしほれし野辺にいててむかしも秋の花はみしかと いとかくや そてはしをれし のへにいてて むかしもあきの はなはみしかと | 皇太后宮大夫俊成 | 四 | 秋 上 |
342 | 花見にと人やりならぬのへにきて心のかきりつくしつるかな はなみにと ひとやりならぬ のへにきて こころのかきり つくしつるかな | 大納言経信 | 四 | 秋 上 |
343 | をきて見んとおもひしほとにかれにけりつゆよりけなるあさかほの花 おきてみむと おもひしほとに かれにけり つゆよりけなる あさかほのはな | 曽祢好忠 | 四 | 秋 上 |
344 | 山かつのかきほにさけるあさかほはしののめならてあふよしもなし やまかつの かきほにさける あさかほは しののめならて あふよしもなし | 紀貫之 | 四 | 秋 上 |
345 | うらかるるあさちかはらのかるかやのみたれてものをおもふころかな うらかるる あさちかはらの かるかやの みたれてものを おもふころかな | 坂上是則 | 四 | 秋 上 |
346 | さをしかのいるののすすきはつお花いつしかいもかたまくらにせん さをしかの いるののすすき はつをはな いつしかいもか たまくらにせむ | 柿本人麻呂(人麿) | 四 | 秋 上 |
347 | をくら山ふもとののへの花すすきほのかに見ゆる秋の夕くれ をくらやま ふもとののへの はなすすき ほのかにみゆる あきのゆふくれ | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
348 | ほのかにも風はふかなん花すすきむすほほれつつつゆにぬるとも ほのかにも かせはふかなむ はなすすき むすほほれつつ つゆにぬるとも | 女御徽子女王 | 四 | 秋 上 |
349 | 花すすき又つゆふかしほにいててなかめしとおもふ秋のさかりを はなすすき またつゆふかし ほにいてては なかめしとおもふ あきのさかりを | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
350 | 野辺ことにをとつれわたるあき風をあたにもなひく花すすき哉 のへことに おとつれわたる あきかせを あたにもなひく はなすすきかな | 八条院六条 | 四 | 秋 上 |
351 | あけぬとて野辺より山にいる鹿のあとふきをくる萩の下風 あけぬとて のへよりやまに いるしかの あとふきおくる はきのしたかせ | 左衛門督通光 | 四 | 秋 上 |
352 | 身にとまるおもひをおきのうははにてこの比かなし夕くれの空 みにとまる おもひををきの うははにて このころかなし ゆふくれのそら | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
353 | 身のほとをおもひつつくるゆふくれのおきのうははに風わたるなり みのほとを おもひつつくる ゆふくれの をきのうははに かせわたるなり | 大蔵卿行宗 | 四 | 秋 上 |
354 | 秋はたたものをこそおもへつゆかかるおきのうへふく風につけても あきはたた ものをこそおもへ つゆかかる をきのうへふく かせにつけても | 源重之女 | 四 | 秋 上 |
355 | 秋風のややはたさむくふくなへにおきのうは葉のをとそかなしき あきかせの ややはたさむく ふくなへに をきのうははの おとそかなしき | 藤原基俊 | 四 | 秋 上 |
356 | おきの葉にふけはあらしの秋なるをまちけるよはのさを鹿の声 をきのはに ふけはあらしの あきなるを まちけるよはの さをしかのこゑ | 久我建通(後京極摂政) | 四 | 秋 上 |
357 | をしなへておもひしことのかすかすになを色まさる秋のゆふくれ おしなへて おもひしことの かすかすに なほいろまさる あきのゆふくれ | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
358 | くれかかるむなしきそらの秋をみておほえすたまる袖のつゆかな くれかかる むなしきそらの あきをみて おほえすたまる そてのつゆかな | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
359 | ものおもはてかかるつゆやは袖にをくなかめてけりな秋のゆふくれ ものおもはて かかるつゆやは そてにおく なかめてけりな あきのゆふくれ | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
360 | み山ちやいつより秋の色ならん見さりし雲のゆふくれのそら みやまちや いつよりあきの いろならむ みさりしくもの ゆふくれのそら | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
361 | さひしさはその色としもなかりけりま木たつ山の秋のゆふくれ さひしさは そのいろとしも なかりけり まきたつやまの あきのゆふくれ | 寂蓮法師 | 四 | 秋 上 |
362 | こころなき身にも哀はしられけりしきたつさはの秋のゆふくれ こころなき みにもあはれは しられけり しきたつさはの あきのゆふくれ | 西行法師 | 四 | 秋 上 |
363 | 見わたせは花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋のゆふくれ みわたせは はなももみちも なかりけり うらのとまやの あきのゆふくれ | 藤原定家朝臣 | 四 | 秋 上 |
364 | たへてやはおもひありともいかかせんむくらのやとの秋のゆふくれ たへてやは おもひありとも いかかせむ むくらのやとの あきのゆふくれ | 藤原雅経 | 四 | 秋 上 |
365 | おもふことさしてそれとはなきものを秋のゆふへを心にそとふ おもふこと さしてそれとは なきものを あきのゆふへを こころにそとふ | 後鳥羽院宮内卿 | 四 | 秋 上 |
366 | 秋風のいたりいたらぬ袖はあらしたたわれからのつゆのゆふくれ あきかせの いたりいたらぬ そてはあらし たたわれからの つゆのゆふくれ | 鴨長明 | 四 | 秋 上 |
367 | おほつかな秋はいかなるゆへのあれはすすろにもののかなしかるらん おほつかな あきはいかなる ゆゑのあれは すすろにものの かなしかるらむ | 西行法師 | 四 | 秋 上 |
368 | それなからむかしにもあらぬ秋風にいととなかめをしつのをたまき それなから むかしにもあらぬ あきかせに いととなかめを しつのをたまき | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
369 | ひくらしのなくゆふくれそうかりけるいつもつきせぬ思なれとも ひくらしの なくゆふくれそ うかりける いつもつきせぬ おもひなれとも | 藤原長能 | 四 | 秋 上 |
370 | 秋くれはときはの山の松風もうつるはかりに身にそしみける あきくれは ときはのやまの まつかせも うつるはかりに みにそしみける | 和泉式部 | 四 | 秋 上 |
371 | 秋風のよそにふきくるをとは山なにの草木かのとけかるへき あきかせの よもにふきくる おとはやま なにのくさきか のとけかるへき | 曽祢好忠 | 四 | 秋 上 |
372 | 暁のつゆはなみたもととまらてうらむる風の声そのこれる あかつきの つゆはなみたも ととまらて うらむるかせの こゑそのこれる | 相模 | 四 | 秋 上 |
373 | たかまとののちのしのはらすゑさはきそそやこからしけふふきぬなり たかまとの のちのしのはら すゑさわき そそやこからし けふふきぬなり | 藤原基俊 | 四 | 秋 上 |
374 | ふかくさのさとの月かけさひしさもすみこしままののへの秋風 ふかくさの さとのつきかけ さひしさも すみこしままの のへのあきかせ | 右衛門督通具 | 四 | 秋 上 |
375 | おほあらきのもりの木のまをもりかねて人たのめなる秋のよの月 おほあらきの もりのこのまを もりかねて ひとたのめなる あきのよのつき | 皇太后宮大夫俊成女 | 四 | 秋 上 |
376 | ありあけの月まつやとは(は=の)袖のうへに人たのめなるよゐのいなつま ありあけの つきまつやとの そてのうへに ひとたのめなる よひのいなつま | 藤原家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
377 | 風わたるあさちかすゑのつゆにたにやとりもはてぬよゐのいなつま かせわたる あさちかすゑの つゆにたに やとりもはてぬ よひのいなつま | 藤原有家朝臣 | 四 | 秋 上 |
378 | むさし野やゆけとも秋のはてそなきいかなる風かすゑにふくらん むさしのや ゆけともあきの はてそなき いかなるかせか すゑにふくらむ | 左衛門督通光 | 四 | 秋 上 |
379 | いつまてかなみたくもらて月は見し秋まちえても秋そこひしき いつまてか なみたくもらて つきはみし あきまちえても あきそこひしき | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
380 | なかめわひぬ秋よりほかのやともかな野にも山にも月やすむらん なかめわひぬ あきよりほかの やともかな のにもやまにも つきやすむらむ | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
381 | 月かけのはつ秋風とふけゆけは心つくしにものをこそおもへ つきかけの はつあきかせと ふけゆけは こころつくしに ものをこそおもへ | 円融院御哥 | 四 | 秋 上 |
382 | あしひきの山のあなたにすむ人はまたてや秋の月をみるらん あしひきの やまのあなたに すむひとは またてやあきの つきをみるらむ | 三条院御哥 | 四 | 秋 上 |
383 | しきしまやたかまと山のくもまより光さしそふゆみはりの月 しきしまや たかまとやまの くもまより ひかりさしそふ ゆみはりのつき | 堀河院御哥 | 四 | 秋 上 |
384 | 人よりも心のかきりなかめつる月はたれともわかしものゆへ ひとよりも こころのかきり なかめつる つきはたれとも わかしものゆゑ | 藤原頼宗(堀河右大臣) | 四 | 秋 上 |
385 | あやなくもくもらぬよゐをいとふかなしのふのさとの秋のよの月 あやなくも くもらぬよひを いとふかな しのふのさとの あきのよのつき | 橘為仲朝臣 | 四 | 秋 上 |
386 | 風ふけはたまちるはきのしたつゆにはかなくやとる野辺の月かな かせふけは たまちるはきの したつゆに はかなくやとる のへのつきかな | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 四 | 秋 上 |
387 | こよひたれすすふく風を身にしめてよしののたけの月をみるらん こよひたれ すすふくかせを みにしめて よしののたけに つきをみるらむ | 従三位頼政 | 四 | 秋 上 |
388 | 月みれはおもひそあへぬ山たかみいつれのとしの雪にかあるらん つきみれは おもひそあへぬ やまたかみ いつれのとしの ゆきにかあるらむ | 大宰大弐重家 | 四 | 秋 上 |
389 | にほのうみや月の光のうつろへはなみの花にも秋はみえけり にほのうみや つきのひかりの うつろへは なみのはなにも あきはみえけり | 藤原家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
390 | ふけゆかはけふりもあらししほかまのうらみなはてそ秋のよの月 ふけゆかは けふりもあらし しほかまの うらみなはてそ あきのよのつき | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
391 | ことはりの秋にはあへぬなみたかな月のかつらもかはるひかりに ことわりの あきにはあへぬ なみたかな つきのかつらも かはるひかりに | 皇太后宮大夫俊成女 | 四 | 秋 上 |
392 | なかめつつおもふもさひしひさかたの月のみやこのあけかたのそら なかめつつ おもふもさひし ひさかたの つきのみやこの あけかたのそら | 家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
393 | ふるさとのもとあらのこはきさきしより夜な夜な庭の月そうつろふ ふるさとの もとあらのこはき さきしより よなよなにはの つきそうつろふ | 久我建通(後京極摂政) | 四 | 秋 上 |
394 | 時しもあれふるさと人はをともせてみやまの月に秋風そふく ときしもあれ ふるさとひとは おともせて みやまのつきに あきかせそふく | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
395 | ふかからぬとやまのいほのねさめたにさそな木のまの月はさひしき ふかからぬ とやまのいほの ねさめたに さそなこのまの つきはさひしき | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
396 | 月はなをもらぬこのまもすみよしの松をつくして秋風そふく つきはなほ もらぬこのまも すみよしの まつをつくして あきかせそふく | 寂蓮法師 | 四 | 秋 上 |
397 | なかむれはちちにものおもふ月に又わか身ひとつの峯の松風 なかむれは ちちにものおもふ つきにまた わかみひとつの みねのまつかせ | 鴨長明 | 四 | 秋 上 |
398 | あしひきの山ちのこけのつゆのうへにねさめ夜ふかき月をみるかな あしひきの やまちのこけの つゆのうへに ねさめよふかき つきをみるかな | 藤原秀能 | 四 | 秋 上 |
399 | 心あるをしまのあまのたもとかな月やとれとはぬれぬものから こころある をしまのあまの たもとかな つきやとれとは ぬれぬものから | 後鳥羽院宮内卿 | 四 | 秋 上 |
400 | わすれしななにはの秋のよはのそらことうらにすむ月はみるとも わすれしな なにはのあきの よはのそら ことうらにすむ つきはみるとも | 宜秋門院丹後 | 四 | 秋 上 |
401 | 松しまやしほくむあまの秋のそて月はものおもふならひのみかは まつしまや しほくむあまの あきのそて つきはものおもふ ならひのみかは | 鴨長明 | 四 | 秋 上 |
402 | こととはんのしまかさきのあま衣なみと月とにいかかしほるる こととはむ のしまかさきの あまころも なみとつきとに いかかしをるる | 七条院大納言 | 四 | 秋 上 |
403 | 秋のよの月やをしまのあまのはらあけかたちかきおきのつり舟 あきのよの つきやをしまの あまのはら あけかたちかき おきのつりふね | 藤原家隆朝臣 | 四 | 秋 上 |
404 | うき身にはなかむるかひもなかりけり心にくもる秋のよの月 うきみには なかむるかひも なかりけり こころにくもる あきのよのつき | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
405 | いつくにかこよひの月のくもるへきをくらの山もなをやかふらん いつくにか こよひのつきの くもるへき をくらのやまも なをやかふらむ | 大江千里 | 四 | 秋 上 |
406 | こころこそあくかれにけれ秋のよの夜ふかき月をひとりみしより こころこそ あくかれにけれ あきのよの よふかきつきを ひとりみしより | 源道済 | 四 | 秋 上 |
407 | かはらしなしるもしらぬも秋のよの月まつほとの心はかりは かはらしな しるもしらぬも あきのよの つきまつほとの こころはかりは | 上東門院小少将 | 四 | 秋 上 |
408 | たのめたる人はなけれと秋のよは月見てぬへき心ちこそせね たのめたる ひとはなけれと あきのよは つきみてぬへき ここちこそせね | 和泉式部 | 四 | 秋 上 |
409 | 見る人の袖をそしほる秋の夜は月にいかなるかけかそふらん みるひとの そてをそしほる あきのよは つきにいかなる かけかそふらむ | 藤原範永朝臣 | 四 | 秋 上 |
410 | 身にそへるかけとこそみれ秋の月袖にうつらぬおりしなけれは みにそへる かけとこそみれ あきのつき そてにうつらぬ をりしなけれは | 相模 | 四 | 秋 上 |
411 | 月かけのすみわたるかなあまのはら雲ふきはらふよはのあらしに つきかけの すみわたるかな あまのはら くもふきはらふ よはのあらしに | 大納言経信 | 四 | 秋 上 |
412 | たつた山よはにあらしの松ふけは雲にはうときみねの月かけ たつたやま よはにあらしの まつふけは くもにはうとき みねのつきかけ | 左衛門督通光 | 四 | 秋 上 |
413 | 秋風にたなひく雲のたえまよりもれいつる月のかけのさやけさ あきかせに たなひくくもの たえまより もれいつるつきの かけのさやけさ | 左京大夫顕輔 | 四 | 秋 上 |
414 | 山の葉に雲のよこきるよゐのまはいてても月そなをまたれける やまのはに くものよこきる よひのまは いててもつきそ なほまたれける | 道因法師 | 四 | 秋 上 |
415 | なかめつつおもふにぬるるたもとかないくよかはみん秋のよの月 なかめつつ おもふもぬるる たもとかな いくよかはみむ あきのよのつき | 殷富門院大輔 | 四 | 秋 上 |
416 | よゐのまにさてもねぬへき月ならは山の葉ちかきものはおもはし よひのまに さてもねぬへき つきならは やまのはちかき ものはおもはし | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
417 | ふくるまてなかむれはこそかなしけれおもひもいれし秋のよの月 ふくるまて なかむれはこそ かなしけれ おもひもいれし あきのよのつき | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
418 | 雲はみなはらひはてたる秋風を松にのこして月をみるかな くもはみな はらひはてたる あきかせを まつにのこして つきをみるかな | 久我建通(後京極摂政) | 四 | 秋 上 |
419 | 月たにもなくさめかたき秋のよの心もしらぬ松の風かな つきたにも なくさめかたき あきのよの こころもしらぬ まつのかせかな | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
420 | さむしろやまつよの秋の風ふけて月をかたしくうちのはしひめ さむしろや まつよのあきの かせふけて つきをかたしく うちのはしひめ | 定家朝臣 | 四 | 秋 上 |
421 | 秋のよのなかきかひこそなかりけれまつにふけぬるありあけの月 あきのよの なかきかひこそ なかりけれ まつにふけぬる ありあけのつき | 右大将忠経 | 四 | 秋 上 |
422 | ゆくすゑはそらもひとつのむさし野にくさのはらよりいつる月かけ ゆくすゑは そらもひとつの むさしのに くさのはらより いつるつきかけ | 久我建通(後京極摂政) | 四 | 秋 上 |
423 | 月をなをまつらんものかむらさめのはれゆく雲のすゑのさと人 つきをなほ まつらむものか むらさめの はれゆくくもの すゑのさとひと | 後鳥羽院宮内卿 | 四 | 秋 上 |
424 | 秋のよはやとかる月もつゆなから袖にふきこすおきのうは風 あきのよは やとかるつきも つゆなから そてにふきこす をきのうはかせ | 右衛門督通具 | 四 | 秋 上 |
425 | 秋の月しのにやとかるかけたけてをささかはらにつゆふけにけり あきのつき しのにやとかる かけたけて をささかはらに つゆふけにけり | 源家長 | 四 | 秋 上 |
426 | 風わたる山田のいほをもる月やほなみにむすふこほりなるらん かせわたる やまたのいほを もるつきや ほなみにむすふ こほりなるらむ | 前太政大臣 | 四 | 秋 上 |
427 | かりのくるふしみのをたに夢さめてねぬよのいほに月をみるかな かりのくる ふしみのをたに ゆめさめて ねぬよのいほに つきをみるかな | 前大僧正慈円 | 四 | 秋 上 |
428 | いな葉ふく風にまかせてすむいほは月そまことにもりあかしける いなはふく かせにまかせて すむいほは つきそまことに もりあかしける | 皇太后宮大夫俊成女 | 四 | 秋 上 |
429 | あくかれてねぬよのちりのつもるまて月にはらはぬとこのさむしろ あくかれて ねぬよのちりの つもるまて つきにはらはぬ とこのさむしろ | 読人知らず | 四 | 秋 上 |
430 | 秋の田のかりねのとこのいなむしろ月やとれともしけるつゆかな あきのたの かりねのとこの いなむしろ つきやとれとも しけるつゆかな | 大中臣定雅 | 四 | 秋 上 |
431 | あきの田にいほさすしつのとまをあらみ月とともにやもりあかすらん あきのたに いほさすしつの とまをあらみ つきとともにや もりあかすらむ | 左京大夫顕輔 | 四 | 秋 上 |
432 | 秋の色はまかきにうとくなりゆけとたまくらなるるねやの月かけ あきのいろは まかきにうとく なりゆけと たまくらなるる ねやのつきかけ | 式子内親王 | 四 | 秋 上 |
433 | あきのつゆやたもとにいたくむすふらんなかきよあかすやとる月かな あきのつゆや たもとにいたく むすふらむ なかきよあかす やとるつきかな | 太上天皇 | 四 | 秋 上 |
434 | さらにまたくれをたのめとあけにけり月はつれなき秋のよの空 さらにまた くれをたのめと あけにけり つきはつれなき あきのよのそら | 左衛門督通光 | 四 | 秋 上 |
435 | おほかたに秋のねさめのつゆけくはまたたか袖にありあけの月 おほかたに あきのねさめの つゆけくは またたかそてに ありあけのつき | 二条院讃岐 | 四 | 秋 上 |
436 | はらひかねさこそはつゆのしけからめやとるか月の袖のせはきに はらひかね さこそはつゆの しけからめ やとるかつきの そてのせはきに | 藤原雅経 | 四 | 秋 上 |
437 | したもみちかつちる山のゆふしくれぬれてやひとり鹿のなくらん したもみち かつちるやまの ゆふしくれ ぬれてやひとり しかのなくらむ | 藤原家隆朝臣 | 五 | 秋 下 |
438 | 山おろしに鹿のねたかくきこゆなりおのへの月にさよやふけぬる やまおろしに しかのねたかく きこゆなり をのへのつきに さよやふけぬる | 三条実房(入道左大臣) | 五 | 秋 下 |
439 | 野わきせしをののくさふしあれはててみ山にふかきさをしかの声 のわきせし をののくさふし あれはてて みやまにふかき さをしかのこゑ | 寂蓮法師 | 五 | 秋 下 |
440 | あらしふくまくすかはらになくしかはうらみてのみやつまをこふらん あらしふく まくすかはらに なくしかは うらみてのみや つまをこふらむ | 俊恵法師 | 五 | 秋 下 |
441 | つまこふる鹿のたちとをたつぬれはさ山かすそに秋風そふく つまこふる しかのたちとを たつぬれは さやまかすそに あきかせそふく | 前中納言匡房 | 五 | 秋 下 |
442 | み山への松のこすゑをわたるなりあらしにやとすさをしかの声 みやまへの まつのこすゑを わたるなり あらしにやとす さをしかのこゑ | 惟明親王 | 五 | 秋 下 |
443 | われならぬ人もあはれやまさるらん鹿なく山の秋の夕くれ われならぬ ひともあはれや まさるらむ しかなくやまの あきのゆふくれ | 源師房 | 五 | 秋 下 |
444 | たくへくる松のあらしやたゆむらんおのへにかへるさを鹿のこゑ たくへくる まつのあらしや たゆむらむ をのへにかへる さをしかのこゑ | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
445 | なくしかのこゑにめさめてしのふかな見はてぬ夢の秋の思を なくしかの こゑにめさめて しのふかな みはてぬゆめの あきのおもひを | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
446 | よもすからつまとふ鹿のなくなへにこはきかはらのつゆそこほるる よもすから つまとふしかの なくなへに こはきかはらの つゆそこほるる | 権中納言俊忠 | 五 | 秋 下 |
447 | ねさめしてひさしくなりぬ秋の夜はあけやしぬらん鹿そなくなる ねさめして ひさしくなりぬ あきのよは あけやしぬらむ しかそなくなる | 源道済 | 五 | 秋 下 |
448 | を山たのいほちかくなくしかのねにおとろかされておとろかすかな をやまたの いほちかくなく しかのねに おとろかされて おとろかすかな | 西行法師 | 五 | 秋 下 |
449 | 山さとのいな葉の風にねさめしてよふかく鹿のこゑをきくかな やまさとの いなはのかせに ねさめして よふかくしかの こゑをきくかな | 中宮大夫師忠 | 五 | 秋 下 |
450 | ひとりねやいととさひしきさをしかのあさふすをののくすのうら風 ひとりねや いととさひしき さをしかの あさふすをのの くすのうらかせ | 藤原顕綱朝臣 | 五 | 秋 下 |
451 | たつた山こすゑまはらになるままにふかくもしかのそよくなるかな たつたやま こすゑまはらに なるままに ふかくもしかの そよくなるかな | 俊恵法師 | 五 | 秋 下 |
452 | すきてゆく秋のかたみにさをしかのをのかなくねもおしくやあるらん すきてゆく あきのかたみに さをしかの おのかなくねも をしくやあるらむ | 権大納言長家 | 五 | 秋 下 |
453 | わきてなといほもる袖のしほるらんいな葉にかきる秋の風かは わきてなと いほもるそての しをるらむ いなはにかきる あきのかせかは | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
454 | 秋田もるかりいほつくりわかをれは衣手さむしつゆそをきける あきたもる かりいほつくり わかをれは ころもてさむし つゆそおきける | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
455 | 秋くれはあさけの風の手をさむみ山田のひたをまかせてそきく あきくれは あさけのかせの てをさむみ やまたのひたを まかせてそきく | 前中納言匡房 | 五 | 秋 下 |
456 | ほとときすなくさみたれにうへし田をかりかねさむみ秋そくれぬる ほとときす なくさみたれに うゑしたを かりかねさむみ あきそくれぬる | 善滋為政朝臣 | 五 | 秋 下 |
457 | いまよりは秋風さむくなりぬへしいかてかひとりなかきよをねん いまよりは あきかせさむく なりぬへし いかてかひとり なかきよをねむ | 中納言家持 | 五 | 秋 下 |
458 | 秋されは雁のは風にしもふりてさむきよなよなしくれさへふる あきされは かりのはかせに しもふりて さむきよなよな しくれさへふる | 柿本人麻呂(人麿) | 五 | 秋 下 |
459 | さをしかのつまとふ山のをかへなるわさ田はからししもはをくとも さをしかの つまとふやまの をかへなる わさたはからし しもはおくとも | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
460 | かりてほす山田のいねは袖ひちてうへしさなへとみえすもあるかな かりてほす やまたのいねは そてひちて うゑしさなへと みえすもあるかな | 紀貫之 | 五 | 秋 下 |
461 | 草葉にはたまとみえつつわひ人の袖の涙の秋のしらつゆ くさはには たまとみえつつ わひひとの そてのなみたの あきのしらつゆ | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
462 | わかやとのおはなかすゑにしらつゆのをきし日よりそ秋風もふく わかやとの をはなかすゑに しらつゆの おきしひよりそ あきかせもふく | 中納言家持 | 五 | 秋 下 |
463 | 秋といへは契をきてやむすふらんあさちかはらのけさのしらつゆ あきといへは ちきりおきてや むすふらむ あさちかはらの けさのしらつゆ | 恵慶法師 | 五 | 秋 下 |
464 | 秋されはをくしらつゆにわかやとのあさちかうは葉色つきにけり あきされは おくしらつゆに わかやとの あさちかうはは いろつきにけり | 柿本人麻呂(人麿) | 五 | 秋 下 |
465 | おほつかな野にも山にもしらつゆのなにことをかはおもひをくらん おほつかな のにもやまにも しらつゆの なにことをかは おもひおくらむ | 天暦御哥 | 五 | 秋 下 |
466 | つゆしけみ野辺をわけつつから衣ぬれてそかへる花のしつくに つゆしけみ のへをわけつつ からころも ぬれてそかへる はなのしつくに | 藤原頼宗(堀河右大臣) | 五 | 秋 下 |
467 | 庭のおもにしけるよもきにことよせて心のままにをけるつゆかな にはのおもに しけるよもきに ことよせて こころのままに おけるつゆかな | 基俊 | 五 | 秋 下 |
468 | 秋の野のくさ葉をしなみをくつゆにぬれてや人のたつねゆくらん あきののの くさはおしなひ おくつゆに ぬれてやひとの たつねゆくらむ | 藤原長実 | 五 | 秋 下 |
469 | ものおもふ袖よりつゆやならひけん秋風ふけはたへぬ物とは ものおもふ そてよりつゆや ならひけむ あきかせふけは たへぬものとは | 寂蓮法師 | 五 | 秋 下 |
470 | つゆは袖にものおもふころはさそなをくかならす秋のならひならねと つゆはそてに ものおもふころは さそなおく かならすあきの ならひならねと | 太上天皇 | 五 | 秋 下 |
471 | 野はらよりつゆのゆかりをたつねきてわか衣手に秋風そふく のはらより つゆのゆかりを たつねきて わかころもてに あきかせそふく | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
472 | きりきりすよさむに秋のなるままによはるか声のとをさかりゆく きりきりす よさむにあきの なるままに よわるかこゑの とほさかりゆく | 西行法師 | 五 | 秋 下 |
473 | むしのねもなかきよあかぬふるさとになをおもひそふ松風そふく むしのねも なかきよあかぬ ふるさとに なほおもひそふ まつかせそふく | 家隆朝臣 | 五 | 秋 下 |
474 | あともなき庭のあさちにむすほほれつゆのそこなる松むしのこゑ あともなき にはのあさちに むすほほれ つゆのそこなる まつむしのこゑ | 式子内親王 | 五 | 秋 下 |
475 | 秋風は身にしむはかりふきにけりいまやうつらんいもかさ衣 あきかせは みにしむはかり ふきにけり いまやうつらむ いもかさころも | 藤原輔尹朝臣 | 五 | 秋 下 |
476 | 衣うつをとはまくらにすかはらやふしみの夢をいくよのこしつ ころもうつ おとはまくらに すかはらや ふしみのゆめを いくよのこしつ | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
477 | ころもうつね山のいほのしはしはもしらぬ夢ちにむすふたまくら ころもうつ ねやまのいほの しはしはも しらぬゆめちに むすふたまくら | 権中納言公経 | 五 | 秋 下 |
478 | さとはあれて月やあらぬとうらみてもたれあさちふに衣うつらん さとはあれて つきやあらぬと うらみても たれあさちふに ころもうつらむ | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
479 | まとろまてなかめよとてのすさひかなあさのさ衣月にうつこゑ まとろまて なかめよとての すさひかな あさのさころも つきにうつこゑ | 後鳥羽院宮内卿 | 五 | 秋 下 |
480 | 秋とたにわすれんとおもふ月かけをさもあやにくにうつ衣かな あきとたに わすれむとおもふ つきかけを さもあやにくに うつころもかな | 定家朝臣 | 五 | 秋 下 |
481 | ふるさとに衣うつとはゆくかりやたひのそらにもなきてつくらん ふるさとに ころもうつとは ゆくかりや たひのそらにも なきてつくらむ | 大納言経信 | 五 | 秋 下 |
482 | 雁なきてふく風さむみから衣君まちかてにうたぬよそなき かりなきて ふくかせさむみ からころも きみまちかてに うたぬよそなき | 紀貫之 | 五 | 秋 下 |
483 | みよしのの山の秋風さよふけてふるさとさむく衣うつなり みよしのの やまのあきかせ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり | 藤原雅経 | 五 | 秋 下 |
484 | ちたひうつきぬたのをとに夢さめてものおもふ袖のつゆそくたくる ちたひうつ きぬたのおとに ゆめさめて ものおもふそての つゆそくたくる | 式子内親王 | 五 | 秋 下 |
485 | ふけにけり山のはちかく月さえてとをちのさとに衣うつ声 ふけにけり やまのはちかく つきさえて とをちのさとに ころもうつこゑ | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
486 | 秋はつるさよふけかたの月みれは袖ものこらすつゆそをきける あきはつる さよふけかたの つきみれは そてものこらす つゆそおきける | 道信朝臣 | 五 | 秋 下 |
487 | ひとりぬる山とりのおのしたりおにしもをきまよふとこの月かけ ひとりぬる やまとりのをの したりをに しもおきまよふ とこのつきかけ | 藤原定家朝臣 | 五 | 秋 下 |
488 | ひとめ見し野辺のけしきはうらかれてつゆのよすかにやとる月かな ひとめみし のへのけしきは うらかれて つゆのよすかに やとるつきかな | 寂蓮法師 | 五 | 秋 下 |
489 | 秋の夜は衣さむしろかさねても月の光にしく物そなき あきのよは ころもさむしろ かさねても つきのひかりに しくものそなき | 大納言経信 | 五 | 秋 下 |
490 | あきのよははや長月になりにけりことはりなりやねさめせらるる あきのよは はやなかつきに なりにけり ことわりなりや ねさめせらるる | 華山院御哥 | 五 | 秋 下 |
491 | むらさめのつゆもまたひぬまきの葉にきりたちのほる秋の夕くれ むらさめの つゆもまたひぬ まきのはに きりたちのほる あきのゆふくれ | 寂蓮法師 | 五 | 秋 下 |
492 | さひしさはみやまの秋のあさくもりきりにしほるるまきのしたつゆ さひしさは みやまのあきの あさくもり きりにしをるる まきのしたつゆ | 太上天皇 | 五 | 秋 下 |
493 | あけほのや河せのなみのたかせ舟くたすか人の袖の秋きり あけほのや かはせのなみの たかせふね くたすかひとの そてのあききり | 左衛門督通光 | 五 | 秋 下 |
494 | ふもとをはうちの河きりたちこめて雲井に見ゆる朝日山かな ふもとをは うちのかはきり たちこめて くもゐにみゆる あさひやまかな | 権大納言公実 | 五 | 秋 下 |
495 | 山さとにきりのまかきのへたてすはをちかた人の袖もみてまし やまさとに きりのまかきの へたてすは をちかたひとの そてもみてまし | 曽祢好忠 | 五 | 秋 下 |
496 | なくかりのねをのみそきくをくら山きりたちはるる時しなけれは なくかりの ねをのみそきく をくらやま きりたちはるる ときしなけれは | 清原深養父 | 五 | 秋 下 |
497 | かきほなるおきの葉そよき秋風のふくなるなへに雁そなくなる かきほなる をきのはそよき あきかせの ふくなるなへに かりそなくなる | 柿本人麻呂(人麿) | 五 | 秋 下 |
498 | 秋風に山とひこゆるかりかねのいやとをさかり雲かくれつつ あきかせに やまとひこゆる かりかねの いやとほさかり くもかくれつつ | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
499 | はつかりのは風すすしくなるなへにたれかたひねの衣かへさぬ はつかりの はかせすすしく なるなへに たれかたひねの ころもかへさぬ | 凡河内躬恒 | 五 | 秋 下 |
500 | かりかねは風にきおひてすくれともわかまつ人のことつてもなし かりかねは かせにきほひて すくれとも わかまつひとの ことつてもなし | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
501 | よこ雲の風にわかるるしののめに山とひこゆるはつかりの声 よこくもの かせにわかるる しののめに やまとひこゆる はつかりのこゑ | 西行法師 | 五 | 秋 下 |
502 | 白雲をつはさにかけてゆくかりのかと田のおものともしたふなる しらくもを つはさにかけて ゆくかりの かとたのおもの ともしたふなり | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
503 | おほえ山かたふく月のかけさえてとは田のおもにおつるかりかね おほえやま かたふくつきの かけさえて とはたのおもに おつるかりかね | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
504 | むら雲や雁のはかせにはれぬらん声きくそらにすめる月かけ むらくもや かりのはかせに はれぬらむ こゑきくそらに すめるつきかけ | 朝恵法師 | 五 | 秋 下 |
505 | ふきまよふ雲井をわたるはつかりのつはさにならすよもの秋風 ふきまよふ くもゐをわたる はつかりの つはさにならす よものあきかせ | 皇太后宮大夫俊成女 | 五 | 秋 下 |
506 | 秋風の袖にふきまく峯の雲をつはさにかけて雁もなくなり あきかせの そてにふきまく みねのくもを つはさにかけて かりもなくなり | 家隆朝臣 | 五 | 秋 下 |
507 | 霜をまつまかきのきくのよゐのまにをきまよふ色は山の葉の月 しもをまつ まかきのきくの よひのまに おきまよふいろは やまのはのつき | 後鳥羽院宮内卿 | 五 | 秋 下 |
508 | ここのへにうつろひぬともきくの花もとのまかきをおもひわするな ここのへに うつろひぬとも きくのはな もとのまかきを おもひわするな | 源有仁(花園左大臣)室 | 五 | 秋 下 |
509 | いまよりは又さくはなもなきものをいたくなをきそきくのうへのつゆ いまよりは またさくはなも なきものを いたくなおきそ きくのうへのつゆ | 権中納言定頼 | 五 | 秋 下 |
510 | 秋風にしほるる野への花よりもむしのねいたくかれにけるかな あきかせに しをるるのへの はなよりも むしのねいたく かれにけるかな | 中務卿具平親王 | 五 | 秋 下 |
511 | ねさめする袖さへさむく秋のよのあらしふくなり松むしのこゑ ねさめする そてさへさむく あきのよの あらしふくなり まつむしのこゑ | 大江嘉言 | 五 | 秋 下 |
512 | 秋をへてあはれもつゆもふかくさのさととふものはうつらなりけり あきをへて あはれもつゆも ふかくさの さととふものは うつらなりけり | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
513 | いり日さすふもとのおはなうちなひきたか秋風にうつらなくらん いりひさす ふもとのをはな うちなひき たかあきかせに うつらなくらむ | 左衛門督通光 | 五 | 秋 下 |
514 | あたにちるつゆのまくらにふしわひてうつらなくなりとこの山風 あたにちる つゆのまくらに ふしわひて うつらなくなり とこのやまかせ | 皇太后宮大夫俊成女 | 五 | 秋 下 |
515 | とふ人もあらしふきそふ秋はきてこの葉にうつむやとのみちしは とふひとも あらしふきそふ あきはきて このはにうつむ やとのみちしは | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
516 | 色かはるつゆをは袖にをきまよひうらかれてゆく野辺の秋かな いろかはる つゆをはそてに おきまよひ うらかれてゆく のへのあきかせ | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
517 | あきふけぬなけやしもよのきりきりすややかけさむしよもきふの月 あきふけぬ なけやしもよの きりきりす ややかけさむし よもきふのつき | 太上天皇 | 五 | 秋 下 |
518 | きりきりすなくやしもよのさむしろに衣かたしきひとりかもねん きりきりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
519 | ねさめする長月のよのとこさむみけさふく風にしもやをくらん ねさめする なかつきのよの とこさむみ けさふくかせに しもやおくらむ | 春宮権大夫公継 | 五 | 秋 下 |
520 | 秋ふかきあはちの嶋のありあけにかたふく月ををくる浦風 あきふかき あはちのしまの ありあけに かたふくつきを おくるうらかせ | 前大僧正慈円 | 五 | 秋 下 |
521 | なか月もいくありあけになりぬらんあさちの月のいととさひゆく なかつきも いくありあけに なりぬらむ あさちのつきの いととさひゆく | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
522 | かささきの雲のかけはし秋くれて夜半には霜やさえわたるらん かささきの くものかけはし あきくれて よはにはしもや さえわたるらむ | 寂蓮法師 | 五 | 秋 下 |
523 | いつのまにもみちしぬらん山桜きのふか花のちるをおしみし いつのまに もみちしぬらむ やまさくら きのふかはなの ちるををしみし | 中務卿具平親王 | 五 | 秋 下 |
524 | うすきりのたちまふ山のもみちははさやかならねとそれとみえけり うすきりの たちまふやまの もみちはは さやかならねと それとみえけり | 高倉院御哥 | 五 | 秋 下 |
525 | 神なひのみむろのこすゑいかならんなへての山もしくれする比 かみなひの みむろのこすゑ いかならむ なへてのやまも しくれするころ | 八条院高倉 | 五 | 秋 下 |
526 | すすか河ふかき木の葉に日かすへて山田のはらの時雨をそきく すすかかは ふかきこのはに ひかすへて やまたのはらの しくれをそきく | 太上天皇 | 五 | 秋 下 |
527 | 心とやもみちはすらんたつた山松はしくれにぬれぬものかは こころとや もみちはすらむ たつたやま まつはしくれに ぬれぬものかは | 皇太后宮大夫俊成 | 五 | 秋 下 |
528 | おもふことなくてそ見ましもみちはをあらしの山のふもとならすは おもふこと なくてやみまし もみちはを あらしのやまの ふもとならすは | 藤原輔尹朝臣 | 五 | 秋 下 |
529 | いり日さすさほの山へのははそはらくもらぬ雨とこの葉ふりつつ いりひさす さほのやまへの ははそはら くもらぬあめと このはふりつつ | 曽祢好忠 | 五 | 秋 下 |
530 | たつた山あらしや峯によはるらんわたらぬ水もにしきたえけり たつたやま あらしやみねに よわるらむ わたらぬみつも にしきたえけり | 後鳥羽院宮内卿 | 五 | 秋 下 |
531 | ははそはらしつくも色やかはるらんもりのした草秋ふけにけり ははそはら しつくもいろや かはるらむ もりのしたくさ あきふけにけり | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
532 | 時わかぬなみさへ色にいつみかはははそのもりに嵐ふくらし ときわかぬ なみさへいろに いつみかは ははそのもりに あらしふくらし | 定家朝臣 | 五 | 秋 下 |
533 | ふるさとはちるもみち葉にうつもれてのきのしのふに秋風そふく ふるさとは ちるもみちはに うつもれて のきのしのふに あきかせそふく | 俊頼朝臣 | 五 | 秋 下 |
534 | きりの葉もふみわけかたくなりにけりかならす人をまつとなけれと きりのはも ふみわけかたく なりにけり かならすひとを まつとなけれと | 式子内親王 | 五 | 秋 下 |
535 | 人はこす風にこのははちりはててよなよなむしはこゑよはるなり ひとはこす かせにこのはは ちりはてて よなよなむしは こゑよわるなり | 曽祢好忠 | 五 | 秋 下 |
536 | もみちはのいろにまかせてときは木も風にうつろふ秋の山かな もみちはの いろにまかせて ときはきも かせにうつろふ あきのやまかな | 春宮大夫公継 | 五 | 秋 下 |
537 | つゆ時雨もる山かけのしたもみちぬるともおらん秋のかたみに つゆしくれ もるやまかけの したもみち ぬるともをらむ あきのかたみに | 家隆朝臣 | 五 | 秋 下 |
538 | 松にはふまさのはかつらちりにけりと山の秋は風すさふらん まつにはふ まさきのかつら ちりにけり とやまのあきは かせすさふらむ | 西行法師 | 五 | 秋 下 |
539 | うつらなくかた野にたてるはしもみちちりぬはかりに秋風そふく うつらなく かたのにたてる はしもみち ちらぬはかりに あきかせそふく | 前参議親隆 | 五 | 秋 下 |
540 | ちりかかるもみちの色はふかけれとわたれはにこる山かはの水 ちりかかる もみちのいろは ふかけれと わたれはにこる やまかはのみつ | 二条院讃岐 | 五 | 秋 下 |
541 | あすか河もみちはなかるかつらきの山の秋風ふきそしくらし あすかかは もみちはなかる かつらきの やまのあきかせ ふきそしくらし | 柿本人麻呂(人麿) | 五 | 秋 下 |
542 | あすか河せせになみよるくれなゐやかつらき山のこからしの風 あすかかは せせになみよる くれなゐや かつらきやまの こからしのかせ | 権中納言長方 | 五 | 秋 下 |
543 | もみちはをさこそあらしのはらふらめこの山本も雨とふるなり もみちはを さこそあらしの はらふらめ このやまもとも あめとふるなり | 権中納言公経 | 五 | 秋 下 |
544 | たつたひめいまはのころのあき風に時雨をいそく人の袖かな たつたひめ いまはのころの あきかせに しくれをいそく ひとのそてかな | 久我建通(後京極摂政) | 五 | 秋 下 |
545 | ゆく秋のかたみなるへきもみちははあすはしくれとふりやまかはん ゆくあきの かたみなるへき もみちはも あすはしくれと ふりやまかはむ | 権中納言兼宗 | 五 | 秋 下 |
546 | うちむれてちるもみちはをたつぬれは山ちよりこそ秋はゆきけれ うちむれて ちるもみちはを たつぬれは やまちよりこそ あきはゆきけれ | 前大納言公任 | 五 | 秋 下 |
547 | 夏草のかりそめにとてこしやともなにはの浦に秋そくれぬる なつくさの かりそめにとて こしやとも なにはのうらに あきそくれぬる | 能因法師 | 五 | 秋 下 |
