八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ

後拾遺和歌集のデータベース
後拾遺和歌集とは
- 四番目の勅撰和歌集であり、白河天皇によって下命され、撰者は藤原通俊。
- 和泉式部、相模、赤染衛門、紫式部などの女流歌人、藤原一門など源氏物語に代表される平安王朝文学の栄えた時期の歌を多数収める。
- 1086年に完成。
後拾遺和歌集の構成
| 春上 | 春下 | 夏 | 秋上 | 秋下 | 冬 | 賀 | 別 | 羈旅 | 哀傷 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 数 | 127 | 37 | 70 | 100 | 42 | 48 | 36 | 39 | 35 | 69 |
| % | 10.4 | 3 | 5.7 | 8.2 | 3.4 | 3.9 | 2.9 | 3.2 | 2.8 | 5.6 |
| 恋一 | 恋二 | 恋三 | 恋四 | 雑一 | 雑二 | 雑三 | 雑四 | 雑五 | 雑六 | |
| 数 | 60 | 51 | 55 | 62 | 71 | 68 | 70 | 58 | 61 | 59 |
| % | 4.9 | 4.1 | 4.5 | 5 | 5.8 | 5.5 | 5.7 | 4.7 | 5 | 4.8 |
- 巻二十から成り、全1218首。
後拾遺和歌集 言の葉データベース
「かな」は原文と同様に濁点を付けておりませんので、例えば「郭公(ほととぎす)」を検索したいときは、「ほとときす」と入力してください。
| 歌番号 | 歌 | よみ人 | 巻 | 種 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | いかにねておくるあしたにいふことぞ昨日をこぞと今日を今年と いかにねておくるあしたにいふことそきのふをこそとけふをことしと | 小大君 | 一 | 春上 |
| 2 | いでてみよ今は霞も立ちぬらむ春はこれよりあくとこそきけ いててみよいまはかすみもたちぬらむはるはこれよりすくとこそきけ | 光朝法師母 | 一 | 春上 |
| 3 | 東路は勿来の関もあるものをいかでか春のこえてきつらむ あつまちはなこそのせきもあるものをいかてかはるのこえてきつらむ | 源師賢 | 一 | 春上 |
| 4 | あふさかの関をや春もこえつらむ音羽の山のけさはかすめる あふさかのせきをやはるもこえつらむおとはのやまのけさはかすめる | 橘俊綱 | 一 | 春上 |
| 5 | 春のくる道のしるべはみ吉野の山にたなびく霞なりけり はるのくるみちのしるへはみよしののやまにたなひくかすみなりけり | 能宣 | 一 | 春上 |
| 6 | 人しれずいりぬとおもひしかひもなく年も山路をこゆるなりけり ひとしれすいりぬとおもひしかひもなくとしもやまちをこゆるなりけり | 能宣 | 一 | 春上 |
| 7 | 雪ふりて道ふみまどふ山里にいかにしてかは春のきつらむ ゆきふりてみちふみまとふやまさとにいかにしてかははるのきつらむ | 兼盛 | 一 | 春上 |
| 8 | 新しき春はくれども身にとまる年はかへらぬものにぞありける あたらしきはるはくれともみにとまるとしはかへらぬものにそありける | 加賀左衛門 | 一 | 春上 |
| 9 | たづのすむ澤べの蘆のしたねとけ汀もえいづる春はきにけり たつのすむさはへのあしのしたねとけみきはもえいつるはるはきにけり | 能宣 | 一 | 春上 |
| 10 | み吉野は春のけしきにかすめどもむすぼほれたる雪の下草 みよしのははるのけしきにかすめともむすほほれたるゆきのしたくさ | 紫式部 | 一 | 春上 |
| 11 | 谷川の氷もいまだきえあへぬに峯の霞はたなびきにけり たにかはのこほりもいまたきえあへぬにみねのかすみはたなひきにけり | 藤原長能 | 一 | 春上 |
| 12 | 春ごとに野辺のけしきの変わらぬはおなじ霞やたちかへるらむ はることにのへのけしきのかはらぬはおなしかすみやたちかへるらむ | 藤原隆経 | 一 | 春上 |
| 13 | 春霞たつやおそきと山川の岩間をくぐる音きこゆなり はるかすみたつやおそきとやまかはのいはまをくくるおときこゆなり | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 14 | むらさきの袖をつらねてきたるかな春たつことはこれぞうれしき むらさきのそてをつらねてきたるかなはるたつことはこれそうれしき | 赤染衛門 | 一 | 春上 |
| 15 | むれてくる大宮人は春をへてかはらずながらめづらしきかな むれてくるおほみやひとははるをへてかはらすなからめつらしきかな | 小弁 | 一 | 春上 |
| 16 | むらさきもあけもみどりもうれしきは春のはじめにきたるなりけり むらさきもあけもみとりもうれしきははるのはしめにきたるなりけり | 藤原輔伊 | 一 | 春上 |
| 17 | 君ませとやりつる使きにけらし野辺の雉子はとりやしつらむ きみませとやりつるつかひきにけらしのへのききすはとりやしつらむ | 藤原道長 | 一 | 春上 |
| 18 | 春たちてふる白雪を鶯の花ちりぬとやいそぎいづらむ はるたちてふるしらゆきをうくひすのはなちりぬとやいそきいつらむ | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 19 | 山たかみ雪ふるすより鶯の出づるはつねはけふぞ聞きつる やまたかみゆきふるすよりうくひすのいつるはつねはけふそなくなる | 能宣 | 一 | 春上 |
| 20 | ふるさとへ行く人あらばことづてむけふ鶯の初音ききつと ふるさとへゆくひとあらはことつてむけふうくひすのはつねききつと | 源兼澄 | 一 | 春上 |
| 21 | ふりつもる雪きえがたき山里に春をしらする鶯のこゑ ふりつもるゆききえかたきやまさとにはるをしらするうくひすのこゑ | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 22 | 鶯のなくねばかりぞきこえける春のいたらぬ人のやどにも うくひすのなくねはかりそきこえけるはるのいたらぬひとのやとにも | 清原元輔 | 一 | 春上 |
| 23 | たづねつる宿は霞にうづもれて谷のうぐひす一こゑぞする たつねつるやとはかすみにうつもれてたにのうくひすひとこゑそする | 藤原範永 | 一 | 春上 |
| 24 | 千歳へむやどの子の日の松をこそほかのためしにひかむとすらめ ちとせへむやとのねのひのまつをこそほかのためしにひかむとすらめ | 清原元輔 | 一 | 春上 |
| 25 | ひきつれてけふは子の日の松にまたいま千歳をぞ野べにいでつる ひきつれてけふはねのひのまつにまたいまちとせをそのへにいてつる | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 26 | 春の野にいでぬ子の日はもろ人の心ばかりをやるにぞありける はるののにいてぬねのひはもろひとのこころはかりをやるにそありける | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 27 | けふは君いかなる野辺に子の日て人のまつをばしらぬなるらむ けふはきみいかなるのへにねのひしてひとのまつをはしらぬなるらむ | 賀茂成助 | 一 | 春上 |
| 28 | 袖かけてひきぞやられぬ小松原いづれともなきちよのけしきに そてかけてひきそやられぬこまつはらいつれともなきちよのけしきに | 右大臣北方 | 一 | 春上 |
| 29 | とまりにし子の日の松をけふよりはひかぬためしにひかるべきかな とまりにしねのひのまつをけふよりはひかぬためしにひかるへきかな | 藤原頼宗 | 一 | 春上 |
| 30 | あさみどり野辺の霞のたなびくにけふの小松をまかせつるかな あさみとりのへのかすみのたなひくにけふのこまつをまかせつるかな | 源経信 | 一 | 春上 |
| 31 | 君が代にひきくらぶれば子の日する松の千歳もかずならぬかな きみかよにひきくらふれはねのひするまつのちとせもかすならぬかな | 左近中将公実 | 一 | 春上 |
| 32 | 人はみな野辺の小松を引きにゆくけふの若菜は雪やつむらむ ひとはみなのへのこまつをひきにゆくけさのわかなはゆきやつむらむ | 伊勢大輔 | 一 | 春上 |
| 33 | 卯づゑつきつままほしきは玉さかに君が飛火の若菜なりけり うつゑつきつままほしきはたまさかにきみかとふひのわかななりけり | 伊勢大輔 | 一 | 春上 |
| 34 | 白雪のまだふるさとの春日野にいざうちはらひ若菜つみみむ しらゆきのまたふるさとのかすかのにいさうちはらひわかなつみてむ | 能宣 | 一 | 春上 |
