八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ
係り結びの一覧
- 係助詞には「は」「も」「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」があり、係り結びとなるものは「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」である。「やは」、「かは」、「もぞ」は「か」「や」「ぞ」に関連するが意味合いが若干異なる。
- 百人一首での用例数を見てもわかるとおり、「やは」「かは」「もぞ」の頻度は低い。
強意(強調) | 疑問 | 疑問・反語 | 意味 | ||
---|---|---|---|---|---|
こそ 強い強意 |
ぞ |
なむ 弱い強意 |
や | か |
係助詞 |
已然形 | 連体形 | 形 | |||
こそ悲しけれ 23番 |
ぞ思ふ 20番 |
なむまさり 伊勢物語二段 |
や折らむ 29番 |
かも寝む 3番 |
例 |
反語 | 不安 | 意味 | |
---|---|---|---|
やは | かは | もぞ | 係助詞 |
連体形 | 形 | ||
やはする 58番 |
かは知る 53番 |
もぞする 89番 |
例 |
こそ 強意
こそ 概要
「こそ」+「〜」+「已然形」
- 三種類の強意のなかで最も強い強意となる。連体形ではない唯一の形。
実例 23番 大江千里
月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
月を見ると、あれやこれやと本当に悲しくなる、私一人の秋ではないのに。
「こそ」+「悲しけれ」:悲しさを最大限に強意している。
係り結び「こそ」の歌:23、41、47、49、55、65、67、72、80、83、92
ぞ 強意
ぞ 概要
「ぞ」+「〜」+「連体形」
- 三種類の強意のなかで真ん中の通常の強意となる。
実例 20番 元良親王
侘びぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
どうしたらよいか、今となってはもう同じことだ、難波にあるみをつくしではないけれど、身を尽くしても逢いたいと思う。
「ぞ」+「思ふ」:逢いたい思いの強さを強調している。
係り結び「ぞ」の歌:5、6、8、13、20、28、35、37、71、77、81、83、84、90、98
なむ 強意
なむ 概要
「なむ」+「〜」+「連体形」
- 三種類の強意のなかで弱いの強意となる。
実例 伊勢物語 二段
その人、かたちよりは心なむまさりたりける。
その人は、顔かたちよりは、心が素晴らしい人であった。
「なむ」+「まさり」:心のすばらしさを強調している。
や 疑問
や 概要
「や」+「〜」+「連体形」
- ○○だろうかか。などの意。
- 反語ではないため「だろうか?いやない」という意味にはならない、単純な疑問。
実例 29番 凡河内躬恒
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
心をこめて折るというなら折ってみようか。初霜がおかえれ見分けがつかない白菊の花を。
「や」+「折ら」+「む」:折ってみようか。
※心あては「あて推量」という意味であるが、適当にという意味ではない。心を込めて無謀なことをしているというニュアンスを込めた訳とした。
係り結び「や」の歌:18、19、29、40、57、84、88
か 疑問・反語
か 概要
- 「か」+「〜」+「連体形」
- 疑問の「○○だろうかか」と、反語の「○○だろうかか。いやない。」のいずれかの意味。
実例 3番 柿本人麻呂
足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
山鳥の尾の、垂れ下がった尾の長々しさのように、秋の夜長を1人で寝るのだろうか。
「か」+「も寝」+「む」:寝るのだろうか。
※疑問として使われている
係り結び「か」の歌:3、27、34、39、91
やは 反語
やは 概要
「やは」+「〜」+「連体形」
「〜」+「やは」+「連体形」
- 「○○だろうかか。いやない。」の意味。
- 「や」+「連体形」の係り結び「疑問」の系統で、「は」を加えることで反語の意が加わる。
実例 58番 大弐三位
有馬山 ゐなのささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
有馬山に近い、猪名の笹原に風が吹くとそよそよと音を立てる。そうですよ、お忘れになったのですか、私は忘れませんよ。
「忘れ」+「やは」+「する」:忘れたのですか?私は忘れませんよ。
係り結び「やは」の歌:58、86
かは 反語
かは 概要
「かは」+「〜」+「連体形」
「〜」+「かは」+「連体形」
- 「○○だろうかか。いやない。」の意味。
- 「か」+「連体形」の係り結び「疑問・反語」の系統。「かは」としなくても「か」でも反語の意となるため、「や」で反語の意味を持たない「やは」とは異なる。
実例 53番 藤原道綱母
嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る
嘆きつづけて、一人で寝る夜の明けるまで、どんなに長いことかとご存じですか(ご存じないでしょう)
「かは」+「知る」:忘れたのですか?私は忘れませんよ。
係り結び「かは」の歌:53
もぞ 不安
もぞ 概要
「もぞ」+「〜」+「連体形」
「〜」+「もぞ」+「連体形」
- 「○○するとこまる」の意味。正確には「もぞ」は係助詞の「も」、係助詞の「ぞ」に分離される。
- 「ぞ」+「連体形」の係り結び「強調」の系統であるが、「も」を付け加えることで不安の意となる。
実例 89番 式子内親王
玉の緒よ たえなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
わが命、絶えるならば絶えてしまえ。生きながらえると、耐え忍ぶ心が弱まってしまう(それは困る)。
弱り+「もぞ」+「する」:弱ってしまう(弱るのは困る)
係り結び「もぞ」の歌:89
係り結びの覚え方とポイント
以下を押さえましょう
- 強調の「こそ」だけが已然形に繋がり、他は連体形であること
- 強調「こそ・ぞ・なむ」、疑問だけ「や」、反語の「か・やは・かは」と不安の「もぞ」
- 「や」は疑問のみであるが、「か」は反語も兼用され、「やは・かは」は反語。
- 暗記のイメージ「こそ!!ぞ、なむ… 、や?、か?、か・[や・か]は、いやないだろう。もぞっと不安(身震いするイメージ)」