548 | かくしつつくれぬる秋とおいぬれとしかすかになを物そかなしき かくしつつ くれぬるあきと おいぬれと しかすかになほ ものそかなしき | 読人知らず | 五 | 秋 下 |
549 | 身にかへていささは秋をおしみみんさらてももろきつゆのいのちを みにかへて いささはあきを をしみみむ さらてももろき つゆのいのちを | 守覚法親王 | 五 | 秋 下 |
550 | なへてよのおしさにそへておしむかな秋より後の秋のかきりを なへてよの をしさにそへて をしむかな あきよりのちの あきのかきりを | 前太政大臣 | 五 | 秋 下 |
551 | をきあかす秋のわかれのそてのつゆ霜こそむすへ冬やきぬらん おきあかす あきのわかれの そてのつゆ しもこそむすへ ふゆやきぬらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
552 | 神な月風にもみちのちるときはそこはかとなく物そかなしき かみなつき かせにもみちの ちるときは そこはかとなく ものそかなしき | 藤原高光 | 六 | 冬 |
553 | なとりかはやなせの浪そさはくなるもみちやいととよりてせくらん なとりかは やなせのなみそ さわくなる もみちやいとと よりてせくらむ | 源重之 | 六 | 冬 |
554 | いかたしよまてこととはんみなかみはいかはかりふく山のあらしそ いかたしよ まてこととはむ みなかみは いかはかりふく やまのあらしそ | 藤原資宗朝臣 | 六 | 冬 |
555 | ちりかかるもみちなかれぬ大井かはいつれ井せきの水のしからみ ちりかかる もみちなかれぬ おほゐかは いつれゐせきの みつのしからみ | 大納言経信 | 六 | 冬 |
556 | たかせ舟しふくはかりにもみちはのなかれてくたる大井河かな たかせふね しふくはかりに もみちはの なかれてくたる おほゐかはかな | 藤原家経朝臣 | 六 | 冬 |
557 | 日くるれはあふ人もなしまさきちる峯のあらしのをとはかりして ひくるれは あふひともなし まさきちる みねのあらしの おとはかりして | 俊頼朝臣 | 六 | 冬 |
558 | をのつからをとする物は庭のおもにこの葉ふきまく谷のゆふ風 おのつから おとするものは にはのおもに このはふりしく たにのゆふかせ | 清輔朝臣 | 六 | 冬 |
559 | 木の葉ちるやとにかたしく袖の色をありともしらてゆく嵐かな このはちる やとにかたしく そてのいろを ありともしらて ゆくあらしかな | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
560 | このはちるしくれやまかふわか袖にもろき涙のいろとみるまて このはちる しくれやまかふ わかそてに もろきなみたの いろとみるまて | 右衛門督通具 | 六 | 冬 |
561 | うつりゆく雲に嵐のこゑすなりちるかまさ木のかつらきの山 うつりゆく くもにあらしの こゑすなり ちるかまさきの かつらきのやま | 藤原雅経 | 六 | 冬 |
562 | はつ時雨しのふの山のもみちはをあらしふけとはそめすや有けん はつしくれ しのふのやまの もみちはを あらしふけとは そめすやありけむ | 七条院大納言 | 六 | 冬 |
563 | しくれつつ袖もほしあへすあしひきの山のこの葉に嵐ふく比 しくれつつ そてもほしあへす あしひきの やまのこのはに あらしふくころ | 信濃 | 六 | 冬 |
564 | 山さとの風すさましきゆふくれに木の葉みたれて物そかなしき やまさとの かせすさましき ゆふくれに このはみたれて ものそかなしき | 藤原秀能 | 六 | 冬 |
565 | 冬のきて山もあらはに木のはふりのこる松さへ峯にさひしき ふゆのきて やまもあらはに このはふり のこるまつさへ みねにさひしき | 祝部成茂 | 六 | 冬 |
566 | からにしき秋のかたみやたつた山ちりあへぬえたに嵐ふくなり からにしき あきのかたみや たつたやま ちりあへぬえたに あらしふくなり | 後鳥羽院宮内卿 | 六 | 冬 |
567 | 時雨かときけはこの葉のふる物をそれにもぬるるわかたもとかな しくれかと きけはこのはの ふるものを それともぬるる わかたもとかな | 藤原資隆朝臣 | 六 | 冬 |
568 | 時しもあれ冬ははもりの神な月まはらになりぬもりのかしは木 ときしもあれ ふゆははもりの かみなつき まはらになりぬ もりのかしはき | 法眼慶算 | 六 | 冬 |
569 | いつのまにそらのけしきのかはるらんはけしきけさのこからしの風 いつのまに そらのけしきの かはるらむ はけしきけさの こからしのかせ | 津守国基 | 六 | 冬 |
570 | 月をまつたかねの雲ははれにけり心あるへきはつしくれかな つきをまつ たかねのくもは はれにけり こころあるへき はつしくれかな | 西行法師 | 六 | 冬 |
571 | 神な月木々のこの葉はちりはてて庭にそ風のをとはきこゆる かみなつき ききのこのはは ちりはてて にはにそかせの おとはきこゆる | 前大僧正覚忠 | 六 | 冬 |
572 | しはのとにいり日のかけはさしなからいかにしくるる山辺なるらん しはのとに いりひのかけは さしなから いかにしくるる やまへなるらむ | 清輔朝臣 | 六 | 冬 |
573 | 雲はれてのちもしくるるしはのとや山風はらふ松のした露 くもはれて のちもしくるる しはのとや やまかせはらふ まつのしたつゆ | 藤原隆信朝臣 | 六 | 冬 |
574 | 神無月しくれふるらしさほ山のまさきのかつら色まさりゆく かみなつき しくれふるらし さほやまの まさきのかつら いろまさりゆく | 読人知らず | 六 | 冬 |
575 | こからしのをとに時雨をききわかてもみちにぬるるたもととそ見る こからしの おとにしくれを ききわかて もみちにぬるる たもととそみる | 中務卿具平親王 | 六 | 冬 |
576 | しくれふるをとはすれともくれたけのなとよとともにいろもかはらぬ しくれふる おとはすれとも くれたけの なとよとともに いろもかはらぬ | 中納言兼輔 | 六 | 冬 |
577 | しくれの雨そめかねてけり山しろのときはのもりのまきの下葉は しくれのあめ そめかねてけり やましろの ときはのもりの まきのしたはは | 能因法師 | 六 | 冬 |
578 | 冬をあさみまたくしくれと思しをたえさりけりな老の涙も ふゆをあさみ またきしくれを おもひしを たえさりけりな おいのなみたも | 清原元輔 | 六 | 冬 |
579 | まはらなるしはのいほりにたひねして時雨にぬるるさよ衣かな まはらなる しはのいほりに たひねして しくれにぬるる さよころもかな | 後白河院御哥 | 六 | 冬 |
580 | やよしくれ物思袖のなかりせはこの葉の後になにをそめまし やよしくれ ものおもふそての なかりせは このはののちに なにをそめまし | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
581 | ふかみとりあらそひかねていかならんまなく時雨のふるの神すき ふかみとり あらそひかねて いかならむ まなくしくれの ふるのかみすき | 太上天皇 | 六 | 冬 |
582 | しくれの雨まなくしふれはま木の葉もあらそひかねて色つきにけり しくれのあめ まなくしふれは まきのはも あらそひかねて いろつきにけり | 柿本人麻呂(人麿) | 六 | 冬 |
583 | 世中になをもふるかなしくれつつ雲間の月のいてやとおもへと よのなかに なほもふるかな しくれつつ くもまのつきの いてやとおもへは | 和泉式部 | 六 | 冬 |
584 | おりこそあれなかめにかかるうき雲の袖もひとつにうちしくれつつ をりこそあれ なかめにかかる うきくもの そてもひとつに うちしくれつつ | 二条院讃岐 | 六 | 冬 |
585 | あきしのやと山のさとやしくるらんいこまのたけに雲のかかれる あきしのや とやまのさとや しくるらむ いこまのたけに くものかかれる | 西行法師 | 六 | 冬 |
586 | はれくもり時雨はさためなき物をふりはてぬるはわか身なりけり はれくもり しくれはさため なきものを ふりはてぬるは わかみなりけり | 道因法師 | 六 | 冬 |
587 | いまは又ちらてもまかふ時雨かなひとりふりゆく庭の松風 いまはまた ちらてもまかふ しくれかな ひとりふりゆく にはのまつかせ | 源具親 | 六 | 冬 |
588 | みよしのの山かきくもり雪ふれはふもとのさとはうちしくれつつ みよしのの やまかきくもり ゆきふれは ふもとのさとは うちしくれつつ | 俊恵法師 | 六 | 冬 |
589 | まきのやに時雨のをとのかはるかなもみちやふかくちりつもるらん まきのやに しくれのおとの かはるかな もみちやふかく ちりつもるらむ | 三条実房(入道左大臣) | 六 | 冬 |
590 | 世にふるはくるしき物をま木のやにやすくもすくるはつ時雨かな よにふるは くるしきものを まきのやに やすくもすくる はつしくれかな | 二条院讃岐 | 六 | 冬 |
591 | ほの/\とありあけの月の月かけにもみちふきおろす山おろしの風 ほのほのと ありあけのつきの つきかけに もみちふきおろす やまおろしのかせ | 源信明朝臣 | 六 | 冬 |
592 | もみち葉をなにおしみけん木のまよりもりくる月はこよひこそみれ もみちはを なにをしみけむ このまより もりくるつきは こよひこそみれ | 中務卿具平親王 | 六 | 冬 |
593 | ふきはらふあらしののちのたかねよりこの葉くもらて月やいつらん ふきはらふ あらしののちの たかねより このはくもらて つきやいつらむ | 宜秋門院丹後 | 六 | 冬 |
594 | 霜こほる袖にもかけはのこりけりつゆよりなれしありあけの月 しもこほる そてにもかけは のこりけり つゆよりなれし ありあけのつき | 右衛門督通具 | 六 | 冬 |
595 | なかめつついくたひ袖にくもるらん時雨にふくる有あけの月 なかめつつ いくたひそてに くもるらむ しくれにふくる ありあけのつき | 藤原家隆朝臣 | 六 | 冬 |
596 | さためなくしくるるそらのむら雲にいくたひおなし月をまつらん さためなく しくるるそらの むらくもに いくたひおなし つきをまつらむ | 源泰光 | 六 | 冬 |
597 | いまよりは木の葉かくれもなけれともしくれにのこるむら雲の月 いまよりは このはかくれも なけれとも しくれにのこる むらくものつき | 源具親 | 六 | 冬 |
598 | はれくもるかけをみやこにさきたててしくるとつくる山の葉の月 はれくもる かけをみやこに さきたてて しくるとつくる やまのはのつき | 読人知らず | 六 | 冬 |
599 | たえ/\にさとわく月のひかりかなしくれををくる夜はのむらくも たえたえに さとわくつきの ひかりかな しくれをかくる よはのむらくも | 寂蓮法師 | 六 | 冬 |
600 | いまはとてねなまし物をしくれつるそらとも見えすすめる月かな いまはとて ねなましものを しくれつる そらともみえす すめるつきかな | 良暹法師 | 六 | 冬 |
601 | つゆしものよはにおきゐて冬のよの月みるほとに袖はこほりぬ つゆしもの よはにおきゐて ふゆのよの つきみるほとに そてはこほりぬ | 曽祢好忠 | 六 | 冬 |
602 | もみちははをのかそめたる色そかしよそけにをけるけさの霜かな もみちはは おのかそめたる いろそかし よそけにおける けさのしもかな | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
603 | をくら山ふもとのさとにこの葉ちれはこすゑにはるる月をみるかな をくらやま ふもとのさとに このはちれは こすゑにはるる つきをみるかな | 西行法師 | 六 | 冬 |
604 | 秋の色をはらひはててやひさかたの月のかつらにこからしの風 あきのいろを はらひはててや ひさかたの つきのかつらに こからしのかせ | 雅経 | 六 | 冬 |
605 | 風さむみ木の葉はれゆくよな/\にのこるくまなき庭の月かけ かせさむみ このははれゆく よなよなに のこるくまなき にはのつきかけ | 式子内親王 | 六 | 冬 |
606 | わかかとのかり田のねやにふすしきのとこあらはなる冬のよの月 わかかとの かりたのねやに ふすしきの とこあらはなる ふゆのよのつき | 殷富門院大輔 | 六 | 冬 |
607 | 冬かれのもりのくち葉の霜のうへにおちたる月のかけのさむけさ ふゆかれの もりのくちはの しものうへに おちたるつきの かけのさむけさ | 清輔朝臣 | 六 | 冬 |
608 | さえわひてさむるまくらにかけみれは霜ふかきよの有あけの月 さえわひて さむるまくらに かけみれは しもふかきよの ありあけのつき | 皇太后宮大夫俊成女 | 六 | 冬 |
609 | 霜むすふ袖のかたしきうちとけてねぬよの月のかけそさむけき しもむすふ そてのかたしき うちとけて ねぬよのつきの かけそさむけき | 右衛門督通具 | 六 | 冬 |
610 | かけとめしつゆのやとりを思いてて霜にあととふあさちふの月 かけとめし つゆのやとりを おもひいてて しもにあととふ あさちふのつき | 雅経 | 六 | 冬 |
611 | かたしきの袖をや霜にかさぬらん月によかるるうちのはしひめ かたしきの そてをやしもに かさぬらむ つきによかるる うちのはしひめ | 法印幸清 | 六 | 冬 |
612 | なつかりのおきのふるえはかれにけりむれゐし鳥はそらにやあるらん なつかりの をきのふるえは かれにけり むれゐしとりは そらにやあるらむ | 源重之 | 六 | 冬 |
613 | さよふけて声さへさむきあしたつはいくへの霜かをきまさるらん さよふけて こゑさへさむき あしたつは いくへのしもか おきまさるらむ | 道信朝臣 | 六 | 冬 |
614 | 冬のよのなかきををくる袖ぬれぬ暁かたのよものあらしに ふゆのよの なかきをおくる そてぬれぬ あかつきかたの よものあらしに | 太上天皇 | 六 | 冬 |
615 | ささの葉はみ山もさやにうちそよきこほれる霜を吹嵐かな ささのはは みやまもさやに うちそよき こほれるしもを ふくあらしかな | 久我建通(後京極摂政) | 六 | 冬 |
616 | 君こすはひとりやねなんささの葉のみ山もそよにさやく霜よを きみこすは ひとりやねなむ ささのはの みやまもそよに さやくしもよを | 清輔朝臣 | 六 | 冬 |
617 | 霜かれはそこともみえぬ草のはらたれにとはまし秋のなこりを しもかれは そこともみえぬ くさのはら たれにとはまし あきのなこりを | 皇太后宮大夫俊成女 | 六 | 冬 |
618 | しもさゆる山田のくろのむらすすきかる人なしみのこるころかな しもさゆる やまたのくろの むらすすき かるひとなしに のこるころかな | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
619 | くさのうへにここら玉ゐし白露をした葉の霜とむすふ冬かな くさのうへに ここらたまゐし しらつゆを したはのしもと むすふふゆかな | 好忠 | 六 | 冬 |
620 | かささきのわたせるはしにをくしものしろきを見れはよそふけにける かささきの わたせるはしに おくしもの しろきをみれは よそふけにける | 中納言家持 | 六 | 冬 |
621 | しくれつつかれゆく野辺の花なれは霜のまかきににほふいろかな しくれつつ かれゆくのへの はななれは しものまかきに にほふいろかな | 延喜御哥 | 六 | 冬 |
622 | 菊の花たおりては見しはつ霜のをきなからこそ色まさりけれ きくのはな たをりてはみし はつしもの おきなからこそ いろまさりけれ | 中納言兼輔 | 六 | 冬 |
623 | かけさへにいまはと菊のうつろふは浪の底にも霜やをくらん かけさへに いまはときくの うつろふは なみのそこにも しもやおくらむ | 坂上是則 | 六 | 冬 |
624 | 野辺見れはお花かもとのおもひ草かれゆく冬になりそしにける のへみれは をはなかもとの おもひくさ かれゆくふゆに なりそしにける | 和泉式部 | 六 | 冬 |
625 | つのくにのなにはの春は夢なれやあしのかれ葉に風わたる也 つのくにの なにはのはるは ゆめなれや あしのかれはに かせわたるなり | 西行法師 | 六 | 冬 |
626 | 冬ふかくなりにけらしななにはえのあお葉ましらぬあしの村立 ふゆふかく なりにけらしな なにはえの あをはましらぬ あしのむらたち | 大納言成通 | 六 | 冬 |
627 | さひしさにたへたる人の又もあれないほりならへん冬の山さと さひしさに たへたるひとの またもあれな いほりならへむ ふゆのやまさと | 西行法師 | 六 | 冬 |
628 | あつまちのみちの冬くさしけりあひてあとたに見えぬ忘水かな あつまちの みちのふゆくさ しけりあひて あとたにみえぬ わすれみつかな | 康資王母 | 六 | 冬 |
629 | むかしおもふさよのねさめのとこさえて涙もこほる袖の上かな むかしおもふ さよのねさめの とこさえて なみたもこほる そてのうへかな | 守覚法親王 | 六 | 冬 |
630 | たちぬるる山のしつくもをとたえてま木のした葉にたるひしにけり たちぬるる やまのしつくも おとたえて まきのしたはに たるひしにけり | 読人知らず | 六 | 冬 |
631 | かつこほりかつはくたくる山かはのいはまにむせふ暁の声 かつこほり かつはくたくる やまかはの いはまにむすふ あかつきのこゑ | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
632 | きえかへりいはまにまよふ水のあはのしはしやとかるうす氷かな きえかへり いはまにまよふ みつのあわの しはしやとかる うすこほりかな | 久我建通(後京極摂政) | 六 | 冬 |
633 | まくらにも袖にもなみたつららゐてむすはぬ夢をとふ嵐かな まくらにも そてにもなみた つららゐて むすはぬゆめを とふあらしかな | 読人知らず | 六 | 冬 |
634 | みなかみやたえ/\こほるいはまよりきよたき河にのこる白浪 みなかみや たえたえこほる いはまより きよたきかはに のこるしらなみ | 読人知らず | 六 | 冬 |
635 | かたしきの袖の氷もむすほほれとけてねぬよの夢そみしかき かたしきの そてのこほりも むすほほれ とけてねぬよの ゆめそみしかき | 読人知らず | 六 | 冬 |
636 | はしひめのかたしき衣さむしろにまつよむなしきうちのあけほの はしひめの かたしきころも さむしろに まつよむなしき うちのあけほの | 太上天皇 | 六 | 冬 |
637 | あしろ木にいさよふ浪のをとふけてひとりやねぬるうちのはしひめ あしろきに いさよふなみの おとふけて ひとりやねぬる うちのはしひめ | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
638 | 見るままに冬はきにけりかものゐるいりえのみきはうすこほりつつ みるままに ふゆはきにけり かものゐる いりえのみきは うすこほりつつ | 式子内親王 | 六 | 冬 |
639 | しかのうらやとをさかりゆく浪間よりこほりていつる有あけの月 しかのうらや とほさかりゆく なみまより こほりていつる ありあけのつき | 藤原家隆朝臣 | 六 | 冬 |
640 | ひとり見るいけの氷にすむ月のやかてそてにもうつりぬるかな ひとりみる いけのこほりに すむつきの やかてそてにも うつりぬるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
641 | うはたまのよのふけゆけはひさきおふるきよきかはらにちとりなく也 うはたまの よのふけゆけは ひさきおふる きよきかはらに ちとりなくなり | 赤人 | 六 | 冬 |
642 | ゆくさきはさよふけぬれとちとりなくさほのかはらはすきうかりけり ゆくさきは さよふけぬれと ちとりなく さほのかはらは すきうかりけり | 伊勢大輔 | 六 | 冬 |
643 | ゆふされはしほ風こしてみちのくののたの玉河ちとりなくなり ゆふされは しほかせこして みちのくの のたのたまかは ちとりなくなり | 能因法師 | 六 | 冬 |
644 | 白浪にはねうちかはしはまちとりかなしき声はよるの一声 しらなみに はねうちかはし はまちとり かなしきものは よはのひとこゑ | 重之 | 六 | 冬 |
645 | ゆふなきにとわたるちとりなみまより見ゆるこ嶋の雲にきえぬる ゆふなきに とわたるちとり なみまより みゆるこしまの くもにきえぬる | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 六 | 冬 |
646 | 浦風にふきあけのはまのはまちとり浪たちくらし夜はになくなり うらかせに ふきあけのはまの はまちとり なみたちくらし よはになくなり | 祐子内親王家紀伊 | 六 | 冬 |
647 | 月そすむたれかはここにきのくにやふきあけのちとりひとりなく也 つきそすむ たれかはここに きのくにや ふきあけのちとり ひとりなくなり | 久我建通(後京極摂政) | 六 | 冬 |
648 | さよちとり声こそちかくなるみかたかたふく月にしほやみつらん さよちとり こゑこそちかく なるみかた かたふくつきに しほやみつらむ | 正三位季能 | 六 | 冬 |
649 | 風ふけはよそになるみのかたおもひおもはぬ浪になくちとりかな かせふけは よそになるみの かたおもひ おもはぬなみに なくちとりかな | 藤原秀能 | 六 | 冬 |
650 | 浦人の日もゆふくれになるみかたかへる袖よりちとりなくなり うらひとの ひもゆふくれに なるみかた かへるそてより ちとりなくなり | 権大納言通光 | 六 | 冬 |
651 | 風さゆるとしまかいそのむらちとりたちゐは浪の心なりけり かせさゆる をしまかいその むらちとり たちゐはなみの こころなりけり | 正三位季経 | 六 | 冬 |
652 | はかなしやさてもいくよかゆく水にかすかきわふるをしのひとりね はかなしや さてもいくよか ゆくみつに かすかきわふる をしのひとりね | 雅経 | 六 | 冬 |
653 | 水鳥のかものうきねのうきなから浪のまくらにいくよねぬらん みつとりの かものうきねの うきなから なみのまくらに いくよへぬらむ | 前斎宮河内 | 六 | 冬 |
654 | よしのなるなつみの河のかはよとにかもそなくなる山かけにして よしのなる なつみのかはの かはよとに かもそなくなる やまかけにして | 湯原王 | 六 | 冬 |
655 | ねやのうへにかたえさしおほひそともなる葉ひろかしはに霰ふる也 ねやのうへに かたえさしおほひ そともなる はひろかしはに あられふるなり | 能因法師 | 六 | 冬 |
656 | ささなみやしかのからさき風さえてひらのたかねにあられふる也 ささなみや しかのからさき かせさえて ひらのたかねに あられふるなり | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 六 | 冬 |
657 | やたののにあさちいろつくあらち山みねのあは雪さむくそあるらし やたののに あさちいろつく あらちやま みねのあはゆき さむくあるらし | 柿本人麻呂(人麿) | 六 | 冬 |
658 | つねよりもしのやののきそうつもるるけふは宮こにはつ雪やふる つねよりも しのやののきそ うつもるる けふはみやこに はつゆきやふる | 瞻西聖人 | 六 | 冬 |
659 | ふる雪にまことにしのやいかならんけふはみやこにあとたにもなし ふるゆきに まことにしのや いかならむ けふはみやこに あとたにもなし | 基俊 | 六 | 冬 |
660 | はつ雪のふるの神すきうつもれてしめゆふ野辺は冬こもりせり はつゆきの ふるのかみすき うつもれて しめゆふのへは ふゆこもりせり | 権中納言長方 | 六 | 冬 |
661 | ふれはかくうさのみまさる世をしらてあれたる庭につもるはつ雪 ふれはかく うさのみまさる よをしらて あれたるにはに つもるはつゆき | 紫式部 | 六 | 冬 |
662 | さむしろのよはの衣手さえ/\てはつ雪しろしをかのへの松 さむしろの よはのころもて さえさえて はつゆきしろし をかのへのまつ | 式子内親王 | 六 | 冬 |
663 | ふりそむるけさたに人のまたれつるみ山のさとの雪の夕くれ ふりそむる けさたにひとの またれつる みやまのさとの ゆきのゆふくれ | 寂蓮法師 | 六 | 冬 |
664 | けふはもし君もやとふとなかむれとまたあともなき庭の雪哉 けふはもし きみもやとふと なかむれと またあともなき にはのゆきかな | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
665 | いまそきく心はあともなかりけり雪かきわけておもひやれとも いまそきく こころはあとも なかりけり ゆきかきわけて おもひやれとも | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 六 | 冬 |
666 | 白山にとしふる雪やつもるらんよはにかたしくたもとさゆなり しらやまも としふるゆきや つもるらむ よはにかたしく たもとさゆなり | 前大納言公任 | 六 | 冬 |
667 | あけやらぬねさめのとこにきこゆなりまかきの竹の雪のしたおれ あけやらぬ ねさめのとこに きこゆなり まかきのたけの ゆきのしたをれ | 刑部卿範兼 | 六 | 冬 |
668 | をとは山さやかに見ゆる白雪をあけぬとつくるとりのこゑかな おとはやま さやかにみする しらゆきを あけぬとつくる とりのこゑかな | 高倉院御哥 | 六 | 冬 |
669 | 山さとはみちもやみえすなりぬらんもみちとともに雪のふりぬる やまさとは みちもやみえす なりぬらむ もみちとともに ゆきのふりぬる | 藤原家経朝臣 | 六 | 冬 |
670 | さひしさをいかにせよとてをかへなるならの葉したり雪のふるらん さひしさを いかにせよとて をかへなる ならのはしたり ゆきのふるらむ | 藤原国房 | 六 | 冬 |
671 | こまとめて袖うちはらふかけもなしさののわたりの雪のゆふくれ こまとめて そてうちはらふ かけもなし さののわたりの ゆきのゆふくれ | 定家朝臣 | 六 | 冬 |
672 | まつ人のふもとのみちはたえぬらんのきはのすきに雪をもるなり まつひとの ふもとのみちは たえぬらむ のきはのすきに ゆきおもるなり | 読人知らず | 六 | 冬 |
673 | 夢かよふみちさへたえぬくれ竹のふしみのさとの雪のしたをれ ゆめかよふ みちさへたえぬ くれたけの ふしみのさとの ゆきのしたをれ | 有家朝臣 | 六 | 冬 |
674 | ふる雪にたくものけふりかきたえてさひしくもあるかしほかまのうら ふるゆきに たくものけむり かききえて さひしくもあるか しほかまのうら | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 六 | 冬 |
675 | たこの浦にうちいてて見れはしろたへのふしのたかねに雪はふりつつ たこのうらに うちいててみれは しろたへの ふしのたかねに ゆきはふりつつ | 赤人 | 六 | 冬 |
676 | 雪のみやふりぬとおもふ山さとにわれもおほくのとしそつもれる ゆきのみや ふりぬとはおもふ やまさとに われもおほくの としそつもれる | 紀貫之 | 六 | 冬 |
677 | 雪ふれはみねのまさかきうつもれて月にみかけるあまのかく山 ゆきふれは みねのまさかき うつもれて つきにみかける あまのかくやま | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
678 | かきくもりあまきる雪のふるさとをつもらぬさきにとふ人もかな かきくもり あまきるゆきの ふるさとを つもらぬさきに とふひともかな | 太皇太后宮小侍従 | 六 | 冬 |
679 | 庭の雪にわかあとつけていてつるをとはれにけりと人やみるらん にはのゆきに わかあとつけて いてつるを とはれにけりと ひとやみるらむ | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
680 | なかむれはわか山のはに雪しろし宮この人よ哀とも見よ なかむれは わかやまのはに ゆきしろし みやこのひとよ あはれともみよ | 読人知らず | 六 | 冬 |
681 | 冬くさのかれにし人のいまさらに雪ふみわけて見えん物かは ふゆくさの かれにしひとの いまさらに ゆきふみわけて みえむものかは | 曽祢好忠 | 六 | 冬 |
682 | たつねきてみちわけわふる人もあらしいくへもつもれ庭の白雪 たつねきて みちわけわふる ひともあらし いくへもつもれ にはのしらゆき | 寂然法師 | 六 | 冬 |
683 | このころは花も紅葉もえたになししはしなきえそ松のしらゆき このころは はなももみちも えたになし しはしなきえそ まつのしらゆき | 太上天皇 | 六 | 冬 |
684 | 草も木もふりまかへたる雪もよに春まつむめの花のかそする くさもきも ふりまかへたる ゆきもよに はるまつうめの はなのかそする | 右衛門督通具 | 六 | 冬 |
685 | みかりするかた野のみのにふるあられあなかままたき鳥もこそたて みかりする かたののみのに ふるあられ あなかままたき とりもこそたて | 崇徳院御哥 | 六 | 冬 |
686 | みかりすととたちのはらをあさりつつかたのの野辺にけふもくらしつ みかりすと とたちのはらを あさりつつ かたのののへに けふもくらしつ | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 六 | 冬 |
687 | みかり野はかつふる雪にうつもれてとたちもみえす草かくれつつ みかりのは かつふるゆきに うつもれて とたちもみえす くさかくれつつ | 前中納言匡房 | 六 | 冬 |
688 | かりくらしかたののましはおりしきてよとの河せの月をみるかな かりくらし かたののましは をりしきて よとのかはせの つきをみるかな | 左近中将公衡 | 六 | 冬 |
689 | 中/\にきえはきえなてうつみ火のいきてかひなき世にもある哉 なかなかに きえはきえなて うつみひの いきてかひなき よにもふるかな | 権僧正永縁 | 六 | 冬 |
690 | ひかすふる雪けにまさるすみかまのけふりもさむし大原のさと ひかすふる ゆきけにまさる すみかまの けふりもさむし おほはらのさと | 式子内親王 | 六 | 冬 |
691 | をのつからいはぬをしたふ人やあるとやすらふほとにとしのくれぬる おのつから いはぬをしたふ ひとやあると やすらふほとに としのくれぬる | 西行法師 | 六 | 冬 |
692 | かへりては身にそふ物としりなからくれゆくとしをなにしたふらん かへりては みにそふものと しりなから くれゆくとしを なにしたふらむ | 上西門院兵衛 | 六 | 冬 |
693 | へたてゆくよよのおもかけかきくらし雪とふりぬるとしのくれかな へたてゆく よよのおもかけ かきくらし ゆきにふりぬる としのくれかな | 皇太后宮大夫俊成女 | 六 | 冬 |
694 | あたらしきとしやわか身をとめくらんひまゆくこまにみちをまかせて あたらしき としやわかみを とめくらむ ひまゆくこまに みちをまかせて | 大納言隆季 | 六 | 冬 |
695 | なけきつつことしもくれぬつゆのいのちいけるはかりを思いてにして なけきつつ ことしもくれぬ つゆのいのち いけるはかりを おもひいてにして | 俊恵法師 | 六 | 冬 |
696 | おもひやれやそちのとしのくれなれはいかはかりかは物はかなしき おもひやれ やそちのとしの くれなれは いかはかりかは ものはかなしき | 太皇太后宮小侍従 | 六 | 冬 |
697 | むかしおもふ庭にうき木をつみをきて見しよにもにぬとしのくれかな むかしおもふ にはにうききを つみおきて みしにもあらぬ としのくれかな | 西行法師 | 六 | 冬 |
698 | いその神ふる野のをささしもをへてひとよはかりにのこるとしかな いそのかみ ふるののをささ しもをへて ひとよはかりに のこるとしかな | 久我建通(後京極摂政) | 六 | 冬 |
699 | としのあけてうきよの夢のさむへくはくるともけふはいとはさらまし としのあけて うきよのゆめの さむへくは くるともけふは いとはさらまし | 前大僧正慈円 | 六 | 冬 |
700 | あさことのあか井の水にとしくれてわかよのほとのくまれぬるかな あさことの あかゐのみつに としくれて わかよのほとの くまれぬるかな | 権律師隆聖 | 六 | 冬 |
701 | いそかれぬとしのくれこそあはれなれむかしはよそにききし春かは いそかれぬ としのくれこそ あはれなれ むかしはよそに ききしはるかは | 三条実房(入道左大臣) | 六 | 冬 |
702 | かそふれはとしののこりもなかりけりおいぬるはかりかなしきはなし かそふれは としののこりも なかりけり おいぬるはかり かなしきはなし | 和泉式部 | 六 | 冬 |
703 | いしはしるはつせのかはのなみまくらはやくもとしのくれにけるかな いしはしる はつせのかはの なみまくら はやくもとしの くれにけるかな | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 六 | 冬 |
704 | ゆくとしををしまのあまのぬれ衣かさねて袖になみやかくらん ゆくとしを をしまのあまの ぬれころも かさねてそてに なみやかくらむ | 有家朝臣 | 六 | 冬 |
705 | おいのなみこえける身こそあはれなれことしも今はすゑの松山 おいのなみ こえけるみこそ あはれなれ ことしもいまは すゑのまつやま | 寂蓮法師 | 六 | 冬 |
706 | けふことにけふやかきりとおしめとも又もことしにあひにけるかな けふことに けふやかきりと をしめとも またもことしに あひにけるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 六 | 冬 |
707 | たかきやにのほりて見れはけふりたつたみのかまとはにきはひにけり たかきやに のほりてみれは けふりたつ たみのかまとは にきはひにけり | 仁徳天皇御哥 | 七 | 賀 |
708 | はつ春のはつねのけふのたまははきてにとるからにゆらく玉のを はつはるの はつねのけふの たまははき てにとるからに ゆらくたまのを | 読人知らず | 七 | 賀 |
709 | ねのひしてしめつるのへのひめこ松ひかてやちよのかけをまたまし ねのひして しめつるのへの ひめこまつ ひかてやちよの かけをまたまし | 藤原清正 | 七 | 賀 |
710 | 君かよのとしのかすをはしろたへのはまのまさことたれかしきけん きみかよの としのかすをは しろたへの はまのまさこと たれかしきけむ | 紀貫之 | 七 | 賀 |
711 | わかなおふるのへといふのへを君かためよろつよしめてつまんとそ思 わかなおふる のへといふのへを きみかため よろつよしめて つまむとそおもふ | 読人知らず | 七 | 賀 |
712 | ゆふたすきちとせをかけてあしひきの山あゐのいろはかはらさりけり ゆふたすき ちとせをかけて あしひきの やまあゐのいろは かはらさりけり | 読人知らず | 七 | 賀 |
713 | 君かよにあふへき春のおほけれはちるとも桜あくまてそみん きみかよに あふへきはるの おほけれと ちるともさくら あくまてそみむ | 源師房 | 七 | 賀 |
714 | すみの江のはまのまさこをふむたつはひさしきあとをとむるなりけり すみのえの はまのまさこを ふむたつは ひさしきあとを とむるなりけり | 伊勢 | 七 | 賀 |
715 | としことにおいそふ竹のよよをへてかはらぬいろをたれとかはみん としことに おひそふたけの よよをへて かはらぬいろを たれとかはみむ | 紀貫之 | 七 | 賀 |
716 | ちとせふるおのへの松は秋風の声こそかはれいろはかはらす ちとせふる をのへのまつは あきかせの こゑこそかはれ いろはかはらす | 躬恒 | 七 | 賀 |
717 | 山河の菊のしたみついかなれはなかれて人の老をせくらん やまかはの きくのしたみつ いかなれは なかれてひとの おいをせくらむ | 興風 | 七 | 賀 |
718 | いのりつつなを長月のきくの花いつれの秋かうへてみさらん いのりつつ なほなかつきの きくのはな いつれのあきか うゑてみさらむ | 紀貫之 | 七 | 賀 |
719 | 山人のおるそてにほふきくのつゆうちはらふにもちよはへぬへし やまひとの をるそてにほふ きくのつゆ うちはらふにも ちよはへぬへし | 皇太后宮大夫俊成 | 七 | 賀 |
720 | 神な月もみちもしらぬときは木によろつよかかれ峯の白雲 かみなつき もみちもしらぬ ときはきに よろつよかかれ みねのしらくも | 清原元輔 | 七 | 賀 |
721 | 山風はふけとふかねと白浪のよするいはねはひさしかりけり やまかせは ふけとふかねと しらなみの よするいはねは ひさしかりけり | 伊勢 | 七 | 賀 |
722 | くもりなくちとせにすめる水のおもにやとれる月のかけものとけし くもりなく ちとせにすめる みつのおもに やとれるつきの かけものとけし | 紫式部 | 七 | 賀 |
723 | 池水のよよにひさしくすみぬれは底の玉もも光みえけり いけみつの よよにひさしく すみぬれは そこのたまもも ひかりみえけり | 伊勢大輔 | 七 | 賀 |
724 | きみかよのちとせのかすもかくれなくくもらぬそらの光にそ見る きみかよの ちとせのかすも かくれなく くもらぬそらの ひかりにそみる | 源顕房(六条右大臣) | 七 | 賀 |
725 | すみの江においそふ松のえたことにきみかちとせのかすそこもれる すみのえに おひそふまつの えたことに きみかちとせの かすそこもれる | 前大納言隆国 | 七 | 賀 |
726 | よろつよを松のを山のかけしけみ君をそいのるときはかきはに よろつよを まつのをやまの かけしけみ きみをそいのる ときはかきはに | 康資王母 | 七 | 賀 |
727 | あひをひのをしほの山のこ松はらいまよりちよのかけをまたなん あひおひの をしほのやまの こまつはら いまよりちよの かけをまたなむ | 大弐三位 | 七 | 賀 |
728 | ねの日するみかきのうちのこ松はらちよをはほかの物とやはみる ねのひする みかきのうちの こまつはら ちよをはほかの ものとやはみる | 大納言経信 | 七 | 賀 |
729 | ねの日する野辺のこ松をうつしうへてとしのをなかく君そひくへき ねのひする のへのこまつを うつしうゑて としのをなかく きみそひくへき | 権中納言通俊 | 七 | 賀 |
730 | 君かよはひさしかるへしわたらひやいすすのかはのなかれたえせて きみかよは ひさしかるへし わたらひや いすすのかはの なかれたえせて | 前中納言匡房 | 七 | 賀 |
731 | とき葉なる松にかかれるこけなれは年のをなかきしるへとそ思 ときはなる まつにかかれる こけなれは としのをなかき しるへとそおもふ | 読人知らず | 七 | 賀 |
732 | きみかよにあへるはたれもうれしきを花はいろにもいてにけるかな きみかよに あへるはたれも うれしきを はなはいろにも いてにけるかな | 刑部卿範兼 | 七 | 賀 |
733 | 身にかへて花もおしまし君かよにみるへき春のかきりなけれは みにかへて はなもをしまし きみかよに みるへきはるの かきりなけれは | 参河内侍 | 七 | 賀 |
734 | あめのしためくむくさ木のめもはるにかきりもしらぬみよのすゑすゑ あめのした めくむくさきの めもはるに かきりもしらぬ みよのすゑすゑ | 式子内親王 | 七 | 賀 |
735 | をしなへてこのめも春のあさみとり松にそちよの色はこもれる おしなへて このめもはるの あさみとり まつにそちよの いろもこもれる | 久我建通(後京極摂政) | 七 | 賀 |
736 | しき嶋ややまとしまねも神よより君かためとやかためをきけん しきしまや やまとしまねも かみよより きみかためとや かためおきけむ | 読人知らず | 七 | 賀 |
737 | ぬれてほすたまくしのはのつゆしもにあまてるひかりいくよへぬらん ぬれてほす たまくしのはの つゆしもに あまてるひかり いくよへぬらむ | 読人知らず | 七 | 賀 |
738 | きみかよはちよともささしあまのとやいつる月日のかきりなけれは きみかよは ちよともささし あまのとや いつるつきひの かきりなけれは | 皇太后宮大夫俊成 | 七 | 賀 |
739 | わかみちをまもらはきみをまもるらんよはひはゆつれすみよしの松 わかみちを まもらはきみを まもるらむ よはひはゆつれ すみよしのまつ | 定家朝臣 | 七 | 賀 |
740 | たかさこの松もむかしになりぬへしなをゆくすゑは秋のよの月 たかさこの まつもむかしに なりぬへし なほゆくすゑは あきのよのつき | 寂蓮法師 | 七 | 賀 |
741 | もしほくさかくともつきしきみかよのかすによみをくわかの浦浪 もしほくさ かくともつきし きみかよの かすによみおく わかのうらなみ | 源家長 | 七 | 賀 |
742 | うれしさやかたしく袖につつむらんけふまちえたるうちのはしひめ うれしさや かたしくそてに つつむらむ けふまちえたる うちのはしひめ | 前大納言隆房 | 七 | 賀 |
743 | としへたるうちのはしもりこととはんいくよになりぬ水のみなかみ としへたる うちのはしもり こととはむ いくよになりぬ みつのみなかみ | 清輔朝臣 | 七 | 賀 |
744 | ななそちにみつのはままつおいぬれとちよののこりは猶そはるけき ななそちに みつのはままつ おいぬれは ちよののこりは なほそはるけき | 読人知らず | 七 | 賀 |
745 | やをかゆくはまのまさこを君かよのかすにとらなんおきつ嶋もり やほかゆく はまのまさこを きみかよの かすにとらなむ おきつしまもり | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 七 | 賀 |
746 | かすか山宮このみなみしかそおもふきたのふちなみ春にあへとは かすかやま みやこのみなみ しかそおもふ きたのふちなみ はるにあへとは | 久我建通(後京極摂政) | 七 | 賀 |
747 | ときはなるきひの中山をしなへてちとせを松のふかきいろかな ときはなる きひのなかやま おしなへて ちとせをまつの ふかきいろかな | 読人知らず | 七 | 賀 |
748 | あかねさすあさひのさとのひかけ草とよのあかりのかさしなるへし あかねさす あさひのさとの ひかけくさ とよのあかりの かさしなるへし | 祭主輔親 | 七 | 賀 |
749 | すへらきをときはかきはにもる山の山人ならし山かつらせり すめらきを ときはかきはに もるやまの やまひとならし やまかつらせり | 式部大輔資業 | 七 | 賀 |
750 | とやかへるたかのを山のたまつはきしもをはふともいろはかはらし とやかへる たかのをやまの たまつはき しもをはふとも いろはかはらし | 前中納言匡房 | 七 | 賀 |
751 | くもりなきかかみの山の月をみてあきらけきよをそらにしる哉 くもりなき かかみのやまの つきをみて あきらけきよを そらにしるかな | 宮内卿永範 | 七 | 賀 |
752 | おほえ山こえていくののすゑとをみみちある世にもあひにけるかな おほえやま こえていくのの すゑとほみ みちあるよにも あひにけるかな | 刑部卿範兼 | 七 | 賀 |
753 | あふみのやさかたのいねをかけつみてみちあるみよのはしめにそつく あふみのや さかたのいねを かけつみて みちあるみよの はしめにそつく | 皇太后宮大夫俊成 | 七 | 賀 |
754 | 神世世りけふのためとややつかほになかたのいねのしなひそめけん かみよより けふのためとや やつかほに なかたのいねの しなひそめけむ | 権中納言兼光 | 七 | 賀 |
755 | たちよれはすすしかりけり水鳥のあおはの山の松のゆふ風 たちよれは すすしかりけり みつとりの あをはのやまの まつのゆふかせ | 式部大輔光範 | 七 | 賀 |
756 | ときはなる松井の水をむすふてのしつくことにそちよはみえける ときはなる まつゐのみつを むすふての しつくことにそ ちよはみえける | 権中納言資実 | 七 | 賀 |
757 | すえのつゆもとのしつくやよの中のをくれさきたつためしなるらん すゑのつゆ もとのしつくや よのなかの おくれさきたつ ためしなるらむ | 僧正遍昭 | 八 | 哀傷 |
758 | あはれなりわか身のはてやあさみとりつゐには野辺のかすみとおもへは あはれなり わかみのはてや あさみとり つひにはのへの かすみとおもへは | 小野小町 | 八 | 哀傷 |
759 | さくらちる春のすゑにはなりにけりあままもしらぬなかめせしまに さくらちる はるのすゑには なりにけり あままもしらぬ なかめせしまに | 中納言兼輔 | 八 | 哀傷 |
760 | すみそめのころもうきよの花さかりおりわすれてもおりてけるかな すみそめの ころもうきよの はなさかり をりわすれても をりてけるかな | 実方朝臣 | 八 | 哀傷 |
761 | あかさりし花をや春もこひつらんありし昔を思ひいてつつ あかさりし はなをやはるも こひつらむ ありしむかしを おもひいてつつ | 道信朝臣 | 八 | 哀傷 |
762 | 花さくらまたさかりにてちりにけんなけきのもとを思こそやれ はなさくら またさかりにて ちりにけむ なけきのもとを おもひこそやれ | 成尋法師 | 八 | 哀傷 |
763 | 花見んとうへけん人もなきやとのさくらはこその春そさかまし はなみむと うゑけむひとも なきやとの さくらはこその はるそさかまし | 大江嘉言 | 八 | 哀傷 |
764 | たれもみな花の宮こにちりはててひとりしくるる秋の山さと たれもみな はなのみやこに ちりはてて ひとりしくるる あきのやまさと | 左京大夫顕輔 | 八 | 哀傷 |
765 | 花見てはいとといゑちそいそかれぬまつらんと思人しなけれは はなみては いとといへちそ いそかれぬ まつらむとおもふ ひとしなけれは | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 八 | 哀傷 |
766 | 春霞かすみしそらのなこりさへけふをかきりのわかれなりけり はるかすみ かすみしそらの なこりさへ けふをかきりの わかれなりけり | 久我建通(後京極摂政) | 八 | 哀傷 |