| 35 | 春日野は雪のみつむとみしかどもおひいづるものは若菜なりけり かすかのはゆきのみつむとみしかともおひいつるものはわかななりけり | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 36 | 摘みにくる人はたれともなかりけりわがしめし野の若菜なれども つみにくるひとはたれともなかりけりわかしめしののわかななれとも | 中原頼成妻 | 一 | 春上 |
| 37 | かずしらずかさなるとしを鶯の聲する方のわかなともがな かすしらすかさなるとしをうくひすのこゑするかたのわかなともかな | 藤三位 | 一 | 春上 |
| 38 | 山たかみ都の春をみわたせばただ一むらの霞なりけり やまたかみみやこのはるをみわたせはたたひとむらのかすみなりけり | 大江正言 | 一 | 春上 |
| 39 | よそにては霞たなびくふるさとの都の春はみるべかりける よそにてそかすみたなひくふるさとのみやこのはるはみるへかりける | 能因法師 | 一 | 春上 |
| 40 | 春はまづ霞にまがふ山里をたちよりてとふ人のなきかな はるはまつかすみにまかふやまさとをたちよりてとふひとのなきかな | 選子内親王 | 一 | 春上 |
| 41 | はるばるとやへのしほぢにおく網をたなびくものは霞なりけり はるはるとやへのしほちにおくあみをたなひくものはかすみなりけり | 藤原節信 | 一 | 春上 |
| 42 | 三島江につのぐみわたる蘆のねの一夜のほどに春めきにけり みしまえにつのくみわたるあしのねのひとよのほとにはるめきにけり | 曾禰好忠 | 一 | 春上 |
| 43 | 心あらむ人にみせばや津の国の難波わたりの春のけしきを こころあらむひとにみせはやつのくにのなにはわたりのはるのけしきを | 能因法師 | 一 | 春上 |
| 44 | 難波潟うら吹く風に浪たてばつのぐむ蘆のみえみみえずみ なにはかたうらふくかせになみたてはつのくむあしのみえみみえすみ | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 45 | あはづののすぐろの薄つのぐめば冬たちなづむ駒ぞいばゆる あはつののすくろのすすきつのくめはふゆたちなつむこまそいはゆる | 権僧正静圓 | 一 | 春上 |
| 46 | たちはなれ沢辺になるる春駒はおのがかげをや友とみるらむ たちはなれさはへになるるはるこまはおのかかけをやともとみるらむ | 源兼長 | 一 | 春上 |
| 47 | 狩にこば行きてもみまし片岡のあしたの原にきぎす鳴くなり かりにこはゆきてもみましかたをかのあしたのはらにききすなくなり | 藤原長能 | 一 | 春上 |
| 48 | 秋までの命もしらず春の野に萩のふるえをやくときくかな あきまてのあはれもしらすはるののにはきのふるねをやくとやくかな | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 49 | 花ならでをらまほしきは難波江の蘆のわかばにふれる白雪 はなならてをらまほしきはなにはえのあしのわかはにふれるしらゆき | 藤原範永 | 一 | 春上 |
| 50 | 梅が香をたよりの風や吹きつらむ春めづらしく君がきませる うめかかをたよりのかせやふきつらむはるめつらしくきみかきませる | 平兼盛 | 一 | 春上 |
| 51 | 梅の花にほふあたりの夕暮はあやなく人にあやまたれつつ うめのはなにほふあたりのゆふくれはあやなくひとにあやまたれつつ | 大中臣能宣 | 一 | 春上 |
| 52 | 春の夜のやみにしなれば匂ひくる梅よりほかの花なかりけり はるのよのやみにしあれはにほひくるうめよりほかのはななかりけり | 藤原公任 | 一 | 春上 |
| 53 | 梅の香をよはの嵐の吹きためてまきの板戸のあくるまちけり うめのかをよはのあらしのふきためてまきのいたとのあくるまちけり | 大江嘉言 | 一 | 春上 |
| 54 | 梅の花かはことどとに匂はねど薄く濃くこそ色は咲きけれ うめのはなかはことことににほはねとうすくこくこそいろはさきけれ | 清原元輔 | 一 | 春上 |
| 55 | わかやどの垣根の梅のうつり香にひとりねもせぬ心地こそすれ わかやとのかきねのうめのうつりかにひとりねもせぬここちこそすれ | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 56 | わかやどの梅のさかりにくる人はどとろくばかり袖ぞにほへる わかやとのうめのさかりにくるひとはおとろくはかりそてそにほへる | 藤原公任 | 一 | 春上 |
| 57 | 春はただ我が宿にのみ梅さかばかれにし人もみにときなまし はるはたたわかやとにのみうめさかはかれにしひともみにときなまし | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 58 | 梅の花かきねににほふ山里は行きかふ人の心をぞみる うめのはなかきねににほふやまさとはゆきかふひとのこころをそみる | 賀茂成助 | 一 | 春上 |
| 59 | 梅の花かばかりにほふ春の夜のやみは風こそうれしかりけれ うめのはなかはかりにほふはるのよのやみはかせこそうれしかりけれ | 藤原顕綱 | 一 | 春上 |
| 60 | 梅が枝を折ればつづれる衣手に思ひもかけぬ移り香ぞする うめかえををれはつつれるころもてにおもひもかけぬうつりかそする | 素意法師 | 一 | 春上 |
| 61 | かばかりのにほひなりとも梅の花しづの垣根を思ひわするな かはかりのにほひなりともうめのはなしつのかきねをおもひわするな | 弁乳母 | 一 | 春上 |
| 62 | わがやどにうゑぬばかりぞ梅の花あるじなりともかばかりぞみむ わかやとにうゑぬはかりそうめのはなあるしなりともかはかりそみむ | 大江嘉言 | 一 | 春上 |
| 63 | 風ふけばをちの垣根の梅の花かはわがやどの物にぞありける かせふけはをちのかきねのうめのはなかはわかやとのものにそありける | 清基法師 | 一 | 春上 |
| 64 | たづねくる人にもみせむ梅の花ちるとも水にながれざらなむ たつねくるひとにもみせむうめのはなちるともみつになかれさらなむ | 藤原経衡 | 一 | 春上 |
| 65 | すゑむすぶ人のてさへや匂ふらむ梅のした行く水のながれは すゑむすふひとのてさへやにほふらむうめのしたゆくみつのなかれは | 平経章 | 一 | 春上 |
| 66 | おもひやれ霞こめたる山里に花まつほどの春のつれづれ おもひやれかすみこめたるやまさとのはなまつほとのはるのつれつれ | 上東門院中将 | 一 | 春上 |
| 67 | ほにいでて秋とみしまに小山田をまたうちかへす春もきにけり ほにいててあきとみしまにをやまたをまたうちかへすはるもきにけり | 小弁 | 一 | 春上 |
| 68 | かへるかり雲井はるかになりぬなりまたこむ秋も遠しとおもふに かへるかりくもゐはるかになりぬなりまたこむあきもとほしとおもふに | 赤染衛門 | 一 | 春上 |
| 69 | 行き帰る旅に年ふるかりがねはいくその春をよそにみるらむ ゆきかへるたひにとしふるかりかねはいくそのはるをよそにみるらむ | 藤原道信 | 一 | 春上 |
| 70 | とどまらぬ心ぞ見えむ帰るかり花のさかりを人にかたるな ととまらぬこころそみえむかへるかりはなのさかりをひとにかたるな | 馬内侍 | 一 | 春上 |
| 71 | うすずみにかく玉づさと見ゆるかな霞める空にかへるかりがね うすすみにかくたまつさとみゆるかなかすめるそらにかへるかりかね | 津守国基 | 一 | 春上 |
| 72 | をりしもあれいかにちぎりてかりがねの花の盛りに帰りそめけむ をりしもあれいかにちきりてかりかねのはなのさかりにかへりそめけむ | 弁乳母 | 一 | 春上 |
| 73 | かりがねぞけふ帰るなる小山田の苗代水のひきもとめなむ かりかねそけふかへるなるをやまたのなはしろみつのひきもとめなむ | 能宣 | 一 | 春上 |
| 74 | あらたまの年をへつつも青柳の糸はいづれのはるかたゆべき あらたまのとしをへつつもあをやきのいとはいつれのはるかたゆへき | 坂上望城 | 一 | 春上 |
| 75 | 池水のみくさもとらで青柳のはらふしづえにまかせてぞみる いけみつのみくさもとらてあをやきのはらふしつえにまかせてそみる | 藤原経衡 | 一 | 春上 |
| 76 | あさみどりみだれてなびく青柳の色にぞ春の風もみえける あさみとりみたれてなひくあをやきのいろにそはるのかせもみえける | 藤原元真 | 一 | 春上 |