767 | たちのほるけふりをたにも見るへきにかすみにまかふ春のあけほの たちのほる けふりをたにも みるへきに かすみにまかふ はるのあけほの | 前左兵衛督惟方 | 八 | 哀傷 |
768 | かたみとて見れはなけきのふかみ草なに中々のにほひなるらん かたみとて みれはなけきの ふかみくさ なになかなかの にほひなるらむ | 大宰大弐重家 | 八 | 哀傷 |
769 | あやめくさたれしのへとかうへをきてよもきかもとのつゆときえけん あやめくさ たれしのへとか うゑおきて よもきかもとの つゆときえけむ | 高陽院木綿四手 | 八 | 哀傷 |
770 | けふくれとあやめもしらぬたもとかなむかしをこふるねのみかかりて けふくれと あやめもしらぬ たもとかな むかしをこふる ねのみかかりて | 上西門院兵衛 | 八 | 哀傷 |
771 | あやめ草ひきたかへたるたもとにはむかしをこふるねそかかりける あやめくさ ひきたかへたる たもとには むかしをこふる ねそかかりける | 九条院 | 八 | 哀傷 |
772 | さもこそはおなしたもとのいろならめかはらぬねをもかけてける哉 さもこそは おなしたもとの いろならめ かはらぬねをも かけてけるかな | 皇嘉門院 | 八 | 哀傷 |
773 | よそなれとおなし心そかよふへきたれも思ひのひとつならねは よそなれと おなしこころそ かよふへき たれもおもひの ひとつならねは | 藤原実資 | 八 | 哀傷 |
774 | ひとりにもあらぬ思はなき人もたひのそらにやかなしかるらん ひとりにも あらぬおもひは なきひとも たひのそらにや かなしかるらむ | 藤原為頼朝臣 | 八 | 哀傷 |
775 | をくと見しつゆもありけりはかなくてきえにし人をなににたとへん おくとみし つゆもありけり はかなくて きえにしひとを なににたとへむ | 和泉式部 | 八 | 哀傷 |
776 | おもひきやはかなくをきし袖のうへのつゆをかたみにかけん物とは おもひきや はかなくおきし そてのうへの つゆをかたみに かけむものとは | 上東門院 | 八 | 哀傷 |
777 | あさちはらはかなくきえし草のうへのつゆをかたみと思かけきや あさちはら はかなくおきし くさのうへの つゆをかたみと おもひかけきや | 周防内侍 | 八 | 哀傷 |
778 | 袖にさへ秋のゆふへはしられけりきえしあさちかつゆをかけつつ そてにさへ あきのゆふへは しられけり きえしあさちか つゆをかけつつ | 女御徽子女王 | 八 | 哀傷 |
779 | 秋風のつゆのやとりに君ををきてちりをいてぬることそかなしき あきかせの つゆのやとりに きみをおきて ちりをいてぬる ことそかなしき | 一条院御哥 | 八 | 哀傷 |
780 | わかれけんなこりの袖もかはかぬにをきやそふらん秋のゆふつゆ わかれけむ なこりのつゆも かわかぬに おきやそふらむ あきのゆふつゆ | 大弐三位 | 八 | 哀傷 |
781 | をきそふるつゆとともにはきえもせてなみたにのみもうきしつむかな おきそふる つゆとともには きえもせて なみたにのみも うきしつむかな | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
782 | をみなへしみるに心はなくさまていととむかしの秋そこひしき をみなへし みるにこころは なくさまて いととむかしの あきそこひしき | 清慎公 | 八 | 哀傷 |
783 | ねさめする身をふきとおす風のをとをむかしは袖のよそにききけん ねさめする みをふきとほす かせのおとに むかしはそての よそにききけむ | 和泉式部 | 八 | 哀傷 |
784 | 袖ぬらす萩のうははのつゆはかりむかしわすれぬむしのねそする そてぬらす はきのうははの つゆはかり むかしわすれぬ むしのねそする | 藤原忠実 | 八 | 哀傷 |
785 | さらてたにつゆけきさかののへにきてむかしのあとにしほれぬるかな さらてたに つゆけきさかの のへにきて むかしのあとに しをれぬるかな | 権中納言俊忠 | 八 | 哀傷 |
786 | かなしさは秋のさか野のきりきりすなをふるさとにねをやなくらん かなしさは あきのさかのの きりきりす なほふるさとに ねをやなくらむ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 八 | 哀傷 |
787 | 今はさはうきよのさかののへをこそつゆきえはてしあととしのはめ いまはさは うきよのさかの のへをこそ つゆきえはてし あととしのはめ | 皇太后宮大夫俊成女 | 八 | 哀傷 |
788 | たまゆらのつゆも涙もととまらすなき人こふるやとの秋風 たまゆらの つゆもなみたも ととまらす なきひとこふる やとのあきかせ | 定家朝臣 | 八 | 哀傷 |
789 | つゆをたにいまはかたみのふちころもあたにも袖をふくあらしかな つゆをたに いまはかたみの ふちころも あたにもそてを ふくあらしかな | 藤原秀能 | 八 | 哀傷 |
790 | 秋ふかきねさめにいかかおもひいつるはかなく見えし春のよの夢 あきふかき ねさめにいかか おもひいつる はかなくみえし はるのよのゆめ | 殷富門院大輔 | 八 | 哀傷 |
791 | 見し夢をわするる時はなけれとも秋のねさめはけにそかなしき みしゆめを わするるときは なけれとも あきのねさめは けにそかなしき | 源師房 | 八 | 哀傷 |
792 | なれし秋のふけしよとこはそれなから心のそこの夢そかなしき なれしあきの ふけしよとこは それなから こころのそこの ゆめそかなしき | 大納言実家 | 八 | 哀傷 |
793 | くちもせぬその名はかりをととめをきてかれ野のすすきかたみとそみる くちもせぬ そのなはかりを ととめおきて かれののすすき かたみにそみる | 西行法師 | 八 | 哀傷 |
794 | ふるさとをこふる涙やひとりゆくともなき山のみちしはのつゆ ふるさとを こふるなみたや ひとりゆく ともなきやまの みちしはのつゆ | 前大僧正慈円 | 八 | 哀傷 |
795 | うきよにはいまはあらしの山かせにこれやなれゆくはしめなるらん うきよには いまはあらしの やまかせに これやなれゆく はしめなるらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 八 | 哀傷 |
796 | まれにくる夜はもかなしき松風をたえすやこけのしたにきくらん まれにくる よはもかなしき まつかせを たえすやこけの したにきくらむ | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
797 | ものおもへはいろなき風もなかりけり身にしむ秋の心ならひに ものおもへは いろなきかせも なかりけり みにしむあきの こころならひに | 源雅実 | 八 | 哀傷 |
798 | ふるさとをわかれし秋をかそふれはやとせになりぬありあけの月 ふるさとを わかれしあきを かそふれは やとせになりぬ ありあけのつき | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
799 | いのちあれはことしの秋も月はみつわかれし人にあふよなきかな いのちあれは ことしのあきも つきはみつ わかれしひとに あふよなきかな | 能因法師 | 八 | 哀傷 |
800 | けふこすはみてややままし山さとのもみちも人もつねならぬよに けふこすは みてややままし やまさとの もみちもひとも つねならぬよに | 前大納言公任 | 八 | 哀傷 |
801 | おもひいつるおりたくしはのゆふけふりむせふもうれし忘かたみに おもひいつる をりたくしはの ゆふけふり むせふもうれし わすれかたみに | 太上天皇 | 八 | 哀傷 |
802 | おもひいつるおりたくしはときくからにたくひしられぬゆふけふりかな おもひいつる をりたくしはと きくからに たくひしられぬ ゆふけふりかな | 前大僧正慈円 | 八 | 哀傷 |
803 | なき人のかたみの雲やしほ(ほ=く)るらんゆふへの雨にいろはみえねと なきひとの かたみのくもや しをるらむ ゆふへのあめに いろはみえねと | 太上天皇 | 八 | 哀傷 |
804 | 神な月しくるるころもいかなれやそらにすきにし秋の宮人 かみなつき しくるるころも いかなれや そらにすきにし あきのみやひと | 相模 | 八 | 哀傷 |
805 | てすさひのはかなきあとと見しかとも長かたみになりにけるかな てすさひの はかなきあとと みしかとも なかきかたみに なりにけるかな | 源師房女 | 八 | 哀傷 |
806 | たつねてもあとはかくてもみつくきのゆくゑもしらぬ昔なりけり たつねても あとはかくても みつくきの ゆくへもしらぬ むかしなりけり | 馬内侍 | 八 | 哀傷 |
807 | いにしへのなきになかるる水くきのあとこそ袖のうらによりけれ いにしへの なきになかるる みつくきは あとこそそての うらによりけれ | 女御徽子女王 | 八 | 哀傷 |
808 | ほしもあへぬころものやみにくらされて月ともいはすまとひぬるかな ほしもあへぬ ころものやみに くらされて つきともいはす まとひぬるかな | 道信朝臣 | 八 | 哀傷 |
809 | みなそこにちちのひかりはうつれともむかしのかけはみえすそ有ける みなそこに ちちのひかりは うつれとも むかしのかけは みえすそありける | 東三条院 | 八 | 哀傷 |
810 | ものをのみおもひねさめのまくらにはなみたかからぬ暁そなき ものをのみ おもひねさめの まくらには なみたかからぬ あかつきそなき | 源信明朝臣 | 八 | 哀傷 |
811 | あふこともいまはなきねの夢ならていつかは君を又はみるへき あふことも いまはなきねの ゆめならて いつかはきみを またはみるへき | 上東門院 | 八 | 哀傷 |
812 | うしとてはいてにしいゑをいてぬなりなとふるさとにわか帰けん うしとては いてにしいへを いてぬなり なとふるさとに わかかへりけむ | 女御藤原生子<大二条関白/女> | 八 | 哀傷 |
813 | はかなしといふにもいととなみたのみかかるこのよをたのみけるかな はかなしと いふにもいとと なみたのみ かかるこのよを たのみけるかな | 源道済 | 八 | 哀傷 |
814 | ふるさとにゆく人もかなつけやらんしらぬ山ちにひとりまとふと ふるさとに ゆくひともかな つけやらむ しらぬやまちに ひとりまとふと | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
815 | たまのをの長ためしにひく人もきゆれはつゆにことならぬかな たまのをの なかきためしに ひくひとも きゆれはつゆに ことならぬかな | 権大納言長家 | 八 | 哀傷 |
816 | こひわふとききにたにきけかねのをとにうちわすらるる時のまそなき こひわふと ききにたにきけ かねのおとに うちわすらるる ときのまそなき | 和泉式部 | 八 | 哀傷 |
817 | たれかよになからへて見んかきとめしあとはきえせぬかたみなれとも たれかよに なからへてみむ かきとめし あとはきえせぬ かたみなれとも | 紫式部 | 八 | 哀傷 |
818 | なき人をしのふることもいつまてそけふの哀はあすのわか身を なきひとを しのふることも いつまてそ けふのあはれは あすのわかみを | 加賀少納言 | 八 | 哀傷 |
819 | なき人のあとをたにとてきてみれはあらぬさとにもなりにけるかな なきひとの あとをたにとて きてみれは あらぬさとにも なりにけるかな | 律師慶暹 | 八 | 哀傷 |
820 | 見し人のけふりになりしゆふへより名そむつましきしほかまのうら みしひとの けふりになりし ゆふへより なそむつましき しほかまのうら | 紫式部 | 八 | 哀傷 |
821 | あはれきみいかなる野辺のけふりにてむなしきそらの雲と成けん あはれきみ いかなるのへの けふりにて むなしきそらの くもとなりけむ | 弁乳母 | 八 | 哀傷 |
822 | おもへきみもえしけふりにまかひなてたちをくれたる春のかすみを おもへきみ もえしけふりに まかひなて たちおくれたる はるのかすみを | 源三位 | 八 | 哀傷 |
823 | あはれ人けふのいのちをしらませはなにはのあしにちきらさらまし あはれひと けふのいのちを しらませは なにはのあしに ちきらさらまし | 能因法師 | 八 | 哀傷 |
824 | よもすからむかしのことをみつるかなかたるやうつつありしよや夢 よもすから むかしのことを みつるかな かたるやうつつ ありしよやゆめ | 大江匡衡朝臣 | 八 | 哀傷 |
825 | うつりけんむかしのかけやのこるとて見るにおもひのますかかみかな うつりけむ むかしのかけや のこるとて みるにおもひの ますかかみかな | 新少将 | 八 | 哀傷 |
826 | かきとむることの葉のみそ水くきのなかれてとまるかたみなりける かきとむる ことのはのみそ みつくきの なかれてとまる かたみなりける | 按察使公通 | 八 | 哀傷 |
827 | ありすかはおなしなかれはかはらねと見しやむかしのかけそわすれぬ ありすかは おなしなかれは かはらねと みしやむかしの かけそわすれぬ | 源雅定 | 八 | 哀傷 |
828 | かきりなき思のほとの夢のうちはおとろかさしとなけきこしかな かきりなき おもひのほかの ゆめのうちは おとろかさしと なけきこしかな | 皇太后宮大夫俊成 | 八 | 哀傷 |
829 | 見し夢にやかてまきれぬわか身こそとはるるけふもまつかなしけれ みしゆめに やかてまきれぬ わかみこそ とはるるけふも まつかなしけれ | 久我建通(後京極摂政) | 八 | 哀傷 |
830 | 世中は見しもききしもはかなくてむなしきそらのけふりなりけり よのなかは みしもききしも はかなくて むなしきそらは けふりなりけり | 清輔朝臣 | 八 | 哀傷 |
831 | いつなけきいつおもふへきことなれはのちのよしらて人のすむ(む=く)らん いつなけき いつおもふへき ことなれは のちのよしらて ひとのすくらむ | 西行法師 | 八 | 哀傷 |
832 | みな人のしりかほにしてしらぬかなかならすしぬるならひありとは みなひとの しりかほにして しらぬかな かならすしぬる ならひありとは | 前大僧正慈円 | 八 | 哀傷 |
833 | きのふみし人はいかにとおとろけとなを長よの夢にそ有ける きのふみし ひとはいかにと おとろけと なほなかきよの ゆめにそありける | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
834 | よもきふにいつかをくへきつゆの身はけふのゆふくれあすのあけほの よもきふに いつかおくへき つゆのみは けふのゆふくれ あすのあけほの | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
835 | われもいつそあらましかはと見し人をしのふとすれはいととそひゆく われもいつそ あらましかはと みしひとを しのふとすれと いととそひゆく | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
836 | たつねきていかにあはれとなかむらんあとなき山の峯のしら雲 たつねきて いかにあはれと なかむらむ あとなきやまの みねのしらくも | 寂蓮法師 | 八 | 哀傷 |
837 | なきあとのおもかけをのみ身にそへてさこそは人のこひしかるらめ なきあとの おもかけをのみ みにそへて さこそはひとの こひしかるらめ | 西行法師 | 八 | 哀傷 |
838 | 哀ともこころにおもふほとはかりいはれぬへくはとひこそはせめ あはれとも こころにおもふ ほとはかり いはれぬへくは とひこそはせめ | 読人知らず | 八 | 哀傷 |
839 | つくつくとおもへはかなしいつまてか人のあはれをよそにきくへき つくつくと おもへはかなし いつまてか ひとのあはれを よそにきくへき | 三条実房(入道左大臣) | 八 | 哀傷 |
840 | をくれゐてみるそかなしきはかなさをうき身のあととなにたのみけむ おくれゐて みるそかなしき はかなさを うきみのあとと なにたのみけむ | 源師房 | 八 | 哀傷 |
841 | そこはかと思つつけて来てみれはことしのけふも袖はぬれけり そこはかと おもひつつけて きてみれは ことしのけふも そてはぬれけり | 前大僧正慈円 | 八 | 哀傷 |
842 | たれもみな涙のあめにせきかねぬそらもいかかはつれなかるへき たれもみな なみたのあめに せきかねぬ そらもいかかは つれなかるへき | 右大将忠経 | 八 | 哀傷 |
843 | 見し人はよにもなきさのもしほ草かきをくたひに袖そしほるる みしひとは よにもなきさの もしほくさ かきおくたひに そてそしをるる | 法橋行遍 | 八 | 哀傷 |
844 | あらさらんのちしのへとや袖のかをはなたちはなにととめをきけん あらさらむ のちしのへとや そてのかを はなたちはなに ととめおきけむ | 祝部成仲 | 八 | 哀傷 |
845 | ありしよにしはしも見てはなかりしを哀とはかりいひてやみぬる ありしよに しはしもみては なかりしを あはれとはかり いひてやみぬる | 藤原兼房朝臣 | 八 | 哀傷 |
846 | とへかしなかたしくふちの衣手になみたのかかる秋のねさめを とへかしな かたしくふちの ころもてに なみたのかかる あきのねさめを | 権中納言通俊 | 八 | 哀傷 |
847 | 君なくてよるかたもなきあをやきのいととうきよそ思みたるる きみなくて よるかたもなき あをやきの いととうきよそ おもひみたるる | 権中納言国信 | 八 | 哀傷 |
848 | いつのまに身を山かつになしはてて宮こをたひと思ふなるらん いつのまに みをやまかつに なしはてて みやこをたひと おもふなるらむ | 左京大夫顕輔 | 八 | 哀傷 |
849 | ひさかたのあめにしほるる君ゆへに月日もしらてこひわたるらん ひさかたの あめにしをるる きみゆゑに つきひもしらて こひわたるらむ | 柿本人麻呂(人麿) | 八 | 哀傷 |
850 | あるはなくなきはかすそふ世中にあはれいつれの日まてなけかん あるはなく なきはかすそふ よのなかに あはれいつれの ひまてなけかむ | 小野小町 | 八 | 哀傷 |
851 | 白玉かなにそと人のとひし時つゆとこたへてけなまし物を しらたまか なにそとひとの とひしとき つゆとこたへて けなましものを | 業平朝臣 | 八 | 哀傷 |
852 | としふれはかくもありけりすみそめのこはおもふてふそれかあらぬか としふれは かくもありけり すみそめの こはおもふてふ それかあらぬか | 延喜御哥 | 八 | 哀傷 |
853 | なき人をしのひかねては忘草おほかるやとにやとりをそする なきひとを しのひかねては わすれくさ おほかるやとに やとりをそする | 中納言兼輔 | 八 | 哀傷 |
854 | くやしくそのちにあはんと契けるけふをかきりといはまし物を くやしくそ のちにあはむと ちきりける けふをかきりと いはましものを | 藤原季縄 | 八 | 哀傷 |
855 | すみそめのそてはそらにもかさなくにしほりもあへすつゆそこほるる すみそめの そてはそらにも かさなくに しほりもあへす つゆそこほるる | 中務卿具平親王 | 八 | 哀傷 |
856 | くれぬまの身をはおもはて人のよのあはれをしるそかつははかなき くれぬまの みをはおもはて ひとのよの あはれをしるそ かつははかなき | 紫式部 | 八 | 哀傷 |
857 | たまほこのみちの山風さむからはかたみかてらにきなんとそおもふ たまほこの みちのやまかせ さむからは かたみかてらに きなむとそおもふ | 紀貫之 | 九 | 離別 |
858 | わすれなん世にもこしちのかへる山いつはた人にあはむとすらん わすれなむ よにもこしちの かへるやま いつはたひとに あはむとすらむ | 伊勢 | 九 | 離別 |
859 | きたへゆく雁のつはさにことつてよ雲のうはかきかきたえすして きたへゆく かりのつはさに ことつてよ くものうはかき かきたえすして | 紫式部 | 九 | 離別 |
860 | 秋きりのたつたひころもをきて見よつゆはかりなるかたみなりとも あききりの たつたひころも おきてみよ つゆはかりなる かたみなりとも | 大中臣能宣朝臣 | 九 | 離別 |
861 | 見てたにもあかぬ心をたまほこのみちのおくまて人のゆくらん みてたにも あかぬこころを たまほこの みちのおくまて ひとのゆくらむ | 紀貫之 | 九 | 離別 |
862 | あふさかの関にわかやとなかりせはわかるる人はたのまさらまし あふさかの せきにわかやと なかりせは わかるるひとは たのまさらまし | 中納言兼輔 | 九 | 離別 |
863 | きならせと思しものをたひころもたつ日をしらすなりにける哉 きならせと おもひしものを たひころも たつひをしらす なりにけるかな | 読人知らず | 九 | 離別 |
864 | これやさは雲のはたてにをるときくたつことしらぬあまのは衣 これやさは くものはたてに おるときく たつことしらぬ あまのはころも | 寂昭法師 | 九 | 離別 |
865 | 衣河見なれし人のわかれにはたもとまてこそ浪はたちけれ ころもかは みなれしひとの わかれには たもとまてこそ なみはたちけれ | 源重之 | 九 | 離別 |
866 | ゆくすゑにあふくま河のなかりせはいかにかせましけふのわかれを ゆくすゑに あふくまかはの なかりせは いかにかせまし けふのわかれを | 高階経重朝臣 | 九 | 離別 |
867 | 君に又あふくま河をまつへきにのこりすくなきわれそかなしき きみにまた あふくまかはを まつへきに のこりすくなき われそかなしき | 藤原範永朝臣 | 九 | 離別 |
868 | すすしさはいきの松はらまさるともそふるあふきの風なわすれそ すすしさは いきのまつはら まさるとも そふるあふきの かせなわすれそ | 枇杷皇太后宮 | 九 | 離別 |
869 | 神な月まれのみゆきにさそはれてけふわかれなはいつかあひみん かみなつき まれのみゆきに さそはれて けふわかれなは いつかあひみむ | 藤原恒佐 | 九 | 離別 |
870 | わかれてののちもあひみんとおもへともこれをいつれの時とかはしる わかれての のちもあひみむと おもへとも これをいつれの ときとかはしる | 大江千里 | 九 | 離別 |
871 | もろこしもあめのしたにそありときくてる日のもとをわすれさらなん もろこしも あめのしたにそ ありときく てるひのもとを わすれさらなむ | 読人知らず | 九 | 離別 |
872 | わかれちはこれやかきりのたひならんさらにいくへき心ちこそせね わかれちは これやかきりの たひならむ さらにいくへき ここちこそせね | 道命法師 | 九 | 離別 |
873 | あまのかはそらにきえにしふなてにはわれそまさりてけさはかなしき あまのかは そらにきこえし ふなてには われそまさりて けさはかなしき | 加賀左衛門 | 九 | 離別 |
874 | わかれちはいつもなけきのたえせぬにいととかなしき秋のゆふくれ わかれちは いつもなけきの たえせぬに いととかなしき あきのゆふくれ | 中納言隆家 | 九 | 離別 |
875 | ととまらんことは心にかなへともいかにかせまし秋のさそふを ととまらむ ことはこころに かなへとも いかにかせまし あきのさそふを | 実方朝臣 | 九 | 離別 |
876 | 宮こをは秋とともにそたちそめしよとの河きりいくよへたてつ みやこをは あきとともにそ たちそめし よとのかはきり いくよへたてつ | 前中納言匡房 | 九 | 離別 |
877 | 思いてはおなしそらとは月をみよほとは雲井にめくりあふまて おもひいてて おなしそらとは つきをみよ ほとはくもゐに めくりあふまて | 後三条院御哥 | 九 | 離別 |
878 | かへりこんほとおもふにもたけくまのまつわか身こそいたくおいぬれ かへりこむ ほとおもふにも たけくまの まつわかみこそ いたくおいぬれ | 基俊 | 九 | 離別 |
879 | おもへともさためなきよのはかなさにいつをまてともえこそたのめね おもへとも さためなきよの はかなさに いつをまてとも えこそたのめね | 大僧正行尊 | 九 | 離別 |
880 | 契をくことこそさらになかりしかかねて思しわかれならねは ちきりおく ことこそさらに なかりしか かねておもひし わかれならねは | 読人知らず | 九 | 離別 |
881 | かりそめのわかれとけふをおもへともいさやまことのたひにもあるらん かりそめの わかれとけふを おもへとも いさやまことの たひにもあるらむ | 俊恵法師 | 九 | 離別 |
882 | かへりこんほとをや人にちきらまししのはれぬへきわか身なりせは かへりこむ ほとをやひとに ちきらまし しのはれぬへき わかみなりせは | 登蓮法師 | 九 | 離別 |
883 | たれとしもしらぬわかれのかなしきはまつらのおきをいつるふな人 たれとしも しらぬわかれの かなしきは まつらのおきを いつるふなひと | 藤原隆信朝臣 | 九 | 離別 |
884 | はるはると君かわくへきしらなみをあやしやとまる袖にかけつる はるはると きみかわくへき しらなみを あやしやとまる そてにかけつる | 俊恵法師 | 九 | 離別 |
885 | 君いなは月まつとてもなかめやらんあつまのかたのゆふくれの空 きみいなは つきまつとても なかめやらむ あつまのかたの ゆふくれのそら | 西行法師 | 九 | 離別 |
886 | たのめをかん君もこころやなくさむとかへらん事はいつとなくとも たのめおかむ きみもこころや なくさむと かへらむことは いつとなくとも | 読人知らず | 九 | 離別 |
887 | さりともとなをあふことをたのむかなしての山ちをこえぬわかれは さりともと なほあふことも たのむかな してのやまちを こえぬわかれは | 読人知らず | 九 | 離別 |
888 | かへりこんほとをちきらむとおもへともおいぬる身こそさためかたけれ かへりこむ ほとをちきらむと おもへとも おいぬるみこそ さためかたけれ | 道因法師 | 九 | 離別 |
889 | かりそめのたひのわかれとしのふれとおいは涙もえこそととめね かりそめの たひのわかれと しのふれと おいはなみたも えこそととめね | 皇太后宮大夫俊成 | 九 | 離別 |
890 | わかれにし人はまたもやみわの山すきにしかたを今になさはや わかれにし ひとはまたもや みわのやま すきにしかたを いまになさはや | 祝部成仲 | 九 | 離別 |
891 | わするなよやとるたもとはかはるともかたみにしほるよはの月かけ わするなよ やとるたもとは かはるとも かたみにしほる よはのつきかけ | 定家朝臣 | 九 | 離別 |
892 | なこりおもふたもとにかねてしられけりわかるるたひのゆくすゑのつゆ なこりおもふ たもとにかねて しられけり わかるるたひの ゆくすゑのつゆ | 惟明親王 | 九 | 離別 |
893 | 宮こをは心をそらにいてぬとも月みんたひに思をこせよ みやこをは こころのそらに いてぬとも つきみむたひに おもひおこせよ | 読人知らず | 九 | 離別 |
894 | わかれちは雲井のよそになりぬともそなたの風のたよりすくすな わかれちは くもゐのよそに なりぬとも そなたのかせの たよりすくすな | 大蔵卿行宗 | 九 | 離別 |
895 | いろふかくそめたるたひのかり衣かへらんまてのかたみともみよ いろふかく そめたるたひの かりころも かへらむまての かたみともみよ | 藤原顕綱朝臣 | 九 | 離別 |
896 | とふとりのあすかのさとををきていなは君かあたりはみえすかもあらん とふとりの あすかのさとを おきていなは きみかあたりは みえすかもあらむ | 元明天皇御哥 | 十 | 羈旅 |
897 | いもにこひわかの松はらみわたせはしほひのかたにたつなきわたる いもにこひ わかのまつはら みわたせは しほひのかたに たつなきわたる | 聖武天皇御哥 | 十 | 羈旅 |
898 | いさこともはや日のもとへおほとものみつのはま松まちこひぬらん いさことも はやひのもとへ おほともの みつのはままつ まちこひぬらむ | 山上憶良 | 十 | 羈旅 |
899 | あまさかるひなのなかちをこきくれはあかしのとより山としまみゆ あまさかる ひなのなかちを こきくれは あかしのとより やまとしまみゆ | 柿本人麻呂(人麿) | 十 | 羈旅 |
900 | ささの葉は(は=のイ)み山もそよにみたるな(な=めイ)りわれはいもおもふわかれきぬれは ささのはは みやまもそよに みたるなり われはいもおもふ わかれきぬれは | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
901 | ここにありてつくしやいつこ白雲のたなひく山のにしにあるらし ここにありて つくしやいつこ しらくもの たなひくやまの にしにあるらし | 大納言旅人 | 十 | 羈旅 |
902 | あさきりにぬれにし衣ほさすしてひとりや君か山ちこゆらん あさきりに ぬれにしころも ほさすして ひとりやきみか やまちこゆらむ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
903 | しなのなるあさまのたけに立けふりをちこち人のみやはとかめね しなのなる あさまのたけに たつけふり をちこちひとの みやはとかめぬ | 業平朝臣 | 十 | 羈旅 |
904 | するかなるうつの山辺のうつつにも夢にも人にあはぬなりけり するかなる うつのやまへの うつつにも ゆめにもひとに あはぬなりけり | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
905 | 草まくらゆふ風さむくなりにけり衣うつなるやとやからまし くさまくら ゆふかせさむく なりにけり ころもうつなる やとやからまし | 紀貫之 | 十 | 羈旅 |
906 | 白雲のたなひきわたるあしひきの山のかけはしけふやこえなん しらくもの たなひきわたる あしひきの やまのかけはし けふやこえなむ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
907 | あつまちのさやのなか山さやかにも見えぬ雲ゐによをやつくさん あつまちや さやのなかやま さやかにも みえぬくもゐに よをやつくさむ | 壬生忠峯 | 十 | 羈旅 |
908 | 人をなをうらみつへしや宮こ鳥ありやとたにもとふをきかねは ひとをなほ うらみつへしや みやことり ありやとたにも とふをきかねは | 女御徽子女王 | 十 | 羈旅 |
909 | またしらぬふるさと人はけふまてにこんとたのめしわれをまつらん またしらぬ ふるさとひとは けふまてに こむとたのめし われをまつらむ | 菅原輔昭 | 十 | 羈旅 |
910 | しなかとりゐな野をゆけはありま山ゆふきりたちぬやとはなくして しなかとり ゐなのをゆけは ありまやま ゆふきりたちぬ やとはなくして | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
911 | 神風のいせのはまおきおりふせ(ふせ=しきイ)てたひねやすらんあらきはまへに かみかせや いせのはまをき をりふせて たひねやすらむ あらきはまへに | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
912 | ふるさとのたひねの夢にみえつるはうらみやすらんまたととはねは ふるさとの たひねのゆめに みえつるは うらみやすらむ またととはねは | 橘良利 | 十 | 羈旅 |
913 | たちなからこよひはあけぬそのはらやふせやといふもかひなかりけり たちなから こよひはあけぬ そのはらや ふせやといふも かひなかりけり | 藤原輔尹朝臣 | 十 | 羈旅 |
914 | 宮こにてこしちのそらをなかめつつ雲井といひしほとにきにけり みやこにて こしちのそらを なかめつつ くもゐといひし ほとにきにけり | 御形宣旨 | 十 | 羈旅 |
915 | たひ衣たちゆくなみちとをけれはいさしら雲のほともしられす たひころも たちゆくなみち とほけれは いさしらくもの ほともしられす | 法橋[大+周]然 | 十 | 羈旅 |
916 | ふねなからこよひはかりはたひねせんしきつの浪に夢はさむとも ふねなから こよひはかりは たひねせむ しきつのなみに ゆめはさむとも | 実方朝臣 | 十 | 羈旅 |
917 | わかことくわれをたつねはあまを舟人もなきさのあととこたへよ わかことく われをたつねは あまをふね ひともなきさの あととこたえよ | 大僧正行尊 | 十 | 羈旅 |
918 | かきくもりゆふたつ浪のあらけれはうきたる舟そしつ心なき かきくもり ゆふたつなみの あらけれは うきたるふねそ しつこころなき | 紫式部 | 十 | 羈旅 |
919 | さよふけてあしのすゑこす浦風にあはれうちそふ浪のをとかな さよふけて あしのすゑこす うらかせに あはれうちそふ なみのおとかな | 京極関白家肥後 | 十 | 羈旅 |
920 | たひねして暁かたの鹿のねにいな葉をしなみ秋風そふく たひねして あかつきかたの しかのねに いなはおしなひ あきかせそふく | 大納言経信 | 十 | 羈旅 |
921 | わきもこかたひねの衣うすきほとよきてふかなんよはの山風 わきもこか たひねのころも うすきほと よきてふかなむ よはのやまかせ | 恵慶法師 | 十 | 羈旅 |
922 | あしの葉をかりふくしつの山さとに衣かたしきたひねをそする あしのはを かりふくしつの やまさとに ころもかたしき たひねをそする | 左近中将隆綱 | 十 | 羈旅 |
923 | ありしよのたひはたひともあらさりきひとりつゆけき草枕かな ありしよの たひはたひとも あらさりき ひとりつゆけき くさまくらかな | 赤染衛門 | 十 | 羈旅 |
924 | 山ちにてそをちにけりなしらつゆのあか月をきの木々のしつくに やまちにて そほちにけりな しらつゆの あかつきおきの ききのしつくに | 権中納言国信 | 十 | 羈旅 |
925 | 草枕たひねの人は心せよありあけの月もかたふきにけり くさまくら たひねのひとは こころせよ ありあけのつきも かたふきにけり | 大納言師頼 | 十 | 羈旅 |
926 | いそなれぬ心そたへぬたひねするあしのまろやにかかる白浪 いそなれぬ こころそたへぬ たひねする あしのまろやに かかるしらなみ | 源師賢朝臣 | 十 | 羈旅 |
927 | たひねするあしのまろやのさむけれはつま木こりつむ舟いそく也 たひねする あしのまろやの さむけれは つまきこりつむ ふねいそくなり | 大納言経信 | 十 | 羈旅 |
928 | みやまちにけさやいてつるたひ人のかさしろたへに雪つもりつつ みやまちに けさやいてつる たひひとの かさしろたへに ゆきつもりつつ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
929 | 松かねにお花かりしきよもすからかたしく袖に雪はふりつつ まつかねに をはなかりしき よもすから かたしくそてに ゆきはふりつつ | 修理大夫顕季 | 十 | 羈旅 |
930 | 見し人もとふの浦風をとせぬにつれなくすめる秋のよの月 みしひとも とふのうらかせ おとせぬに つれなくすめる あきのよのつき | 橘為仲朝臣 | 十 | 羈旅 |
931 | 草枕ほとそへにける宮こいてていくよかたひの月にねぬらん くさまくら ほとそへにける みやこいてて いくよかたひの つきにねぬらむ | 大江嘉言 | 十 | 羈旅 |
932 | なつかりのあしのかりねもあはれなりたまえの月のあけかたの空 なつかりの あしのかりねも あはれなり たまえのつきの あけかたのそら | 皇太后宮大夫俊成 | 十 | 羈旅 |
933 | たちかへり又もきて見ん松嶋やをしまのとまや浪にあらすな たちかへり またもきてみむ まつしまや をしまのとまや なみにあらすな | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
934 | こととへよ思おきつのはまちとりなくなくいてしあとの月かけ こととへよ おもひおきつの はまちとり なくなくいてし あとのつきかけ | 藤原定家朝臣 | 十 | 羈旅 |
935 | 野辺のつゆ浦わのなみをかこちてもゆくゑもしらぬ袖の月かけ のへのつゆ うらわのなみを かこちても ゆくへもしらぬ そてのつきかけ | 藤原家隆朝臣 | 十 | 羈旅 |
936 | もろともにいてしそらこそわすられね宮この山のありあけの月 もろともに いてしそらこそ わすられね みやこのやまの ありあけのつき | 久我建通(後京極摂政) | 十 | 羈旅 |
937 | 宮こにて月をあはれとおもひしはかすにもあらぬすさひなりけり みやこにて つきをあはれと おもひしは かすにもあらぬ すさひなりけり | 西行法師 | 十 | 羈旅 |
938 | 月見はと契をきてしふるさとの人もやこよひ袖ぬらすらん つきみはと ちきりていてし ふるさとの ひともやこよひ そてぬらすらむ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
939 | あけは又こゆへき山のみねなれやそらゆく月のすゑの白雲 あけはまた こゆへきやまの みねなれや そらゆくつきの すゑのしらくも | 家隆朝臣 | 十 | 羈旅 |
940 | ふるさとのけふのおもかけさそひこと月にそちきるさよのなか山 ふるさとの けふのおもかけ さそひこと つきにそちきる さよのなかやま | 藤原雅経 | 十 | 羈旅 |
941 | わすれしとちきりていてしおもかけは見ゆらん物をふるさとの月 わすれしと ちきりていてし おもかけは みゆらむものを ふるさとのつき | 久我建通(後京極摂政) | 十 | 羈旅 |
942 | あつまちのよはのなかめをかたらなん宮この山にかかる月かけ あつまちの よはのなかめを かたらなむ みやこのやまに かかるつきかけ | 前大僧正慈円 | 十 | 羈旅 |
943 | いくよかは月を哀となかめきてなみにおりしくいせのはまおき いくよかは つきをあはれと なかめきて なみにをりしく いせのはまをき | 嘉陽門院越前 | 十 | 羈旅 |
944 | しらさりしやそせの浪をわけすきてかたしく物はいせのはまおき しらさりし やそせのなみを わけすきて かたしくものは いせのはまをき | 宜秋門院丹後 | 十 | 羈旅 |
945 | 風すさみいせのはまおきわけゆけは衣かりかね浪になくなり かせさむみ いせのはまをき わけゆけは ころもかりかね なみになくなり | 前中納言匡房 | 十 | 羈旅 |
946 | いそなれて心もとけぬこもまくらあらくなかけそ水のしら浪 いそなれて こころもとけぬ こもまくら あらくなかけそ みつのしらなみ | 権中納言定頼 | 十 | 羈旅 |
947 | ゆくすゑはいまいくよとかいはしろのをかのかやねにまくらむすはん ゆくすゑは いまいくよとか いはしろの をかのかやねに まくらむすはむ | 式子内親王 | 十 | 羈旅 |
948 | 松かねのをしまかいそのさよまくらいたくなぬれそあまの袖かは まつかねの をしまかいその さよまくら いたくなぬれそ あまのそてかは | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
949 | かくしてもあかせはいくよすきぬらん山ちの苔のつゆのむしろに かくしても あかせはいくよ すきぬらむ やまちのこけの つゆのむしろに | 皇太后宮大夫俊成女 | 十 | 羈旅 |
950 | 白雲のかかるたひねもならはぬにふかき山路に日はくれにけり しらくもの かかるたひねも ならはぬに ふかきやまちに ひはくれにけり | 権僧正永縁 | 十 | 羈旅 |
951 | ゆふ日さすあさちかはらのたひ人はあはれいつくにやとをと(と=かイ)るらん ゆふひさす あさちかはらの たひひとは あはれいくよに やとをかるらむ | 大納言経信 | 十 | 羈旅 |
952 | いつくにかこよひはやとをかり衣ひもゆふくれのみねのあらしに いつくにか こよひはやとを かりころも ひもゆふくれの みねのあらしに | 定家朝臣 | 十 | 羈旅 |
953 | たひ人の袖ふきかへす秋風にゆふひさひしき山のかけはし たひひとの そてふきかへす あきかせに ゆふひさひしき やまのかけはし | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
954 | ふるさとにききしあらしの声もにすわすれね人をさやの中山 ふるさとに ききしあらしの こゑもにす わすれぬひとを さやのなかやま | 家隆朝臣 | 十 | 羈旅 |
955 | しら雲のいくへのみねをこえぬらむなれぬ嵐に袖をまかせて しらくもの いくへのみねを こえぬらむ なれぬあらしに そてをまかせて | 雅経 | 十 | 羈旅 |
956 | けふは又しらぬのはらにゆきくれぬいつれの山か月はいつらむ けふはまた しらぬのはらに ゆきくれぬ いつれのやまか つきはいつらむ | 源家長 | 十 | 羈旅 |
957 | ふるさともあきはゆふへをかたみにてかせのみをくるをののしのはら ふるさとも あきはゆふへを かたみとて かせのみおくる をののしのはら | 皇太后宮大夫俊成女 | 十 | 羈旅 |
958 | いたつらにたつやあさまのゆふけふりさととひかぬるをちこちの山 いたつらに たつやあさまの ゆふけふり さととひかぬる をちこちのやま | 雅経朝臣 | 十 | 羈旅 |
959 | みやこをはあまつそらともきかさりきなになかむらん雲のはたてを みやこをは あまつそらとも きかさりき なになかむらむ くものはたてを | 宜秋門院丹後 | 十 | 羈旅 |
960 | くさまくらゆふへのそらを人とははなきてもつけよはつかりのこゑ くさまくら ゆふへのそらを ひととはは なきてもつけよ はつかりのこゑ | 藤原秀能 | 十 | 羈旅 |
961 | ふしわひぬしののをささのかりまくらはかなの露やひと夜はかりに ふしわひぬ しののをささの かりまくら はかなのつゆや ひとよはかりに | 有家朝臣 | 十 | 羈旅 |
962 | 岩かねのとこに嵐をかたしきてひとりやねなんさよの中山 いはかねの とこにあらしを かたしきて ひとりやねなむ さよのなかやま | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
963 | たれとなきやとの夕を契にてかはるあるしをいく夜とふらむ たれとなき やとのゆふへを ちきりにて かはるあるしを いくよとふらむ | 藤原業清 | 十 | 羈旅 |
964 | まくらとていつれの草にちきるらんゆくをかきりの野辺の夕暮 まくらとて いつれのくさに ちきるらむ ゆくをかきりの のへのゆふくれ | 鴨長明 | 十 | 羈旅 |
965 | 道のへの草のあを葉に駒とめてなを故郷をかへりみるかな みちのへの くさのあをはに こまとめて なほふるさとを かへりみるかな | 民部卿成範 | 十 | 羈旅 |
966 | はつせやまゆふこえくれて宿とへはみわのひはらに秋かせそ吹 はつせやま ゆふこえくれて やととへは みわのひはらに あきかせそふく | 禅性法師 | 十 | 羈旅 |
967 | さらぬ(ぬ=てイ)たに秋のたひねはかなしきに松にふくなりとこの山風 さらぬたに あきのたひねは かなしきに まつにふくなり とこのやまかせ | 藤原秀能 | 十 | 羈旅 |
968 | わすれなむまつとなつけそ中々にいなはの山のみねのあきかせ わすれなむ まつとなつけそ なかなかに いなはのやまの みねのあきかせ | 藤原定家朝臣 | 十 | 羈旅 |
969 | ちきらねとひと夜はすきぬきよみかた浪にわかるるあかつきのくも ちきらねと ひとよはすきぬ きよみかた なみにわかるる あかつきのくも | 家隆朝臣 | 十 | 羈旅 |
970 | ふるさとにたのめし人もすゑの松まつらむ袖に浪やこすらむ ふるさとに たのめしひとも すゑのまつ まつらむそてに なみやこすらむ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
971 | 日をへつつ都しのふの浦さひて浪よりほかのおとつれもなし ひをへつつ みやこしのふの うらさひて なみよりほかの おとつれもなし | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 十 | 羈旅 |
972 | さすらふる我身にしあれはきさかたやあまのとま屋にあまたたひねぬ さすらふる わかみにしあれは きさかたや あまのとまやに あまたたひねぬ | 藤原顕仲朝臣 | 十 | 羈旅 |
973 | 難波人あし火たく屋に宿かりてすすろに袖のしほたるるかな なにはひと あしひたくやに やとかりて すすろにそての しほたるるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十 | 羈旅 |
974 | 又こえむ人もとまらはあはれしれわか折しける峯の椎柴 またこえむ ひともとまらは あはれしれ わかをりしける みねのしひしは | 僧正雅縁 | 十 | 羈旅 |
975 | 道すから富士の煙もわかさりきはるるまもなき空のけしきに みちすから ふしのけふりも わかさりき はるるまもなき そらのけしきに | 前右大将頼朝 | 十 | 羈旅 |
976 | 世中はうきふししけししの原や旅にしあれはいも夢にみゆ よのなかは うきふししけし しのはらや たひにしあれは いもゆめにみゆ | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
977 | おほつかな都にすまぬみやこ鳥こととふ人にいかかこたへし おほつかな みやこにすまぬ みやことり こととふひとに いかかこたへし | 宜秋門院丹後 | 十 | 羈旅 |
978 | 世中をいとふまてこそかたからめかりのやとりをおしむ君かな よのなかを いとふまてこそ かたからめ かりのやとりをも をしむきみかな | 西行法師 | 十 | 羈旅 |
979 | よをいとふ人としきけはかりの宿に心とむなと思ふはかりそ よをいとふ ひととしきけは かりのやとに こころとむなと おもふはかりそ | 遊女妙 | 十 | 羈旅 |
980 | 袖にふけさそな旅ねの夢も見し思ふ方よりかよふうら風 そてにふけ さそなたひねの ゆめはみし おもふかたより かよふうらかせ | 定家朝臣 | 十 | 羈旅 |
981 | 旅ねする夢路はゆるせうつの山関とはきかすもる人もなし たひねする ゆめちはゆるせ うつのやま せきとはきかす もるひともなし | 藤原家隆朝臣 | 十 | 羈旅 |
982 | 都にもいまや衣をうつの山夕霜はらふつたのしたみち みやこにも いまやころもを うつのやま ゆふしもはらふ つたのしたみち | 定家朝臣 | 十 | 羈旅 |
983 | 袖にしも月かかれとは契をかす涙はしるやうつの山こえ そてにしも つきかかれとは ちきりおかす なみたはしるや うつのやまこえ | 鴨長明 | 十 | 羈旅 |
984 | 立田山秋ゆく人の袖を見よ木木の梢はしくれさりけり たつたやま あきゆくひとの そてをみよ ききのこすゑは しくれさりけり | 前大僧正慈円 | 十 | 羈旅 |
985 | さとりゆくまことのみちに入ぬれは恋しかるへきふるさともなし さとりゆく まことのみちに いりぬれは こひしかるへき ふるさともなし | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
986 | 故郷にかへらむことはあすか川わたらぬさきに淵瀬たかふな ふるさとへ かへらむことは あすかかは わたらぬさきに ふちせたかふな | 素覚法師 | 十 | 羈旅 |
987 | 年たけて又こゆへしと思きや命なりけりさやの中山 としたけて またこゆへしと おもひきや いのちなりけり さやのなかやま | 西行法師 | 十 | 羈旅 |
988 | 思ひをく人の心にしたはれて露わくる袖のかへりぬるかな おもひおく ひとのこころに したはれて つゆわくるそての かへりぬるかな | 読人知らず | 十 | 羈旅 |
989 | 見るままに山風あらくしくるめり都もいまや夜さむなるらむ みるままに やまかせあらく しくるめり みやこもいまは よさむなるらむ | 太上天皇 | 十 | 羈旅 |
990 | よそにのみ見てややみなんかつらきやたかまの山のみねの白雲 よそにのみ みてややみなむ かつらきや たかまのやまの みねのしらくも | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
991 | をとにのみありとききこしみよしのの瀧はけふこそ袖におちけれ おとにのみ ありとききこし みよしのの たきはけふこそ そてにおちけれ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
992 | あしひきの山田もるいほにをくか火のしたこかれつつわかこふらくは あしひきの やまたもるいほに おくかひの したこかれつつ わかこふらくは | 柿本人麻呂(人麿) | 十一 | 恋一 |
993 | いその神ふるのわさ田のほにはいてす心のうちにこひやわたらん いそのかみ ふるのわさたの ほにはいてす こころのうちに こひやわたらむ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
994 | かすか野のわかむらさきのすり衣しのふのみたれかきりしられす かすかのの わかむらさきの すりころも しのふのみたれ かきりしられす | 在原業平朝臣 | 十一 | 恋一 |
995 | むらさきの色にこころはあらねともふかくそ人をおもひそめつる むらさきの いろにこころは あらねとも ふかくそひとを おもひそめつる | 延喜御哥 | 十一 | 恋一 |
996 | みかのはらわきてなかるるいつみかはいつみきとてかこひしかるらん みかのはら わきてなかるる いつみかは いつみきとてか こひしかるらむ | 中納言兼輔 | 十一 | 恋一 |
997 | そのはらやふせやにおふるははききのありとは見えてあはぬきみかな そのはらや ふせやにおふる ははききの ありとはみえて あはぬきみかな | 坂上是則 | 十一 | 恋一 |
998 | としをへておもふ心のしるしにそそらもたよりの風はふきける としをへて おもふこころの しるしにそ そらもたよりの かせはふきける | 藤原高光 | 十一 | 恋一 |
999 | とし月はわか身にそへてすきぬれと思ふこころのゆかすもあるかな としつきは わかみにそへて すきぬれと おもふこころの ゆかすもあるかな | 源高明 | 十一 | 恋一 |
1000 | もろともにあはれといはす人しれぬとはすかたりをわれのみやせん もろともに あはれといはすは ひとしれぬ とはすかたりを われのみやせむ | 大納言俊賢母 | 十一 | 恋一 |
1001 | 人つてにしらせてしかなかくれぬのみこもりにのみこひやわたらん ひとつてに しらせてしかな かくれぬの みこもりにのみ こひやわたらむ | 中納言朝忠 | 十一 | 恋一 |
1002 | みこもりのぬまのいはかきつつめともいかなるひまにぬるるたもとそ みこもりの ぬまのいはかき つつめとも いかなるひまに ぬるるたもとそ | 大宰大弐高遠 | 十一 | 恋一 |
1003 | から衣袖に人めはつつめともこほるるものは涙なりけり からころも そてにひとめは つつめとも こほるるものは なみたなりけり | 謙徳公 | 十一 | 恋一 |
1004 | あまつそらとよのあかりに見し人のなをおもかけのしひてこひしき あまつそら とよのあかりに みしひとの なほおもかけの しひてこひしき | 前大納言公任 | 十一 | 恋一 |
1005 | あらたまのとしにまかせて見るよりはわれこそこえめあふさかの関 あらたまの としにまかせて みるよりは われこそこえめ あふさかのせき | 謙徳公 | 十一 | 恋一 |
1006 | わかやとはそこともなにかをしふへきいはてこそ見めたつねけりやと わかやとは そこともなにか をしふへき いはてこそみめ たつねけりやと | 本院侍従 | 十一 | 恋一 |
1007 | わかおもひそらのけふりとなりぬれは雲井なからもなをたつねてん わかおもひ そらのけふりと なりぬれは くもゐなからも なほたつねてむ | 忠義公 | 十一 | 恋一 |
1008 | しるしなきけふりを雲にまかへつつ夜をへてふしの山ともえなん しるしなき けふりをくもに まかへつつ よをへてふしの やまともえなむ | 紀貫之 | 十一 | 恋一 |
1009 | けふりたつおもひならねと人しれすわひてはふしのねをのみそなく けふりたつ おもひならねと ひとしれす わひてはふしの ねをのみそなく | 深養父 | 十一 | 恋一 |
1010 | 風ふけはむろのやしまのゆふけふり心のそらにたちにけるかな かせふけは むろのやしまの ゆふけふり こころのそらに たちにけるかな | 藤原惟成 | 十一 | 恋一 |
1011 | 白雲のみねにしもなとかよふらんおなしみかさの山のふもとを しらくもの みねにしもなと かよふらむ おなしみかさの やまのふもとを | 藤原義孝 | 十一 | 恋一 |
1012 | けふもまたかくやいふきのさしもくささらはわれのみもえやわたらん けふもまた かくやいふきの さしもくさ さらはわれのみ もえやわたらむ | 和泉式部 | 十一 | 恋一 |
1013 | つくは山は山しけ山しけけれとおもひいるにはさはらさりけり つくはやま はやましけやま しけけれと おもひいるには さはらさりけり | 源重之 | 十一 | 恋一 |
1014 | われならぬ人に心をつくは山したにかよはんみちたにやなき われならぬ ひとにこころを つくはやま したにかよはむ みちたにやなき | 大中臣能宣朝臣 | 十一 | 恋一 |
1015 | 人しれすおもふ心はあしひきの山した水のわきやかへらん ひとしれす おもふこころは あしひきの やましたみつの わきやかへらむ | 大江匡衡朝臣 | 十一 | 恋一 |
1016 | にほふらんかすみのうちの桜花おもひやりてもおしき春かな にほふらむ かすみのうちの さくらはな おもひやりても をしきはるかな | 清原元輔 | 十一 | 恋一 |
1017 | いくかへりさきちる花をなかめつつものおもひくらす春にあふらん いくかへり さきちるはなを なかめつつ ものおもひくらす はるにあふらむ | 能宣朝臣 | 十一 | 恋一 |
1018 | おく山のみねとひこゆるはつかりのはつかにたにも見てややみなん おくやまの みねとひこゆる はつかりの はつかにたにも みてややみなむ | 躬恒 | 十一 | 恋一 |
1019 | おほそらをわたる春日のかけなれやよそにのみしてのとけかるらん おほそらを わたるはるひの かけなれや よそにのみして のとけかるらむ | 亭子院御哥 | 十一 | 恋一 |
1020 | 春風のふくにもまさるなみたかなわかみなかみも氷とくらし はるかせの ふくにもまさる なみたかな わかみなかみに こほりとくらし | 謙徳公 | 十一 | 恋一 |
1021 | 水のうへにうきたるとりのあともなくおほつかなさをおもふ比かな みつのうへに うきたるとりの あともなく おほつかなさを おもふころかな | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1022 | かたをかの雪まにねさすわか草のほのかに見てし人そこひしき かたをかの ゆきまにねさす わかくさの ほのかにみてし ひとそこひしき | 曽祢好忠 | 十一 | 恋一 |
1023 | あとをたに草のはつかに見てしかなむすふはかりのほとならすとも あとをたに くさのはつかに みてしかな むすふはかりの ほとならすとも | 和泉式部 | 十一 | 恋一 |
1024 | しものうへにあとふみつくるはまちとりゆくゑもなしとねをのみそなく しものうへに あとふみつくる はまちとり ゆくへもなしと ねをのみそなく | 興風 | 十一 | 恋一 |
1025 | 秋はきのえたもとををにをくつゆのけさきえぬとも色にいてめや あきはきの えたもとををに おくつゆの けさきえぬとも いろにいてめや | 中納言家持 | 十一 | 恋一 |
1026 | あき風にみたれてものはおもへともはきのした葉のいろはかはらす あきかせに みたれてものは おもへとも はきのしたはの いろはかはらす | 藤原高光 | 十一 | 恋一 |
1027 | わかこひもいまはいろにやいてなましのきのしのふももみちしにけり わかこひも いまはいろにや いてなまし のきのしのふも もみちしにけり | 源有仁(花園左大臣) | 十一 | 恋一 |
1028 | いその神ふるの神すきふりぬれといろにはいてすつゆも時雨も いそのかみ ふるのかみすき ふりぬれと いろにはいてす つゆもしくれも | 久我建通(後京極摂政) | 十一 | 恋一 |
1029 | わかこひはまきのした葉にもるしくれぬるとも袖のいろにいてめや わかこひは まきのしたはに もるしくれ ぬるともそての いろにいてめや | 太上天皇 | 十一 | 恋一 |
1030 | わかこひは松をしくれのそめかねてまくすかはらに風さはくなり わかこひは まつをしくれの そめかねて まくすかはらに かせさわくなり | 前大僧正慈円 | 十一 | 恋一 |
1031 | うつせみのなくねやよそにもりのつゆほしあへぬ袖を人のとふまて うつせみの なくねやよそに もりのつゆ ほしあへぬそてを ひとのとふまて | 久我建通(後京極摂政) | 十一 | 恋一 |
1032 | おもひあれは袖にほたるをつつみてもいははや物をとふ人はなし おもひあれは そてにほたるを つつみても いははやものを とふひとはなし | 寂蓮法師 | 十一 | 恋一 |
1033 | 思つつへにけるとしのかひやなきたたあらましのゆふくれの空 おもひつつ へにけるとしの かひやなき たたあらましの ゆふくれのそら | 太上天皇 | 十一 | 恋一 |
1034 | たまのをよたえなはたえねなからへはしのふることのよはりもそする たまのをよ たえなはたえね なからへは しのふることの よわりもそする | 式子内親王 | 十一 | 恋一 |
1035 | わすれてはうちなけかるるゆふへかなわれのみしりてすくる月日を わすれては うちなけかるる ゆふへかな われのみしりて すくるつきひを | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1036 | わかこひはしる人もなしせくとこの涙もらすなつけのを枕 わかこひは しるひともなし せくとこの なみたもらすな つけのをまくら | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1037 | しのふるに心のひまはなけれともなをもる物はなみたなりけり しのふるに こころのひまは なけれとも なほもるものは なみたなりけり | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 十一 | 恋一 |
1038 | つらけれとうらみんとはたおもほえすなをゆくさきをたのむ心に つらけれと うらみむとはた おもほえす なほゆくさきを たのむこころに | 謙徳公 | 十一 | 恋一 |
1039 | 雨もこそはたのまはもらめたのますはおもはぬ人と見てをやみなん あめこそは たのまはもらめ たのますは おもはぬひとと みてをやみなむ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1040 | 風ふけはとはになみこすいそなれやわか衣手のかはく時なき かせふけは とはになみこす いそなれや わかころもての かわくときなき | 紀貫之 | 十一 | 恋一 |
1041 | すまのあまのなみかけ衣よそにのみきくはわか身になりにけるかな すまのあまの なみかけころも よそにのみ きくはわかみに なりにけるかな | 道信朝臣 | 十一 | 恋一 |
1042 | ぬまことに袖そぬれぬるあやめくさ心ににたるねをもとむとて ぬまことに そてそぬれぬる あやめくさ こころににたる ねをもとむとて | 三条院女蔵人左近 | 十一 | 恋一 |
1043 | ほとときすいつかとまちしあやめくさけふはいかなるねにかなくへき ほとときす いつかとまちし あやめくさ けふはいかなる ねにかなくへき | 前大納言公任 | 十一 | 恋一 |
1044 | さみたれはそらおほれするほとときすときになくねは人もとかめす さみたれは そらおほれする ほとときす ときになくねは ひともとかめす | 馬内侍 | 十一 | 恋一 |
1045 | ほとときす声をきけと花のえにまたふみなれぬ物をこそおもへ ほとときす こゑをはきけと はなのえに またふみなれぬ ものをこそおもへ | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 十一 | 恋一 |
1046 | ほとときすしのふるものをかしは木のもりても声のきこえける哉 ほとときす しのふるものを かしはきの もりてもこゑの きこえけるかな | 馬内侍 | 十一 | 恋一 |
1047 | こころのみそらになりつつほとときす人たのめなるねこそなかるれ こころのみ そらになりつつ ほとときす ひとたのめなる ねこそなかるれ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1048 | みくまのの浦よりをちにこく舟のわれをはよそにへたてつるかな みくまのの うらよりをちに こくふねの われをはよそに へたてつるかな | 伊勢 | 十一 | 恋一 |
1049 | なにはかたみしかきあしのふしのまもあはてこのよをすくしてよとや なにはかた みしかきあしの ふしのまも あはてこのよを すくしてよとや | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1050 | みかりするかりはのをののならしはのなれはまさらてこひそまされる みかりする かりはのをのの ならしはの なれはまさらて こひそまされる | 柿本人麻呂(人麿) | 十一 | 恋一 |
1051 | うとはまのうとくのみやはよをはへんなみのよるよるあひ見てしかな うとはまの うとくのみやは よをはへむ なみのよるよる あひみてしかな | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1052 | あつまちのみちのはてなるひたちおひのかことはかりもあはんとそ思 あつまちの みちのはてなる ひたちおひの かことはかりも あはむとそおもふ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1053 | にこりえのすまんことこそかたからめいかてほのかにかけをみせまし にこりえの すまむことこそ かたからめ いかてほのかに かけをみせまし | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1054 | しくれふる冬のこの葉のかはかすそものおもふ人の袖はありける しくれふる ふゆのこのはの かわかすそ ものおもふひとの そてはありける | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1055 | ありとのみをとにききつつをとは河わたらは袖にかけもみえなん ありとのみ おとにききつつ おとはかは わたらはそてに かけもみえなむ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1056 | 水くきのをかの木の葉をふきかへしたれかは君をこひんと思し みつくきの をかのこのはを ふきかへし たれかはきみを こひむとおもひし | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1057 | わか袖にあとふみつけよはまちとりあふことかたし見てもしのはん わかそてに あとふみつけよ はまちとり あふことかたし みてもしのはむ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1058 | 冬のよのなみたにこほるわか袖の心とけすも見ゆるきみかな ふゆのよの なみたにこほる わかそての こころとけすも みゆるきみかな | 中納言兼輔 | 十一 | 恋一 |
1059 | しも氷心もとけぬ冬のいけによふけてそなくをしの一声 しもこほり こころもとけぬ ふゆのいけに よふけてそなく をしのひとこゑ | 藤原元真 | 十一 | 恋一 |
1060 | なみたかは身もうくはかりなかるれときえぬは人の思なりけり なみたかは みもうくはかり なかるれと きえぬはひとの おもひなりけり | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1061 | いかにせんくめちのはしのなかそらにわたしもはてぬ身とやなりなん いかにせむ くめちのはしの なかそらに わたしもはてぬ みとやなりなむ | 実方朝臣 | 十一 | 恋一 |
1062 | たれそこのみわのひはらもしらなくに心のすきのわれをたつぬる たれそこの みわのひはらも しらなくに こころのすきの われをたつぬる | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1063 | わかこひはいはぬはかりそなにはなるあしのしのやのしたにこそたけ わかこひは いはぬはかりそ なにはなる あしのしのやの したにこそたけ | 小弁 | 十一 | 恋一 |
1064 | わかこひはありそのうみの風をいたみしきりによするなみのまもなし わかこひは ありそのうみの かせをいたみ しきりによする なみのまもなし | 伊勢 | 十一 | 恋一 |
1065 | すまのうらにあまのこりつむもしほ木のからくもしたにもえわたる哉 すまのうらに あまのこりつむ もしほきの からくもしたに もえわたるかな | 藤原清正 | 十一 | 恋一 |
1066 | あるかひもなきさによする白浪のまなくものおもふわか身なりけり あるかひも なきさによする しらなみの まなくものおもふ わかみなりけり | 源景明 | 十一 | 恋一 |
1067 | あしひきの山したたきついはなみの心くたけて人そこひしき あしひきの やましたたきつ いはなみの こころくたけて ひとそこひしき | 紀貫之 | 十一 | 恋一 |
1068 | あしひきのやましたしけき夏草のふかくも君をおもふ比かな あしひきの やましたしけき なつくさの ふかくもきみを おもふころかな | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
1069 | をしかふす夏野のくさのみちをなみしけきこひちにまとふ比かな をしかふす なつののくさの みちをなみ しけきこひちに まとふころかな | 坂上是則 | 十一 | 恋一 |
1070 | かやり火のさよふけかたのしたこかれくるしやわか身人しれすのみ かやりひの さよふけかたの したこかれ くるしやわかみ ひとしれすのみ | 曽祢好忠 | 十一 | 恋一 |
1071 | ゆらのとをわたるふな人かちをたえゆくゑもしらぬ恋のみちかも ゆらのとを わたるふなひと かちをたえ ゆくへもしらぬ こひのみちかも | 曽根好忠 | 十一 | 恋一 |
1072 | おひ風にやへのしほちをゆくふねのほのかにたにもあひみてしかな おひかせに やへのしほちを ゆくふねの ほのかにたにも あひみてしかな | 権中納言師時 | 十一 | 恋一 |
1073 | かちをたえゆらのみなとによる舟のたよりもしらぬおきつしほ風 かちをたえ ゆらのみなとに よるふねの たよりもしらぬ おきつしほかせ | 久我建通(後京極摂政) | 十一 | 恋一 |
1074 | しるへせよあとなきなみにこく舟のゆくゑもしらぬやへのしほ風 しるへせよ あとなきなみに こくふねの ゆくへもしらぬ やへのしほかせ | 式子内親王 | 十一 | 恋一 |
1075 | きのくにやゆらのみなとにひろふてふたまさかにたにあひみてしかな きのくにや ゆらのみなとに ひろふてふ たまさかにたに あひみてしかな | 権中納言長方 | 十一 | 恋一 |
1076 | つれもなき人の心のうきにはふあしのしたねのねをこそはなけ つれもなき ひとのこころの うきにはふ あしのしたねの ねをこそはなけ | 権中納言師俊 | 十一 | 恋一 |
1077 | なには人いかなるえにかくちはてんあふことなみに身をつくしつつ なにはひと いかなるえにか くちはてむ あふことなみに みをつくしつつ | 久我建通(後京極摂政) | 十一 | 恋一 |
1078 | あまのかるみるめをなみにまかへつつなくさのはまをたつねわひぬる あまのかる みるめをなみに まかへつつ なくさのはまを たつねわひぬる | 皇太后宮大夫俊成 | 十一 | 恋一 |
1079 | あふまてのみるめかるへきかたそなきまたなみなれぬいそのあま人 あふまての みるめかるへき かたそなき またなみなれぬ いそのあまひと | 相模 | 十一 | 恋一 |
1080 | みるめかるかたやいつくそさほさしてわれにをしへよあまのつり舟 みるめかる かたやいつくそ さをさして われにをしへよ あまのつりふね | 業平朝臣 | 十一 | 恋一 |
1081 | したもえにおもひきえなんけふりたにあとなき雲のはてそかなしき したもえに おもひきえなむ けふりたに あとなきくもの はてそかなしき | 皇太后宮大夫俊成女 | 十二 | 恋二 |
1082 | なひかしなあまのもしほひたきそめてけふりはそらにくゆりわふとも なひかしな あまのもしほひ たきそめて けふりはそらに くゆりわふとも | 藤原定家朝臣 | 十二 | 恋二 |
1083 | こひをのみすまのうら人もしほたれほしあへぬ袖のはてをしらはや こひをのみ すまのうらひと もしほたれ ほしあへぬそての はてをしらはや | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1084 | みるめこそいりぬるいその草ならめ袖さへなみのしたにくちぬる みるめこそ いりぬるいその くさならめ そてさへなみの したにくちぬる | 二条院讃岐 | 十二 | 恋二 |
1085 | 君こふとなるみのうらのはまひさきしほれてのみもとしをふるかな きみこふと なるみのうらの はまひさき しをれてのみも としをふるかな | 俊頼朝臣 | 十二 | 恋二 |
1086 | しるらめや木の葉ふりしくたに水のいはまにもらすしたの心を しるらめや このはふりしく たにみつの いはまにもらす したのこころを | 前太政大臣 | 十二 | 恋二 |
1087 | もらすなよ雲ゐるみねのはつ時雨この葉はしたにいろかはるとも もらすなよ くもゐるみねの はつしくれ このははしたに いろかはるとも | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1088 | かくとたにおもふ心をいはせ山したゆく水の草かくれつつ かくとたに おもふこころを いはせやま したゆくみつの くさかくれつつ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 十二 | 恋二 |
1089 | もらさはやおもふ心をさてのみはえそ山しろの井てのしからみ もらさはや おもふこころを さてのみは えそやましろの ゐてのしからみ | 殷富門院大輔 | 十二 | 恋二 |
1090 | こひしともいははこころのゆくへきにくるしや人めつつむおもひは こひしとも いははこころの ゆくへきに くるしやひとめ つつむおもひは | 近衛院御哥 | 十二 | 恋二 |
1091 | 人しれぬこひにわか身はしつめともみるめにうくは涙なりけり ひとしれぬ こひにわかみは しつめとも みるめにうくは なみたなりけり | 源有仁(花園左大臣) | 十二 | 恋二 |
1092 | ものおもふといはぬはかりはしのふともいかかはすへき袖のしつくを ものおもふと いはぬはかりは しのふとも いかかはすへき そてのしつくを | 神祇伯顕仲 | 十二 | 恋二 |
1093 | 人しれすくるしき物はしのふ山したはふくすのうらみなりけり ひとしれす くるしきものは しのふやま したはふくすの うらみなりけり | 清輔朝臣 | 十二 | 恋二 |
1094 | きえねたたしのふの山のみねの雲かかる心のあともなきまて きえねたた しのふのやまの みねのくも かかるこころの あともなきまて | 雅経 | 十二 | 恋二 |
1095 | かきりあれはしのふの山のふもとにもおち葉かうへのつゆそいろつく かきりあれは しのふのやまの ふもとにも おちはかうへの つゆそいろつく | 左衛門督通光 | 十二 | 恋二 |
1096 | うちはへてくるしきものは人めのみしのふの浦のあまのたくなは うちはへて くるしきものは ひとめのみ しのふのうらの あまのたくなは | 二条院讃岐 | 十二 | 恋二 |
1097 | しのはしよいしまつたひのたにかはもせをせくにこそ水まさりけれ しのはしよ いしまつたひの たにかはも せをせくにこそ みつまさりけれ | 春宮権大夫公継 | 十二 | 恋二 |
1098 | 人もまたふみみぬ山のいはかくれなかるる水を袖にせくかな ひともまた ふみみぬやまの いはかくれ なかるるみつを そてにせくかな | 信濃 | 十二 | 恋二 |
1099 | はるかなるいはのはさまにひとりゐて人めおもはて物おもははや はるかなる いはのはさまに ひとりゐて ひとめおもはて ものおもははや | 西行法師 | 十二 | 恋二 |
1100 | かすならぬ心のとかになしはてししらせてこそは身をもうらみめ かすならぬ こころのとかに なしはてし しらせてこそは みをもうらみめ | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1101 | 草ふかきなつ野わけゆくさをしかのねをこそたてねつゆそこほるる くさふかき なつのわけゆく さをしかの ねをこそたてね つゆそこほるる | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1102 | のちのよをなけく涙といひなしてしほりやせましすみそめの袖 のちのよを なけくなみたと いひなして しほりやせまし すみそめのそて | 大宰大弐重家 | 十二 | 恋二 |
1103 | たまつさのかよふはかりになくさめて後のよまてのうらみのこすな たまつさの かよふはかりに なくさめて のちのよまての うらみのこすな | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1104 | ためしあれはなかめはそれとしりなからおほつかなきは心なりけり ためしあれは なかめはそれと しりなから おほつかなきは こころなりけり | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1105 | いはぬより心やゆきてしるへするなかむるかたを人のとふまて いはぬより こころやゆきて しるへする なかむるかたを ひとのとふまて | 前大納言隆房 | 十二 | 恋二 |
1106 | なかめわひそれとはなしに物そおもふ雲のはたての夕くれの空 なかめわひ それとはなしに ものそおもふ くものはたての ゆふくれのそら | 左衛門督通光 | 十二 | 恋二 |
1107 | おもひあまりそなたのそらをなかむれはかすみをわけて春雨そふる おもひあまり そなたのそらを なかむれは かすみをわけて はるさめそふる | 皇太后宮大夫俊成 | 十二 | 恋二 |
1108 | 山かつのあさのさ衣おさをあらみあはて月日やすきふけるいほ やまかつの あさのさころも をさをあらみ あはてつきひや すきふけるいほ | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1109 | おもへともいはて月日はすきのかとさすかにいかかしのひはつへき おもへとも いはてつきひは すきのかと さすかにいかか しのひはつへき | 藤原忠定 | 十二 | 恋二 |
1110 | あふことはかた野の里のささのいほしのに露ちるよはのとこかな あふことは かたののさとの ささのいほ しのにつゆちる よはのとこかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十二 | 恋二 |
1111 | ちらすなよしのの葉くさのかりにてもつゆかかるへき袖のうへかは ちらすなよ しののはくさの かりにても つゆかるるへき そてのうへかは | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1112 | 白玉かつゆかととはん人もかなものおもふ袖をさしてこたへん しらたまか つゆかととはむ ひともかな ものおもふそてを さしてこたへむ | 藤原元真 | 十二 | 恋二 |
1113 | いつまてもいのちもしらぬ世中につらきなけきのやますもあるかな いつまての いのちもしらぬ よのなかに つらきなけきの やますもあるかな | 藤原義孝 | 十二 | 恋二 |
1114 | わかこひはちきのかたそきかたくのみゆきあはてとしのつもりぬるかな わかこひは ちきのかたそき かたくのみ ゆきあはてとしの つもりぬるかな | 徳大寺公能 | 十二 | 恋二 |
1115 | いつとなくしほやくあまのとまひさしひさしくなりぬあはぬ思は いつとなく しほやくあまの とまひさし ひさしくなりぬ あはぬおもひは | 藤原基輔朝臣 | 十二 | 恋二 |
1116 | もしほやくあまのいそやのゆふけふりたつなもくるし思たえなて もしほやく あまのいそやの ゆふけふり たつなもくるし おもひたえなて | 藤原秀能 | 十二 | 恋二 |
1117 | すまのあまの袖にふきこすしほ風のなるとはすれとてにもたまらす すまのあまの そてにふきこす しほかせの なるとはすれと てにもたまらす | 定家朝臣 | 十二 | 恋二 |
1118 | ありとてもあはぬためしのなとりかはくちたにはてねせせのむもれ木 ありとても あはぬためしの なとりかは くちたにはてね せせのうもれき | 寂蓮法師 | 十二 | 恋二 |
1119 | なけかすよいまはたおなしなとりかはせせのむもれ木くちはてぬとも なけかすよ いまはたおなし なとりかは せせのうもれき くちはてぬとも | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1120 | なみたかはたきつ心のはやきせをしからみかけてせく袖そなき なみたかは たきつこころの はやきせを しからみかけて せくそてそなき | 二条院讃岐 | 十二 | 恋二 |
1121 | よそなからあやしとたにもおもへかしこひせぬ人の袖のいろかは よそなから あやしとたにも おもへかし こひせぬひとの そてのいろかは | 高松院右衛門佐 | 十二 | 恋二 |
1122 | しのひあまりおつる涙をせきかへしをさふる袖ようきなもらすな しのひあまり おつるなみたを せきかへし おさふるそてよ うきなもらすな | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1123 | くれなゐに涙のいろのなりゆくをいくしほまてと君にとははや くれなゐに なみたのいろの なりゆくを いくしほまてと われにとははや | 道因法師 | 十二 | 恋二 |
1124 | 夢にても見ゆらんものをなけきつつうちぬるよゐの袖のけしきは ゆめにても みゆらむものを なけきつつ うちぬるよひの そてのけしきは | 式子内親王 | 十二 | 恋二 |
1125 | さめてのち夢なりけりとおもふにもあふはなこりのをしくやはあらぬ さめてのち ゆめなりけりと おもふにも あふはなこりの をしくやはあらぬ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 十二 | 恋二 |
1126 | 身にそへるそのおもかけのきえななん夢なりけりとわするはかりに みにそへる そのおもかけも きえななむ ゆめなりけりと わするはかりに | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1127 | 夢のうちにあふとみえつるねさめこそつれなきよりも袖はぬれけれ ゆめのうちに あふとみえつる ねさめこそ つれなきよりも そてはぬれけれ | 大納言実宗 | 十二 | 恋二 |
1128 | たのめをきしあさちかつゆに秋かけてこの葉ふりしくやとのかよひち たのめおきし あさちかつゆに あきかけて このはふりしく やとのかよひち | 前大納言忠良 | 十二 | 恋二 |
1129 | しのひあまりあまのかはせにことよせんせめては秋をわすれたにすな しのひあまり あまのかはせに ことよせむ せめてはあきを わすれたにすな | 正三位経家 | 十二 | 恋二 |
1130 | たのめてもはるけかるへきかへる山いくへの雲のうちにまつらん たのめても はるけかるへき かへるやま いくへのくもの したにまつらむ | 賀茂重政 | 十二 | 恋二 |
1131 | あふことはいつといふきのみねにおふるさしもたえせぬ思なりけり あふことは いつといふきの みねにおふる さしもたえせぬ おもひなりけり | 中宮大夫家房 | 十二 | 恋二 |
1132 | ふしのねのけふりもなをそたちのほるうへなきものはおもひなりけり ふしのねの けふりもなほそ たちのほる うへなきものは おもひなりけり | 家隆朝臣 | 十二 | 恋二 |
1133 | なき名のみたつたの山にたつ雲のゆくゑもしらぬなかめをそする なきなのみ たつたのやまに たつくもの ゆくへもしらぬ なかめをそする | 権中納言俊忠 | 十二 | 恋二 |
1134 | あふことのむなしきそらのうき雲は身をしる雨のたよりなりけり あふことの むなしきそらの うきくもは みをしるあめの たよりなりけり | 惟明親王 | 十二 | 恋二 |
1135 | わかこひはあふをかきりのたのみたにゆくゑもしらぬそらのうき雲 わかこひは あふをかきりの たのみたに ゆくへもしらぬ そらのうきくも | 右衛門督通具 | 十二 | 恋二 |
1136 | おもかけのかすめる月そやとりける春やむかしの袖のなみたに おもかけの かすめるつきそ やとりける はるやむかしの そてのなみたに | 皇太后宮大夫俊成女 | 十二 | 恋二 |
1137 | とこのしもまくらの氷きえわひぬむすひもをかぬ人の契に とこのしも まくらのこほり きえわひぬ むすひもおかぬ ひとのちきりに | 定家朝臣 | 十二 | 恋二 |
1138 | つれなさのたくひまてやはつらからぬ月をもめてしありあけの空 つれなさの たくひまてやは つらからぬ つきをもめてし ありあけのそら | 有家朝臣 | 十二 | 恋二 |
1139 | 袖のうへにたれゆへ月はやとるそとよそになしても人のとへかし そてのうへに たれゆゑつきは やとるそと よそになしても ひとのとへかし | 藤原秀能 | 十二 | 恋二 |
1140 | 夏引のてひきのいとのとしへてもたえぬ思にむすほほれつつ なつひきの てひきのいとの としへても たえぬおもひに むすほほれつつ | 嘉陽門院越前 | 十二 | 恋二 |
1141 | いく夜われ浪にしほれてきふねかはそてに玉ちる物おもふらん いくよわれ なみにしをれて きふねかは そてにたまちる ものおもふらむ | 久我建通(後京極摂政) | 十二 | 恋二 |
1142 | としもへぬいのる契ははつせ山おのへのかねのよその夕くれ としもへぬ いのるちきりは はつせやま をのへのかねの よそのゆふくれ | 定家朝臣 | 十二 | 恋二 |
1143 | うき身をはわれたにいとふいとへたたそをたにおなし心とおもはん うきみをは われたにいとふ いとへたた そをたにおなし こころとおもはむ | 皇太后宮大夫俊成 | 十二 | 恋二 |
1144 | こひしなんおなしうき名をいかにしてあふにかへつと人にいはれん こひしなむ おなしうきなを いかにして あふにかへつと ひとにいはれむ | 権中納言長方 | 十二 | 恋二 |
1145 | あすしらぬいのちをそおもふをのつからあらはあふよをまつにつけても あすしらぬ いのちをそおもふ おのつから あらはあふよを まつにつけても | 殷富門院大輔 | 十二 | 恋二 |
1146 | つれもなき人の心はうつせみのむなしきこひに身をやかへてん つれもなき ひとのこころは うつせみの むなしきこひに みをやかへてむ | 八条院高倉 | 十二 | 恋二 |
1147 | なにとなくさすかにおしきいのちかなありへは人や思しるとて なにとなく さすかにをしき いのちかな ありへはひとや おもひしるとて | 西行法師 | 十二 | 恋二 |
1148 | おもひしる人ありけりのよなりせはつきせす身をはうらみさらまし おもひしる ひとありあけの よなりせは つきせぬみをは うらみさらまし | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
1149 | わすれしのゆくすゑまてはかたけれはけふをかきりのいのちともかな わすれしの ゆくすゑまては かたけれは けふをかきりの いのちともかな | 儀同三司母 | 十三 | 恋三 |
1150 | かきりなくむすひをきつる草枕いつこのたひをおもひわすれん かきりなく むすひおきつる くさまくら いつこのたひを おもひわすれむ | 謙徳公 | 十三 | 恋三 |
1151 | おもふにはしのふることそまけにけるあふにしかへはさもあらはあれ おもふには しのふることそ まけにける あふにしかへは さもあらはあれ | 業平朝臣 | 十三 | 恋三 |
1152 | 昨日まてあふにしかへはと思しをけふはいのちのおしくもあるかな きのふまて あふにしかへはと おもひしを けふはいのちの をしくもあるかな | 廉義公 | 十三 | 恋三 |
1153 | あふことをけふまつかえのたむけ草いくよしほるるそてとかはしる あふことを けふまつかえの たむけくさ いくよしをるる そてとかはしる | 式子内親王 | 十三 | 恋三 |
1154 | こひしさにけふそたつぬるおく山の日かけのつゆに袖はぬれつつ こひしさに けふそたつぬる おくやまの ひかけのつゆに そてはぬれつつ | 源正清朝臣 | 十三 | 恋三 |
1155 | あふまてのいのちもかなとおもひしはくやしかりけるわか心かな あすまての いのちもかなと おもひしは くやしかりける わかこころかな | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1156 | 人心うす花そめのかり衣さてたにあらて(て=はイ)色やかはらん ひとこころ うすはなそめの かりころも さてたにあらて いろやかはらむ | 三条院女蔵人左近 | 十三 | 恋三 |
1157 | あひみてもかひなかりけりうはたまのはかなき夢におとるうつつは あひみても かひなかりけり うはたまの はかなきゆめに おとるうつつは | 興風 | 十三 | 恋三 |
1158 | なかなかのものおもひそめてねぬるよははかなき夢もえやはみえける なかなかに ものおもひそめて ねぬるよは はかなきゆめも えやはみえける | 実方朝臣 | 十三 | 恋三 |
1159 | 夢とても人にかたるなしるといへはたまくらならぬ枕たにせす ゆめとても ひとにかたるな しるといへは たまくらならぬ まくらたにせす | 伊勢 | 十三 | 恋三 |
1160 | まくらたにしらねはいはし見しままに君かたるなよ春のよの夢 まくらたに しらねはいはし みしままに きみかたるなよ はるのよのゆめ | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
1161 | わすれても人にかたるなうたたねのゆめみてのちもなかからしよを わすれても ひとにかたるな うたたねの ゆめみてのちも なからへしよを | 馬内侍 | 十三 | 恋三 |
1162 | つらかりしおほくのとしはわすられてひとよの夢をあはれとそみし つらかりし おほくのとしは わすられて ひとよのゆめを あはれとそみし | 藤原範永朝臣 | 十三 | 恋三 |
1163 | けさよりはいととおもひをたきましてなけきこりつむあふさかの山 けさよりは いととおもひを たきまして なけきこりつむ あふさかのやま | 高倉院御哥 | 十三 | 恋三 |
1164 | あしのやのしつはたおひのかたむすひ心やすくもうちとくるかな あしのやの しつはたおひの かたむすひ こころやすくも うちとくるかな | 俊頼朝臣 | 十三 | 恋三 |
1165 | かりそめにふしみののへの草枕つゆかかりきと人にかたるな かりそめに ふしみののへの くさまくら つゆけかりきと ひとにかたるな | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
1166 | いかにせんくすのうらふく秋風にした葉のつゆのかくれなき身を いかにせむ くすのうらふく あきかせに したはのつゆの かくれなきみを | 相模 | 十三 | 恋三 |
1167 | あけかたきふたみのうらによるなみのそてのみぬれておきつしま人 あけかたき ふたみのうらに よるなみの そてのみぬれて おきつしまひと | 実方朝臣 | 十三 | 恋三 |
1168 | あふことのあけぬよなからあけぬれはわれこそかへれ心やはゆく あふことの あけぬよなから あけぬれは われこそかへれ こころやはゆく | 伊勢 | 十三 | 恋三 |
1169 | 秋のよのありあけの月のいるまてにやすらひかねてかへりにしかな あきのよの ありあけのつきの いるまてに やすらひかねて かへりにしかな | 大宰帥敦道親王 | 十三 | 恋三 |
1170 | 心にもあらぬわか身のゆきかへりみちのそらにてきえぬへき哉 こころにも あらぬわかみの ゆきかへり みちのそらにて きえぬへきかな | 道信朝臣 | 十三 | 恋三 |
1171 | はかなくもあけにけるかなあさつゆのおきての後そきえまさりける はかなくも あけにけるかな あさつゆの おきてののちそ きえまさりける | 延喜御哥 | 十三 | 恋三 |
1172 | あさつゆのおきつるそらもおもほえすきえかへりつる心まとひに あさつゆの おきつるそらも おもほえす きえかへりつる こころまとひに | 更衣源周子 | 十三 | 恋三 |
1173 | をきそふるつゆやいかなるつゆならんいまはきえねとおもふわか身を おきそふる つゆやいかなる つゆならむ いまはきえねと おもふわかみを | 円融院御哥 | 十三 | 恋三 |
1174 | おもひいてていまはけぬへしよもすからおきうかりつるきくのうへの露 おもひいてて いまはけぬへし よもすから おきうかりつる きくのうへのつゆ | 謙徳公 | 十三 | 恋三 |
1175 | うはたまのよるの衣をたちなからかへる物とはいまそしりぬる うはたまの よるのころもを たちなから かへるものとは いまそしりぬる | 清慎公 | 十三 | 恋三 |
1176 | みしかよののこりすくなくふけゆけはかねて物うきあかつきの空 みしかよの のこりすくなく ふけゆけは かねてものうき あかつきのそら | 藤原清正 | 十三 | 恋三 |
1177 | あくといへはしつ心なきはるのよの夢とや君をよるのみはみん あくといへは しつこころなき はるのよの ゆめとやきみを よるのみはみむ | 大納言清蔭 | 十三 | 恋三 |
1178 | けさはしもなけきもすらんいたつらに春のよひとよ夢をたにみて けさはしも なけきもすらむ いたつらに はるのよひとよ ゆめをたにみて | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
1179 | 心からしはしとつつむものからにしきのはねかきつらきけさかな こころから しはしとつつむ ものからに しきのはねかき つらきけさかな | 赤染衛門 | 十三 | 恋三 |
1180 | わひつつも君か心にかなふとてけさもたもとをほしそわつらふ わひつつも きみかこころに かなふとて けさもたもとを ほしそわつらふ | 久我建通(後京極摂政) | 十三 | 恋三 |
1181 | たまくらにかせるたもとのつゆけきはあけぬとつくる涙なりけり たまくらに かせるたもとの つゆけきは あけぬとつくる なみたなりけり | 亭子院御哥 | 十三 | 恋三 |
1182 | しはしまてまた夜はふかしなか月のありあけの月は人まとふ也 しはしまて またよはふかし なかつきの ありあけのつきは ひとまとふなり | 藤原惟成 | 十三 | 恋三 |
1183 | おきて見は袖のみぬれていととしく草葉の玉のかすやまさらん おきてみは そてのみぬれて いととしく くさはのたまの かすやまさらむ | 実方朝臣 | 十三 | 恋三 |
1184 | あけぬれとまたきぬきぬになりやらて人の袖をもぬらしつるかな あけぬれと またきぬきぬに なりやらて ひとのそてをも ぬらしつるかな | 二条院讃岐 | 十三 | 恋三 |