| 77 | 春霞へだつる山の麓までおもひもしらずゆく心かな はるかすみへたつるやまのふもとまておもひしらすもゆくこころかな | 藤原孝善 | 一 | 春上 |
| 78 | 山ざくら見に行く道をへだつれば人の心ぞかすみなりける やまさくらみにゆくみちをへたつれはひとのこころそかすみなりける | 藤原隆経 | 一 | 春上 |
| 79 | うらやましいる身ともがな梓弓ふしみの里の花のまどゐに うらやましいるみともかなあつさゆみふしみのさとのはなのまとゐに | 皇后宮美作 | 一 | 春上 |
| 80 | 小萩さく秋まであらば思ひいでむ嵯峨野をやきし春はその日と こはきさくあきまてあらはおもひいてむさかのをやきしはるはそのひと | 賀茂成助 | 一 | 春上 |
| 81 | 桜花さかばちりなむとおもふよりかねても風のいとはしきかな さくらはなさかはちりなむとおもふよりかねてもかせのいとはしきかな | 永源法師 | 一 | 春上 |
| 82 | 梅が香を桜の花ににほはせて柳がえだにさかせてしがな うめかかをさくらのはなににほはせてやなきかえたにさかせてしかな | 中原致時 | 一 | 春上 |
| 83 | 明けばまづたづねにゆかむ山櫻こればかりだに人に遅れじ あけはまつたつねにゆかむやまさくらこれはかりたにひとにおくれし | 橘元任 | 一 | 春上 |
| 84 | 折らばをし折らではいかが山櫻けふをすぐさず君にみすべき をらはをしをらてはいかかやまさくらけふをすくさすきみにみすへき | 源雅通 | 一 | 春上 |
| 85 | をらでただかたりにかたれ山櫻風にちるだにをしきにほひを をらてたたかたりにかたれやまさくらかせにちるたにをしきにほひを | 盛少将 | 一 | 春上 |
| 86 | 思ひやる心ばかりはさくら花たづぬる人におくれやはする おもひやるこころはかりはさくらはなたつぬるひとにおくれやはする | 一宮駿河 | 一 | 春上 |
| 87 | あくがるる心ばかりは山桜たづぬる人にたぐへてぞやる あくかるるこころはかりはやまさくらたつぬるひとにたくへてそやる | 右大臣北方 | 一 | 春上 |
| 88 | 今こむとちぎりし人のおなじくは花の盛りをすぐさざらなむ いまこむとちきりしひとのおなしくははなのさかりをすくささらなむ | 源兼澄 | 一 | 春上 |
| 89 | いづれをかわきてをらまし山桜こころうつらぬえだしなければ いつれをかわきてをらましやまさくらこころうつらぬえたしなけれは | 祭主輔親 | 一 | 春上 |
| 90 | 行きとまる所ぞ春はなかりける花に心のあかぬかぎりは ゆきとまるところそはるはなかりけるはなにこころのあかぬかきりは | 菅原為言 | 一 | 春上 |
| 91 | やまざくら心のままにたづねきてかへさぞ道のほどはしらるる やまさくらこころのままにたつねきてかへさそみちのほとはしらるる | 小弁 | 一 | 春上 |
| 92 | にほふらむ花のみやこのこひしくてをるにものうき山ざくらかな にほふらむはなのみやこのこひしくてをるにものうきやまさくらかな | 上東門院中将 | 一 | 春上 |
| 93 | 東路の人にとはばや白川の関にもかくや花はにほふと あつまちのひとにとははやしらかはのせきにもかくやはなはにほふと | 藤原長家 | 一 | 春上 |
| 94 | 見るからに花の名だての身なれども心は雲のうへまでそゆく みるからにはなのなたてのみなれともこころはくものうへまてそゆく | 高岳頼言 | 一 | 春上 |
| 95 | 春ごとに見るとはすれど桜花あかでもとしのつもりぬるかな はることにみるとはすれとさくらはなあかてもとしのつもりぬるかな | 大貮實政 | 一 | 春上 |
| 96 | さくら花にほふなごりに大かたの春さへをしくおもほゆるかな さくらはなにほふなこりにおほかたのはるさへをしくおもほゆるかな | 能宣 | 一 | 春上 |
| 97 | 道とほみ行きてはみねどさくら花こころをやりてけふはかへりぬ みちとほみゆきてはみねとさくらはなこころをやりてけふはくらしつ | 平兼盛 | 一 | 春上 |
| 98 | さくら咲く春はよるだになかりせば夢にもものは思はざらまし さくらさくはるはよるたになかりせはゆめにもものはおもはさらまし | 能因法師 | 一 | 春上 |
| 99 | うゑおきし人なき宿の桜花にほひばかりぞかはらざりける うゑおきしひとなきやとのさくらはなにほひはかりそかはらさりける | 読人知らず | 一 | 春上 |
| 100 | みやこ人いかにととはば見せもせむかの山ざくら一枝もがな みやこひといかかととははみせもせむこのやまさくらひとえたもかな | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 101 | 人も見ぬ宿に桜をうゑたれば花もてやつす身とぞなりぬる ひともみぬやとにさくらをうゑたれははなもてやつすみとそなりぬる | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 102 | わかやどの桜はかひもなかりけりあるじからこそ人も見にくれ わかやとのさくらはかひもなかりけりあるしからこそひともみにくれ | 和泉式部 | 一 | 春上 |
| 103 | 花見にと人は山べに入りはてて春はみやこぞさびしかりける はなみにとひとはやまへにいりはててはるはみやこそさひしかりける | 道命法師 | 一 | 春上 |
| 104 | 世の中をなになげかまし山ざくら花見るほどの心なりせば よのなかをなになけかましやまさくらはなみるほとのこころなりせは | 紫式部 | 一 | 春上 |
| 105 | 花みてぞ身うきことも忘らるる春はかぎりのなからましかば はなみてそみのうきこともわすらるるはるはかきりのなからましかは | 西園寺公経 | 一 | 春上 |
| 106 | わがやどの梢ばかりとみしほどに四方の山べに春はきにけり わかやとのこすゑはかりとみしほとによものやまへにはるはきにけり | 源顕基 | 一 | 春上 |
| 107 | おもひつつ夢にぞ見つる桜花春はねざめのなからましかば おもひつつゆめにそみつるさくらはなはるはねさめのなからましかは | 藤原元真 | 一 | 春上 |
| 108 | 春のうちはちらぬ桜とみてしがなさてもや風のうしろめたきに はるのうちはちらぬさくらとみてしかなさてもやかせのうしろめたなき | 右大弁通俊 | 一 | 春上 |
| 109 | 花みると家路におそく帰るかな待ちどきすぐと妹やいふらむ はなみるといへちにおそくかへるかなまちときすくといもやいふらむ | 平兼盛 | 一 | 春上 |
| 110 | ひととせにふたたびもこぬ春なればいとなくけふは花をこそみれ ひととせにふたたひもこぬはるなれはいとなくけふははなをこそみれ | 平兼盛 | 一 | 春上 |
| 111 | うらやまし春の宮人うちむれておのがものとや花を見るらむ うらやましはるのみやひとうちむれておのかものとやはなをみるらむ | 良暹法師 | 一 | 春上 |
| 112 | 山ざくら白雲にのみまがへばや春の心の空になるらむ やまさくらしらくもにのみまかへはやはるのこころのそらになるらむ | 源縁法師 | 一 | 春上 |
| 113 | いにしへの花みし人はたづねしを老は春にもしられざりけり いにしへのはなみしひとはたつねしをおいははるにもしられさりけり | 藤原齊信 | 一 | 春上 |
| 114 | 桜花さかりになればふるさとのむぐらのかどもさされざりけり さくらはなさかりになれはふるさとのむくらのかともさされさりけり | 藤原定頼 | 一 | 春上 |
| 115 | よそながらをしきさくらのにほひかな誰わがやどの花とみるらむ よそなからをしきさくらのにほひかなたれわかやとのはなとみるらむ | 坂上定成 | 一 | 春上 |
| 116 | 春ごとにみれどもあかず山櫻年にや花の咲きまさるらむ はることにみれともあかすやまさくらとしにやはなのさきまさるらむ | 源縁法師 | 一 | 春上 |
| 117 | 世の中を思ひすててし身なれども心よわしと花にみえける よのなかをおもひすててしみなれともこころよわしとはなにみえける | 能因法師 | 一 | 春上 |
| 118 | よよふとも我わすれめや桜花苔のたもとにちりてかかりし よよふともわれわすれめやさくらはなこけのたもとにちりてかかりし | 能因法師 | 一 | 春上 |
| 119 | なにごとを春のかたみに思はましけふ白川の花見ざりせば なにことをはるのかたみにおもはましけふしらかはのはなみさりせは | 伊賀少将 | 一 | 春上 |
| 120 | 高砂の尾上の桜さきにけり外山のかすみたたずもあらなむ たかさこのをのへのさくらさきにけりとやまのかすみたたすもあらなむ | 大江匡房 | 一 | 春上 |
| 121 | 吉野山八重たつ峯の白雲にかさねてみゆる花ざくらかな よしのやまやへたつみねのしらくもにかさねてみゆるはなさくらかな | 藤原清家 | 一 | 春上 |
| 122 | おもひおくことなからまし庭桜ちりての後の舟出なりせば おもひおくことなからましにはさくらちりてののちのふなてなりせは | 藤原通宗 | 一 | 春上 |
| 123 | とふ人も宿にはあらじ山ざくらちらでかへりし春しなければ とふひともやとにはあらしやまさくらちらてかへりしはるしなけれは | 良暹法師 | 一 | 春上 |
| 124 | ちるまでは旅寝をせなむ木のもとに帰らば花のなだてなるべし ちるまてはたひねをせなむこのもとにかへらははなのなたてなるへし | 加賀左衛門 | 一 | 春上 |
| 125 | ちりはてて後やかへらむふるさとも忘られぬべき山ざくらかな ちりはててのちやかへらむふるさともわすられぬへきやまさくらかな | 源道済 | 一 | 春上 |
| 126 | わが宿に咲きみちにけり桜花ほかには春もあらじとぞおもふ わかやとにさきみちにけりさくらはなほかにははるもあらしとそおもふ | 源道済 | 一 | 春上 |
| 127 | 花もみなちりなむのちは我が宿になににつけてか人をまつべき はなもみなちりなむのちはわかやとになににつけてかひとをまつへき | 具平親王 | 一 | 春上 |
| 128 | みちよへてなりけるものをなどてかは桃としもはた名づけそめけむ みちよへてなりけるものをなとてかはももとしもはたなつけそめけむ | 花山院 | 二 | 春下 |
| 129 | あかざらばちよまでかざせ桃の花はなもかはらじ春もたえねば あかさらはちよまてかさせもものはなはなもかはらしはるもたえねは | 清原元輔 | 二 | 春下 |
| 130 | ふるさとの花のものいふ世なりせばいかに昔のことをとはまし ふるさとのはなのものいふよなりせはいかにむかしのことをとはまし | 出羽弁 | 二 | 春下 |
| 131 | 桜花あかぬあまりに思ふかな散らずば人や惜しまざらまし さくらはなあかぬあまりにおもふかなちらすはひとやをしまさらまし | 藤原頼宗 | 二 | 春下 |
| 132 | 惜しめども散りもとまらぬ花ゆゑに春は山辺をすみかにぞする をしめともちりもとまらぬはなゆゑにはるはやまへをすみかにそする | 内大臣 | 二 | 春下 |
| 133 | ももとせに散らずもあらなむ桜花あかぬ心はいつかたゆべき よとともにちらすもあらなむさくらはなあかぬこころはいつかたゆへき | 平兼盛 | 二 | 春下 |
| 134 | 桜花まだきな散りそ何により春をば人の惜しむとか知る さくらはなまたきなちりそなにによりはるをはひとのをしむならぬに | 大中臣能宣 | 二 | 春下 |
| 135 | 山里に散りはてぬべき花ゆゑに誰とはなくて人ぞまたるる やまさとにちりはてぬへきはなゆゑにたれとはなくてひとそまたるる | 源道済 | 二 | 春下 |
| 136 | しめゆひしそのかみならば桜花をしまれつつやけふはちらまし しめゆひしそのかみならはさくらはなをしまれつつやけふはちらまし | 右大弁通俊 | 二 | 春下 |
| 137 | 桜花道みえぬまで散りにけりいかがはすべき志賀の山ごえ さくらはなみちみえぬまてちりにけりいかかはすへきしかのやまこえ | 橘成元 | 二 | 春下 |
| 138 | 桜ちるとなりにいとふ春風は花なき宿ぞうれしかりける さくらちるとなりにいとふはるかせははななきやとそうれしかりける | 坂上定成 | 二 | 春下 |
| 139 | 花のかげたたまくをしきこよひかな錦をさらす庭とみえつつ はなのかけたたまくをしきこよひかなにしきをさらすにはとみえつつ | 清原元輔 | 二 | 春下 |
| 140 | をしむにはちりもとまらで桜花あかぬ心ぞときはなりける をしむにはちりもとまらてさくらはなあかぬこころそときはなりける | 藤原通宗 | 二 | 春下 |
| 141 | 心らものをこそおもへ山ざくら尋ねざりせば散るを見ましや こころからものをこそおもへやまさくらたつねさりせはちるをみましや | 永源法師 | 二 | 春下 |
| 142 | うらやましいかなる花か散りにけむ物おもふ身しもよには残りて うらやましいかなるはなかちりにけむものおもふみしもよにはのこりて | 土御門御匣殿 | 二 | 春下 |
| 143 | ふく風ぞおもへばつらき桜花こころとちれる春しなければ ふくかせそおもへはつらきさくらはなこころとちれるはるしなけれは | 大貮三位 | 二 | 春下 |
| 144 | 年をへて花に心をくだくかな惜しむにとまる春はなけれど としをへてはなにこころをくたくかなをしむにとまるはるはなけれと | 藤原定頼 | 二 | 春下 |
| 145 | ここにこぬ人もみよとて桜花水の心にまかせてぞやる ここにこぬひともみよとてさくらはなみつのこころにまかせてそやる | 大江嘉言 | 二 | 春下 |
| 146 | 行く末もせきとどめばや白川の水とともにぞ春もゆきける ゆくすゑをせきととめはやしらかはのみつとともにそはるもゆきける | 源師房 | 二 | 春下 |
| 147 | おくれても咲くべき花は咲きにけり身をかぎりともおもひけるかな おくれてもさくへきはなはさきにけりみをかきりともおもひけるかな | 藤原為時 | 二 | 春下 |
| 148 | 風だにもふきはらはずば庭桜ちるとも春のうちはみてまし かせたにもふきはらはすはにはさくらちるともはるのほとはみてまし | 和泉式部 | 二 | 春下 |
| 149 | 野辺みれば弥生の月のはつるまでまだうら若きさいたづまかな のへみれはやよひのつきのはつかまてまたうらわかきさいたつまかな | 藤原義孝 | 二 | 春下 |
| 150 | 岩つつじ折りもてぞ見るせこがきし紅染めの色ににたれば いはつつしをりもてそみるせこかきしくれなゐそめのいろににたれは | 和泉式部 | 二 | 春下 |
| 151 | わぎもこが紅染めの色とみてなづさはれぬる岩つつじかな わきもこかくれなゐそめのいろとみてなつさはれぬるいはつつしかな | 藤原義孝 | 二 | 春下 |
| 152 | 藤の花さかりとなれば庭の面におもひもかけぬ浪ぞたちける ふちのはなさかりとなれはにはのおもにおもひもかけぬなみそたちける | 大中臣能宣 | 二 | 春下 |
| 153 | むらさきにやしほそめたる藤の花池にはひさすものにぞありける むらさきにやしほそめたるふちのはないけにはひさすものにそありける | 斎宮女御 | 二 | 春下 |
| 154 | 藤の花をりてかざせばこむらさき我がもとゆひの色やそふらむ ふちのはなをりてかさせはこむらさきわかもとゆひのいろやそふらむ | 源為善 | 二 | 春下 |
| 155 | 水底もむらさきふかくみゆるかな岸のいはねにかかるふぢなみ みなそこもむらさきふかくみゆるかなきしのいはねにかかるふちなみ | 大納言實季 | 二 | 春下 |
| 156 | すみの江の松のみどりもむらさきの色にぞかくる岸の藤なみ すみのえのまつのみとりもむらさきのいろにそかくるきしのふちなみ | 読人知らず | 二 | 春下 |
| 157 | 道とほし井手へもゆかじこの里も八重やはさかぬ山吹の花 みちとほみゐてへもゆかしこのさともやへやはさかぬやまふきのはな | 藤原伊家 | 二 | 春下 |
| 158 | 沼水にかはづなくなりむべしこそ岸の山吹さかりなりけれ ぬまみつにかはつなくなりうへしこそきしのやまふきさかりなりけれ | 大貮高遠 | 二 | 春下 |
| 159 | みがくれてすだくかはづのもろ聲にさわぎぞわたる井手のうき草 みかくれてすたくかはつのもろこゑにさわきそわたるゐてのかはなみ | 良暹法師 | 二 | 春下 |
| 160 | 聲たえずさへづれのべの百千鳥のこりすくなき春にやはあらぬ こゑたえすさへつれのへのももちとりのこりすくなきはるにやはあらぬ | 藤原長能 | 二 | 春下 |
| 161 | われひとりきくものならばよぶこ鳥ふた聲まではなかせざらまし われひとりきくものならはよふことりふたこゑまてはなかせさらまし | 法圓法師 | 二 | 春下 |
| 162 | ほととぎすおもひもかけぬ春なけばことしぞまたで初音ききつる ほとときすおもひもかけぬはるなけはことしそまたてはつねききつる | 藤原定頼 | 二 | 春下 |
| 163 | ほととぎすなかずばなかずいかにして暮れ行く春をまたもくはへむ ほとときすなかすはなかすいかにしてくれゆくはるをまたもくはへむ | 大中臣能宣 | 二 | 春下 |
| 164 | おもひいづる事のみしげき野辺にきてまた春にさへ別れぬるかな おもひいつることのみしけきのへにきてまたはるにさへわかれぬるかな | 永胤法師 | 二 | 春下 |