1185 | おもかけのわするましきわかれかななこりを人の月にととめて おもかけの わすらるましき わかれかな なこりをひとの つきにととめて | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1186 | またもこん秋をたのむのかりたにもなきてそかへる春のあけほの またもこむ あきをたのむの かりたにも なきてそかへる はるのあけほの | 久我建通(後京極摂政) | 十三 | 恋三 |
1187 | たれゆきて君につけましみちしはのつゆもろともにきえなましかは たれゆきて きみにつけまし みちしはの つゆもろともに きえなましかは | 賀茂成助 | 十三 | 恋三 |
1188 | きえかへりあるかなきかのわか身かなうらみてかへるみちしはのつゆ きえかへり あるかなきかの わかみかな うらみてかへる みちしはのつゆ | 左大将朝光 | 十三 | 恋三 |
1189 | あさほらけおきつるしものきえかへりくれまつほとの袖をみせはや あさほらけ おきつるしもの きえかへり くれまつほとの そてをみせはや | 華山院御哥 | 十三 | 恋三 |
1190 | 庭におふるゆふかけ草のしたつゆやくれをまつまの涙なるらん にはにおふる ゆふかけくさの したつゆや くれをまつまの なみたなるらむ | 藤原道経 | 十三 | 恋三 |
1191 | まつよゐにふけゆくかねのこゑきけはあかぬわかれのとりは物かは まつよひの ふけゆくかねの こゑきけは あかぬわかれの とりはものかは | 太皇太后宮小侍従 | 十三 | 恋三 |
1192 | これも又なかきわかれになりやせんくれをまつへきいのちならねは これもまた なかきわかれに なりやせむ くれをまつへき いのちならねは | 藤原知家 | 十三 | 恋三 |
1193 | ありあけはおもひいてあれやよこ雲のたたよはれつるしののめのそら ありあけは おもひいてあれや よこくもの たたよはれつる しののめのそら | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1194 | 大井かは井せきの水のわくらはにけふはたのめしくれにやはあらぬ おほゐかは ゐせきのみつの わくらはに けふはたのめし くれにやはあらぬ | 清原元輔 | 十三 | 恋三 |
1195 | ゆふくれにいのちかけたるかけろふのありやあらすやとふもはかなし ゆふくれに いのちかけたる かけろふの ありやあらすや とふもはかなし | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
1196 | あちきなくつらきあらしの声もうしなとゆふくれにまちならひけん あちきなく つらきあらしの こゑもうし なとゆふくれに まちならひけむ | 定家朝臣 | 十三 | 恋三 |
1197 | たのめすは人はまつちの山なりとねなまし物をいさよひの月 たのめすは ひとをまつちの やまなりと ねなましものを いさよひのつき | 太上天皇 | 十三 | 恋三 |
1198 | なにゆへと思もいれぬゆふへたにまちいてし物を山のはの月 なにゆゑと おもひもいれぬ ゆふへたに まちいてしものを やまのはのつき | 久我建通(後京極摂政) | 十三 | 恋三 |
1199 | きくやいかにうはのそらなる風たにもまつにおとするならひありとは きくやいかに うはのそらなる かせたにも まつにおとする ならひありとは | 後鳥羽院宮内卿 | 十三 | 恋三 |
1200 | 人はこて風のけしきもふけぬるにあはれに雁のをとつれてゆく ひとはこて かせのけしきも ふけぬるに あはれにかりの おとつれてゆく | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1201 | いかかふく身にしむ色のかはるかなたのむるくれの松風の声 いかかふく みにしむいろの かはるかな たのむるくれの まつかせのこゑ | 八条院高倉 | 十三 | 恋三 |
1202 | たのめをく人もなからの山にたにさよふけぬれは松風の声 たのめおく ひともなからの やまにたに さよふけぬれは まつかせのこゑ | 鴨長明 | 十三 | 恋三 |
1203 | いまこんとたのめしことをわすれすはこのゆふくれの月やまつらん いまこむと たのめしことを わすれすは このゆふくれの つきやまつらむ | 藤原秀能 | 十三 | 恋三 |
1204 | 君まつとねやへもいらぬまきのとにいたくなふけそ山の葉の月 きみまつと ねやへもいらぬ まきのとに いたくなふけそ やまのはのつき | 式子内親王 | 十三 | 恋三 |
1205 | たのめぬに君くやとまつよゐのまのふけゆかてたたあけなましかは たのめぬに きみくやとまつ よひのまの ふけゆかてたた あけなましかは | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1206 | かへるさの物とや人のなかむらんまつよなからのありあけの月 かへるさの ものとやひとの なかむらむ まつよなからの ありあけのつき | 定家朝臣 | 十三 | 恋三 |
1207 | きみこんといひしよことにすきぬれはたのまぬもののこひつつそふる きみこむと いひしよことに すきぬれは たのまぬものの こひつつそふる | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
1208 | 衣手に山おろしふきてさむき夜を君きまさすはひとりかもねん ころもてに やまおろしふきて さむきよを きみきまさすは ひとりかもねむ | 柿本人麻呂(人麿) | 十三 | 恋三 |
1209 | あふことはこれやかきりのたひならん草の枕も霜かれにけり あふことは これやかきりの たひならむ くさのまくらも しもかれにけり | 馬内侍 | 十三 | 恋三 |
1210 | なれゆくはうき世なれはやすまのあまのしほやき衣まとをなるらん なれゆくは うきよなれはや すまのあまの しほやきころも まとほなるらむ | 女御徽子女王 | 十三 | 恋三 |
1211 | きりふかき秋の野中のわすれ水たえまかちなる比にもあるかな きりふかき あきののなかの わすれみつ たえまかちなる ころにもあるかな | 坂上是則 | 十三 | 恋三 |
1212 | 世のつねの秋風ならはおきの葉にそよとはかりのをとはしてまし よのつねの あきかせならは をきのはに そよとはかりの おとはしてまし | 安法々師女 | 十三 | 恋三 |
1213 | あしひきの山のかけ草むすひをきてこひやわたらんあふよしをなみ あしひきの やまのかけくさ むすひおきて こひやわたらむ あふよしをなみ | 中納言家持 | 十三 | 恋三 |
1214 | あつまちにかるてふかやのみたれつつつかのまもなくこひやわたらん あつまちに かるてふかやの みたれつつ つかのまもなく こひやわたらむ | 延喜御哥 | 十三 | 恋三 |
1215 | むすひをきしたもとたに見ぬ花すすきかるともかれしきみしとかすは むすひおきし たもとたにみぬ はなすすき かるともかれし きみしとかすは | 権中納言敦忠 | 十三 | 恋三 |
1216 | 霜のうへにけさふる雪のさむけれはかさねて人をつらしとそ思 しものうへに けさふるゆきの さむけれは かさねてひとを つらしとそおもふ | 源重之 | 十三 | 恋三 |
1217 | ひとりふすあれたるやとのとこのうへにあはれいくよのねさめしつらん ひとりふす あれたるやとの とこのうへに あはれいくよの ねさめしつらむ | 安法々師女 | 十三 | 恋三 |
1218 | やましろのよとのわかこもかりにきて袖ぬれぬとはかこたさらなん やましろの よとのわかこも かりにきて そてぬれぬとは かこたさらなむ | 重之 | 十三 | 恋三 |
1219 | かけておもふ人もなけれとゆふされはおもかけたえぬ玉かつらかな かけておもふ ひともなけれと ゆふされは おもかけたえぬ たまかつらかな | 紀貫之 | 十三 | 恋三 |
1220 | いつはりをたたすのもりのゆふたすきかけつつちかへわれをおもはは いつはりを たたすのもりの ゆふたすき かけつつちかへ われをおもはは | 平定文 | 十三 | 恋三 |
1221 | いかはかりうれしからましもろともにこひらるる身もくるしかりせは いかはかり うれしからまし もろともに こひらるるみも くるしかりせは | 鳥羽院御哥 | 十三 | 恋三 |
1222 | われはかりつらきをしのふ人やあるといまよにあらは思ひあはせよ われはかり つらきをしのふ ひとやあると いまよにあらは おもひあはせむ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 十三 | 恋三 |
1223 | たたたのめたとへは人のいつはりをかさねてこそは又もうらみめ たたたのめ たとへはひとの いつはりを かさねてこそは またもうらみめ | 前大僧正慈円 | 十三 | 恋三 |
1224 | つらしとはおもふ物からふししはのしはしもこりぬ心なりけり つらしとは おもふものから ふししはの しはしもこりぬ こころなりけり | 右衛門督家通 | 十三 | 恋三 |
1225 | たのめこしことの葉はかりととめをきてあさちかつゆときえなましかは たのめこし ことのははかり ととめおきて あさちかつゆと きえなましかは | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
1226 | あはれにもたれかはつゆもおもはましきえのこるへきわか身ならねは あはれにも たれかはつゆも おもはまし きえのこるへき わかみならねは | 久我建通(後京極摂政) | 十三 | 恋三 |
1227 | つらきをもうらみぬわれにならふなようき身をしらぬ人もこそあれ つらきをも うらみぬわれに ならふなよ うきみをしらぬ ひともこそあれ | 太皇太后宮小侍従 | 十三 | 恋三 |
1228 | なにかいとふよもなからへしさのみやはうきにたへたるいのちなるへき なにかいとふ よもなからへし さのみやは うきにたへたる いのちなるへき | 殷富門院大輔 | 十三 | 恋三 |
1229 | こひしなんいのちは猶もおしきかなおなしよにあるかひはなけれと こひしなむ いのちはなほも をしきかな おなしよにある かひはなけれと | 刑部卿頼輔 | 十三 | 恋三 |
1230 | あはれとて人の心のなさけあれなかすならぬにはよらぬなけきを あはれとて ひとのこころの なさけあれは かすならぬには よらぬなけきを | 西行法師 | 十三 | 恋三 |
1231 | 身をしれは人のとかとはおもはぬにうらみかほにもぬるる袖かな みをしれは ひとのとかとは おもはぬに うらみかほにも ぬるるそてかな | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
1232 | よしさらはのちのよとたにたのめをけつらさにたへぬ身ともこそなれ よしさらは のちのよとたに たのめおけ つらさにたへぬ みともこそなれ | 皇太后宮大夫俊成 | 十三 | 恋三 |
1233 | たのめをかんたたさはかりを契にてうきよの中の夢になしてよ たのめおかむ たたさはかりを ちきりにて うきよのなかの ゆめになしてよ | 藤原定家朝臣母 | 十三 | 恋三 |
1234 | よゐよゐにきみをあはれとおもひつつ人にはいはてねをのみそなく よひよひに きみをあはれと おもひつつ ひとにはいはて ねをのみそなく | 清慎公 | 十四 | 恋四 |
1235 | 君たにもおもひいてけるよゐよゐをまつはいかなる心ちかはする きみたにも おもひいてける よひよひを まつはいかなる ここちかはする | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1236 | こひしさにしぬるいのちを思いててとふ人あらはなしとこたへよ こひしさに しぬるいのちを おもひいてて とふひとあらは なしとこたへよ | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1237 | わかれては昨日けふこそへたてつれちよをへたる心ちのみする わかれては きのふけふこそ へたてつれ ちよしもへたる ここちのみする | 謙徳公 | 十四 | 恋四 |
1238 | きのふともけふともしらす今はとてわかれしほとの心まとひに きのふとも けふともしらす いまはとて わかれしほとの こころまよひに | 恵子女王<贈皇后宮母> | 十四 | 恋四 |
1239 | たえぬるかかけたに見えはとふへきにかたみの水はみくさゐにけり たえぬるか かけたにみえは とふへきを かたみのみつは みくさゐにけり | 右大将道綱母 | 十四 | 恋四 |
1240 | かたかたにひきわかれつつあやめくさあらぬねをやはかけんとおもひし かたかたに ひきわかれつつ あやめくさ あらぬねをやは かけむとおもひし | 陽明門院 | 十四 | 恋四 |
1241 | ことの葉のうつろふたにもあるものをいとと時雨のふりまさるらん ことのはの うつろふたにも あるものを いととしくれの ふりまさるらむ | 伊勢 | 十四 | 恋四 |
1242 | ふく風につけてもとはんささかにのかよひしみちはそらにたゆとも ふくかせに つけてもとはむ ささかにの かよひしみちは そらにたゆとも | 右大将道綱母 | 十四 | 恋四 |
1243 | くすの葉にあらぬわか身も秋風のふくにつけつつうらみつる哉 くすのはに あらぬわかみも あきかせの ふくにつけつつ うらみつるかな | 天暦御哥 | 十四 | 恋四 |
1244 | 霜さやく野辺のくさはにあらねともなとか人めのかれまさるらん しもさやく のへのくさはに あらねとも なとかひとめの かれまさるらむ | 延喜御哥 | 十四 | 恋四 |
1245 | あさちおふる野へやかるらん山かつのかきほのくさは色もかはらす あさちおふる のへやかるらむ やまかつの かきほのくさは いろもかはらす | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1246 | かすむらんほとをもしらすしくれつつすきにし秋のもみちをそみる かすむらむ ほとをもしらす しくれつつ すきにしあきの もみちをそみる | 女御徽子女王 | 十四 | 恋四 |
1247 | いまこんとたのめつつふることの葉そときはに見ゆるもみちなりける いまこむと たのめつつふる ことのはそ ときはにみゆる もみちなりける | 天暦御哥 | 十四 | 恋四 |
1248 | たまほこのみちははるかにあらねともうたて雲井にまとふ比かな たまほこの みちははるかに あらねとも うたてくもゐに まとふころかな | 朱雀院御哥 | 十四 | 恋四 |
1249 | 思ひやる心はそらにあるものをなとか雲ゐにあひみさるらん おもひやる こころはそらに あるものを なとかくもゐに あひみさるらむ | 女御熈子女王 | 十四 | 恋四 |
1250 | 春雨のふりしく比かあをやきのいととみたれて人そこひしき はるさめの ふりしくころか あをやきの いとみたれつつ ひとそこひしき | 後朱雀院御哥 | 十四 | 恋四 |
1251 | あをやきのいとみたれたるこのころは一すちにしも思よられし あをやきの いとみたれたる このころは ひとすちにしも おもひよられし | 女御藤原生子 | 十四 | 恋四 |
1252 | あをやきのいとはかたかたなひくともおもひそめてん色はかはらし あをやきの いとはかたかた なひくとも おもひそめてむ いろそかはらし | 後朱雀院御哥 | 十四 | 恋四 |
1253 | あさみとりふかくもあらぬあをやきはいろかはらしといかかたのまん あさみとり ふかくもあらぬ あをやきは いろかはらしと いかかたのまむ | 女御生子 | 十四 | 恋四 |
1254 | いにしへのあふひと人はとかむともなをそのかみのけふそわすれぬ いにしへの あふひとひとは とかむとも なほそのかみの けふそわすれぬ | 実方朝臣 | 十四 | 恋四 |
1255 | かれにけるあふひのみこそかなしけれ哀と見すやかものみつかき かれにける あふひのみこそ かなしけれ あはれとみすや かものみつかき | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1256 | あふことをはつかに見えし月かけのおほろけにやはあはれとはおもふ あふことを はつかにみえし つきかけの おほろけにやは あはれともおもふ | 天暦御哥 | 十四 | 恋四 |
1257 | さらしなやをはすて山のありあけのつきすもものを思ふ比かな さらしなや をはすてやまの ありあけの つきすもものを おもふころかな | 伊勢 | 十四 | 恋四 |
1258 | いつとても哀とおもふをねぬるよの月はおほろけなくなくそみし いつとても あはれとおもふを ねぬるよの つきはおほろけ なくなくそみし | 中務 | 十四 | 恋四 |
1259 | さらしなの山よりほかにてる月もなくさめかねつこのころの空 さらしなの やまよりほかに てるつきも なくさめかねつ このころのそら | 躬恒 | 十四 | 恋四 |
1260 | あまのとををしあけかたの月みれはうき人しもそこひしかりける あまのとを おしあけかたの つきみれは うきひとしもそ こひしかりける | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1261 | ほの見えし月をこひしとかへるさの雲ちの浪にぬれてこしかな ほのみえし つきをこひしと かへるさの くもちのなみに ぬれてこしかな | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1262 | いるかたはさやかなりける月かけをうはのそらにもまちしよゐかな いるかたは さやかなりける つきかけを うはのそらにも まちしよひかな | 紫式部 | 十四 | 恋四 |
1263 | さしてゆく山の葉もみなかきくもり心のそらにきえし月かけ さしてゆく やまのはもみな かきくもり こころのそらに きえしつきかけ | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1264 | いまはとてわかれしほとの月をたになみたにくれてなかめやはせし いまはとて わかれしほとの つきをたに なみたにくれて なかめやはせし | 藤原経衡 | 十四 | 恋四 |
1265 | おもかけのわすれぬ人によそへつついるをそしたふ秋のよの月 おもかけの わすれぬひとに よそへつつ いるをそしたふ あきのよのつき | 京極関白家肥後 | 十四 | 恋四 |
1266 | うき人の月はなにそのゆかりそとおもひなからもうちなかめつつ うきひとの つきはなにその ゆかりそと おもひなからも うちなかめつつ | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 十四 | 恋四 |
1267 | 月のみやうわのそらなるかたみにておもひもいては心かよはん つきのみや うはのそらなる かたみにて おもひもいては こころかよはむ | 西行法師 | 十四 | 恋四 |
1268 | くまもなきおりしも人を思いてて心と月をやつしつるかな くまもなき をりしもひとを おもひいてて こころとつきを やつしつるかな | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1269 | ものおもひてなかむるころの月のいろにいかはかりなる哀そむらん ものおもひて なかむるころの つきのいろに いかはかりなる あはれそむらむ | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1270 | くもれかしなかむるからにかなしきは月におほゆる人のおもかけ くもれかし なかむるからに かなしきは つきにおほゆる ひとのおもかけ | 八条院高倉 | 十四 | 恋四 |
1271 | わすらるる身をしる袖のむら雨につれなく山の月はいてけり わすらるる みをしるそての むらさめに つれなくやまの つきはいてけり | 太上天皇 | 十四 | 恋四 |
1272 | めくりあはんかきりはいつとしらねとも月なへたてそよそのうき雲 めくりあはむ かきりはいつと しらねとも つきなへたてそ よそのうきくも | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1273 | わかなみたもとめて袖にやとれ月さりとて人のかけは見ねとも わかなみた もとめてそてに やとれつき さりとてひとの かけはみえねと | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1274 | こひわふる涙やそらにくもるらんひかりもかはるねやの月かけ こひわたる なみたやそらに くもるらむ ひかりもかはる ねやのつきかけ | 権中納言公経 | 十四 | 恋四 |
1275 | いくめくりそらゆく月もへたてきぬ契し中はよそのうき雲 いくめくり そらゆくつきも へたてきぬ ちきりしなかは よそのうきくも | 左衛門督通光 | 十四 | 恋四 |
1276 | いまこんと契しことは夢なから見しよににたる有あけの月 いまこむと ちきりしことは ゆめなから みしよににたる ありあけのつき | 右衛門督通具 | 十四 | 恋四 |
1277 | わすれしといひしはかりのなこりとてそのよの月はめくりきにけり わすれしと いひしはかりの なこりとて そのよのつきは めくりきにけり | 有家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1278 | おもひいててよなよな月にたつねすはまてとちきりし中やたえなん おもひいてて よなよなつきに たつねすは まてとちきりし なかやたえなむ | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1279 | わするなよいまは心のかはるともなれしそのよの有明の月 わするなよ いまはこころの かはるとも なれしそのよの ありあけのつき | 家隆朝臣 | 十四 | 恋四 |
1280 | そのままに松の嵐もかはらぬをわすれやしぬるふけしよの月 そのままに まつのあらしも かはらぬを わすれやしぬる ふけしよのつき | 法眼宗円 | 十四 | 恋四 |
1281 | 人そうきたのめぬ月はめくりきてむかしわすれぬよもきふのやと ひとそうき たのめぬつきは めくりきて むかしわすれぬ よもきふのやと | 藤原秀能 | 十四 | 恋四 |
1282 | わくらはにまちつるよゐもふけにけりさやは契し山のはの月 わくらはに まちつるよひも ふけにけり さやはちきりし やまのはのつき | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1283 | こぬ人をまつとはなくてまつよゐのふけゆくそらの月もうらめし こぬひとを まつとはなくて まつよひの ふけゆくそらの つきもうらめし | 有家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1284 | 松山と契し人はつれなくて袖こすなみにのこる月かけ まつやまと ちきりしひとは つれなくて そてこすなみに のこるつきかけ | 定家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1285 | ならひこしたかいつはりもまたしらてまつとせしまの庭のよもきふ ならひこし たかいつはりも またしらて まつとせしまの にはのよもきふ | 皇太后宮大夫俊成女 | 十四 | 恋四 |
1286 | あとたえてあさちかすゑになりにけりたのめしやとのにはのしら露 あとたえて あさちかすゑに なりにけり たのめしやとの にはのしらつゆ | 二条院讃岐 | 十四 | 恋四 |
1287 | こぬ人をおもひたえたる庭のおものよもきかすゑそまつにまされる こぬひとを おもひたえたる にはのおもの よもきかすゑそ まつにまされる | 寂蓮法師 | 十四 | 恋四 |
1288 | たつねても袖にかくへきかたそなきふかきよもきの露のかことを たつねても そてにかくへき かたそなき ふかきよもきの つゆのかことを | 左衛門督通光 | 十四 | 恋四 |
1289 | かたみとてほのふみわけしあともなしこしはむかしの庭のおきはら かたみとて ほのふみわけし あともなし こしはむかしの にはのをきはら | 藤原保季朝臣 | 十四 | 恋四 |
1290 | なこりをは庭のあさちにととめをきてたれゆへ君かすみうかれけん なこりをは にはのあさちに ととめおきて たれゆゑきみか すみうかれけむ | 法橋行遍 | 十四 | 恋四 |
1291 | わすれすはなれし袖もやこほるらんねぬよのとこのしものさむしろ わすれすは なれしそてもや こほるらむ ねぬよのとこの しものさむしろ | 定家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1292 | 風ふかはみねにわかれん雲をたにありしなこりのかたみともみよ かせふかは みねにわかれむ くもをたに ありしなこりの かたみともみよ | 家隆朝臣 | 十四 | 恋四 |
1293 | いはさりきいまこんまてのそらの雲月日へたてて物おもへとは いはさりき いまこむまての そらのくも つきひへたてて ものおもへとは | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1294 | おもひいてよたかかねことのすゑならんきのふの雲のあとの山風 おもひいてよ たかかねことの すゑならむ きのふのくもの あとのやまかせ | 家隆朝臣 | 十四 | 恋四 |
1295 | わすれゆく人ゆへそらをなかむれはたえたえにこそ雲もみえけれ わすれゆく ひとゆゑそらを なかむれは たえたえにこそ くももみえけれ | 刑部卿範兼 | 十四 | 恋四 |
1296 | わすれなはいけらん物かとおもひしにそれもかなはぬこの世なりけり わすれなは いけらむものかと おもひしに それもかなはぬ このよなりけり | 殷富門院大輔 | 十四 | 恋四 |
1297 | 〈墨〉°うとくなる人をなにとてうらむらんしられすしらぬおりもありしに うとくなる ひとをなにとて うらむらむ しられすしらぬ をりもありしに | 西行法師 | 十四 | 恋四 |
1298 | 〈墨〉°今そしるおもひいてよと契しはわすれんとてのなさけなりけり いまそしる おもひいてよと ちきりしは わすれむとての なさけなりけり | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1299 | あひ見しはむかしかたりのうつつにてそのかねことを夢になせとや あひみしは むかしかたりの うつつにて そのかねことを ゆめになせとや | 源師房 | 十四 | 恋四 |
1300 | あはれなる心のやみのゆかりとも見しよの夢をたれかさためん あはれなそ こころのやみの ゆかりとも みしよのゆめを たれかさためむ | 権中納言公経 | 十四 | 恋四 |
1301 | ちきりきやあかぬわかれに露をきし暁はかりかたみなれとは ちきりきや あかぬわかれに つゆおきし あかつきはかり かたみなれとは | 右衛門督通具 | 十四 | 恋四 |
1302 | うらみわひまたしいまはの身なれともおもひなれにし夕くれの空 うらみわひ またしいまはの みなれとも おもひなれにし ゆふくれのそら | 寂蓮法師 | 十四 | 恋四 |
1303 | わすれしのことの葉いかになりにけんたのめしくれは秋風そふく わすれしの ことのはいかに なりにけむ たのめしくれは あきかせそふく | 宜秋門院丹後 | 十四 | 恋四 |
1304 | おもひかねうちぬるよゐもありなましふきたにすさへ庭の松風 おもひかね うちぬるよひも ありなまし ふきたにすさへ にはのまつかせ | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1305 | さらてたにうらみんとおもふわきもこか衣のすそに秋風そふく さらてたに うらみむとおもふ わきもこか ころものすそに あきかせそふく | 有家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1306 | 心にはいつもあきなるねさめかな身にしむ風のいくよともなく こころには いつもあきなる ねさめかな みにしむかせの いくよともなく | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1307 | あはれとてとふ人のなとなかるらんものおもふやとのおきのうは風 あはれとて とふひとのなと なかるらむ ものおもふやとの をきのうはかせ | 西行法師 | 十四 | 恋四 |
1308 | わかこひは今をかきりとゆふまくれおきふく風のをとつれてゆく わかこひは いまをかきりと ゆふまくれ をきふくかせの おとつれてゆく | 俊恵法師 | 十四 | 恋四 |
1309 | いまはたた心のほかにきく物をしらすかほなるおきのうは風 いまはたた こころのほかに きくものを しらすかほなる をきのうはかせ | 式子内親王 | 十四 | 恋四 |
1310 | いつもきく物とや人の思らんこぬゆふくれの秋風のこゑ いつもきく ものとやひとの おもふらむ こぬゆふくれの あきかせのこゑ | 久我建通(後京極摂政) | 十四 | 恋四 |
1311 | 心あらはふかすもあらなんよゐよゐに人まつやとの庭の松風 こころあらは ふかすもあらなむ よひよひに ひとまつやとの にはのまつかせ | 前大僧正慈円 | 十四 | 恋四 |
1312 | さとはあれぬ(ぬ=て)むなしきとこのあたりまて身はならはしの秋風そ吹 さとはあれぬ むなしきとこの あたりまて みはならはしの あきかせそふく | 寂蓮法師 | 十四 | 恋四 |
1313 | さとはあれぬおのへの宮のをのつからまちこしよゐも昔なりけり さとはあれぬ をのへのみやの おのつから まちこしよひも むかしなりけり | 太上天皇 | 十四 | 恋四 |
1314 | ものおもはてたたおほかたのつゆにたにぬるれはぬるる秋のたもとを ものおもはて たたおほかたの つゆにたに ぬるれはぬるる あきのたもとを | 有家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1315 | 草枕むすひさためんかたしらすならはぬ野への夢のかよひち くさまくら むすひさためむ かたしらす ならはぬのへの ゆめのかよひち | 雅経 | 十四 | 恋四 |
1316 | さてもなをとはれぬ秋のゆふは山雲ふく風もみねにみゆらん さてもなほ とはれぬあきの ゆふはやま くもふくかせの みねにみゆらむ | 家隆朝臣 | 十四 | 恋四 |
1317 | おもひいるふかき心のたよりまて見しはそれともなき山ち哉 おもひいる ふかきこころの たよりまて みしはそれとも なきやまちかな | 藤原秀能 | 十四 | 恋四 |
1318 | なかめても哀とおもへおほかたのそらたにかなし秋の夕くれ なかめても あはれとおもへ おほかたの そらたにかなし あきのゆふくれ | 鴨長明 | 十四 | 恋四 |
1319 | ことの葉のうつりし秋もすきぬれはわか身時雨とふる涙かな ことのはの うつりしあきも すきぬれは わかみしくれと ふるなみたかな | 右衛門督通具 | 十四 | 恋四 |
1320 | きえわひぬうつろふ人の秋のいろに身をこからしのもりの白露 きえわひぬ うつろふひとの あきのいろに みをこからしの もりのしたつゆ | 定家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1321 | こぬ人を秋のけしきやふけぬらんうらみによはる松むしのこゑ こぬひとを あきのけしきや ふけぬらむ うらみによわる まつむしのこゑ | 寂蓮法師 | 十四 | 恋四 |
1322 | わかこひは庭のむら萩うらかれて人をも身をも秋の夕くれ わかこひは にはのむらはき うらかれて ひとをもみをも あきのゆふくれ | 前大僧正慈円 | 十四 | 恋四 |
1323 | 袖のつゆもあらぬ色にそきえかへるうつれはかはるなけきせしまに そてのつゆも あらぬいろにそ きえかへる うつれはかはる なけきせしまに | 太上天皇 | 十四 | 恋四 |
1324 | むせふともしらしな心かはらやにわれのみけたぬしたのけふりは むせふとも しらしなこころ かはらやに われのみけたぬ したのけふりは | 定家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1325 | しられしなおなし袖にはかよふともたか夕くれとたのむ秋風 しられしな おなしそてには かよふとも たかゆふくれと たのむあきかせ | 家隆朝臣 | 十四 | 恋四 |
1326 | つゆはらふねさめは秋のむかしにて見はてぬ夢にのこるおもかけ つゆはらふ ねさめはあきの むかしにて みはてぬゆめに のこるおもかけ | 皇太后宮大夫俊成女 | 十四 | 恋四 |
1327 | 心こそゆくゑもしらねみわの山すきの木すゑの夕くれの空 こころこそ ゆくへもしらね みわのやま すきのこすゑの ゆふくれのそら | 前大僧正慈円 | 十四 | 恋四 |
1328 | さりともとまちし月日そうつりゆく心の花の色にまかせて さりともと まちしつきひそ うつりゆく こころのはなの いろにまかせて | 式子内親王 | 十四 | 恋四 |
1329 | いきてよもあすまて人もつらからしこの夕くれをとははとへかし いきてよも あすまてひとは つらからし このゆふくれを とははとへかし | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1330 | 暁のなみたやそらにたくふらん袖におちくるかねのおと哉 あかつきの なみたやそらに たくふらむ そてにおちくる かねのおとかな | 前大僧正慈円 | 十四 | 恋四 |
1331 | つくつくとおもひあかしのうらちとりなみのまくらになくなくそきく つくつくと おもひあかしの うらちとり なみのまくらに なくなくそきく | 権中納言公経 | 十四 | 恋四 |
1332 | たつねみるつらき心のおくのうみよしほひのかたのいふかひもなし たつねみる つらきこころの おくのうみよ しほひのかたの いふかひもなし | 定家朝臣 | 十四 | 恋四 |
1333 | 見し人のおもかけとめよきよみかた袖にせきもる浪のかよひち みしひとの おもかけとめよ きよみかた そてにせきもる なみのかよひち | 雅経 | 十四 | 恋四 |
1334 | ふりにけり時雨は袖に秋かけていひしはかりをまつとせしまに ふりにけり しくれはそてに あきかけて いひしはかりを まつとせしまに | 皇太后宮大夫俊成女 | 十四 | 恋四 |
1335 | かよひこしやとのみちしはかれかれにあとなき霜のむすほほれつつ かよひこし やとのみちしは かれかれに あとなきしもの むすほほれつつ | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
1336 | しろたへの袖のわかれにつゆおちて身にしむいろの秋風そふく しろたへの そてのわかれに つゆおちて みにしむいろの あきかせそふく | 藤原定家朝臣 | 十五 | 恋五 |
1337 | 思いる身はふかくさのあきのつゆたのめしすゑやこからしの風 おもひいる みはふかくさの あきのつゆ たのめしすゑや こからしのかせ | 藤原家隆朝臣 | 十五 | 恋五 |
1338 | 野辺のつゆはいろもなくてやこほれつるそてよりすくるおきのうは風 のへのつゆは いろもなくてや こほれつる そてよりすくる をきのうはかせ | 前大僧正慈円 | 十五 | 恋五 |
1339 | こひわひて野辺のつゆとはきえぬともたれか草葉を哀とはみん こひわひて のへのつゆとは きえぬとも たれかくさはを あはれとはみむ | 左近中将公衡 | 十五 | 恋五 |
1340 | とへかしなお花かもとのおもひくさしほるる野辺のつゆはいかにと とへかしな をはなかもとの おもひくさ しをるるのへの つゆはいかにと | 右衛門督通具 | 十五 | 恋五 |
1341 | よのまにもきゆへき物をつゆしものいかにしのへとたのめをくらん よのまにも きゆへきものを つゆしもの いかにしのへと たのめおくらむ | 権中納言俊忠 | 十五 | 恋五 |
1342 | あたなりとおもひしかとも君よりはものわすれせぬ袖のうはつゆ あたなりと おもひしかとも きみよりは ものわすれせぬ そてのうはつゆ | 道信朝臣 | 十五 | 恋五 |
1343 | おなしくはわか身もつゆときえななんきえなはつらきことの葉も見し〈朱〉/ おなしくは わかみもつゆと きえななむ きえなはつらき ことのはもみし | 藤原元真 | 十五 | 恋五 |
1344 | いまこんといふことの葉もかれゆくによな〳〵つゆのなににをくらん いまこむと いふことのはも かれゆくに よなよなつゆの なににおくらむ | 和泉式部 | 十五 | 恋五 |
1345 | あたことのはにをくつゆのきえにしをある物とてや人のとふらん あたことの はにおくつゆの きえにしを あるものとてや ひとのとふらむ | 藤原長能 | 十五 | 恋五 |
1346 | うちはへていやはねらるる宮木ののこはきかした葉いろにいてしより うちはへて いやはねらるる みやきのの こはきかしたは いろにいてしより | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1347 | はきの葉やつゆのけしきもうちつけにもとよりかはる心ある物を はきのはや つゆのけしきも うちつけに もとよりかはる こころあるものを | 藤原惟成 | 十五 | 恋五 |
1348 | よもすからきえかへりつるわか身かななみたのつゆにむすほほれつつ よもすから きえかへりつる わかみかな なみたのつゆに むすほほれつつ | 華山院御哥 | 十五 | 恋五 |
1349 | 君かせぬわかたまくらは草なれやなみたのつゆのよな〳〵そをく きみかせぬ わかたまくらは くさなれや なみたのつゆの よなよなそおく | 光孝天皇御哥 | 十五 | 恋五 |
1350 | つゆはかりをくらん袖はたのまれすなみたの河のたきつせなれは つゆはかり おくらむそては たのまれす なみたのかはの たきつせなれは | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1351 | 思ひやるよそのむら雲しくれつつあたちのはらにもみちしぬらん おもひやる よそのむらくも しくれつつ あたちのはらに もみちしぬらむ | 重之 | 十五 | 恋五 |
1352 | 身にちかくきにけるものを色かはる秋をはよそにおもひしかとも みにちかく きにけるものを いろかはる あきをはよそに おもひしかとも | 源顕房(六条右大臣)室 | 十五 | 恋五 |
1353 | 色かはるはきのした葉を見てもまつ人の心の秋そしらるる いろかはる はきのしたはを みてもまつ ひとのこころの あきそしらるる | 相模 | 十五 | 恋五 |
1354 | いなつまはてらさぬよゐもなかりけりいつらほのかにみえしかけろふ いなつまは てらさぬよひも なかりけり いつらほのかに みえしかけろふ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1355 | 人しれぬねさめの涙ふりみちてさもしくれつるよはのそらかな ひとしれぬ ねさめのなみた ふりみちて さもしくれつる よはのそらかな | 謙徳公 | 十五 | 恋五 |
1356 | なみたのみうきいつるあまのつりさほのなかきよすからこひつつそぬる なみたのみ うきいつるあまの つりさをの なかきよすから こひつつそぬる | 光孝天皇御哥 | 十五 | 恋五 |
1357 | まくらのみうくとおもひしなみたかはいまはわか身のしつむなりけり まくらのみ うくとおもひし なみたかは いまはわかみの しつむなりけり | 坂上是則 | 十五 | 恋五 |
1358 | おもほえす袖にみなとのさはくかなもろこし舟のよりしはかりに おもほえす そてにみなとの さわくかな もろこしふねの よりしはかりに | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1359 | いもか袖わかれし日よりしろたへの衣かたしきこひつつそぬる いもかそて わかれしひより しろたへの ころもかたしき こひつつそぬる | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1360 | あふことのなみのした草みかくれてしつ(つ+心歟)なくねこそなかるれ あふことの なみのしたくさ みかくれて しつこころなく ねこそなかるれ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1361 | うらにたくもしほの煙なひかめやよものかたより風(風+は歟)ふくとも うらにたく もしほのけふり なひかめや よものかたより かせはふくとも | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1362 | わするらんとおもふ心のうたかひにありしよりけに物そかなしき わするらむと おもふこころの うたかひに ありしよりけに ものそかなしき | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1363 | うきなから人をはえしもわすれねはかつうらみつつなをそこひしき うきなから ひとをはえしも わすれねは かつうらみつつ なほそこひしき | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1364 | いのちをはあたなるものとききしかとつらきかためは長もあるかな いのちをは あたなるものと ききしかと つらきかためは なかくもあるかな | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1365 | いつかたにゆきかくれなんよの中に身のあれはこそ人もつらけれ いつかたに ゆきかくれなむ よのなかに みのあれはこそ ひともつらけれ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1366 | いままてにわすれぬ人はよにもあらしをのかさま〳〵としのへぬれは いままてに わすれぬひとは よにもあらし おのかさまさま としのへぬれは | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1367 | たま水をてにむすひてもこころみんぬるくはいしの中もたのまし たまみつを てにむすひても こころみむ ぬるくはいしの なかもたのまし | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1368 | 山しろの井ての玉水てにくみてたのみしかひもなきよなりけり やましろの ゐてのたまみつ てにくみて たのみしかひも なきよなりけり | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1369 | 君かあたり見つつををらんいこま山雲なかくしそ雨はふるとも きみかあたり みつつををらむ いこまやま くもなかくしそ あめはふるとも | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1370 | なかそらに立ゐる雲のあともなく身のはかなくもなりぬへきかな なかそらに たちゐるくもの あともなく みのはかなくも なりぬへきかな | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1371 | 雲のゐるとを山とりのよそにてもありとしきけはわひつつそぬる くものゐる とほやまとりの よそにても ありとしきけは わひつつそぬる | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1372 | ひるはきてよるはわかるる山とりのかけ見る時そねはなかれける ひるはきて よるはわかるる やまとりの かけみるときそ ねはなかれける | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1373 | われもしかなきてそ人にこひられしいまこそよそに声をのみきけ われもしか なきてそひとに こひられし いまこそよそに こゑをのみきけ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1374 | 夏野ゆくをしかのつののつかのまもわすれすおもへいもか心を なつのゆく をしかのつのの つかのまも わすれすおもへ いもかこころを | 柿本人麻呂(人麿) | 十五 | 恋五 |
1375 | 夏草のつゆわけ衣きもせぬになとわか袖のかはく時なき なつくさの つゆわけころも きもせぬに なとわかそての かわくときなき | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1376 | みそきするならのをかはの河風にいのりそわたるしたにたえしと みそきする ならのをかはの かはかせに いのりそわたる したにたえしと | 八代女王 | 十五 | 恋五 |
1377 | うらみつつぬるよの袖のかはかぬはまくらのしたにしほやみつらん うらみつつ ぬるよのそての かわかぬは まくらのしたに しほやみつらむ | 清原深養父 | 十五 | 恋五 |
1378 | あし辺よりみちくるしほのいやましにおもふか君をわすれかねつる あしへより みちくるしほの いやましに おもふかきみか わすれかねつる | 山口女王 | 十五 | 恋五 |
1379 | しほかまのまへにうきたるうきしまのうきておもひのあるよなりけり しほかまの まへにうきたる うきしまの うきておもひの あるよなりけり | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1380 | いかにねて見えしなるらんうたたねの夢より後は物をこそおもへ いかにねて みえしなるらむ うたたねの ゆめよりのちは ものをこそおもへ | 赤染衛門 | 十五 | 恋五 |
1381 | うちとけてねぬものゆへに夢を見てものおもひまさる比にもあるかな うちとけて ねぬものゆゑに ゆめをみて ものおもひまさる こころにもあるかな | 参議篁 | 十五 | 恋五 |
1382 | 春のよの夢にありつと見えつれはおもひたえにし人そまたるる はるのよの ゆめにあひつと みえつれは おもひたえにし ひとそまたるる | 伊勢 | 十五 | 恋五 |
1383 | はるのよの夢のしるしはつらくとも見しはかりたにあらはたのまん はるのよの ゆめのしなしは つらくとも みしはかりたに あらはたのまむ | 盛明親王 | 十五 | 恋五 |