| 165 | 桜色に染めし衣をぬぎかへて山ほととぎすけふよりぞまつ さくらいろにそめしころもをぬきかへてやまほとときすけふよりそまつ | 和泉式部 | 三 | 夏 |
| 166 | きのふまでをしみし花は忘られてけふはまたるるほととぎすかな きのふまてをしみしはなもわすられてけふはまたるるほとときすかな | 藤原明衡 | 三 | 夏 |
| 167 | わがやどの梢の夏になるときは生駒の山ぞみえずなりける わかやとのこすゑのなつになるときはいこまのやまそみえすなりぬる | 能因法師 | 三 | 夏 |
| 168 | 夏草はむすぶばかりになりにけり野かひし駒やあくがれぬらむ なつくさはむすふはかりになりにけりのかひしこまやあくかれぬらむ | 源重之 | 三 | 夏 |
| 169 | さかきとる卯月になれば神山の楢のはがしはもとつはもなし さかきとるうつきになれはかみやまのならのはかしはもとつはもなし | 曾禰好忠 | 三 | 夏 |
| 170 | 八重しげるむぐらの門のいぶせきにさらずや何をたたく水鶏ぞ やへしけるむくらのかとのいふせさにささすやなにをたたくくひなそ | 大中臣輔弘 | 三 | 夏 |
| 171 | あとたえてくる人もなき山里に我のみみよとさける卯の花 あとたえてとふひともなきやまさとにわれのみみよとさけるうのはな | 藤原通宗 | 三 | 夏 |
| 172 | 白浪の音せでたつとみえつるは卯の花さける垣根なりけり しらなみのおとせてたつとみえつるはうのはなさけるかきねなりけり | 読人知らず | 三 | 夏 |
| 173 | 月影を色にてさける卯の花はあけばありあけのここちこそせめ つきかけをいろにてさけるうのはなはあけはありあけのここちこそせめ | 読人知らず | 三 | 夏 |
| 174 | 卯の花のさけるあたりは時ならぬ雪ふる里の垣根とぞみる うのはなのさけるあたりはときならぬゆきふるさとのかきねとそみる | 大中臣能宣 | 三 | 夏 |
| 175 | みわたせばなみのしがらみかけてけり卯の花さける玉川の里 みわたせはなみのしからみかけてけりうのはなさけるたまかはのさと | 相模 | 三 | 夏 |
| 176 | 卯の花のさけるかきねは白浪の立田の川のゐせきとぞみる うのはなのさけるさかりはしらなみのたつたのかはのゐせきとそみる | 伊勢大輔 | 三 | 夏 |
| 177 | 雪とのみあやまたれつつ卯の花に冬ごもれりとみゆる山里 ゆきとのみあやまたれつつうのはなにふゆこもれりとみゆるやまさと | 源道済 | 三 | 夏 |
| 178 | わがやどのかきねなすぎそほととぎすいづれの里もおなじ卯の花 わかやとのかきねなすきそほとときすいつれのさともおなしうのはな | 元慶法師 | 三 | 夏 |
| 179 | ほととぎすわれはまたでぞこころみるおもふことのみたがふ身なれば ほとときすわれはまたてそこころみるおもふことのみたかふみなれは | 慶範法師 | 三 | 夏 |
| 180 | ほととぎすたづぬばかりのなのみしてきかずばさてや宿にかへらむ ほとときすたつぬはかりのなのみしてきかすはさてややとにかへらむ | 藤原頼宗 | 三 | 夏 |
| 181 | ここにわがきかまほしきをあしひきの山ほととぎすいかになくらむ ここにわかきかまほしきをあしひきのやまほとときすいかになくらむ | 藤原尚忠 | 三 | 夏 |
| 182 | あしひきの山ほととぎすのみならずおほかた鳥のこゑもきこえず あしひきのやまほとときすのみならすおほかたとりのこゑもきこえす | 道命法師 | 三 | 夏 |
| 183 | きかばやなその神山のほととぎすありし昔のおなじこゑかと きかはやなそのかみやまのほとときすありしむかしのおなしこゑかと | 皇后宮美作 | 三 | 夏 |
| 184 | ほととぎすなのりしてこそしらるなれたづねぬ人につげややらまし ほとときすなのりしてこそしらるなれたつねぬひとにつけややらまし | 備前典侍 | 三 | 夏 |
| 185 | ききすてて君が来にけむほととぎすたづねにわれは山路こえみむ ききすててきみかきにけむほとときすたつねにわれはやまちこえみむ | 大中臣能宣 | 三 | 夏 |
| 186 | このころはねてのみぞまつほととぎすしばしみやこのものがたりせよ このころはねてのみそまつほとときすしはしみやこのものかたりせよ | 増基法師 | 三 | 夏 |
| 187 | 宵のまはまどろみなましほととぎす明けてきなくとかねてしりせば よひのまはまとろみなましほとときすあけてきなくとかねてしりせは | 橘資成 | 三 | 夏 |
| 188 | ききつともきかずともなくほととぎす心まどはす小夜のひとこゑ ききつともきかすともなくほとときすこころまとはすさよのひとこゑ | 伊勢大輔 | 三 | 夏 |
| 189 | 夜だにあけば尋ねてきかむほととぎす信太の杜のかたになくなり よたにあけはたつねてきかむほとときすしのたのもりのかたになくなり | 能因法師 | 三 | 夏 |
| 190 | 夏の夜はさてもやなくとほととぎすふたこゑきける人にとはばや なつのよはさてもやねぬとほとときすふたこゑきけるひとにとははや | 藤原兼房 | 三 | 夏 |
| 191 | ねぬよこそ數つもりぬれほととぎすきくほどもなきひとこゑにより ねぬよこそかすつもりぬれほとときすきくほともなきひとこゑにより | 小弁 | 三 | 夏 |
| 192 | ありあけの月だにあれや郭公ただひとこゑのゆくかたもみむ ありあけのつきたにあれやほとときすたたひとこゑのゆくかたもみむ | 藤原頼通 | 三 | 夏 |
| 193 | なかぬ夜もなく夜も更にほととぎすまつとてやすくいやはねらるる なかぬよもなくよもさらにほとときすまつとてやすくいやはねらるる | 赤染衛門 | 三 | 夏 |
| 194 | 夜もすがら待ちつるものをほととぎすまただになかで過ぎぬなるかな よもすからまちつるものをほとときすまたたになかてすきぬなるかな | 赤染衛門 | 三 | 夏 |
| 195 | 東路おもひいでにせむほととぎすおいそのもりの夜半の一聲 あつまちのおもひいてにせむほとときすおいそのもりのよはのひとこゑ | 大江公資 | 三 | 夏 |
| 196 | ききつるや初音なるらむほととぎす老いはねざめぞうれしかりける ききつるやはつねなるらむほとときすおいはねさめそうれしかりける | 法橋忠命 | 三 | 夏 |
| 197 | いづかたとききだにわかずほととぎすただひとこゑのこころまよひに いつかたとききたにわかすほとときすたたひとこゑのこころまとひに | 大江嘉言 | 三 | 夏 |
| 198 | ほととぎす待つ程とこそ思ひつれききての後もねられざりけり ほとときすまつほととこそおもひつれききてののちもねられさりけり | 道命法師 | 三 | 夏 |
| 199 | ほととぎす夜ふかき聲をきくのみぞ物思ふ人のとり所なる ほとときすよふかきこゑをきくのみそものおもふひとのとりところなる | 道命法師 | 三 | 夏 |
| 200 | 一こゑもききがたかりしほととぎすともになく身となりにけるかな ひとこゑもききかたかりしほとときすともになくみとなりにけるかな | 律師長済 | 三 | 夏 |
| 201 | ほととぎす来鳴かぬよひのしるからば寝る夜もひとよあらましものを ほとときすきなかぬよひのしるからはぬるよもひとよあらましものを | 能因法師 | 三 | 夏 |
| 202 | またぬ夜もまつ夜も聞きつほととぎす花たちばなの匂ふあたりは またぬよもまつよもききつほとときすはなたちはなのにほふあたりは | 大弐三位 | 三 | 夏 |
| 203 | ねてのみや人はまつらむほととぎす物思ふやどは聞かぬ夜ぞなき ねてのみやひとはまつらむほとときすものおもふやとはきかぬよそなき | 小弁 | 三 | 夏 |
| 204 | 御田屋守けふはさつきになりにけりいそげや早苗おいもこそすれ みたやもりけふはさつきになりにけりいそけやさなへおいもこそすれ | 曾禰好忠 | 三 | 夏 |
| 205 | 五月雨に日も暮れぬめり道遠み山田の早苗とりもはてぬに さみたれにひもくれぬめりみちとほみやまたのさなへとりもはてぬに | 藤原隆資 | 三 | 夏 |
| 206 | 五月雨はみづのみまきのまこも草かりほすひまもあらじとぞおもふ さみたれはみつのみまきのまこもくさかりほすひまもあらしとそおもふ | 相模 | 三 | 夏 |
| 207 | さみだれはみえしをざさの原もなし浅香の沼の心地のみして さみたれはみえしをささのはらもなしあさかのぬまのここちのみして | 藤原範永 | 三 | 夏 |
| 208 | つれづれと音たえせぬは五月雨の軒のあやめの雫なりけり つれつれとおとたえせぬはさみたれののきのあやめのしつくなりけり | 橘俊綱 | 三 | 夏 |
| 209 | 五月雨のをやむけしきの見えぬかなにはたづみのみ數まさりつつ さみたれのをやむけしきのみえぬかなにはたつみのみかすまさりつつ | 叡覺法師 | 三 | 夏 |
| 210 | 香をとめてとふ人あるをあやめ草あやしく駒のすさめざりけり かをとめてとふひとあるをあやめくさあやしくこまのすさへさりける | 恵慶法師 | 三 | 夏 |
| 211 | つくま江の底の深さをよそながらひけるあやめのねにてしるかな つくまえのそこのふかさをよそなからひけるあやめのねにてしるかな | 良暹法師 | 三 | 夏 |
| 212 | ねやの上に根ざしとどめよあやめ草たづねてひくも同じよどのを ねやのうへにねさしととめよあやめくさたつねてひくもおなしよとのを | 大中臣輔弘 | 三 | 夏 |
| 213 | けふもけふあやめもあやめ変らぬに宿こそありし宿とおぼえね けふもけふあやめもあやめかはらぬにやとこそありしやととおほえね | 伊勢大輔 | 三 | 夏 |
| 214 | さみだれの空なつかしく匂ふかな花たちばなに風や吹くらむ さみたれのそらなつかしくにほふかなはなたちはなにかせやふくらむ | 相模 | 三 | 夏 |
| 215 | 昔をば花たちばなのなかりせばなににつけてか思ひいでまし むかしをははなたちはなのなかりせはなににつけてかおもひいてまし | 大貮高遠 | 三 | 夏 |
| 216 | おともせで思ひにもゆる蛍こそ鳴く虫よりも哀れなりけれ おともせておもひにもゆるほたるこそなくむしよりもあはれなりけれ | 源重之 | 三 | 夏 |
| 217 | 澤水に空なる星の映るかと見ゆるは夜半の蛍なりけり さはみつにそらなるほしのうつるかとみゆるはよはのほたるなりけり | 藤原良経 | 三 | 夏 |
| 218 | ひとへなる蝉のはごろも夏はなほうすしといへどあつくぞありける ひとへなるせみのはころもなつはなほうすしといへとあつくそありける | 能因法師 | 三 | 夏 |
| 219 | 夏刈りの玉江のあしをふみしだき群れゐる鳥のたつ空ぞなき なつかりのたまえのあしをふみしたきむれゐるとりのたつそらそなき | 源重之 | 三 | 夏 |
| 220 | なつごろも立田河原の柳かげ涼みにきつつならすころかな なつころもたつたかはらのやなきかけすすみにきつつならすころかな | 曾禰好忠 | 三 | 夏 |
| 221 | 夏の日になるまできえぬ冬こほり春立つ風やよきて吹くらむ なつのひになるまてきえぬふゆこほりはるたつかせやよきてふきけむ | 源頼實 | 三 | 夏 |
| 222 | 夏の夜の月はほどなくいりぬともやどれる水に影はとめなむ なつのよのつきはほとなくいりぬともやとれるみつにかけをとめなむ | 源師房 | 三 | 夏 |
| 223 | 何をかはあくるしるしと思ふべきひるもかはらぬ夏の夜の月 なにをかはあくるしるしとおもふへきひるにかはらぬなつのよのつき | 大貮資通 | 三 | 夏 |
| 224 | 夏の夜もすずしかりけり月影は庭しろたへの霜とみえつつ なつのよもすすしかりけりつきかけはにはしろたへのしもとみえつつ | 藤原長家 | 三 | 夏 |
| 225 | とこなつの匂へる庭はから國におれる錦もしかじとぞ見る とこなつのにほへるにははからくににおれるにしきもしかしとそおもふ | 藤原定頼 | 三 | 夏 |
| 226 | いかならむこよひの雨にとこなつの今朝だに露のおもげなりる いかならむこよひのあめにとこなつのけさたにつゆのおもけなりつる | 能因法師 | 三 | 夏 |
| 227 | きてみよと妹が家路につげやらむわれひとりぬるとこなつの花 きてみよといもかいへちにつけやらむわかひとりぬるとこなつのはな | 曾禰好忠 | 三 | 夏 |
| 228 | 夏ふかくなりぞしにける大荒木の杜の下草なべて人かる なつふかくなりそしにけるおほあらきのもりのしたくさなへてひとかる | 平兼盛 | 三 | 夏 |
| 229 | ほどもなく夏の涼しくなりぬるは人にしられで秋やきぬらむ ほともなくなつのすすしくなりぬるはひとにしられてあきやきぬらむ | 藤原頼宗 | 三 | 夏 |
| 230 | 夏の夜のありあけの月をみるほどに秋をもまたで風ぞすずしき なつのよのありあけのつきをみるほとにあきをもまたてかせそすすしき | 内大臣師通 | 三 | 夏 |
| 231 | 夏山のならのはそよぐ夕暮れはことしも秋のここちこそすれ なつやまのならのはそよくゆふくれはことしもあきのここちこそすれ | 源頼綱 | 三 | 夏 |
| 232 | 紅葉せばあかくなりなむ小倉山秋まつほどのなにこそありけれ もみちせはあかくなりなむをくらやまあきまつほとのなにこそありけれ | 大中臣能宣 | 三 | 夏 |
| 233 | 小夜ふかき岩井の水の音きけばむすばぬ袖もすずしかりけり さよふかきいつみのみつのおときけはむすはぬそてもすすしかりけり | 源師賢 | 三 | 夏 |
| 234 | みなかみもあらぶる心あらじかし浪もなごしのみそぎしつれば みなかみもあらふるこころあらしかしなみもなこしのはらへしつれは | 伊勢大輔 | 三 | 夏 |
| 235 | うちつけにたもとすずしくおぼゆるは衣に秋はきたるなりけり うちつけにたもとすすしくおほゆるはころもにあきはきたるなりけり | 読人知らず | 四 | 秋上 |
| 236 | あさぢはら玉まく葛のうら風のうらがなしかる秋は来にけり あさちはらたままくくすのうらかせのうらかなしかるあきはきにけり | 恵慶法師 | 四 | 秋上 |
| 237 | おほかたの秋くるからに身に近くならすあふぎの風ぞすずしき おほかたのあきくるからにみにちかくならすあふきのかせそすすしき | 藤原為頼 | 四 | 秋上 |
| 238 | ひととせの過ぎつるよりも七夕のこよひをいかにあかしかぬらむ ひととせのすきつるよりもたなはたのこよひをいかにあかしかぬらむ | 小弁 | 四 | 秋上 |
| 239 | いとどしく露けかるらむたなばたのねぬ夜にあへる天の羽衣 いととしくつゆけかるらむたなはたのねぬよにあへるあまのはころも | 大江佐経 | 四 | 秋上 |
| 240 | たなばたはあさひくいとのみだれつつとくとやけふの暮をまつらむ たなはたはあさひくいとのみたれつつとくとやけふのくれをまつらむ | 小左近 | 四 | 秋上 |
| 241 | たなばたは雲の衣を引きかさねかへさでぬるやこよひなるらむ たなはたはくものころもをひきかさねかへさてぬるやこよひなるらむ | 藤原頼宗 | 四 | 秋上 |
| 242 | 天の河とわたる舟のかぢのはにおもふことをもかきつくるかな あまのかはとわたるふねのかちのはにおもふことをもかきつくるかな | 上總乳母 | 四 | 秋上 |
| 243 | 秋の夜を長きものとは星合の影みぬ人のいふにぞありける あきのよをなかきものとはほしあひのかけみぬひとのいふにそありける | 能因法師 | 四 | 秋上 |
| 244 | 七夕のあふ夜の數のわびつつも来る月ごとの七日なりせば たなはたのあふよのかすのわひつつもくるつきことのなぬかなりせは | 橘元任 | 四 | 秋上 |
| 245 | 待ちえたる一夜ばかりを七夕のあひ見ぬほどと思はましかば まちえたるひとよはかりをたなはたのあひみぬよはとおもはましかは | 藤原通房 | 四 | 秋上 |
| 246 | 忘れにし人にみせばや天の河いまれしほしの心ながさを わすれにしひとにみせはやあまのかはいまれしほしのこころなかさを | 新左衛門 | 四 | 秋上 |
| 247 | たまさかにあふことよりも七夕はけふまつるをやめづらしとみる たまさかにあふことよりもたなはたはけふまつるをやめつらしとみる | 小弁 | 四 | 秋上 |
| 248 | いそぎつつ我こそきつれ山里にいつよりすめる秋の月ぞも いそきつつわれこそきつれやまさとにいつよりすめるあきのつきそも | 藤原家経 | 四 | 秋上 |
| 249 | 忘れにし人もとひけり秋の夜は月いでばとこそ待つべかりけれ わすれにしひともとひけりあきのよはつきいてはとこそまつへかりけれ | 左近中将公実 | 四 | 秋上 |
| 250 | 秋の夜の月みにいでて夜は更けぬ我も有明のいらであかさむ あきのよのつきみにいててよはふけぬわれもありあけのいらてあかさむ | 大弐高遠 | 四 | 秋上 |
| 251 | にごりなく千世をかぞへてすむ水に光をそふる秋の夜の月 にこりなくちよをかそへてすむみつにひかりをそふるあきのよのつき | 平兼盛 | 四 | 秋上 |
| 252 | 大空の月の光しあかければまきの板戸も秋はさされず おほそらのつきのひかりしあかけれはまきのいたともあきはさされす | 源為善 | 四 | 秋上 |