1384 | ぬる夢にうつつのうさもわすられておもひなくさむほとそはかなき ぬるゆめに うつつのうさも わすられて おもひなくさむ ほとそはかなき | 女御徽子女王 | 十五 | 恋五 |
1385 | かくはかりねてあかしつる春のよにいかに見えつる夢にかあるらん かくはかり ねてあかしつる はるのよに いかにみえつる ゆめにかあるらむ | 能宣朝臣 | 十五 | 恋五 |
1386 | なみたかは身もうきぬへきねさめかなはかなき夢のなこりはかりに なみたかは みもうきぬへき ねさめかな はかなきゆめの なこりはかりに | 寂蓮法師 | 十五 | 恋五 |
1387 | あふと見てことそともなくあけぬなりはかなの夢の忘かたみや あふとみて ことそともなく あけぬなり はかなのゆめの わすれかたみや | 家隆朝臣 | 十五 | 恋五 |
1388 | ゆかちかしあなかまよはのきり〳〵す夢にも人のみえもこそすれ ゆかちかし あなかまよはの きりきりす ゆめにもひとの みえもこそすれ | 基俊 | 十五 | 恋五 |
1389 | あはれなりうたたねにのみ見しゆめの長きおもひにむすほほれなん あはれなり うたたねにのみ みしゆめの なかきおもひに むすほほれなむ | 皇太后宮大夫俊成 | 十五 | 恋五 |
1390 | かきやりしそのくろかみのすちことにうちふすほとはおもかけそたつ かきやりし そのくろかみの すちことに うちふすほとは おもかけそたつ | 定家朝臣 | 十五 | 恋五 |
1391 | 夢かとよ見しおもかけもちきりしもわすれすなからうつつならねは ゆめかとよ みしおもかけも ちきりしも わすれすなから うつつならねは | 皇太后宮大夫俊成女 | 十五 | 恋五 |
1392 | はかなくそしらぬいのちをなけきこしわかかねことのかかりけるよに はかなくそ しらぬいのちを なけきこし わかかねことの かかりけるよに | 式子内親王 | 十五 | 恋五 |
1393 | すきにけるよよの契もわすられていとふうき身のはてそはかなき すきにける よよのちきりも わすられて いとふうきみの はてそはかなき | 弁 | 十五 | 恋五 |
1394 | おもひわひ見しおもかけはさてをきてこひせさりけんおりそこひしき おもひわひ みしおもかけは さておきて こひせさりけむ をりそこひしき | 皇太后宮大夫俊成 | 十五 | 恋五 |
1395 | なかれいてんうき名にしはしよとむかなもとめぬ袖のふちはあれとも なかれいてむ うきなにしはし よとむかな もとめぬそての ふちはあれとも | 相模 | 十五 | 恋五 |
1396 | つらからはこひしきことはわすれなてそへてはなとかしつ心なき つらからは こひしきことは わすれなて そへてはなとか しつこころなき | 馬内侍 | 十五 | 恋五 |
1397 | きみしまれみちのゆききをさたむらんすきにし人をかつ忘つつ きみしまれ みちのゆききを さたむらむ すきにしひとを かつわすれつつ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1398 | 花さかぬくち木のそまのそま人のいかなるくれに思ひいつらん はなさかぬ くちきのそまの そまひとの いかなるくれに おもひいつらむ | 藤原仲文 | 十五 | 恋五 |
1399 | をのつからさこそはあれとおもふまにまことに人のとはすなりぬる おのつから さこそはあれと おもふまに まことにひとの とはすなりぬる | 大納言経信母 | 十五 | 恋五 |
1400 | ならはねは人のとはぬもつらからてくやしきにこそ袖はぬれけれ ならはねは ひとのとはぬも つらからて くやしきにこそ そてはぬれけれ | 前中納言教盛母 | 十五 | 恋五 |
1401 | なけかしなおもへは人につらかりしこのよなからのむくひなりけり なけかしな おもへはひとに つらかりし このよなからの むくひなりけり | 皇嘉門院尾張 | 十五 | 恋五 |
1402 | いかにしていかにこのよにありへはかしはしもものをおもはさるへき いかにして いかにこのよに ありへはか しはしもものを おもはさるへき | 和泉式部 | 十五 | 恋五 |
1403 | うれしくはわするることもありなましつらきそなかきかたみなりける うれしくは わするることも ありなまし つらきそなかき かたみなりける | 深養父 | 十五 | 恋五 |
1404 | あふことのかたみをたにも見(見=え歟)てしかな人はたゆともみつつしのはん あふことの かたみをたにも みてしかな ひとはたゆとも みつつしのはむ | 素性法師 | 十五 | 恋五 |
1405 | わか身こそあらぬかとのみたとらるれとふへき人にわすられしより わかみこそ あらぬかとのみ たとらるれ とふへきひとに わすられしより | 小野小町 | 十五 | 恋五 |
1406 | かつらきやくめちにわたすいははしのたえにし中となりやはてなん かつらきや くめちにわたす いははしの たえにしなかと なりやはてなむ | 能宣朝臣 | 十五 | 恋五 |
1407 | 今はともおもひなたえそ野中なる水のなかれはゆきてたつねん いまはとも おもひなたえそ のなかなる みつのなかれは ゆきてたつねむ | 祭主輔親 | 十五 | 恋五 |
1408 | おもひいつやみののを山のひとつ松契しことはいつもわすれす おもひいつや みののをやまの ひとつまつ ちきりしことは いつもわすれす | 伊勢 | 十五 | 恋五 |
1409 | いてていにしあとたにいまたかはらぬにたかかよひちと今はなるらん いてていにし あとたにいまた かはらぬに たかかよひちと いまはなるらむ | 業平朝臣 | 十五 | 恋五 |
1410 | むめの花かをのみ袖にととめをきてわかおもふ人はをとつれもせぬ うめのはな かをのみそてに ととめおきて わかおもふひとは おとつれもせぬ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1411 | あまのはらそこともしらぬおほそらにおほつかなさをなけきつるかな あまのはら そこともしらぬ おほそらに おほつかなさを なけきつるかな | 天暦御哥 | 十五 | 恋五 |
1412 | なけくらん心をそらに見てしかなたつあさきりに身をやなさまし なけくらむ こころをそらに みてしかな たつあさきりに みをやなさまし | 女御徽子女王 | 十五 | 恋五 |
1413 | あはすしてふるころをひのあまたあれははるけきそらになかめをそする あはすして ふるころほひの あまたあれは はるけきそらに なかめをそする | 光孝天皇御哥 | 十五 | 恋五 |
1414 | おもひやる心もそらに白雲のいてたつかたをしらせやはせぬ おもひやる こころもそらに しらくもの いてたつかたを しらせやはせぬ | 兵部卿致平親王 | 十五 | 恋五 |
1415 | 雲井よりとを山とりのなきてゆく声ほのかなるこひもするかな くもゐより とほやまとりの なきてゆく こゑほのかなる こひもするかな | 躬恒 | 十五 | 恋五 |
1416 | 雲ゐなる雁たになきてくる秋になとかは人のをとつれもせぬ くもゐなる かりたになきて くるあきに なとかはひとの おとつれもせぬ | 延喜御哥 | 十五 | 恋五 |
1417 | 春ゆきて秋まてとやはおもひけんかりにはあらす契し物を はるゆきて あきまてとやは おもひけむ かりにはあらす ちきりしものを | 天暦御哥 | 十五 | 恋五 |
1418 | はつかりのはつかにききしことつても雲ちにたえてわふる比かな はつかりの はつかにききし ことつても くもちにたえて わふるころかな | 源高明 | 十五 | 恋五 |
1419 | をみころもこそはかりこそなれさらめけふの日かけのかけてたにとへ をみころも こそはかりこそ なれさらめ けふのひかけの かけてたにとへ | 藤原惟成 | 十五 | 恋五 |
1420 | すみよしのこひわすれ草たねたえてなきよにあへるわれそかなしき すみよしの こひわすれくさ たねたえて なきよにあへる われそかなしき | 藤原元真 | 十五 | 恋五 |
1421 | 水のうへのはかなきかすもおもほえすふかき心しそこにとまれは〈朱〉/ みつのうへの はかなきかすも おもほえす ふかきこころし そこにとまれは | 天暦御哥 | 十五 | 恋五 |
1422 | なかきよのつきぬなけきのたえさらはなににいのちをかへてわすれん なかきよの つきぬなけきの たえさらは なににいのちを かへてわすれむ | 謙徳公 | 十五 | 恋五 |
1423 | 心にもまかせさりけるいのちもてたのめもをかしつねならぬよを こころにも まかせさりける いのちもて たのめもおかし つねならぬよを | 権中納言敦忠 | 十五 | 恋五 |
1424 | 世のうきも人のつらきもしのふるにこひしきにこそ思ひわひぬれ よのうきも ひとのつらきも しのふるに こひしきにこそ おもひわひぬれ | 藤原元真 | 十五 | 恋五 |
1425 | かすならはかからましやはよの中にいとかなしきはしつのをたまき かすならは かからましやは よのなかに いとかなしきは しつのをたまき | 参議篁 | 十五 | 恋五 |
1426 | 人ならはおもふ心をいひてましよしやさこそはしつのをたまき ひとならは おもふこころを いひてまし よしやさこそは しつのをたまき | 藤原惟成 | 十五 | 恋五 |
1427 | わかよはひおとろへゆけはしろたへの袖のなれにし君をしそ思 わかよはひ おとろへゆけは しろたへの そてのなれにし きみをしそおもふ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1428 | いまよりはあはしとすれやしろたへのわか衣手のかはく時なき いまよりは あはしとすれや しろたへの わかころもての かわくときなき | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1429 | たまくしけあけまくおしきあたら夜を衣てかれてひとりかもねん たまくしけ あけまくをしき あたらよを ころもてかれて ひとりかもねむ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1430 | あふことをおほつかなくてすくすかな草葉のつゆのをきかはるまて あふことを おほつかなくて すくすかな くさはのつゆの おきかはるまて | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1431 | 秋の田のほむけの風のかたよりにわれは物おもふつれなきものを あきのたの ほむけのかせの かたよりに われはものおもふ つれなきものを | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1432 | はしたかの野もりのかかみえてしかなおもひおもはすよそなからみん はしたかの のもりのかかみ えてしかな おもひおもはす よそなからみむ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1433 | おほよとの松はつらくもあらなくにうらみてのみもかへるなみかな おほよとの まつはつらくも あらなくに うらみてのみも かへるなみかな | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1434 | 白浪はたちさはくともこりすまのうらのみるめはからんとそおもふ しらなみは たちさわくとも こりすまの うらのみるめは からむとそおもふ | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1435 | さしてゆくかたはみなとのうらたかみうらみてかへるあまのつりふね さしてゆく かたはみなとの うらたかみ うらみてかへる あまのつりふね | 読人知らず | 十五 | 恋五 |
1436 | としくれしなみたのつららとけにけりこけの袖にも春やたつらん としくれし なみたのつらら とけにけり こけのそてにも はるやたつらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1437 | 山かけやさらては庭にあともなし春そきにける雪のむらきえ やまかけや さらてはにはに あともなし はるそきにける ゆきのむらきえ | 藤原有家朝臣 | 十六 | 雑上 |
1438 | あはれなりむかしの人をおもふにはきのふの野へにみゆきせましや あはれなり むかしのひとを おもふには きのふののへに みゆきせましや | 源雅信 | 十六 | 雑上 |
1439 | ひきかへて野辺のけしきは見えしかとむかしをこふる松はなかりき ひきかへて のへのけしきは みえしかと むかしをこふる まつはなかりき | 円融院御哥 | 十六 | 雑上 |
1440 | 春くれは袖の氷もとけにけりもりくる月のやとるはかりに はるくれは そてのこほりも とけにけり もりくるつきの やとるはかりに | 大僧正行尊 | 十六 | 雑上 |
1441 | たにふかみ春のひかりのをそけれは雪につつめる鴬の声 たにふかみ はるのひかりの おそけれは ゆきにつつめる うくひすのこゑ | 久我建通(後京極摂政) | 十六 | 雑上 |
1442 | ふるゆきにいろまとはせるむめの花うくひすのみやわきてしのはん ふるゆきに いろまとはせる うめのはな うくひすのみや わきてしのはむ | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1443 | をそくとくつゐにさきぬるむめの花たかうへをきしたねにかあるらん おそくとく つひにさきぬる うめのはな たかうゑおきし たねにかあるらむ | 貞信公 | 十六 | 雑上 |
1444 | ももしきにかはらぬものは梅の花おりてかさせるにほひなりけり ももしきに かはらぬものは うめのはな をりてかさせる にほひなりけり | 源公忠朝臣 | 十六 | 雑上 |
1445 | いろかをはおもひもいれすむめの花つねならぬよによそへてそみる いろかをは おもひもいれす うめのはな つねならぬよに よそへてそみる | 華山院御哥 | 十六 | 雑上 |
1446 | むめの花なににほふらんみる人のいろをもかをもわすれぬるよに うめのはな なににほふらむ みるひとの いろをもかをも わすれぬるよに | 大弐三位 | 十六 | 雑上 |
1447 | はるかすみたなひきわたるおりにこそかかる山辺のかひもありけれ はるかすみ たなひきわたる をりにこそ かかるやまへは かひもありけれ | 東三条入道前摂政太政大臣 | 十六 | 雑上 |
1448 | むらさきの雲にもあらて春かすみたなひく山のかひはなにそも むらさきの くもにもあらて はるかすみ たなひくやまの かひはなにそも | 円融院御哥 | 十六 | 雑上 |
1449 | みちのへのくち木の柳春くれはあはれむかしとしのはれそする みちのへの くちきのやなき はるくれは あはれむかしと しのはれそする | 久我建通(後京極摂政) | 十六 | 雑上 |
1450 | むかし見し春はむかしの春なからわか身ひとつのあらすもあるかな むかしみし はるはむかしの はるなから わかみひとつの あらすもあるかな | 深養父 | 十六 | 雑上 |
1451 | かきこしに見るあた人のいへさくら花ちりはかりゆきておらはや かきこしに みるあたひとの いへさくら はなちるはかり ゆきてをらはや | 円融院御哥 | 十六 | 雑上 |
1452 | おりにことおもひやすらん花さくらありしみゆきの春をこひつつ をりにこと おもひやすらむ はなさくら ありしみゆきの はるをこひつつ | 左大将朝光 | 十六 | 雑上 |
1453 | よろつよをふるにかひあるやとなれはみゆきと見えて花そちりける よろつよを ふるにかひある やとなれや みゆきとみえて はなそちりくる | 京極関白家肥後 | 十六 | 雑上 |
1454 | えたことのすゑまてにほふ花なれはちるもみゆきとみゆるなるらん えたことの すゑまてにほふ はななれは ちるもみゆきと みゆるなるらむ | 藤原師通 | 十六 | 雑上 |
1455 | 春をへてみゆきになるる花のかけふりゆく身をもあはれとや思 はるをへて みゆきになるる はなのかけ ふりゆくみをも あはれとやおもふ | 藤原定家朝臣 | 十六 | 雑上 |
1456 | なれ〳〵て見しはなこりの春そともなとしらかはの花のしたかけ なれなれて みしはなこりの はるそとも なとしらかはの はなのしたかけ | 藤原雅経朝臣 | 十六 | 雑上 |
1457 | ふるさととおもひなはてそ花さくらかかるみゆきにあふよありけり ふるさとと おもひなはてそ はなさくら かかるみゆきに あふよありけり | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1458 | いさやまた月日のゆくもしらぬ身は花の春ともけふこそは見れ いさやまた つきひのゆくも しらぬみは はなのはるとも けふこそはみれ | 源師光 | 十六 | 雑上 |
1459 | おる人のそれなるからにあちきなく見しわかやとの花のかそする をるひとの それなるからに あちきなく みしわかやとの はなのかそする | 和泉式部 | 十六 | 雑上 |
1460 | 見ても又またも見まくのほしかりし花のさかりはすきやしぬらん みてもまた またもみまくの ほしかりし はなのさかりは すきやしぬらむ | 藤原高光 | 十六 | 雑上 |
1461 | おいにけるしらかも花ももろともにけふのみゆきにゆきとみえけり おいにける しらかもはなも もろともに けふのみゆきに ゆきとみえけり | 藤原顕光(堀河左大臣) | 十六 | 雑上 |
1462 | さくら花おりてみしにもかはらぬにちらぬはかりそしるしなりける さくらはな をりてみしにも かはらぬに ちらぬはかりそ しるしなりける | 大納言忠家 | 十六 | 雑上 |
1463 | さもあらはあれくれゆく春も雲のうへにちることしらぬ花しにほはは さもあらはあれ くれゆくはるも くものうへに ちることしらぬ はなしにほはは | 大納言経信 | 十六 | 雑上 |
1464 | 桜花すきゆく春のともとてや風のをとせぬよにもちるらん さくらはな すきゆくはるの ともとてや かせのおとせぬ よるもちるらむ | 大納言忠教 | 十六 | 雑上 |
1465 | おしめともつねならぬよの花なれはいまはこの身をにしにもとめん をしめとも つねならぬよの はななれは いまはこのみを にしにもとめむ | 鳥羽院御哥 | 十六 | 雑上 |
1466 | いまはわれよしのの山の花をこそやとの物とも見るへかりけれ いまはわれ よしののやまの はなをこそ やとのものとも みるへかりけれ | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1467 | 春くれはなをこのよこそしのはるれいつかはかかる花をみるへき はるくれは なほこのよこそ しのはるれ いつかはかかる はなをみるへき | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1468 | てる月も雲のよそにそゆきめくる花そこのよのひかりなりける てるつきも くものよそにそ ゆきめくる はなそこのよの ひかりなりける | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1469 | 見せはやなしかのからさきふもとなるなからの山の春のけしきを みせはやな しかのからさき ふもとなる なからのやまの はるのけしきを | 前大僧正慈円 | 十六 | 雑上 |
1470 | しはのとににほはん花はさもあらはあれなかめてけりなうらめしの身や しはのとに にほはむはなは さもあらはあれ なかめてけりな うらめしのみや | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1471 | 世中をおもへはなへてちる花のわか身をさてもいつちかもせん よのなかを おもへはなへて ちるはなの わかみをさても いつちかもせむ | 西行法師 | 十六 | 雑上 |
1472 | 身はとめつ心はをくる山さくら風のたよりにおもひをこせよ みはとめつ こころはおくる やまさくら かせのたよりに おもひおこせよ | 安法々師 | 十六 | 雑上 |
1473 | さくらあさのおふのうらなみたちかへり見れともあかす山なしの花 さくらあさの をふのうらなみ たちかへり みれともあかす やまなしのはな | 俊頼朝臣 | 十六 | 雑上 |
1474 | 白浪のこゆらんすゑの松山は花とや見ゆる春のよの月 しらなみの こゆらむすゑの まつやまは はなとやみゆる はるのよのつき | 加賀左衛門 | 十六 | 雑上 |
1475 | おほつかなかすみたつらんたけくまの松のくまもるはるのよの月 おほつかな かすみたつらむ たけくまの まつのくまもる はるのよのつき | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1476 | 世をいとふよしののおくのよふこ鳥ふかき心のほとやしるらん よをいとふ よしののおくの よふことり ふかきこころの ほとやしるらむ | 法印幸清 | 十六 | 雑上 |
1477 | おりにあへはこれもさすかにあはれなりおたのかはつのゆふくれの声 をりにあへは これもさすかに あはれなり をたのかはつの ゆふくれのこゑ | 前大納言忠良 | 十六 | 雑上 |
1478 | 春の雨のあまねきみよをたのむかな霜にかれゆく草葉もらすな はるのあめの あまねきみよを たのむかな しもにかれゆく くさはもらすな | 有家朝臣 | 十六 | 雑上 |
1479 | すへらきのこたかきかけにかくれてもなを春雨にぬれんとそおもふ すめらきの こたかきかけに かくれても なほはるさめに ぬれむとそおもふ | 藤原実行(八条前太政大臣) | 十六 | 雑上 |
1480 | やへなからいろもかはらぬ山ふきのなとここのへにさかすなりにし やへなから いろもかはらぬ やまふきの なとここのへに さかすなりにし | 実方朝臣 | 十六 | 雑上 |
1481 | ここのへにあらてやへさく山ふきのいはぬいろをはしる人もなし ここのへに あらてやへさく やまふきの いはぬいろをは しるひともなし | 円融院御哥 | 十六 | 雑上 |
1482 | をのかなみにおなしすゑ葉そしほれぬるふちさくたこのうらめしの身や おのかなみに おなしすゑはそ しをれぬる ふちさくたこの うらめしのみや | 前大僧正慈円 | 十六 | 雑上 |
1483 | から衣花のたもとにぬきかへよわれこそ春のいろはたちつれ からころも はなのたもとに ぬきかへよ われこそはるの いろはたちつれ | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 十六 | 雑上 |
1484 | 唐衣たちかはりぬる春のよにいかてか花のいろをみるへき からころも たちかはりぬる はるのよに いかてかはなの いろをみるへき | 上東門院 | 十六 | 雑上 |
1485 | 神世にはありもやしけんさくら花けふのかさしにおれるためしは かみよには ありもやしけむ さくらはな けふのかさしに をれるためしは | 紫式部 | 十六 | 雑上 |
1486 | ほとときすそのかみ山のたひ枕ほのかたらひしそらそわすれぬ ほとときす そのかみやまの たひまくら ほのかたらひし そらそわすれぬ | 式子内親王 | 十六 | 雑上 |
1487 | たちいつるなこり有明の月かけにいととかたらふほとときすかな たちいつる なこりありあけの つきかけに いととかたらふ ほとときすかな | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1488 | いくちよとかきらぬ君かみよなれとなをおしまるるけさのあけほの いくちよと かきらぬきみか みよなれは なほをしまるる けさのあけほの | 左衛門督家通 | 十六 | 雑上 |
1489 | むめかえにおりたかへたるほとときす声のあやめもたれかわくへき うめかえに をりたかへたる ほとときす こゑのあやめも たれかわくへき | 三条院女蔵人左近 | 十六 | 雑上 |
1490 | うちわたすをちかた人にこととへとこたへぬからにしるき花かな うちわたす をちかたひとに こととへと こたへぬからに しるきはなかな | 小弁 | 十六 | 雑上 |
1491 | 五月雨のそらたにすめる月かけになみたの雨ははるるまもなし さみたれの そらたにすめる つきかけに なみたのあめは はるるまもなし | 赤染衛門 | 十六 | 雑上 |
1492 | さみたれはまやののきはのあまそそきあまりなるまてぬるる袖かな さみたれは まやののきはの あまそそき あまりなるまて ぬるるそてかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1493 | ひとりぬるやとのとこなつあさな〳〵なみたのつゆにぬれぬ日そなき ひとりぬる やとのとこなつ あさなあさな なみたのつゆに ぬれぬひそなき | 華山院御哥 | 十六 | 雑上 |
1494 | よそへつつ見れとつゆたになくさますいかにかすへきなてしこの花 よそへつつ みれとつゆたに なくさます いかにかすへき なてしこのはな | 恵子女王 | 十六 | 雑上 |
1495 | おもひあらはこよひのそらはとひてまし見えしや月のひかりなりけん おもひあらは こよひのそらは とひてまし みえしやつきの ひかりなりけむ | 和泉式部 | 十六 | 雑上 |
1496 | おもひあれはつゆはたもとにまかふとも秋のはしめをたれにとはまし おもひあれは つゆはたもとに まかふかと あきのはしめを たれにとはまし | 七条院大納言 | 十六 | 雑上 |
1497 | 袖のうらのなみふきかへす秋風に雲のうへまてすすしからなん そてのうらの なみふきかへす あきかせに くものうへまて すすしからなむ | 中務 | 十六 | 雑上 |
1498 | 秋やくるつゆやまかふとおもふまてあるはなみたのふるにそ有ける あきやくる つゆやまかふと おもふまて あるはなみたの ふるにそありける | 紀有常朝臣 | 十六 | 雑上 |
1499 | めくりあひて見しやそれともわかぬまに雲かくれにしよはの月かけ めくりあひて みしやそれとも わかぬまに くもかくれにし よはのつきかけ | 紫式部 | 十六 | 雑上 |
1500 | 月かけの山の葉わけてかくれなはそむくうきよをわれやなかめん つきかけの やまのはわけて かくれなは そむくうきよを われやなかめむ | 三条院御哥 | 十六 | 雑上 |
1501 | 山のはをいてかてにする月まつとねぬよのいたくふけにける哉 やまのはを いてかてにする つきまつと ねぬよのいたく ふけにけるかな | 藤原為時 | 十六 | 雑上 |
1502 | うき雲はたちかくせともひまもりてそらゆく月のみえもするかな うきくもは たちかくせとも ひまもりて そらゆくつきの みえもするかな | 伊勢大輔 | 十六 | 雑上 |
1503 | うきくもにかくれてとこそおもひしかねたくも月のひまもりにける うきくもに かくれてとこそ おもひしか ねたくもつきの ひまもりにける | 参議正光 | 十六 | 雑上 |
1504 | 月をなとまたれのみすとおもひけんけに山の葉はいてうかりけり つきをなと またれのみすと おもひけむ けにやまのはは いてうかりけり | 刑部卿範兼 | 十六 | 雑上 |
1505 | おもひいつる人もあらしの山の葉にひとりそいりし在曙の月 おもひいつる ひともあらしの やまのはに ひとりそいりし ありあけのつき | 法印静賢 | 十六 | 雑上 |
1506 | わかのうらにいゑの風こそなけれともなみふくいろは月にみえけり わかのうらに いへのかせこそ なけれとも なみふくいろは つきにみえけり | 民部卿範光 | 十六 | 雑上 |
1507 | よもすから浦こく舟はあともなし月そのこれるしかのからさき よもすから うらこくふねは あともなし つきそのこれる しかのからさき | 宜秋門院丹後 | 十六 | 雑上 |
1508 | 山のはにおもひもいらしよのなかはとてもかくてもありあけの月 やまのはに おもひもいらし よのなかは とてもかくても ありあけのつき | 藤原盛方朝臣 | 十六 | 雑上 |
1509 | わすれしよわするなとたにいひてまし雲井の月の心ありせは わすれしよ わするなとたに いひてまし くもゐのつきの こころありせは | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1510 | いかにして袖にひかりのやとるらん雲井の月はへたててし身を いかにして そてにひかりの やとるらむ くもゐのつきは へたてこしみを | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1511 | 心にはわするる時もなかりけりみよのむかしの雲のうへの月 こころには わするるときも なかりけり みよのむかしの くものうへのつき | 左近中将公衡 | 十六 | 雑上 |
1512 | むかし見しくも井をめくる秋の月いまいくとせか袖にやとさん むかしみし くもゐをめくる あきのつき いまいくとせか そてにやとさむ | 二条院讃岐 | 十六 | 雑上 |
1513 | うき身よになからへはなをおもひいてよたもとにちきるありあけの月 うきみよに なからへはなほ おもひいてよ たもとにちきる ありあけのつき | 藤原経通朝臣 | 十六 | 雑上 |
1514 | 宮こにも人やまつらんいし山のみねにのこれる秋のよの月 みやこにも ひとやまつらむ いしやまの みねにのこれる あきのよのつき | 藤原長能 | 十六 | 雑上 |
1515 | あはちにてあはとはるかに見し月のちかきこよひは所からかも あはちにて あはとはるかに みしつきの ちかきこよひは こころからかも | 躬恒 | 十六 | 雑上 |
1516 | いたつらにねてはあかせともろともに君かこぬよの月は見さりき いたつらに ねてはあかせと もろともに きみかこぬよの つきはみさりき | 源道済 | 十六 | 雑上 |
1517 | あまのはらはるかにひとりなかむれはたもとに月のいてにけるかな あまのはら はるかにひとり なかむれは たもとにつきの いてにけるかな | 増基法師 | 十六 | 雑上 |
1518 | たのめこし人をまつちの山かせにさよふけしかは月も入にき たのめこし ひとをまつちの やまかせに さよふけしかは つきもいりにき | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1519 | 月見はといひしはかりの人はこてまきのとたたく庭の松風 つきみはと いひしはかりの ひとはこて まきのとたたく にはのまつかせ | 久我建通(後京極摂政) | 十六 | 雑上 |
1520 | 山さとに月はみるやと人はこすそらゆく風そこの葉をもとふ やまさとに つきはみるやと ひとはこす そらゆくかせそ このはをもとふ | 前大僧正慈円 | 十六 | 雑上 |
1521 | 在あけの月のゆくゑをなかめてそ野寺のかねはきくへかりける ありあけの つきのゆくへを なかめてそ のてらのかねは きくへかりける | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1522 | 山の葉をいてても松のこのまより心つくしのありあけの月 やまのはを いててもまつの このまより こころつくしの ありあけのつき | 藤原業清 | 十六 | 雑上 |
1523 | よもすからひとりみ山のまきの葉にくもるもすめるありあけの月 よもすから ひとりみやまの まきのはに くもるもすめる ありあけのつき | 鴨長明 | 十六 | 雑上 |
1524 | おく山のこの葉のおつる秋風にたえ〳〵みねの雲そのこれる おくやまの このはのおつる あきかせに たえたえみねの くもそのこれる | 藤原秀能 | 十六 | 雑上 |
1525 | 月すめはよものうき雲そらにきえてみ山かくれにゆくあらしかな つきすめは よものうきくも そらにきえて みやまかくれに ゆくあらしかな | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1526 | なかめわひぬしはのあみとのあけかたに山のはちかくのこる月かけ なかめわひぬ しはのあみとの あけかたに やまのはちかく のこるつきかけ | 猷円法師 | 十六 | 雑上 |
1527 | あかつきの月みんとしもおもはねと見し人ゆへになかめられつつ あかつきの つきみむとしも おもはねと みしひとゆゑに なかめられつつ | 華山院御哥 | 十六 | 雑上 |
1528 | ありあけの月はかりこそかよひけれくる人なしのやとの庭にも ありあけの つきはかりこそ かよひけれ くるひとなしの やとのにはにも | 伊勢大輔 | 十六 | 雑上 |
1529 | すみなれし人かけもせぬわかやとに在曙の月のいくよともなく すみなれし ひとかけもせぬ わかやとに ありあけのつきの いくよともなく | 和泉式部 | 十六 | 雑上 |
1530 | すむ人もあるかなきかのやとならしあしまの月のもるにまかせて すむひとも あるかなきかの やとならし あしまのつきの もるにまかせて | 大納言経信 | 十六 | 雑上 |
1531 | おもひきやわかれし秋にめくりあひて又もこのよの月をみんとは おもひきや わかれしあきに めくりあひて またもこのよの つきをみむとは | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1532 | 月を見て心うかれしいにしへの秋にもさらにめくりあひぬる つきをみて こころうかれし いにしへの あきにもさらに めくりあひぬる | 西行法師 | 十六 | 雑上 |
1533 | よもすから月こそそてにやとりけれむかしの秋をおもひいつれは よもすから つきこそそてに やとりけれ むかしのあきを おもひいつれは | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1534 | 月のいろに心をきよくそめましや宮こをいてぬわか身なりせは つきのいろに こころをきよく そめましや みやこをいてぬ わかみなりせは | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1535 | すつとならはうきよをいとふしるしあらんわれみはくもれ秋のよの月 すつとならは うきよをいとふ しるしあらむ われみはくもる あきのよのつき | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1536 | ふけにけるわか身のかけをおもふまにはるかに月のかたふきにける ふけにける わかみのかけを おもふまに はるかにつきの かたふきにける | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1537 | なかめしてすきにしかたをおもふまに峯よりみねに月はうつりぬ なかめして すきにしかたを おもふまに みねよりみねに つきはうつりぬ | 入道親王覚性 | 十六 | 雑上 |
1538 | あきのよの月に心をなくさめてうきよにとしのつもりぬるかな あきのよの つきにこころを なくさめて うきよにとしの つもりぬるかな | 藤原道経 | 十六 | 雑上 |
1539 | 秋をへて月をなかむる身となれりいそちのやみをなになけくらん あきをへて つきをなかめむ みとなれり いそちのやみを なになけくらむ | 前大僧正慈円 | 十六 | 雑上 |
1540 | なかめてもむそちの秋はすきにけりおもへはかなし山の葉の月 なかめても むそちのあきは すきにけり おもへはかなし やまのはのつき | 藤原隆信朝臣 | 十六 | 雑上 |
1541 | 心ある人のみあきの月をみはなにをうき身のおもひいてにせん こころある ひとのみあきの つきをみは なにをうきみの おもひいてにせむ | 源光行 | 十六 | 雑上 |
1542 | 身のうさを月やあらぬとなかむれはむかしなからのかけそもりくる みのうさを つきやあらぬと なかむれは むかしなからの かけそもりくる | 二条院讃岐 | 十六 | 雑上 |
1543 | ありあけの月よりほかはたれをかは山ちのともと契をくへき ありあけの つきよりほかに たれをかは やまちのともと ちきりおくへき | 寂超法師 | 十六 | 雑上 |
1544 | 宮こなるあれたるやとにむなしくや月にたつぬる人かへるらん みやこなる あれたるやとに むなしくや つきにたつぬる ひとかへるらむ | 大江嘉言 | 十六 | 雑上 |
1545 | おもひやれなにをしのふとなけれともみやこおほゆるありあけの月 おもひやれ なにをしのふと なけれとも みやこおほゆる ありあけのつき | 惟明親王 | 十六 | 雑上 |
1546 | ありあけのおなしなかめはきみもとへみやこのほかも秋の山さと ありあけの おなしなかめは きみもとへ みやこのほかも あきのやまさと | 式子内親王 | 十六 | 雑上 |
1547 | あまのとををしあけかたの雲間より神よの月のかけそのこれる あまのとを おしあけかたの くもまより かみよのつきの かけそのこれる | 久我建通(後京極摂政) | 十六 | 雑上 |
1548 | 雲をのみつらきものとてあかすよの月よこすゑにをちかたの山 くもをのみ つらきものとて あかすよの つきよこすゑに をちかたのやま | 右大将忠経 | 十六 | 雑上 |
1549 | いりやらて夜をおしむ月のやすらひにほのほのあくる山のはそうき いりやらて よををしむつきの やすらひに ほのほのあくる やまのはそうき | 藤原保季朝臣 | 十六 | 雑上 |
1550 | あやしくそかへさは月のくもりにしむかしかたりによやふけにけん あやしくそ かへさはつきの くもりにし むかしかたりに よやふけにけむ | 法橋行遍 | 十六 | 雑上 |
1551 | ふるさとのやともる月にこととはんわれをはしるやむかしすみきと ふるさとの やともるつきに こととはむ われをはしるや むかしすみきと | 寂超法師 | 十六 | 雑上 |
1552 | すたきけんむかしの人はかけたえてやともるものはありあけの月 すたきけむ むかしのひとは かけたえて やともるものは ありあけのつき | 平忠盛朝臣 | 十六 | 雑上 |
1553 | やへむくらしけれるやとは人もなしまはらに月のかけそすみける やへむくら しけれるやとは ひともなし まはらにつきの かけそすみける | 前中納言匡房 | 十六 | 雑上 |
1554 | かもめゐるふちえのうらのおきつすによふねいさよふ月のさやけさ かもめゐる ふちえのうらの おきつすに よふねいさよふ つきのさやけさ | 神祇伯顕仲 | 十六 | 雑上 |
1555 | なにはかたしほひにあさるあしたつも月かたふけは声のうらむる なにはかた しほひにあさる あしたつも つきかたふけは こゑのうらむる | 俊恵法師 | 十六 | 雑上 |
1556 | わかのうらに月のいてしほのさすままによるなくつるの声そかなしき わかのうらに つきのてしほの さすままに よるなくつるの こゑそかなしき | 前大僧正慈円 | 十六 | 雑上 |
1557 | もしほくむ袖の月かけをのつからよそにあかさぬすまのうら人 もしほくむ そてのつきかけ おのつから よそにあかさぬ すまのうらひと | 定家朝臣 | 十六 | 雑上 |
1558 | あかしかた色なき人の袖を見よすすろに月もやとる物かは あかしかた いろなきひとの そてをみよ すすろにつきも やとるものかは | 藤原秀能 | 十六 | 雑上 |
1559 | なかめよとおもはてしもやかへるらん月まつなみのあまのつり舟 なかめよと おもはてしもや かへるらむ つきまつなみの あまのつりふね | 具親 | 十六 | 雑上 |
1560 | しめをきていまやとおもふ秋山のよもきかもとにまつむしのなく しめおきて いまやとおもふ あきやまの よもきかもとに まつむしのなく | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1561 | あれわたる秋の庭こそあはれなれましてきえなん露のゆふくれ あれわたる あきのにはこそ あはれなれ ましてきえなむ つゆのゆふくれ | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1562 | 雲かかるとを山はたの秋されはおもひやるたにかなしき物を くもかかる とほやまはたの あきされは おもひやるたに かなしきものを | 西行法師 | 十六 | 雑上 |
1563 | 風そよくしののをささのかりのよをおもふねさめにつゆそこほるる かせそよく しののをささの かりのよを おもふねさめに つゆそこほるる | 守覚法親王 | 十六 | 雑上 |
1564 | あさちふや袖にくちにし秋の霜わすれぬ夢をふく嵐かな あさちふや そてにくちにし あきのしも わすれぬゆめを ふくあらしかな | 左衛門督通光 | 十六 | 雑上 |
1565 | くすの葉にうらみにかへる夢のよをわすれかたみの野への秋風 くすのはの うらみにかへる ゆめのよを わすれかたみの のへのあきかせ | 皇太后宮大夫俊成女 | 十六 | 雑上 |
1566 | しら露はをきにけらしな宮木ののもとあらのこはきすゑたわむまて しらつゆは おきにけらしな みやきのの もとあらのはきの すゑたわむまて | 祝部允仲 | 十六 | 雑上 |
1567 | をみなへしさかりの色をみるからにつゆのわきける身こそしらるれ をみなへし さかりのいろを みるからに つゆのわきける みこそしらるれ | 紫式部 | 十六 | 雑上 |
1568 | 白露はわきてもをかしをみなへし心からにや色のそむらん しらつゆは わきてもおかし をみなへし こころからにや いろのそむらむ | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 十六 | 雑上 |
1569 | 山さとにくすはひかかる松かきのひまなく物は秋そかなしき やまさとに くすはひかかる まつかきの ひまなくものは あきそかなしき | 曽祢好忠 | 十六 | 雑上 |
1570 | ももとせの秋のあらしはすくしきぬいつれのくれの露ときえなん ももとせの あきのあらしは すくしきぬ いつれのくれの つゆときえなむ | 安法々師 | 十六 | 雑上 |
1571 | 秋はつるはつかの山のさひしきに在あけの月をたれとみるらん あきはつる はつかのやまの さひしきに ありあけのつきを たれとみるらむ | 前中納言匡房 | 十六 | 雑上 |
1572 | 花すすき秋のすゑ葉になりぬれはことそともなくつゆそこほるる はなすすき あきのすゑはに なりぬれは ことそともなく つゆそこほるる | 大蔵卿行宗 | 十六 | 雑上 |
1573 | 夜はにふくあらしにつけておもふかな宮こもかくや秋はさひしき よはにふく あらしにつけて おもふかな みやこもかくや あきはさひしき | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 十六 | 雑上 |
1574 | 世中にあきはてぬれは宮こにもいまはあらしのをとのみそする よのなかに あきはてぬれは みやこにも いまはあらしの おとのみそする | 前中納言顕長 | 十六 | 雑上 |
1575 | うつろふは心のほかのあきなれはいまはよそにそきくのうへのつゆ うつろふは こころのほかの あきなれは いまはよそにそ きくのうへのつゆ | 冷泉院御哥 | 十六 | 雑上 |
1576 | たのもしなのの宮人のうふる花しくるる月にあへすなるとも たのもしな ののみやひとの ううるはな しくるるつきに あへすなるとも | 源順 | 十六 | 雑上 |
1577 | 山かはのいはゆく水もこほりしてひとりくたくる峯のまつ風 やまかはの いはゆくみつも こほりして ひとりくたくる みねのまつかせ | 読人知らず | 十六 | 雑上 |
1578 | あさことにみきはのこほりふみわけて君につかふるみちそかしこき あさことに みきはのこほり ふみわけて きみにつかふる みちそかしこき | 源師房 | 十六 | 雑上 |
1579 | 君かよにあふくまかはのむもれ木もこほりのしたに春をまちけり きみかよに あふくまかはの うもれきも こほりのしたに はるをまちけり | 家隆朝臣 | 十六 | 雑上 |
1580 | あともなく雪ふるさとはあれにけりいつれむかしのかきねなるらん あともなく ゆきふるさとは あれにけり いつれむかしの かきねなるらむ | 赤染衛門 | 十六 | 雑上 |
1581 | つゆのいのちきえなましかはかくはかりふる白雪をなかめましやは つゆのいのち きえなましかは かくはかり ふるしらゆきを なかめましやは | 後白河院御哥 | 十六 | 雑上 |
1582 | そま山やこすゑにをもるゆきをれにたえぬなけきの身をくたくらん そまやまの こすゑにおもる ゆきをれに たえぬなけきの みをくたくらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1583 | 時すきてしもにきえにし花なれとけふはむかしの心ちこそすれ ときすきて しもにきえにし はななれと けふはむかしの ここちこそすれ | 朱雀院御哥 | 十六 | 雑上 |
1584 | ほともなくさめぬる夢の中なれとそのよににたる花の色かな ほともなく さめぬるゆめの うちなれと そのよににたる はなのいろかな | 前大納言公任 | 十六 | 雑上 |
1585 | 見し夢をいつれのよそとおもふまにおりをわすれぬ花のかなしさ みしゆめを いつれのよそと おもふまに をりをわすれぬ はなのかなしさ | 御形宣旨 | 十六 | 雑上 |
1586 | おいぬとも又もあはんとゆくとしになみたのたまをたむけつるかな おいぬとも またもあはむと ゆくとしに なみたのたまを たむけつるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十六 | 雑上 |
1587 | おほかたにすくる月日となかめしはわか身にとしのつもるなりけり おほかたに すくるつきひを なかめしは わかみにとしの つもるなりけり | 慈覚大師 | 十六 | 雑上 |
1588 | 白なみのはま松かえのたむけくさいくよまてにかとしのへぬらん しらなみの はままつかえの たむけくさ いくよまてにか としのへぬらむ | 河島皇子 | 十七 | 雑中 |
1589 | 山しろのいは田のをののははそはら見つつや君か山ちこゆらん やましろの いはたのをのの ははそはら みつつやきみか やまちこゆらむ | 式部卿宇合 | 十七 | 雑中 |
1590 | あしのやのなたのしほやきいとまなみつけのをくしもささすきにけり あしのやの なたのしほやき いとまなみ つけのをくしも ささすきにけり | 在原業平朝臣 | 十七 | 雑中 |