| 253 | すだきけむ昔の人もなきやどにただかげするは秋の夜の月 すたきけむむかしのひともなきやとにたたかけするはあきのよのつき | 恵慶法師 | 四 | 秋上 |
| 254 | 身をつめばいるもをしまじ秋の月やまのあなたの人もまつらむ みをつめはいるもをしましあきのつきやまのあなたのひともまつらむ | 永源法師 | 四 | 秋上 |
| 255 | よそなりし雲の上にて見る時も秋の月にはあかずぞありける よそなりしくものうへにてみるときもあきのつきにはあかすそありける | 源道済 | 四 | 秋上 |
| 256 | いつもみる月ぞと思へど秋の夜はいかなる影をそふるなるらん いつもみるつきそとおもへとあきのよはいかなるかけをそふるなるらむ | 藤原長能 | 四 | 秋上 |
| 257 | すむとても幾夜もあらじ世の中にくもりがちなる秋の夜の月 すむとてもいくよもすましよのなかにくもりかちなるあきのよのつき | 藤原公任 | 四 | 秋上 |
| 258 | すむ人もなき山里の秋の夜は月のひかりもさびしかりけり すむひともなきやまさとのあきのよはつきのひかりもさひしかりけり | 藤原範永 | 四 | 秋上 |
| 259 | とふ人も暮るればかへる山里にもろともにすむ秋の夜の月 とふひともくるれはかへるやまさとにもろともにすむあきのよのつき | 素意法師 | 四 | 秋上 |
| 260 | しろたへの衣の袖を霜かとてはらへば月の光なりけり しろたへのころものそてをしもかとてはらへはつきのひかりなりけり | 藤原國行 | 四 | 秋上 |
| 261 | いにしへの月かかりせば葛城の神はよるともちぎらざらまし いにしへのつきかかりせはかつらきのかみはよるともちきらさらまし | 惟宗為経 | 四 | 秋上 |
| 262 | 夜もすがら空すむ月を眺むれば秋は明くるも知られざりけり よもすからそらすむつきをなかむれはあきはあくるもしられさりけり | 藤原頼宗 | 四 | 秋上 |
| 263 | うきままに厭ひし身こそ惜しまるれ有ればぞ見ける秋の夜の月 うきままにいとひしみこそをしまるれあれはそみけるあきのよのつき | 藤原隆成 | 四 | 秋上 |
| 264 | こよひこそよにある人はゆかしけれいづこもかくや月を見るらん こよひこそよにあるひとはゆかしけれいつこもかくやつきをみるらむ | 赤染衛門 | 四 | 秋上 |
| 265 | 秋もあきこよひもこよひ月もつき所もところみる君もきみ あきもあきこよひもこよひつきもつきところもところみるきみもきみ | 読人知らず | 四 | 秋上 |
| 266 | いろいろの花のひもとく夕暮に千世松むしのこゑぞきこゆる いろいろのはなのひもとくゆふくれにちよまつむしのこゑそきこゆる | 清原元輔 | 四 | 秋上 |
| 267 | とやかへりわがてならししはし鷹のくるときこゆる鈴虫の聲 とやかへりわかてならししはしたかのくるときこゆるすすむしのこゑ | 大江公資 | 四 | 秋上 |
| 268 | 年へぬる秋にもあかず鈴虫のふり行くままに聲のまされば としへぬるあきにもあかすすすむしのふりゆくままにこゑのまされは | 藤原公任 | 四 | 秋上 |
| 269 | たづねくる人もあらなん年をへてわがふるさとのすずむしの聲 たつねくるひともあらなむとしをへてわかふるさとのすすむしのこゑ | 四條中宮 | 四 | 秋上 |
| 270 | ふるさとは浅茅が原と荒れ果てて夜すがら虫の音をのみぞなく ふるさとはあさちかはらとあれはててよすからむしのねをのみそなく | 道命法師 | 四 | 秋上 |
| 271 | あさぢふの秋の夕暮なくむしは我がごとしたにものや悲しき あさちふのあきのゆふくれなくむしはわかことしたにものやかなしき | 平兼盛 | 四 | 秋上 |
| 272 | 秋風に聲よわり行く鈴虫のつひにはいかがならんとすらん あきかせにこゑよわりゆくすすむしのつひにはいかかならむとすらむ | 大江匡衡 | 四 | 秋上 |
| 273 | なけやなけ蓬が袖のきりぎりす過ぎ行く秋はげにぞかなしき なけやなけよもきかそまのきりきりすすきゆくあきはけにそかなしき | 曾禰好忠 | 四 | 秋上 |
| 274 | わぎもこがかけてまつらん玉づさをかきつらねたる初雁の聲 わきもこかかけてまつらむたまつさをかきつらねたるはつかりのこゑ | 藤原長能 | 四 | 秋上 |
| 275 | おきもゐぬわがとこよこそ悲しけれ春かへりにし雁も鳴くなり おきもゐぬわかとこよこそかなしけれはるかへりにしかりもなくなり | 赤染衛門 | 四 | 秋上 |
| 276 | さよふかく旅の空にてなくかりはおのが羽風や夜寒なるらん さよふかくたひのそらにてなくかりはおのかはかせやよさむなるらむ | 伊勢大輔 | 四 | 秋上 |
| 277 | さして行く道も忘れてかりがねのきこゆるかたに心をぞやる さしてゆくみちもわすれてかりかねのきこゆるかたにこころをそやる | 白河院 | 四 | 秋上 |
| 278 | あふさかの関の杉むら引くほどはをぶちにみゆる望月の駒 あふさかのせきのすきむらひくほとはをふちにみゆるもちつきのこま | 良暹法師 | 四 | 秋上 |
| 279 | みちのくのあだちの駒はなづめどもけふ逢坂の関まではきぬ みちのくのあたちのこまはなつめともけふあふさかのせきまてはきぬ | 源縁法師 | 四 | 秋上 |
| 280 | 望月の駒引く時はあふさかの木の下やみも見えずぞありける もちつきのこまひくときはあふさかのこのしたやみもみえすそありける | 惠慶法師 | 四 | 秋上 |
| 281 | 暮れゆけば浅茅が原の虫の音もをのへの鹿も聲たてつなり くれゆけはあさちかはらのむしのねもをのへのしかもこゑたてつなり | 源頼家 | 四 | 秋上 |
| 282 | 鹿の音に秋をしるかな高砂のをのへの松はみどりなれども しかのねにあきをしるかなたかさこのをのへのまつはみとりなれとも | 涼 | 四 | 秋上 |
| 283 | かひもなき心地こそすれさを鹿のたつ聲もせぬ萩のにしきは かひもなきここちこそすれさをしかのたつこゑもせぬはきのにしきは | 白河院 | 四 | 秋上 |
| 284 | 秋はぎのさくにしもなど鹿の鳴くうつろふ花はおのが妻かも あきはきのさくにしもなとしかのなくうつろふはなはおのかつまかも | 大中臣能宣 | 四 | 秋上 |
| 285 | 秋萩をしがらみふする鹿の音をねたきものからまづぞききつる あきはきをしからみふするしかのねをねたきものからまつそききつる | 源為善 | 四 | 秋上 |
| 286 | 籬なる萩の下葉の色を見て思ひやりつつ鹿ぞ鳴くなる まかきなるはきのしたはのもみちみておもひやりつるしかそなくなる | 安法法師 | 四 | 秋上 |
| 287 | 秋はなほ我が身ならねど高砂のをのへの鹿の妻ぞこふらし あきはなほわかみならねとたかさこのをのへのしかもつまそこふらし | 能因法師 | 四 | 秋上 |
| 288 | こよひこそ鹿のね近くきこゆなれやがて垣根は秋の野なれば こよひこそしかのねちかくきこゆなれやかてかきほはあきののなれは | 叡覚法師 | 四 | 秋上 |
| 289 | 宮城野に妻とふ鹿ぞさけぶなる本あらの萩に露やさむけき みやきのにつまよふしかそさけふなるもとあらのはきにつゆやさむけき | 藤原長能 | 四 | 秋上 |
| 290 | 秋霧の晴れせぬみねに立つ鹿は聲ばかりこそ人にしらるれ あききりのはれせぬみねにたつしかはこゑはかりこそひとにしらるれ | 大弐三位 | 四 | 秋上 |
| 291 | 鹿の音ぞ寝覚めの床にきこゆなるをのの草臥露や置くらん しかのねそねさめのとこにかよふなるをののくさふしつゆやおくらむ | 藤原家経 | 四 | 秋上 |
| 292 | 小倉山たちどもみえぬ夕霧に妻まどはせる鹿ぞなくなる をくらやまたちともみえぬゆふきりにつままとはせるしかそなくなる | 江侍従 | 四 | 秋上 |
| 293 | 晴れずのみ物ぞ悲しき秋霧は心のうちに立つにやあるらん はれすのみものそかなしきあききりはこころのうちにたつにやあるらむ | 和泉式部 | 四 | 秋上 |
| 294 | のこりなき命を惜しと思ふかな宿の秋はぎ散りはつるまで のこりなきいのちををしとおもふかなやとのあきはきちりはつるまて | 天台座主源心 | 四 | 秋上 |
| 295 | おきあかし見つつながむる萩の上の露ふきみだる秋の夜の風 おきあかしみつつなかむるはきのうへのつゆふきみたるあきのよのかせ | 伊勢大輔 | 四 | 秋上 |
| 296 | 思ふことなけれどぬれぬ我が袖はうたたある野邊の萩の露かな おもふことなけれとぬれぬわかそてはうたたあるのへのはきのつゆかな | 能因法師 | 四 | 秋上 |
| 297 | まだ宵にねたる萩かなおなじえにやがて置きゐる露もこそあれ またよひにねたるはきかなおなしえにやかておきゐるつゆもこそあれ | 新左衛門 | 四 | 秋上 |