1591 | はるるよのはしかかはへの蛍かもわかすむかたのあまのたくひか はるるよの ほしかかはへの ほたるかも わかすむかたに あまのたくひか | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1592 | しかのあまのしほやくけふり風をいたみたちはのほらて山にたなひく しかのあまの しほやくけふり かせをいたみ たちはのほらて やまにたなひく | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1593 | なにはめの衣ほすとてかりてたくあしひのけふりたたぬ日そなき なにはめの ころもほすとて かりてたく あしひのけふり たたぬひそなき | 紀貫之 | 十七 | 雑中 |
1594 | としふれはくちこそまされはしはしらむかしなからの名たにかはらて としふれは くちこそまされ はしはしら むかしなからの なたにかはらて | 忠岑 | 十七 | 雑中 |
1595 | 春の日のなからのはまに舟とめていつれかはしととへとこたへぬ はるのひの なからのはまに ふねとめて いつれかはしと とへとこたへぬ | 恵慶法師 | 十七 | 雑中 |
1596 | くちにけるなからのはしをきてみれはあしのかれ葉に秋風そ吹 くちにける なからのはしを きてみれは あしのかれはに あきかせそふく | 徳大寺実定(後徳大寺左大臣) | 十七 | 雑中 |
1597 | おきつ風よはにふくらしなにはかたあか月かけてなみそよすなる おきつかせ よはにふくらし なにはかた あかつきかけて なみそよすなる | 権中納言定頼 | 十七 | 雑中 |
1598 | すまの浦のなきたるあさはめもはるにかすみにまかふあまのつり舟 すまのうらの なきたるあさは めもはるに かすみにまかふ あまのつりふね | 藤原孝善 | 十七 | 雑中 |
1599 | 秋風のせきふきこゆるたひことに声うちそふるすまのうら浪 あきかせの せきふきこゆる たひことに こゑうちそふる すまのうらなみ | 壬生忠見 | 十七 | 雑中 |
1600 | すまの関夢をとおさぬなみのをとをおもひもよらてやとをかりける すまのせき ゆめをとほさぬ なみのおとを おもひもよらて やとをかりけり | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1601 | 人すまぬふわのせきやのいたひさしあれにしのちはたた秋の風 ひとすまぬ ふはのせきやの いたひさし あれにしのちは たたあきのかせ | 久我建通(後京極摂政) | 十七 | 雑中 |
1602 | あまを舟とまふきかへす浦風にひとりあかしの月をこそ見れ あまをふね とまふきかへす うらかせに ひとりあかしの つきをこそみれ | 俊頼朝臣 | 十七 | 雑中 |
1603 | わかのうらを松の葉こしになかむれはこすゑによするあまのつり舟 わかのうらを まつのはこしに なかむれは こすゑによする あまのつりふね | 寂蓮法師 | 十七 | 雑中 |
1604 | みつのえのよしのの宮は神さひてよはひたけたる浦の松風 みつのえの よしののみやは かみさひて よはひたけたる うらのまつかせ | 正三位季能 | 十七 | 雑中 |
1605 | いまさらにすみうしとてもいかかせんなたのしほやのゆふくれの空 いまさらに すみうしとても いかならむ なたのしほやの ゆふくれのそら | 藤原秀能 | 十七 | 雑中 |
1606 | おほよとのうらにたつなみかへらすは松のかはらぬいろをみましや おほよとの うらにたつなみ かへらすは まつのかはらぬ いろをみましや | 女御徽子女王 | 十七 | 雑中 |
1607 | まつ人は心ゆくともすみよしのさとにとのみはおもはさらなん まつひとは こころゆくとも すみよしの さとにとのみは おもはさらなむ | 後冷泉院御哥 | 十七 | 雑中 |
1608 | すみよしの松はまつともおもほえて君かちとせのかけそこひしき すみよしの まつはまつとも おもほえて きみかちとせの かけそこひしき | 大弐三位 | 十七 | 雑中 |
1609 | うちよする浪のこゑにてしるきかなふきあけのはまの秋のはつ風 うちよする なみのこゑにて しるきかな ふきあけのはまの あきのはつかせ | 祝部成仲 | 十七 | 雑中 |
1610 | おきつかせ夜さむになれやたこのうらのあまのもしほ火たきまさるらん おきつかせ よさむになれや たこのうら あまのもしほひ たきすさふらむ | 嘉陽門院越前 | 十七 | 雑中 |
1611 | 見わたせはかすみのうちもかすみけりけふりたなひくしほかまのうら みわたせは かすみのうちも かすみけり けふりたなひく しほかまのうら | 家隆朝臣 | 十七 | 雑中 |
1612 | けふとてやいそなつむらんいせしまやいちしのうらのあまのをとめこ けふとてや いそなつむらむ いせしまや いちしのうらの あまのをとめこ | 皇太后宮大夫俊成 | 十七 | 雑中 |
1613 | すすか山うきよをよそにふりすてていかになりゆくわか身なるらん すすかやま うきよをよそに ふりすてて いかになりゆく わかみなるらむ | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1614 | 世中をこころたかくもいとふかなふしのけふりを身のおもひにて よのなかを こころたかくも いとふかな ふしのけふりを みのおもひにて | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1615 | 風になひくふしのけふりのそらにきえてゆくゑもしらぬわか思哉 かせになひく ふしのけふりの そらにきえて ゆくへもしらぬ わかこころかな | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1616 | 時しらぬ山はふしのねいつとてかかのこまたらに雪のふるらん ときしらぬ やまはふしのね いつとてか かのこまたらに ゆきのふるらむ | 業平朝臣 | 十七 | 雑中 |
1617 | 春秋もしらぬときはの山さとはすむ人さへやおもかはりせぬ はるあきも しらぬときはの やまさとは すむひとさへや おもかはりせぬ | 在原元方 | 十七 | 雑中 |
1618 | 花ならてたたしはのとをさして思こころのおくもみよしのの山 はなならて たたしはのとを さしておもふ こころのおくも みよしののやま | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1619 | よしの山やかていてしとおもふ身を花ちりなはと人やまつらん よしのやま やかていてしと おもふみを はなちりなはと ひとやまつらむ | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1620 | いとひてもなをいとはしきよなりけりよしののおくの秋の夕くれ いとひても なほいとはしき よなりけり よしののおくの あきのゆふくれ | 藤原家衡朝臣 | 十七 | 雑中 |
1621 | ひとすちになれなはさてもすきのいほによなよなかはる風のをとかな ひとすちに なれなはさても すきのいほに よなよなかはる かせのおとかな | 右衛門督通具 | 十七 | 雑中 |
1622 | たれかはとおもひたえてもまつにのみをとつれてゆく風はうらめし たれかはと おもひたえても まつにのみ おとつれてゆく かせはうらめし | 有家朝臣 | 十七 | 雑中 |
1623 | 山さとはよのうきよりはすみわひぬことのほかなる峯の嵐に やまさとは よのうきよりも すみわひぬ ことのほかなる みねのあらしに | 宜秋門院丹後 | 十七 | 雑中 |
1624 | 滝のをと松のあらしもなれぬれはうちぬるほとの夢はみせけり たきのおと まつのあらしも なれぬれは うちぬるほとの ゆめはみてまし | 家隆朝臣 | 十七 | 雑中 |
1625 | ことしけきよをのかれにしみ山へにあらしの風も心してふけ ことしけき よをのかれにし みやまへに あらしのかせも こころしてふけ | 寂然法師 | 十七 | 雑中 |
1626 | おく山のこけの衣にくらへ見よいつれかつゆのをきまさるとも おくやまの こけのころもに くらへみよ いつれかつゆの おきまさるとも | 権大納言師氏 | 十七 | 雑中 |
1627 | 白つゆのあしたゆふへにおく山のこけの衣は風もさはらす しらつゆの あしたゆふへに おくやまの こけのころもは かせもさはらす | 如覚 | 十七 | 雑中 |
1628 | 世中をそむきにとてはこしかともなをうきことはおほはらのさと よのなかを そむきにとては こしかとも なほうきことは おほはらのさと | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1629 | 身をはかつをしほの山とおもひつついかにさためて人のいりけん みをはかつ をしほのやまと おもひつつ いかにさためて ひとのいりけむ | 能宣朝臣 | 十七 | 雑中 |
1630 | こけのいほりさしてきつれと君まさてかへるみ山のみちのつゆけさ こけのいほり さしてきつれと きみまさて かへるみやまの みちのつゆけさ | 恵慶法師 | 十七 | 雑中 |
1631 | あれはてて風もさはらぬこけのいほにわれはなくともつゆはもりけん あれはてて かせもさはらぬ こけのいほに われはなくとも つゆはもりけむ | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1632 | 山ふかくさこそ心はかよふともすまてあはれをしらんものかは やまふかく さこそこころは かよふとも すまてあはれを しらむものかは | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1633 | やまかけにすまぬこころはいかなれやおしまれている月もあるよに やまかけに すまぬこころは いかなれや をしまれている つきもあるよに | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1634 | たちいててつま木おりこしかたをかのふかき山ちとなりにけるかな たちいてて つまきをりこし かたをかの ふかきやまちと なりにけるかな | 寂蓮法師 | 十七 | 雑中 |
1635 | おく山のをとろかしたもふみわけてみちあるよそと人にしらせん おくやまの おとろかしたも ふみわけて みちあるよそと ひとにしらせむ | 太上天皇 | 十七 | 雑中 |
1636 | なからへて猶きみかよを松山のまつとせしまにとしそへにける なからへて なほきみかよを まつやまの まつとせしまに としそへにける | 二条院讃岐 | 十七 | 雑中 |
1637 | いまはとてつま木こるへきやとの松ちよをは君と猶いのる哉 いまはとて つまきこるへき やとのまつ ちよをはきみと なほいのるかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十七 | 雑中 |
1638 | われなからおもふかものをとはかりに袖にしくるる庭の松風 われなから おもふかものを とはかりに そてにしくるる にはのまつかせ | 有家朝臣 | 十七 | 雑中 |
1639 | 世をそむくところとかきくおく山はものおもひにそいるへかりける よをそむく ところとかきく おくやまは ものおもひにそ いるへかりける | 道命法師 | 十七 | 雑中 |
1640 | 世をそむくかたはいつくにありぬへしおほはら山はすみよかりきや よをそむく かたはいつくに ありぬへし おほはらやまは すみよかりきや | 和泉式部 | 十七 | 雑中 |
1641 | おもふことおほはら山のすみかまはいととなけきのかすをこそつめ おもふこと おほはらやまの すみかまは いととなけきの かすをこそつめ | 少将井尼 | 十七 | 雑中 |
1642 | たれすみて哀しるらん山さとの雨ふりすさむゆふくれの空 たれすみて あはれしるらむ やまさとの あめふりすさふ ゆふくれのそら | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1643 | しほりせてなを山ふかくわけいらんうきこときかぬ所ありやと しをりせて なほやまふかく わけいらむ うきこときかぬ ところありやと | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1644 | かさしおるみわのしけ山かきわけてあはれとそおもふすきたてるかと かさしをる みわのしけやま かきわけて あはれとそおもふ すきたてるかと | 殷富門院大輔 | 十七 | 雑中 |
1645 | いつとなきをくらの山のかけをみてくれぬと人のいそくなる哉 いつとなく をくらのやまの かけをみて くれぬとひとの いそくなるかな | 道命法師 | 十七 | 雑中 |
1646 | さかの山ちよのふるみちあととめてまたつゆわくるもち月のこま さかのやま ちよのふるみち あととめて またつゆわくる もちつきのこま | 定家朝臣 | 十七 | 雑中 |
1647 | さほかはのなかれひさしき身なれともうきせにあひてしつみぬる哉 さほかはの なかれひさしき みなれとも うきせにあひて しつみぬるかな | 藤原忠実 | 十七 | 雑中 |
1648 | かかるせもありけるものをうちかはのたえぬはかりもなけきけるかな かはるせも ありけるものを うちかはの たえぬはかりも なけきけるかな | 東三条入道前摂政太政大臣 | 十七 | 雑中 |
1649 | むかしよりたえせぬ河のすゑなれはよとむはかりをなになけくらん むかしより たえせぬかはの すゑなれは よとむはかりを なになけくらむ | 円融院御哥 | 十七 | 雑中 |
1650 | もののふのやそ氏かはのあしろ木にいさよふ浪のゆくゑしらすも もののふの やそうちかはの あしろきに いさよふなみの ゆくへしらすも | 柿本人麻呂(人麿) | 十七 | 雑中 |
1651 | わかよをはけふかあすかとまつかひのなみたの瀧といつれたかけん わかよをは けふかあすかと まつかひの なみたのたきと いつれたかけむ | 中納言行平 | 十七 | 雑中 |
1652 | みなかみのそらにみゆるは白雲のたつにまかへるぬのひきの瀧 みなかみの そらにみゆるは しらくもの たつにまかへる ぬのひきのたき | 藤原師通 | 十七 | 雑中 |
1653 | ひさかたのあまつをとめか夏衣くも井にさらすぬのひきのたき ひさかたの あまつをとめか なつころも くもゐにさらす ぬのひきのたき | 有家朝臣 | 十七 | 雑中 |
1654 | むかしきくあまのかはらをたつねきてあとなきみつをなかむはかりそ むかしきく あまのかはらを たつねきて あとなきみつを なかむはかりそ | 久我建通(後京極摂政) | 十七 | 雑中 |
1655 | あまのかはかよふうききにこととはんもみちのはしはちるやちらすや あまのかは かよふうききに こととはむ もみちのはしは ちるやちらすや | 実方朝臣 | 十七 | 雑中 |
1656 | ま木のいたもこけむすはかりなりにけりいくよへぬらんせたのなかはし まきのいたも こけむすはかり なりにけり いくよへぬらむ せたのなかはし | 前中納言匡房 | 十七 | 雑中 |
1657 | さためなき名にはたてれとあすかかははやくわたりしせにこそ有けれ さためなき なにはたてれと あすかかは はやくわたりし せにこそありけれ | 中務 | 十七 | 雑中 |
1658 | 山さとにひとりなかめておもふかなよにすむ人の心つよさを やまさとに ひとりなかめて おもふかな よにすむひとの こころつよさを | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1659 | やまさとにうきよいとはんとももかなくやしくすきし昔かたらん やまさとに うきよいとはむ とももかな くやしくすきし むかしかたらむ | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1660 | 山さとは人こさせしとおもはねととはるることそうとくなりゆく やまさとは ひとこさせしと おもはねと とはるることそ うとくなりゆく | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1661 | 草のいほをいとひても又いかかせんつゆのいのちのかかるかきりは くさのいほを いとひてもまた いかかせむ つゆのいのちの かかるかきりは | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1662 | わくらはになとかは人のとはさらんをとなし河にすむ身なりとも わくらはに なとかはひとの とはさらむ おとなしかはに すむみなりとも | 大僧正行尊 | 十七 | 雑中 |
1663 | 世をそむく山のみなみの松風にこけのころもやよさむなるらん よをそむく やまのみなみの まつかせに こけのころもや よさむなるらむ | 安法々師 | 十七 | 雑中 |
1664 | いつかわれこけのたもとにつゆをきてしらぬ山ちの月をみるへき いつかわれ こけのたもとに つゆおきて しらぬやまちの つきをみるへき | 家隆朝臣 | 十七 | 雑中 |
1665 | いまはわれ松のはしらのすきのいほにとつへき物をこけふかき袖 いまはわれ まつのはしらの すきのいほに とつへきものを こけふかきそて | 式子内親王 | 十七 | 雑中 |
1666 | しきみつむ山ちのつゆにぬれにけり暁おきのすみ染のそて しきみつむ やまちのつゆに ぬれにけり あかつきおきの すみそめのそて | 太皇太后宮小侍従 | 十七 | 雑中 |
1667 | わすれしの人たにとはぬ山ちかな桜は雪にふりかはれとも わすれしの ひとたにとはぬ やまちかな さくらはゆきに ふりかはれとも | 久我建通(後京極摂政) | 十七 | 雑中 |
1668 | かけやとすつゆのみしけくなりはてて草にやつるるふるさとの月 かけやとす つゆのみしけく なりはてて くさにやつるる ふるさとのつき | 雅経 | 十七 | 雑中 |
1669 | けふりたえてやく人もなきすみかまのあとのなけきをたれかこるらん けふりたえて やくひともなき すみかまの あとのなけきを たれかこるらむ | 賀茂重保 | 十七 | 雑中 |
1670 | やそちあまりにしのむかへをまちかねてすみあらしたるしはのいほりそ やそちあまり にしのむかへを まちかねて すみあらしたる しはのいほりそ | 西日法師 | 十七 | 雑中 |
1671 | 山さとにとひくる人のことくさはこのすまゐこそうらやましけれ やまさとに とひくるひとの ことくさは このすまひこそ うらやましけれ | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1672 | おののえのくちしむかしはとをけれとありしにもあらぬよをもふる哉 をののえの くちしむかしは とほけれと ありしにあらぬ よをもふるかな | 式子内親王 | 十七 | 雑中 |
1673 | いかにせんしつかそのふのおくのたけかきこもるとも世中そかし いかにせむ しつかそのふの おくのたけ かきこもるとも よのなかそかし | 皇太后宮大夫俊成 | 十七 | 雑中 |
1674 | あけくれはむかしをのみそしのふくさ葉すゑのつゆに袖ぬらしつつ あけくれは むかしをのみそ しのふくさ はすゑのつゆに そてぬらしつつ | 祝部成仲 | 十七 | 雑中 |
1675 | をかの辺のさとのあるしをたつぬれは人はこたへす山をろしの風 をかのへの さとのあるしを たつぬれは ひとはこたへす やまおろしのかせ | 前大僧正慈円 | 十七 | 雑中 |
1676 | ふるはたのそはのたつきにゐるはとのともよふ声のすこきゆふくれ ふるはたの そはのたつきに ゐるはとの ともよふこゑの すこきゆふくれ | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1677 | 山かつのかたをかかけてしむる野のさかひにたてる玉のを柳 やまかつの かたをかかけて しむるのの さかひにたてる たまのをやなき | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1678 | しけきのをいくひとむらにわけなしてさらにむかしをしのひかへさん しけきのを いくひとむらに わけなして さらにむかしを しのひかへさむ | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1679 | むかし見し庭のこ松にとしふりて嵐のをとをこすゑにそきく むかしみし にはのこまつに としふりて あらしのおとを こすゑにそきく | 読人知らず | 十七 | 雑中 |
1680 | すみなれしわかふるさとはこのころやあさちかはらにうつらなくらん すみなれし わかふるさとは このころや あさちかはらに うつらなくらむ | 大僧正行尊 | 十七 | 雑中 |
1681 | ふるさとはあさちかすゑになりはてて月にのこれる人のおもかけ ふるさとは あさちかすゑに なりはてて つきにのこれる ひとのおもかけ | 久我建通(後京極摂政) | 十七 | 雑中 |
1682 | これや見しむかしすみけんあとならんよもきかつゆに月のかかれる これやみし むかしすみけむ あとならむ よもきかつゆに つきのかかれる | 西行法師 | 十七 | 雑中 |
1683 | かけにとてたちかくるれはから衣ぬれぬ雨ふる松のこゑかな かけにとて たちかくるれは からころも ぬれぬあめふる まつのこゑかな | 紀貫之 | 十七 | 雑中 |
1684 | いそのかみふりにし人をたつぬれはあれたるやとにすみれつみけり いそのかみ ふりにしひとを たつぬれは あれたるやとに すみれつみけり | 能因法師 | 十七 | 雑中 |
1685 | いにしへをおもひやりてそこひわたるあれたるやとのこけのいしはし いにしへを おもひやりてそ こひわたる あれたるやとの こけのいしはし | 恵慶法師 | 十七 | 雑中 |
1686 | わくらはにとはれし人もむかしにてそれより庭のあとはたえにき わくらはに とはれしひとも むかしにて それよりにはの あとはたえにき | 定家朝臣 | 十七 | 雑中 |
1687 | なけきこる身は山なからすくせかしうきよの中になにかへるらん なけきこる みはやまなから すくせかし うきよのなかに なにかへるらむ | 赤染衛門 | 十七 | 雑中 |
1688 | 秋されはかり人こゆるたつた山たちてもゐてもものをしそおもふ あきされは かりひとこゆる たつたやま たちてもゐても ものをしそおもふ | 柿本人麻呂(人麿) | 十七 | 雑中 |
1689 | あさくらやきのまろとのにわかをれはなのりをしつつゆくはたかこそ あさくらや きのまろとのに わかをれは なのりをしつつ ゆくはたかこそ | 天智天皇御哥 | 十七 | 雑中 |
1690 | あしひきのこなたかなたにみちはあれと宮こへいさといふ人そなき あしひきの こなたかなたに みちはあれと みやこへいさと いふひとそなき | 久我建通(後京極摂政) | 十七 | 雑中 |
1691 | あまのはらあかねさしいつるひかりにはいつれのぬまかさえのこるへき あまのはら あかねさしいつる ひかりには いつれのぬまか さえのこるへき | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1692 | つきことになかるとおもひしますかかみにしのうみにもとまらさりけり つきことに なかるとおもひし ますかかみ にしのそらにも とまらさりけり | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1693 | 山わかれとひゆく雲のかへりくるかけみる時は猶たのまれぬ やまわかれ とひゆくくもの かへりくる かけみるときは なほたのまれぬ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1694 | きりたちててる日の本はみえすとも身はまとはれしよるへありやと きりたちて てるひのもとは みえすとも みはまとはれし よるへありやと | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1695 | 花とちり玉と見えつつあさむけは雪ふるさとそ夢に見えける はなとちり たまとみえつつ あさむけは ゆきふるさとそ ゆめにみえける | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1696 | おいぬとて松はみとりそまさりけるわかくろかみの雪のさむさに おいぬとて まつはみとりそ まさりける わかくろかみの ゆきのさむさに | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1697 | つくしにも紫おふる野辺はあれとなき名かなしふ人そきこえぬ つくしにも むらさきおふる のへはあれと なきなかなしむ ひとそきこえぬ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1698 | かるかやの関もりにのみ見えつるは人もゆるさぬ道へなりけり かるかやの せきもりにのみ みえつるは ひともゆるさぬ みちへなりけり | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1699 | うみならすたたへる水の底まてにきよき心は月そてらさん うみならす たたへるみつの そこまてに きよきこころは つきそてらさむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1700 | ひこほしのゆきあひをまつかささきのとわたるはしを我にかさなん ひこほしの ゆきあひをまつ かささきの わたせるはしを われにかさなむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1701 | なかれ木とたつ白浪とやくしほといつれかからきわたつみのそこ なかれきと たつしらなみと やくしほと いつれかからき わたつみのそこ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1702 | ささなみのひら山風のうみふけはつりするあまの袖かへるみゆ ささなみの ひらやまかせの うみふけは つりするあまの そてかへるみゆ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1703 | 白浪のよするなきさによをつくすあまのこなれはやともさためす しらなみの よするなきさに よをつくす あまのこなれは やともさためす | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1704 | 舟のうち浪のうへにそ老にけるあまのしわさもいとまなのよや ふねのうち なみのしたにそ おいにける あまのしわさも いとまなのよや | 久我建通(後京極摂政) | 十八 | 雑下 |
1705 | さすらふる身はさためたるかたもなしうきたる舟のなみにまかせて さすらふる みはさためたる かたもなし うきたるふねの なみにまかせて | 前中納言匡房 | 十八 | 雑下 |
1706 | いかにせん身をうきふねのにををもみつゐのとまりやいつこなるらん いかにせむ みをうきふねの にをおもみ つひのとまりや いつくなるらむ | 増賀上人 | 十八 | 雑下 |
1707 | あしかものさはくいり江の水のえのよにすみかたきわか身なりけり あしかもの さわくいりえの みつのえの よにすみかたき わかみなりけり | 柿本人麻呂(人麿) | 十八 | 雑下 |
1708 | あしかものは風になひくうき草のさためなきよをたれかたのまん あしかもの はかせになひく うきくさの さためなきよを たれかたのまむ | 能宣朝臣 | 十八 | 雑下 |
1709 | おいにけるなきさの松のふかみとりしつめるかけをよそにやはみる おいにける なきさのまつの ふかみとり しつめるかけを よそにやはみる | 順 | 十八 | 雑下 |
1710 | 葦引の山した水にかけみれはまゆしろたへにわれ老にけり あしひきの やましたみつに かけみれは まゆしろたへに われおいにけり | 能因法師 | 十八 | 雑下 |
1711 | なれ見てし花のたもとをうちかへしのりの衣をたちそかへつる なれみてし はなのたもとを うちかへし のりのころもを たちそかへつる | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 十八 | 雑下 |
1712 | そのかみの玉のかつらをうちかへしいまは衣のうらをたのまん そのかみの たまのかさしを うちかへし いまはころもの うらをたのまむ | 東三条院 | 十八 | 雑下 |
1713 | つきもせぬひかりのまにもまきれなておいてかへれるかみのつれなさ つきもせぬ ひかりのまにも まきれなて おいてかへれる かみのつれなさ | 冷泉院太皇太后宮 | 十八 | 雑下 |
1714 | かはるらん衣のいろをおもひやるなみたやうらの玉にまかはん かはるらむ ころものいろを おもひやる なみたやうらの たまにまかはむ | 枇杷皇太后宮 | 十八 | 雑下 |
1715 | まかふらんころものたまにみたれつつなをまたさめぬ心ちこそすれ まかふらむ ころものたまに みたれつつ なほまたさめぬ ここちこそすれ | 上東門院 | 十八 | 雑下 |
1716 | しほのまによものうらうらたつぬれといまはわか身のいふかひもなし しほのまに よものうらうら たつぬれと いまはわかみの いふかひもなし | 和泉式部 | 十八 | 雑下 |
1717 | いにしへのあまやけふりとなりぬらん人めも見えぬしほかまのうら いにしへの あまやけふりと なりぬらむ ひとめもみえぬ しほかまのうら | 一条院皇后宮 | 十八 | 雑下 |
1718 | 宮こより雲のやへたつおく山のよかはの水はすみよかるらん みやこより くものやへたつ おくやまの よかはのみつは すみよかるらむ | 天暦御哥 | 十八 | 雑下 |
1719 | ももしきのうちのみつねにこひしくて雲のやへたつ山はすみうし ももしきの うちのみつねに こひしくて くものやへたつ やまはすみうし | 如覚 | 十八 | 雑下 |
1720 | 夢かともなにかおもはんうきよをはそむかさりけんほとそくやしき ゆめかとも なにかおもはむ うきよをは そむかさりけむ ほとそくやしき | 惟喬親王 | 十八 | 雑下 |
1721 | 雲井とふ雁のねちかきすまゐにもなをたまつさはかけすやありけん くもゐとふ かりのねちかき すまひにも なほたまつさは かけすやありけむ | 女御徽子女王 | 十八 | 雑下 |
1722 | 白露はをきてかはれとももしきのうつろふ秋は物そかなしき しらつゆは おきてかはれと ももしきの うつろふあきは ものそかなしき | 伊勢 | 十八 | 雑下 |
1723 | あまつ風ふけゐのうらにゐるたつのなとか雲井にかへらさるへき あまつかせ ふけひのうらに ゐるたつの なとかくもゐに かへらさるへき | 藤原清正 | 十八 | 雑下 |
1724 | いにしへのなれし雲井をしのふとやかすみをわけて君たつねけん いにしへの なれしくもゐを しのふとや かすみをわけて きみたつねけむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1725 | おほよとのうらにかりほすみるめたにかすみにたへてかへるかりかね おほよとの うらにかりほす みるめたに かすみにたえて かへるかりかね | 定家朝臣 | 十八 | 雑下 |
1726 | はまちとりふみをくあとのつもりなはかひあるうらにあはさらめやは はまちとり ふみおくあとの つもりなは かひあるうらに あはさらめやは | 後白河院御哥 | 十八 | 雑下 |
1727 | 瀧つせに人の心を見ることはむかしにいまもかはらさりけり たきつせに ひとのこころを みることは むかしにいまも かはらさりけり | 後朱雀院御哥 | 十八 | 雑下 |
1728 | あさからぬ心そみゆるをとはかはせきいれし水のなかれならねと あさからぬ こころそみゆる おとはかは せきいれしみつの なかれならねと | 周防内侍 | 十八 | 雑下 |
1729 | ことの葉の中をなくなくたつぬれはむかしの人にあひみつる哉 ことのはの なかをなくなく たつぬれは むかしのひとに あひみつるかな | 壬生忠見 | 十八 | 雑下 |
1730 | ひとりねのこよひもあけぬたれとしもたのまはこそはこぬもうらみめ ひとりねの こよひもあけぬ たれとしも たのまはこそは こぬもうらみめ | 藤原為忠朝臣 | 十八 | 雑下 |
1731 | くさわけてたちゐるそてのうれしさにたへすなみたのつゆそこほるる くさわけて たちゐるそての うれしさに たえすなみたの つゆそこほるる | 赤染衛門 | 十八 | 雑下 |
1732 | うれしさはわすれやはするしのふくさしのふる物を秋の夕くれ うれしさは わすれやはする しのふくさ しのふるものを あきのゆふくれ | 伊勢大輔 | 十八 | 雑下 |
1733 | 秋風のをとせさりせは白露ののきのしのふにかからましやは あきかせの おとせさりせは しらつゆの のきのしのふに かからましやは | 大納言経信 | 十八 | 雑下 |
1734 | しのふくさいかなるつゆかをきつらんけさはねもみなあらはれにけり しのふくさ いかなるつゆか おきつらむ けさはねもみな あらはれにけり | 右大将済時 | 十八 | 雑下 |
1735 | あさちふをたつねさりせはしのふくさおもひをきけんつゆを見ましや あさちふを たつねさりせは しのふくさ おもひおきけむ つゆをみましや | 左大将朝光 | 十八 | 雑下 |
1736 | なからへんとしもおもはぬつゆの身のさすかにきえんことをこそおもへ なからへむ としもおもはぬ つゆのみの さすかにきえむ ことをこそおもへ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1737 | つゆの身のきえはわれこそさきたためをくれん物かもりの下草 つゆのみの きえはわれこそ さきたため おくれむものか もりのしたくさ | 小馬命婦 | 十八 | 雑下 |
1738 | いのちさへあらは見つへき身のはてをしのはん人のなきそかなしき いのちさへ あらはみつへき みのはてを しのはむひとの なきそかなしき | 和泉式部 | 十八 | 雑下 |
1739 | さためなきむかしかたりをかそふれはわか身もかすにいりぬへき哉 さためなき むかしかたりを かそふれは わかみもかすに いりぬへきかな | 大僧正行尊 | 十八 | 雑下 |
1740 | 世中のはれゆくそらにふる霜のうき身はかりそをき所なき よのなかの はれゆくそらに ふるしもの うきみはかりそ おきところなき | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1741 | たのみこしわかふるてらのこけのしたにいつしかくちん名こそおしけれ たのみこし わかふるてらの こけのしたに いつかくちなむ なこそをしけれ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1742 | くりかへしわか身のとかをもとむれは君もなきよにめくるなりけり くりかへし わかみのとかを もとむれは きみもなきよに めくるなりけり | 大僧正行尊 | 十八 | 雑下 |
1743 | うしといひてよをひたふるにそむかねは物おもひしらぬ身とやなりなん うしといひて よをひたふるに そむかねは ものおもひしらぬ みとやなりなむ | 清原元輔 | 十八 | 雑下 |
1744 | そむけともあめのしたをしはなれねはいつくにもふる涙なりけり そむけとも あめのしたをし はなれねは いつくにもふる なみたなりけり | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1745 | おほそらにてる日のいろをいさめてもあめのしたにはたれかすむへき おほそらに てるひのいろを いさめても あめのしたには たれかすむへき | 女蔵人内匠 | 十八 | 雑下 |
1746 | かくしつつゆふへの雲となりもせは哀かけてもたれかしのはん かくしつつ ゆふへのくもと なりもせは あはれかけても たれかしのはむ | 周防内侍 | 十八 | 雑下 |
1747 | おもはねとよをそむかんといふ人のおなしかすにやわれもなるらん おもはねと よをそむかむと いふひとの おなしかすにや われもなりなむ | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1748 | かすならぬ身をも心のもちかほにうかれては又かへりきにけり かすならぬ みをもこころの もちかほに うかれてはまた かへりきにけり | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1749 | をろかなる心のひくにまかせてもさてさはいかにつゐのおもひは おろかなる こころのひくに まかせても さてさはいかに つひのおもひは | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1750 | とし月をいかてわか身にをくりけん昨日の人もけふはなきよに としつきを いかてわかみに おくりけむ きのふのひとも けふはなきよに | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1751 | うけかたき人のすかたにうかひいててこりすやたれも又しつむへき うけかたき ひとのすかたに うかひいてて こりすやたれも またしつむへき | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1752 | そむきてもなをうき物はよなりけり身をはなれたる心ならねは そむきても なほうきものは よなりけり みをはなれたる こころならねは | 寂蓮法師 | 十八 | 雑下 |
1753 | 身のうさをおもひしらすはいかかせんいとひなからも猶すくす哉 みのうさを おもひしらすは いかかせむ いとひなからも なほすくすかな | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1754 | なにことをおもふ人そと人とははこたへぬさきに袖そぬるへき なにことを おもふひとそと ひととはは こたへぬさきに そてそぬるへき | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1755 | いたつらにすきにしことやなけかれんうけかたき身の夕暮のそら いたつらに すきにしことや なけかれむ うけかたきみの ゆふくれのそら | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1756 | うちたえてよにふる身にはあらねともあらぬすちにもつみそかなしき うちたえて よにふるみには あらねとも あらぬすちにも つみそかなしき | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1757 | 山さとに契しいほやあれぬらんまたれんとたにおもはさりしを やまさとに ちきりしいほや あれぬらむ またれむとたに おもはさりしを | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1758 | 袖にをく露をはつゆとしのへともなれゆく月やいろをしるらん そてにおく つゆをはつゆと しのへとも なれゆくつきや いろをしるらむ | 右衛門督通具 | 十八 | 雑下 |
1759 | 君かよにあはすはなにを玉のをのなかくとまてはおしまれし身を きみかよに あはすはなにを たまのをの なかくとまては をしまれしみを | 定家朝臣 | 十八 | 雑下 |
1760 | おほかたの秋のねさめのなかき夜も君をそいのる身をおもふとて おほかたの あきのねさめの なかきよも きみをそいのる みをおもふとて | 家隆朝臣 | 十八 | 雑下 |
1761 | わかのうらやおきつしほあひにうかひいつるあはれわか身のよるへしらせよ わかのうらや おきつしほあひに うかひいつる あはれわかみの よるへしらせよ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1762 | その山とちきらぬ月も秋風もすすむる袖につゆこほれつつ そのやまと ちきらぬつきも あきかせも すすむるそてに つゆこほれつつ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1763 | 君かよにあへるはかりの道はあれと身をはたのますゆくすゑの空 きみかよに あへるはかりの みちはあれと みをはたのます ゆくすゑのそら | 雅経朝臣 | 十八 | 雑下 |
1764 | おしむともなみたに月も心からなれぬる袖に秋をうらみて をしむとも なみたにつきも こころから なれぬるそてに あきをうらみて | 皇太后宮大夫俊成女 | 十八 | 雑下 |
1765 | うきしつみこんよはさてもいかにそと心にとひてこたへかねぬる うきしつみ こむよはさても いかにそと こころにとひて こたへかねぬる | 久我建通(後京極摂政) | 十八 | 雑下 |
1766 | われなから心のはてをしらぬかなすてられぬよの又いとはしき われなから こころのはてを しらぬかな すてられぬよの またいとはしき | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1767 | をしかへし物をおもふはくるしきにしらすかほにてよをやすきまし おしかへし ものをおもふは くるしきに しらすかほにて よをやすきまし | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1768 | なからへてよにすむかひはなけれともうきにかへたる命なりけり なからへて よにすむかひは なけれとも うきにかへたる いのちなりけり | 守覚法親王 | 十八 | 雑下 |
1769 | 世をすつる心はなをそなかりけるうきをうしとはおもひしれとも よをすつる こころはなほそ なかりける うきをうしとは おもひしれとも | 権中納言兼宗 | 十八 | 雑下 |
1770 | すてやらぬわか身そつらきさりともとおもふ心にみちをまかせて すてやらぬ わかみそつらき さりともと おもふこころに みちをまかせて | 左近中将公衡 | 十八 | 雑下 |
1771 | うきなからあれはあるよにふるさとの夢をうつつにさましかねても うきなから あれはあるよに ふるさとの ゆめをうつつに さましかねても | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1772 | うきなから猶おしまるるいのちかな後のよとてもたのみなけれは うきなから なほをしまるる いのちかな のちのよとても たのみなけれは | 源師光 | 十八 | 雑下 |
1773 | さりともとたのむ心のゆくすゑもおもへはしらぬよにまかすらん さりともと たのむこころの ゆくすゑも おもへはしらぬ よにまかすらむ | 賀茂重保 | 十八 | 雑下 |
1774 | つくつくとおもへはやすきよの中を心となけくわか身なりけり つくつくと おもへはやすき よのなかを こころとなけく わかみなりけり | 荒木田長延 | 十八 | 雑下 |
1775 | 河舟ののほりわつらふつなてなわくるしくてのみよをわたる哉 かはふねの のほりわつらふ つなてなは くるしくてのみ よをわたるかな | 刑部卿頼輔 | 十八 | 雑下 |
1776 | おいらくの月日はいととはやせかはかへらぬなみにぬるる袖かな おいらくの つきひはいとと はやせかは かへらぬなみに ぬるるそてかな | 大僧都覚弁 | 十八 | 雑下 |
1777 | かきなかすことの葉をたにしつむなよ身こそかくても山河の水 かきなかす ことのはをたに しつむなよ みこそかくても やまかはのみつ | 藤原行能 | 十八 | 雑下 |
1778 | 見れはまついとと涙そもろかつらいかに契てかけはなれけん みれはまつ いととなみたそ もろかつら いかにちきりて かけはなれけむ | 鴨長明 | 十八 | 雑下 |
1779 | おなしくはあれないにしへおもひいてのなけれはとてもしのはすもなし おなしくは あれないにしへ おもひいての なけれはとても しのはすもなし | 源季景 | 十八 | 雑下 |
1780 | いつくにもすまれすはたたすまてあらんしはのいほりのしはしなるよに いつくにも すまれすはたた すまてあらむ しはのいほりの しはしなるよに | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1781 | 月のゆく山に心ををくりいれてやみなるあとの身をいかにせん つきのゆく やまにこころを おくりいれて やみなるあとの みをいかにせむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1782 | おもふことなととふ人のなかるらんあふけはそらに月そさやけき おもふことを なととふひとの なかるらむ あふけはそらに つきそさやけき | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1783 | いかにしていままてよには在曙のつきせぬ物をいとふ心は いかにして いままてよには ありあけの つきせぬものを いとふこころは | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1784 | うきよいてし月日のかけのめくりきてかはらぬ道を又てらすらん うきよいてし つきひのかけの めくりきて かはらぬみちを またてらすらむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1785 | 人しれすそなたをしのふ心をはかたふく月にたくへてそやる ひとしれす そなたをしのふ こころをは かたふくつきに たくへてそやる | 承仁法親王 | 十八 | 雑下 |
1786 | みちのくのいはてしのふはえそしらぬかきつくしてよつほのいしふみ みちのくの いはてしのふは えそしらぬ かきつくしてよ つほのいしふみ | 前右大将頼朝 | 十八 | 雑下 |
1787 | けふまては人をなけきてくれにけりいつ身のうへにならんとすらん けふまては ひとをなけきて くれにけり いつみのうへに ならむとすらむ | 大江嘉言 | 十八 | 雑下 |
1788 | みちしはのつゆにあらそふわか身かないつれかまつはきえんとすらん みちしはの つゆにあらそふ わかみかな いつれかまつは きえむとすらむ | 清慎公 | 十八 | 雑下 |
1789 | なにとかやかへにおふなる草のなよそれにもたくふわか身なりけり なにとかや かへにおふなる くさのなよ それにもたくふ わかみなりけり | 皇嘉門院 | 十八 | 雑下 |
1790 | こしかたをさなから夢になしつれはさむるうつつのなきそかなしき こしかたを さなからゆめに なしつれは さむるうつつの なきそかなしき | 権中納言資実 | 十八 | 雑下 |
1791 | ちとせふる松たにくつるよの中にけふともしらてたてるわれかな ちとせふる まつたにくつる よのなかに けふともしらて たてるわれかな | 性空上人 | 十八 | 雑下 |
1792 | かすならてよにすみの江のみをつくしいつをまつともなき身なりけり かすならて よにすみのえの みをつくし いつをまつとも なきみなりけり | 後頼朝臣 | 十八 | 雑下 |
1793 | うきなからひさしくそよをすきにける哀やかけしすみよしの松 うきなから ひさしくそよを すきにける あはれやかけし すみよしのまつ | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1794 | かすか山たにのむもれ木くちぬとも君につけこせみねの松風 かすかやま たにのうもれき くちぬとも きみにつけこせ みねのまつかせ | 家隆朝臣 | 十八 | 雑下 |
1795 | なにとなくきけは涙そこほれぬるこけのたもとにかよふ松風 なにとなく きけはなみたそ こほれぬる こけのたもとに かよふまつかせ | 宜秋門院丹後 | 十八 | 雑下 |
1796 | みな人のそむきはてぬるよの中にふるのやしろの身をいかにせん みなひとの そむきはてぬる よのなかに ふるのやしろの みをいかにせむ | 女御徽子女王 | 十八 | 雑下 |
1797 | 衣ての山井の水にかけみえし猶そのかみの春そこひしき ころもての やまゐのみつに かけみえし なほそのかみの はるそこひしき | 実方朝臣 | 十八 | 雑下 |
1798 | いにしへの山井の衣なかりせはわすらるる身となりやしなまし いにしへの やまゐのころも なかりせは わすらるるみと なりやしなまし | 道信朝臣 | 十八 | 雑下 |
1799 | たちなからきてたに見せよをみ衣あかぬむかしの忘かたみに たちなから きてたにみせよ をみころも あかぬむかしの わすれかたみに | 加賀朝臣 | 十八 | 雑下 |
1800 | 秋の夜のあか月かたのきりきりすひとつてならてきかまし物を あきのよの あかつきかたの きりきりす ひとつてならて きかましものを | 天暦御哥 | 十八 | 雑下 |
1801 | なかめつつわかおもふことはひくらしにのきのしつくのたゆるよもなし なかめつつ わかおもふことは ひくらしに のきのしつくの たゆるまもなし | 中務卿具平親王 | 十八 | 雑下 |
1802 | こからしの風にもみちて人しれすうきことの葉のつもる比かな こからしの かせにもみちて ひとしれす うきことのはの つもるころかな | 小野小町 | 十八 | 雑下 |
1803 | 嵐ふくみねのもみちの日にそへてもろくなりゆくわか涙哉 あらしふく みねのもみちの ひにそへて もろくなりゆく わかなみたかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1804 | うたたねはおきふく風におとろけとなかき夢ちそさむる時なき うたたねは をきふくかせに おとろけと なかきゆめちそ さむるときなき | 崇徳院御哥 | 十八 | 雑下 |
1805 | 竹の葉に風ふきよはるゆふくれのものの哀は秋としもなし たけのはに かせふきよわる ゆふくれの もののあはれは あきとしもなし | 後鳥羽院宮内卿 | 十八 | 雑下 |
1806 | ゆふくれは雲のけしきをみるからになかめしとおもふ心こそつけ ゆふくれは くものけしきを みるからに なかめしとおもふ こころこそつけ | 和泉式部 | 十八 | 雑下 |
1807 | くれぬめりいくかをかくてすきぬらん入あひのかねのつくつくとして くれぬなり いくかをかくて すきぬらむ いりあひのかねの つくつくとして | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1808 | またれつる入あひのかねのをとすなりあすもやあらはきかんとすらん またれつる いりあひのかねの おとすなり あすもやあらは きかむとすらむ | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1809 | あか月とつけの枕をそはたててきくもかなしき鐘のをと哉 あかつきと つけのまくらを そはたてて きくもかなしき かねのおとかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1810 | あか月のゆふつけとりそ哀なるなかきねふりをおもふ枕に あかつきの ゆふつけとりそ あはれなる なかきねふりを おもふまくらに | 式子内親王 | 十八 | 雑下 |
1811 | かくはかりうきをしのひてなからへはこれよりまさる物もこそおもへ かくはかり うきをしのひて なからへは これよりまさる ものをこそおもへ | 和泉式部 | 十八 | 雑下 |
1812 | たらちねのいさめし物をつれつれとなかむるをたにとふ人もなし たらちねの いさめしものを つれつれと なかむるをたに とふひともなし | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1813 | あはれとてはくくみたてしいにしへはよをそむけともおもはさりけん あはれとて はくくみたてし いにしへは よをそむけとも おもはさりけむ | 大僧正行尊 | 十八 | 雑下 |
1814 | くらゐ山あとをたつねてのほれともこをおもふみちに猶まよひぬる くらゐやま あとをたつねて のほれとも こをおもふみちに なほまよひぬる | 源師房 | 十八 | 雑下 |
1815 | むかしたにむかしとおもひしたらちねのなをこひしきそはかなかりける むかしたに むかしとおもひし たらちねの なほこひしきそ はかなかりける | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1816 | ささかにのいとかかりける身のほとをおもへは夢の心ちこそすれ ささかにの いとかかりける みのほとを おもへはゆめの ここちこそすれ | 俊頼朝臣 | 十八 | 雑下 |
1817 | ささかにのそらにすかくもおなしことまたきやとにもいくよかはへん ささかにの そらにすかくも おなしこと またきやとりも いくよかはへむ | 僧正遍昭 | 十八 | 雑下 |
1818 | ひかりまつえたにかかれるつゆのいのちきえはてねとやはるのつれなき ひかりまつ えたにかかれる つゆのいのち きえはてねとや はるのつれなき | 源高明 | 十八 | 雑下 |
1819 | あらくふく風はいかにと宮木ののこはきかうへを人のとへかし あらくふく かせはいかにと みやきのの こはきかうへを ひとのとへかし | 赤染衛門 | 十八 | 雑下 |
1820 | うつろはてしはししのたのもりをみよかへりもそするくすのうら風 うつろはて しはししのたの もりをみよ かへりもそする くすのうらかせ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1821 | 秋風はすこくふけともくすの葉のうらみかほには見えしとそおもふ あきかせは すこくふくとも くすのはの うらみかほには みえしとそおもふ | 和泉式部 | 十八 | 雑下 |
1822 | をささはら風まつ露のきえやらすこのひとふしをおもひをくかな をささはら かせまつつゆの きえやらす このひとふしを おもひおくかな | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1823 | 世中をいまはの心つくからにすきにしかたそいととこひしき よのなかを いまはのこころ つくからに すきにしかたそ いととこひしき | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1824 | よをいとふ心のふかくなるままにすくる月日をうちかそへつつ よをいとふ こころのふかく なるままに すくるつきひを うちかそへつつ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1825 | ひとかたにおもひとりにし心にはなをそむかるる身をいかにせん ひとかたに おもひとりにし こころには なほそむかるる みをいかにせむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1826 | なにゆへにこのよをふかくいとふそと人のとへかしやすくこたへん なにゆゑに このよをふかく いとふそと ひとのとへかし やすくこたへむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1827 | おもふへきわか後のよはあるかなきかなけれはこそはこのよにはすめ おもふへき わかのちのよは あるかなきか なけれはこそは このよにはすめ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1828 | 世をいとふ名をたにもさはととめをきてかすならぬ身のおもひいてにせん よをいとふ なをたにもさは ととめおきて かすならぬみの おもひいてにせむ | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1829 | 身のうさをおもひしらてややみなましそむくならひのなきよなりせは みのうさを おもひしらてや やみなまし そむくならひの なきよなりせは | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1830 | いかかすへきよにあらはやはよをもすててあなうのよやとさらにおもはん いかかすへき よにあらはやは よをもすてて あなうのよやと さらにおもはむ | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1831 | なに事にとまる心のありけれはさらにしも又よのいとはしき なにことに とまるこころの ありけれは さらにしもまた よのいとはしき | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1832 | むかしよりはなれかたきはうきよかなかたみにしのふ中ならねとも むかしより はなれかたきは うきよかな かたみにしのふ なかならねとも | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 十八 | 雑下 |
1833 | おもひいててもしもたつぬる人もあらはありとないひそさためなきよに おもひいてて もしもたつぬる ひともあらは ありとないひそ さためなきよに | 大僧正行尊 | 十八 | 雑下 |
1834 | かすならぬ身をなにゆへにうらみけんとてもかくてもすくしけるよを かすならぬ みをなにゆゑに うらみけむ とてもかくても すくしけるよを | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1835 | いつかわれみ山のさとのさひしきにあるしとなりて人にとはれん いつかわれ みやまのさとの さひしきに あるしとなりて ひとにとはれむ | 前大僧正慈円 | 十八 | 雑下 |
1836 | うき身には山田のをしねをしこめてよをひたすらにうらみわひぬる うきみには やまたのおしね おしこめて よをひたすらに うらみわひぬる | 俊頼朝臣 | 十八 | 雑下 |
1837 | しつのをのあさなあさなにこりつむるしはしのほともありかたのよや しつのをの あさなあさなに こりつむる しはしのほとも ありかたのよや | 山田法師 | 十八 | 雑下 |
1838 | かすならぬ身はなき物になしはてつたかためにかはよをもうらみん かすならぬ みはなきものに なしはてつ たかためにかは よをもうらみむ | 寂蓮法師 | 十八 | 雑下 |
1839 | たのみありて今ゆくすゑをまつ人やすくる月日をなけかさるらん たのみありて いまゆくすゑを まつひとや すくるつきひを なけかさるらむ | 法橋行遍 | 十八 | 雑下 |
1840 | なからへていけるをいかにもとかましうき身のほとをよそにおもはは なからへて いけるをいかに もとかまし うきみのほとを よそにおもはは | 源師光 | 十八 | 雑下 |
1841 | うきよをはいつる日ことにいとへともいつかは月のいるかたを見ん うきよをは いつるひことに いとへとも いつかはつきの いるかたをみむ | 八条院高倉 | 十八 | 雑下 |
1842 | なさけありしむかしのみ猶しのはれてなからへまうき世にもふるかな なさけありし むかしのみなほ しのはれて なからへまうき よにもふるかな | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1843 | なからへは又このころやしのはれんうしと見しよそ今はこひしき なからへは またこのころや しのはれむ うしとみしよそ いまはこひしき | 清輔朝臣 | 十八 | 雑下 |
1844 | すゑのよもこのなさけのみかはらすと見し夢なくはよそにきかまし すゑのよも このなさけのみ かはらすと みしゆめなくは よそにきかまし | 西行法師 | 十八 | 雑下 |
1845 | ゆくすゑはわれをもしのふ人やあらんむかしをおもふ心ならひに ゆくすゑは われをもしのふ ひとやあらむ むかしをおもふ こころならひに | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1846 | 世中をおもひつらねてなかむれはむなしきそらにきゆる白雲 よのなかを おもひつらねて なかむれは むなしきそらに きゆるしらくも | 皇太后宮大夫俊成 | 十八 | 雑下 |
1847 | くるるまもまつへきよかはあたしののすゑはのつゆに嵐たつ也 くるるまも まつへきよかは あたしのの すゑはのつゆに あらしたつなり | 式子内親王 | 十八 | 雑下 |
1848 | つのくにのなからふへくもあらぬかなみしかきあしのよにこそ有けれ つのくにの なからふへくも あらぬかな みしかきあしの よにこそありけれ | 華山院御哥 | 十八 | 雑下 |
1849 | 風はやみおきの葉ことにをくつゆのをくれさきたつほとのはかなさ かせはやみ をきのはことに おくつゆの おくれさきたつ ほとのはかなさ | 中務卿具平親王 | 十八 | 雑下 |
1850 | 秋風になひくあさちのすゑことにをく白露のあはれ世中 あきかせに なひくあさちの すゑことに おくしらつゆの あはれよのなか | 蝉丸 | 十八 | 雑下 |
1851 | よの中はとてもかくてもおなしことみやもわらやもはてしなけれは よのなかは とてもかくても おなしこと みやもわらやも はてしなけれは | 読人知らず | 十八 | 雑下 |
1852 | しるらめやけふのねの日のひめこ松おひんすゑまてさかゆへしとは しるらめや けふのねのひの ひめこまつ おひむすゑまて さかゆへしとは | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1853 | なさけなくおる人つらしわかやとのあるしわすれぬ梅のたちえを なさけなく をるひとつらし わかやとの あるしわすれぬ うめのたちえを | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1854 | ふたらくのみなみのきしにたうたてていまそさかえんきたのふちなみ ふたらくの みなみのきしに たうたてて いまそさかえむ きたのふちなみ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1855 | 夜やさむき衣やうすきかたそきのゆきあひのまより霜やをくらん よやさむき ころもやうすき かたそきの ゆきあひのまより しもやおくらむ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1856 | いかはかりとしはへねともすみの江の松そふたたひおひかはりぬる いかはかり としはへねとも すみのえの まつそふたたひ おひかはりぬる | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1857 | むつましと君はしらなみみつかきのひさしきよよりいはひそめてき むつましと きみはしらなみ みつかきの ひさしきよより いはひそめてき | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1858 | 人しれすいまやいまやとちはやふる神さふるまて君をこそまて ひとしれす いまやいまやと ちはやふる かみさふるまて きみをこそまて | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1859 | みちとをしほともはるかにへたたれりおもひをこせよわれもわすれし みちとほし ほともはるかに へたたれり おもひおこせよ われもわすれし | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1860 | おもふこと身にあまるまてなる瀧のしはしよとむをなにうらむらん おもふこと みにあまるまて なるたきの しはしよとむを なにうらむらむ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1861 | われたのむ人いたつらになしはては又雲わけてのほるはかりそ われたのむ ひといたつらに なしはては またくもわけて のほるはかりそ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1862 | かかみにもかけみたらしの水のおもにうつるはかりの心とをしれ かかみにも かけみたらしの みつのおもに うつるはかりの こころとをしれ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1863 | ありきつつきつつ見れともいさきよき人の心をわれわすれめや ありきつつ きつつみれとも いさきよき ひとのこころを われわすれめや | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1864 | にしのうみたつ白浪のうへにしてなにすくすらんかりのこのよを にしのうみ たつしらなみの うへにして なにすくすらむ かりのこのよを | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1865 | しらなみにたまよりひめのこしことはなきさやつゐにとまりなりけん しらなみに たまよりひめの こしことは なきさやつひの とまりなりけむ | 大江千古 | 十九 | 神祇 |
1866 | ひさかたのあめのやへ雲ふりわけてくたりし君をわれそむかへし ひさかたの あめのやへくも ふりわけて くたりしきみを われそむかへし | 紀淑望 | 十九 | 神祇 |
1867 | とひかけるあまのいはふねたつねてそあきつしまには宮はしめける とひかける あまのいはふね たつねてそ あきつしまには みやはしめける | 三統理平 | 十九 | 神祇 |
1868 | やまとかもうみにあらしのにしふかはいつれのうらにみ舟つなかん やまとかも うみにあらしの にしふかは いつれのうらに みふねつなかむ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1869 | をく霜にいろもかはらぬさかき葉のかをやは人のとめてきつらん おくしもに いろもかはらぬ さかきはの かをやはひとの とめてきつらむ | 紀貫之 | 十九 | 神祇 |
1870 | 宮人のすれるころもにゆふたすきかけて心をたれによすらん みやひとの すれるころもに ゆふたすき かけてこころを たれによすらむ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1871 | 神風やみもすそ河のそのかみに契しことのすゑをたかふな かみかせや みもすそかはの そのかみよ ちきりしことの すゑをたかふな | 久我建通(後京極摂政) | 十九 | 神祇 |
1872 | 契ありてけふみやかはのゆふかつらなかきよまてもかけてたのまん ちきりありて けふみやかはの ゆふかつら なかきよまても かけてたのまむ | 藤原定家朝臣 | 十九 | 神祇 |
1873 | うれしさも哀もいかにこたへましふるさと人にとはれましかは うれしさも あはれもいかに こたへまし ふるさとひとに とはれましかは | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1874 | 神風やいすす河浪かすしらすすむへきみよに又かへりこん かみかせや いすすかはなみ かすしらす すむへきみよに またかへりこむ | 春宮権大夫公継 | 十九 | 神祇 |
1875 | なかめはや神ちの山に雲きえてゆふへのそらをいてん月かけ なかめはや かみちのやまに くもきえて ゆふへのそらを いてむつきかけ | 太上天皇 | 十九 | 神祇 |
1876 | 神かせやとよみてくらになひくしてかけてあふくといふもかしこし かみかせや とよみてくらに なひくして かけてあふくと いふもかしこし | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1877 | 宮はしらしたついはねにしきたててつゆもくもらぬ日のみかけ哉 みやはしら したついはねに しきたてて つゆもくもらぬ ひのみかけかな | 西行法師 | 十九 | 神祇 |
1878 | 神ち山月さやかなるちかひありてあめのしたをはてらすなりけり かみちやま つきさやかなる ちかひありて あめのしたをは てらすなりけり | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1879 | さやかなるわしのたかねの雲井よりかけやはらくる月よみのもり さやかなる わしのたかねの くもゐより かけやはらくる つきよみのもり | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1880 | やはらくるひかりにあまるかけなれやいすすかはらの秋のよの月 やはらくる ひかりにあまる かけなれや いすすかはらの あきのよのつき | 前大僧正慈円 | 十九 | 神祇 |
1881 | たちかへり又も見まくのほしきかなみもすそかはのせせの白浪 たちかへり またもみまくの ほしきかな みもすそかはの せせのしらなみ | 源雅定 | 十九 | 神祇 |
1882 | 神風やいすすのかはの宮はしらいくちよすめとたちはしめけん かみかせや いすすのかはの みやはしら いくちよすめと たてはしめけむ | 皇太后宮大夫俊成 | 十九 | 神祇 |
1883 | 神風やたまくしの葉をとりかさしうちとの宮に君をこそいのれ かみかせや たまくしのはを とりかはし うちとのみやに きみをこそいのれ | 俊恵法師 | 十九 | 神祇 |
1884 | 神かせや山田のはらのさかき葉に心のしめをかけぬ日そなき かみかせや やまたのはらの さかきはに こころのしめを かけぬひそなき | 嘉陽門院越前 | 十九 | 神祇 |
1885 | いすす河そらやまたきに秋の声したついはねの松の夕風 いすすかは そらやまたきに あきのこゑ したついはねの まつのゆふかせ | 大中臣明親 | 十九 | 神祇 |
1886 | ちはやふるかしゐの宮のあやすきは神のみそきにたてるなりけり ちはやふる かしひのみやの あやすきは かみのみそきに たてるなりけり | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1887 | さかき葉にそのいふかひはなけれとも神に心をかけぬまそなき さかきはに そのゆふかひは なけれとも かみにこころを かけぬまそなき | 法印成清 | 十九 | 神祇 |
1888 | としをへてうきかけをのみみたらしのかはるよもなき身をいかにせん としをへて うきかけをのみ みたらしの かはるよもなき みをいかにせむ | 周防内侍 | 十九 | 神祇 |
1889 | 月さゆるみたらし河にかけみえてこほりにすれる山あゐの袖 つきさゆる みたらしかはに かけみえて こほりにすれる やまあゐのそて | 皇太后宮大夫俊成 | 十九 | 神祇 |
1890 | ゆふしての風にみたるるをとさえて庭しろたへに雪そつもれる ゆふしての かせにみたるる おとさえて にはしろたへに ゆきそつもれる | 按察使公通 | 十九 | 神祇 |
1891 | 君をいのる心のいろを人とははたたすの宮のあけの玉かき きみをいのる こころのいろを ひととはは たたすのみやの あけのたまかき | 前大僧正慈円 | 十九 | 神祇 |
1892 | あとたれし神にあふひのなかりせはなににたのみをかけてすきまし あとたれし かみにあふひの なかりせは なににたのみを かけてすきまし | 賀茂重保 | 十九 | 神祇 |
1893 | おほみ田のうるおふはかりせきかけて井せきにおとせかはかみの神 おほみたの うるほふはかり せきかけて ゐせきにおとせ かはかみのかみ | 賀茂幸平 | 十九 | 神祇 |
1894 | いしかはのせみのをかはのきよけれは月もなかれをたつねてそすむ いしかはや せみのをかはの きよけれは つきもなかれを たつねてそすむ | 鴨長明 | 十九 | 神祇 |
1895 | よろつよをいのりそかくるゆふたすきかすかの山の峯の嵐に よろつよを いのりそかくる ゆふたすき かすかのやまの みねのあらしに | 中納言資仲 | 十九 | 神祇 |
1896 | けふまつる神の心やなひくらんしてに浪たつさほのかは風 けふまつる かみのこころや なひくらむ してになみたつ さほのかはかせ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 十九 | 神祇 |
1897 | あめのしたみかさの山のかけならてたのむかたなき身とはしらすや あめのした みかさのやまの かけならて たのむかたなき みとはしらすや | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1898 | かすか野のをとろのみちのむもれ水すゑたに神のしるしあらはせ かすかのの おとろのみちの うもれみつ すゑたにかみの しるしあらはせ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1899 | ちよまても心してふけもみちはを神もをしほの山おろしの風 ちよまても こころしてふけ もみちはを かみもをしほの やまおろしのかせ | 藤原伊家 | 十九 | 神祇 |
1900 | をしほ山神のしるしを松の葉にちきりしいろはかへる物かは をしほやま かみのしるしを まつのはに ちきりしはるは かへるものかは | 前大僧正慈円 | 十九 | 神祇 |
1901 | やはらくるかけそふもとにくもりなきもとの光はみねにすめとも やはらくる かけそふもとに くもりなき もとのひかりは みねにすめとも | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1902 | わかたのむななのやしろのゆふたすきかけてもむつの道にかへすな わかたのむ ななのやしろの ゆふたすき かけてもむつの みちにかへすな | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1903 | をしなへて日よしのかけはくもらぬになみたあやしき昨日けふかな おしなへて ひよしのかけは くもらぬに なみたあやしき きのふけふかな | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1904 | もろ人のねかひをみつのはま風に心すすしきしてのをとかな もろともの ねかひをみつの はまかせに こころすすしき してのおとかな | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1905 | さめぬれはおもひあはせてねをそなく心つくしの古の夢 さめぬれは おもひあはせて ねをそなく こころつくしの いにしへのゆめ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1906 | さきにほふ花のけしきをみるからに神の心そそらにしらるる さきにほふ はなのけしきを みるからに かみのこころそ そらにしらるる | 白河院御哥 | 十九 | 神祇 |
1907 | いはにむすこけふみならすみくまのの山のかひあるゆくすゑもかな いはにむす こけふみならす みくまのの やまのかひある ゆくすゑもかな | 太上天皇 | 十九 | 神祇 |
1908 | くまのかはくたすはやせのみなれさほさすかみなれぬ浪のかよひち くまのかは くたすはやせの みなれさを さすかみなれぬ なみのかよひち | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1909 | たちのほるしほやのけふりうら風になひくを神の心とも哉 たちのほる しほやのけふり うらかせに なひくをかみの こころともかな | 徳大寺実定 | 十九 | 神祇 |
1910 | いはしろの神はしるらんしるへせよたのむうきよの夢のゆくすゑ いはしろの かみはしるらむ しるへせよ たのむうきよの ゆめのゆくすゑ | 読人知らず | 十九 | 神祇 |
1911 | 契あれはうれしきかかるおりにあひぬわするな神もゆくすゑの空 ちきりあれは うれしきかかる をりにあひぬ わするなかみも ゆくすゑのそら | 太上天皇 | 十九 | 神祇 |
1912 | としふともこしの白山わすれすはかしらの雪を哀とも見よ としふとも こしのしらやま わすれすは かしらのゆきを あはれともみよ | 左京大夫顕輔 | 十九 | 神祇 |
1913 | すみよしのはま松かえに風ふけはなみのしらゆふかけぬまそなき すみよしの はままつかえに かせふけは なみのしらゆふ かけぬまそなき | 藤原道経 | 十九 | 神祇 |
1914 | さかき葉の霜うちはらひかれすのみすめとそいのる神のみまへに さかきはの しもうちはらひ かれすのみ すめともいのる かみのみまへに | 能宣朝臣 | 十九 | 神祇 |
1915 | 河やしろしのにおりはへほす衣いかにほせはかなぬかひさらん かはやしろ しのにをりはへ ほすころも いかにほせはか なぬかひさらむ | 紀貫之 | 十九 | 神祇 |
1916 | なをたのめしめちかはらのさせも草わかよの中にあらんかきりは なほたのめ しめちかはらの させもくさ わかよのなかに あらむかきりは | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1917 | なにかおもふなにをかなけく世中はたたあさかほの花のうへの露 なにかおもふ なにとかなけく よのなかは たたあさかほの はなのうへのつゆ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1918 | 山ふかくとしふるわれもあるものをいつちか月のいててゆくらん やまふかく としふるわれも あるものを いつちかつきの いててゆくらむ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1919 | あしそよくしほせの浪のいつまてかうきよの中にうかひわたらん あしそよく しほせのなみの いつまてか うきよのなかに うかひわたらむ | 行基菩薩 | 二十 | 釈教 |
1920 | 阿耨多羅三藐三菩提のほとけたちわかたつそまに冥加あらせたまへ あのくたら さみやさほたの ほとけたち わかたつそまに みやうかあらせたまへ | 伝教大師 | 二十 | 釈教 |
1921 | のりの舟さしてゆく身そもろもろの神もほとけもわれをみそなへ のりのふね さしてゆくみそ もろもろの かみもほとけも われをみそなへ | 智証大師 | 二十 | 釈教 |
1922 | しるへある時にたにゆけこくらくのみちにまとへる世中の人 しるへある ときにたにゆけ こくらくの みちにまとへる よのなかのひと | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1923 | 寂寞のこけのいはと(と=屋イ)のしつけきになみたの雨のふらぬ日そなき しやくまくの こけのいはとの しつけきに なみたのあめの ふらぬひそなき | 日蔵上人 | 二十 | 釈教 |
1924 | 南無阿弥陀ほとけのみてにかくるいとのをはりみたれぬ心ともかな なむあみた ほとけのみてに かくるいとの をはりみたれぬ こころともかな | 法円上人 | 二十 | 釈教 |
1925 | われたにもまつこくらくにむまなれはしるもしらぬもみなむかへてん われたにも まつこくらくに うまれなは しるもしらぬも みなむかへてむ | 僧都源信 | 二十 | 釈教 |
1926 | にこりなきかめ井の水をむすひあけて心のちりをすすきつる哉 にこりなき かめゐのみつを むすひあけて こころのちりを すすきつるかな | 上東門院 | 二十 | 釈教 |
1927 | わたつうみのそこよりきつるほともなくこの身なからに身をそきはむる わたつうみの そこよりきつる ほともなく このみなからに みをそきはむる | 藤原道長(法成寺入道前摂政太政大臣) | 二十 | 釈教 |
1928 | かすならぬいのちはなにかおしからんのりとくほとをしのふはかりそ かすならぬ いのちはなにか をしからむ のりとくほとを しのふはかりそ | 大納言斉信 | 二十 | 釈教 |
1929 | 紫の雲のはやしを見わたせはのりにあふちの花さきにけり むらさきの くものはやしを みわたせは のりにあふちの はなさきにけり | 京極関白家肥後 | 二十 | 釈教 |
1930 | たにかはのなかれしきよくすみぬれはくまなき月のかけもうかひぬ たにかはの なかれしきよく すみぬれは くまなきつきの かけもうかひぬ | 京極関白家肥後 | 二十 | 釈教 |
1931 | ねかはくはしはしやみちにやすらひてかかけやせまし法のともし火 ねかはくは しはしやみちに やすらひて かかけやせまし のりのともしひ | 前大僧正慈円 | 二十 | 釈教 |
1932 | とくみのきくのしらつゆよるはをきてつとめてきえんことをしそおもふ とくみのり きくのしらつゆ よるはおきて つとめてきえむ ことをしそおもふ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1933 | 極楽へまたわか心ゆきつかすひつしのあゆみしはしととまれ こくらくへ またわかこころ ゆきつかす ひつしのあゆみ しはしととまれ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1934 | わか心なをはれやらぬ秋きりにほのかに見ゆる在曙の月 わかこころ なほはれやらぬ あききりに ほのかにみゆる ありあけのつき | 権僧正公胤 | 二十 | 釈教 |
1935 | おく山にひとりうきよはさとりにきつねなきいろを風になかめて おくやまに ひとりうきよは さとりにき つねなきいろを かせになかめて | 久我建通(後京極摂政) | 二十 | 釈教 |
1936 | いろにのみそめし心のくやしきをむなしととけるのりのうれしさ いろにのみ そめしこころの くやしきは むなしととける のりのうれしさ | 太皇太后宮小侍従 | 二十 | 釈教 |
1937 | むらさきの雲ちにさそふことのねにうきよをはらふ峯の松風 むらさきの くもちにさそふ ことのねに うきよをはらふ みねのまつかせ | 寂蓮法師 | 二十 | 釈教 |
1938 | これやこのうきよのほかの春ならん花のとほそのあけほのの空 これやこの うきよのほかの はるならむ はなのとほその あけほののそら | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1939 | 春秋にかきらぬ花にをくつゆはをくれさきたつうらみやはある はるあきも かきらぬはなに おくつゆは おくれさきたつ うらみやはある | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1940 | たちかへりくるしきうみにをくあみもふかきえにこそ心ひくらめ たちかへり くるしきうみに おくあみも ふかきえにこそ こころひくらめ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1941 | いつくにもわかのりならぬのりやあるとそらふく風にとへとこたへぬ いつくにも わかのりならぬ のりやあると そらふくかせに とへとこたへぬ | 前大僧正慈円 | 二十 | 釈教 |
1942 | おもふなようきよの中をいてはててやとるおくにもやとは有けり おもふなよ うきよのなかを いてはてて やとるおくにも やとはありけり | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1943 | わしの山けふきくのりのみちならてかへらぬやとにゆく人そなき わしのやま けふきくのりの みちならて かへらぬやとに ゆくひとそなき | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1944 | をしなへてむなしきそらとおもひしにふちさきぬれは紫の雲 おしなへて むなしきそらと おもひしに ふちさきぬれは むらさきのくも | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1945 | をしなへてうき身はさこそなるみかたみちひるしほのかはるのみかは おしなへて うきみはさこそ なるみかた みちひるしほの かはるのみかは | 崇徳院御哥 | 二十 | 釈教 |
1946 | あさ日さすみねのつつきはめくめともまた霜ふかしたにのかけ草 あさひさす みねのつつきは めくめとも またしもふかし たにのかけくさ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1947 | そこきよく心の水をすまさすはいかかさとりのはちすをもみん そこきよく こころのみつを すまさすは いかかさとりの はちすをもみむ | 九条兼実(入道前関白太政大臣) | 二十 | 釈教 |
1948 | さらすとていくよもあらしいさやさはのりにかへつる命とおもはん さらすとて いくよもあらし いさやさは のりにかへつる いのちとおもはむ | 正三位経家 | 二十 | 釈教 |
1949 | ふかきよのまとうつ雨にをとせぬはうきよをのきのしのふなりけり ふかきよの まとうつあめに おとせぬは うきよをのきの しのふなりけり | 寂蓮法師 | 二十 | 釈教 |
1950 | いにしへの鹿なく野辺のいほりにも心の月はくもらさりけん いにしへの しかなくのへの いほりにも こころのつきは くもらさりけむ | 前大僧正慈円 | 二十 | 釈教 |
1951 | みちのへのほたるはかりをしるへにてひとりそいつる夕やみの空 みちのへの ほたるはかりを しるへにて ひとりそいつる ゆふやみのそら | 寂然法師 | 二十 | 釈教 |
1952 | 雲はれてむなしきそらにすみなからうきよの中をめくる月哉 くもはれて むなしきそらに すみなから うきよのなかを めくるつきかな | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1953 | ふく風にはなたち花やにほふらんむかしおほゆるけふの庭哉 ふくかせに はなたちはなや にほふらむ むかしおほゆる けふのにはかな | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1954 | やみふかきこのもとことに契をきてあさたつきりのあとのつゆけさ やみふかき このもとことに ちきりおきて あさたつきりの あとのつゆけさ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1955 | けふすきぬいのちもしかとおとろかす入あひのかねの声そかなしき けふすきぬ いのちもしかと おとろかす いりあひのかねの こゑそかなしき | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1956 | 草ふかきかりはのをのをたちいててともまとはせる鹿そなくなる くさふかき かりはのをのを たちいてて ともまとはせる しかそなくなる | 素覚法師 | 二十 | 釈教 |
1957 | そむかすはいつれのよにかめくりあひておもひけりとも人にしられん そむかすは いつれのよにか めくりあひて おもひけりとも ひとにしられむ | 寂然法師 | 二十 | 釈教 |
1958 | あひみてもみねにわかるる白雲のかかるこのよのいとはしき哉 あひみても みねにわかるる しらくもの かかるこのよの いとはしきかな | 源季広 | 二十 | 釈教 |
1959 | をとにきく君かりいつかいきの松まつらんものを心つくしに おとにきく きみかりいつか いきのまつ まつらむものを こころつくしに | 寂然法師 | 二十 | 釈教 |
1960 | わかれにしそのおもかけのこひしき夢にも見えよ山の葉の月 わかれにし そのおもかけの こひしきに ゆめにもみえよ やまのはのつき | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1961 | わたつうみのふかきにしつむいさりせてたもつかひあるのりをもとめよ わたつうみの ふかきにしつむ いさりせて たもつかひある のりをもとめよ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1962 | うきくさのひとはなりともいそかくれおもひなかけそおきつ白浪 うきくさの ひとはなりとも いそかくれ おもひなかけそ おきつしらなみ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1963 | さらぬたにをもきかうへにさよころもわかつまならぬつまなかさねそ さらぬたに おもきかうへの さよころも わかつまならぬ つまなかさねそ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1964 | はなのもとつゆのなさけはほともあらしゑいなすすめそ春の山風 はなのもと つゆのなさけは ほともあらし ゑひなすすめそ はるのやまかせ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1965 | うきをなをむかしのゆへとおもはすはいかにこのよをうらみはてまし うきもなほ むかしのゆゑと おもはすは いかにこのよを うらみはてまし | 二条院讃岐 | 二十 | 釈教 |
1966 | わたすへきかすもかきらぬはしはしらいかにたてけるちかひなるらん わたすへき かすもかきらぬ はしはしら いかにたてける ちかひなるらむ | 皇太后宮大夫俊成 | 二十 | 釈教 |
1967 | いまそこれいり日を見てもおもひこしみたのみくにの夕くれの空 いまそこれ いりひをみても おもひこし みたのみくにの ゆふくれのそら | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1968 | いにしへのおのへのかねににたるかなきしうつ浪の暁の声 いにしへの をのへのかねに にたるかな きしうつなみの あかつきのこゑ | 読人知らず | 二十 | 釈教 |
1969 | しつかなるあか月ことに見わたせはまたふかきよの夢そかなしき しつかなる あかつきことに みわたせは またふかきよの ゆめそかなしき | 式子内親王 | 二十 | 釈教 |
1970 | あふことをいつくにとてかちきるへきうき身のゆかんかたをしらねは あふことを いつくにてとか ちきるへき うきみのゆかむ かたをしらねは | 選子内親王 | 二十 | 釈教 |
1971 | 玉かけし衣のうらをかへしてそをろかなりける心をはしる たまかけし ころものうらを かへしてそ おろかなりける こころをはしる | 僧都源信 | 二十 | 釈教 |
1972 | 夢やゆめうつつや夢とわかぬかないかなるよにかさめんとすらん ゆめやゆめ うつつやゆめと わかぬかな いかなるよにか さめむとすらむ | 赤染衛門 | 二十 | 釈教 |
1973 | つねよりもけふのけふりのたよりにやにしをはるかにおもひやるらん つねよりも けふのけふりの たよりにや にしをはるかに おもひやるらむ | 相模 | 二十 | 釈教 |
1974 | けふはいととなみたにくれぬにしの山おもひいり日のかけをなかめて けふはいとと なみたにくれぬ にしのやま おもひいりひの かけをなかめて | 伊勢大輔 | 二十 | 釈教 |
1975 | にしへゆくしるへとおもふ月かけのそらたのめこそかひなかりけれ にしへゆく しるへとおもふ つきかけの そらたのめこそ かひなかりけれ | 待賢門院堀河 | 二十 | 釈教 |
1976 | たちいらて雲まをわけし月かけはまたぬけしきやそらにみえけん たちいらて くもまをわけし つきかけは またぬけしきや そらにみえけむ | 西行法師 | 二十 | 釈教 |
1977 | むかし見し月のひかりをしるへにてこよひや君かにしへゆくらん むかしみし つきのひかりを しるへにて こよひやきみか にしへゆくらむ | 瞻西上人 | 二十 | 釈教 |
1978 | やみはれて心のそらにすむ月はにしの山へやちかくなるらん やみはれて こころのそらに すむつきは にしのやまへや ちかくなるらむ | 西行法師 | 二十 | 釈教 |
※読人(作者)についてはできる限り正確に整えておりますが、誤りもある可能性があります。ご了承ください。
※御製歌は〇〇院としています。〇〇天皇の歌となります。
※作者検索をしたいときは、藤原、源といったいわゆる氏を除いた名のみで検索することをおすすめいたします。
※人麿は柿本人麻呂(人麿)としています。
※濁点につきましては原文通り加えておりません。時間的余裕があれば書き加えてまいります。