| 298 | 人しれず物をや思ふ秋萩のねたるかほにて露ぞこぼるる ひとしれすものをやおもふあきはきのねたるかほにてつゆそこほるる | 中納言女王 | 四 | 秋上 |
| 299 | かぎりあらん仲ははかなくなりぬとも露けき萩の上をだにとへ かきりあらむなかははかなくなりぬともつゆけきはきのうへをたにとへ | 和泉式部 | 四 | 秋上 |
| 300 | 白露も心おきてや思ふらんぬしもたづねぬ宿の秋萩 しらつゆもこころおきてやおもふらむぬしもたつねぬやとのあきはき | 筑前乳母 | 四 | 秋上 |
| 301 | おく露にたわむ枝だにあるものをいかでか折らん宿の秋萩 おくつゆにたわむえたたにあるものをいかてかをらむやとのあきはき | 橘則長 | 四 | 秋上 |
| 302 | 君なくて荒れたる宿の浅茅生に鶉なくなり秋の夕暮 きみなくてあれたるやとのあさちふにうつらなくなりあきのゆふくれ | 源時綱 | 四 | 秋上 |
| 303 | 秋風にしたばや寒くなりぬらん小萩が原に鶉なくなり あきかせにしたはやさむくなりぬらむこはきかはらにうつらなくなり | 藤原通宗 | 四 | 秋上 |
| 304 | けさきつる野原の露に我ぬれぬうつりやしぬる萩が花ずり けさきつるのはらのつゆにわれぬれぬうつりやしぬるはきかはなすり | 藤原範永 | 四 | 秋上 |
| 305 | いはれ野の萩のあさ露分け行けば恋せし袖の心地こそすれ いはれののはきのあさつゆわけゆけはこひせしそてのここちこそすれ | 素意法師 | 四 | 秋上 |
| 306 | ささがにのすがく浅茅の末ごとに乱れてぬける白露の玉 ささかにのすかくあさちのすゑことにみたれてぬけるしらつゆのたま | 藤原長能 | 四 | 秋上 |
| 307 | いかにして玉にもぬかん夕されば荻の葉分けにむすぶ白露 いかにしてたまにもぬかむゆふされはをきのはわきにむすふしらつゆ | 橘為義 | 四 | 秋上 |
| 308 | 袖ふれば露こぼれけり秋の野はまくりでにてぞ行くべかりける そてふれはつゆこほれけりあきののはまくりてにてそゆくへかりける | 良暹法師 | 四 | 秋上 |
| 309 | 秋の野は折るべき花もなかりけりこぼれて消えん露の惜しさに あきののはをるへきはなもなかりけりこほれてきえむつゆのをしさに | 源親範 | 四 | 秋上 |
| 310 | 草の上におきてぞあかす秋の夜の露ことならぬ我が身と思へば くさのうへにおきてそあかすあきのののつゆことならぬわかみとおもへは | 大中臣能宣 | 四 | 秋上 |
| 311 | をみなへしかげをうつせば心なき水も色なる物にぞありける をみなへしかけをうつせはこころなきみつもいろなるものにそありける | 藤原頼宗 | 四 | 秋上 |
| 312 | 女郎花多かるのべにけふしもあれうしろめたくも思ひやるかな をみなへしおほかるのへにけふしまれうしろめたくもおもひやるかな | 橘則長 | 四 | 秋上 |
| 313 | 秋風に折れじとすまふ女郎花いくたび野邊におきふしぬらん あきかせにをれしとすまふをみなへしいくたひのへにおきふしぬらむ | 前律師慶暹 | 四 | 秋上 |
| 314 | 秋の野に狩ぞ暮れぬる女郎花こよひばかりは宿もかさなん あきののにかりそくれぬるをみなへしこよひはかりのやともかさなむ | 清原元輔 | 四 | 秋上 |
| 315 | 宿ごとにおなじのべをやうつすらんおもがはりせぬ女郎花かな やとことにおなしのへをやうつすらむおもかはりせぬをみなへしかな | 白河院 | 四 | 秋上 |
| 316 | よそにのみ見つつはゆかじ女郎花をらむ袂は露にぬるとも よそにのみみつつはゆかしをみなへしをらむたもとはつゆにぬるとも | 源道済 | 四 | 秋上 |
| 317 | ありとても頼むべきかは世の中をしらするものはあさがほの花 ありとてもたのむへきかはよのなかをしらするものはあさかほのはな | 和泉式部 | 四 | 秋上 |
| 318 | いとどしくなぐさめがたき夕暮に秋とおぼゆる風ぞ吹くなる いととしくなくさめかたきゆふくれにあきとおほゆるかせそふくなる | 源道済 | 四 | 秋上 |
| 319 | さらでだにあやしきほどの夕暮に荻ふく風の音ぞきこゆる さらてたにあやしきほとのゆふくれにをきふくかせのおとそきこゆる | 斎宮女御 | 四 | 秋上 |
| 320 | 荻のはに吹き過ぎて行く秋風のまたたが里におどろかすらん をきのはにふきすきてゆくあきかせのまたたかさとをおとろかすらむ | 読人知らず | 四 | 秋上 |
| 321 | さりともと思ひし人は音もせで荻のうはばに風ぞ吹くなる さりともとおもひしひとはおともせてをきのうははにかせそふくなる | 三條小右近 | 四 | 秋上 |
| 322 | 荻のはに人頼めなる風の音を我が身にしめてあかしつるかな をきのはにひとたのめなるかせのおとをわかみにしめてあかしつるかな | 僧都實誓 | 四 | 秋上 |
| 323 | をぎ風もやや吹きそむるこゑすなりあはれ秋こそふかくなるらし をきのかせもややふきそむるこゑすなりあはれあきこそふかくなるらし | 藤原長能 | 四 | 秋上 |
| 324 | 明けぬるか川瀬の霧のたえだえに遠ち方人の袖のみゆるは あけぬるかかはせのきりのたえまよりをちかたひとのそてのみゆるは | 源経信母 | 四 | 秋上 |
| 325 | さだめなき風のふかずば花すすき心となびく方はみてまし さためなきかせのふかすははなすすきこころとなひくかたはみてまし | 藤原経衡 | 四 | 秋上 |
| 326 | さらでだに心のとまる秋の野にいとどもまねく花すすきかな さらてたにこころのとまるあきののにいとともまねくはなすすきかな | 源師賢 | 四 | 秋上 |
| 327 | ことしよりうゑはじめたるわが宿の花はいづれの秋か見ざらん ことしよりうゑはしめつるわかやとのはなはいつれのあきかみさらむ | 清原元輔 | 四 | 秋上 |
| 328 | 水のいろに花の匂ひをけふそへて千年の秋のためしとぞみる みつのいろにはなのにほひをけふそへてちとせのあきのためしとそみる | 大中臣能宣 | 四 | 秋上 |
| 329 | 我が宿に秋ののべをばうつせりと花見にゆかむ人につげばや わかやとにあきののへをはうつせりとはなみにゆかむひとにつけはや | 藤原師実 | 四 | 秋上 |
| 330 | あさゆふに思ふ心は露なれやかからぬ花のうへしなければ あさゆふにおもふこころはつゆなれやかからぬはなのうへしなけれは | 良暹法師 | 四 | 秋上 |
| 331 | 我が宿に千草の花をうゑつれば鹿の音のみや野邊にのこらん わかやとにちくさのはなをうゑつれはしかのねのみやのへにのこらむ | 源頼家 | 四 | 秋上 |
| 332 | わがやどに花をのこさずうつし植ゑて鹿の音きかぬ野邊となしつる わかやとにはなをのこさすうつしうゑてしかのねきかぬのへとなしつる | 源頼実 | 四 | 秋上 |
| 333 | 寂しさに宿を立ち出でてながむればいづくもおなじ秋の夕暮 さひしさにやとをたちいててなかむれはいつくもおなしあきのゆふくれ | 良暹法師 | 四 | 秋上 |
| 334 | なにしかは人もきてみんいとどしく物思ひまさる秋の山里 なにしかはひともきてみむいととしくものおもひまさるあきのやまさと | 和泉式部 | 四 | 秋上 |
| 335 | 唐衣ながきよすがらうつ聲に我さへねでも明かしつるかな からころもなかきよすからうつこゑにわれさへねてもあかしつるかな | 源資綱 | 五 | 秋下 |
| 336 | 小夜更けてこころしてうつ聲きけば急がぬ人もねられざりけり さよふけてころもしてうつこゑきけはいそかぬひともねられさりけり | 伊勢大輔 | 五 | 秋下 |
| 337 | うたたねに夜や更けぬらん唐衣うつ聲たかくなりまさるなり うたたねによやふけぬらむからころもうつこゑたかくなりまさるなり | 藤原兼房 | 五 | 秋下 |
| 338 | 菅のねのながながしてふ秋の夜は月みぬ人のいふにぞありける すかのねのなかなかしといふあきのよはつきみぬひとのいふにそありける | 藤原長能 | 五 | 秋下 |
| 339 | 月はよしはげしき風の音さへぞ身にしむばかり秋はかなしき つきはよしはけしきかせのおとさへそみにしむはかりあきはかなしき | 斎院中務 | 五 | 秋下 |
| 340 | 山里のしづの松垣ひまをあらみいたくな吹きそこがらしの風 やまさとのしつのまつかきひまをあらみいたくなふきそこからしのかせ | 大宮越前 | 五 | 秋下 |
| 341 | 見渡せば紅葉しにけり山里はねたくぞけふはひとりきにける みわたせはもみちしにけりやまさとにねたくそけふはひとりきにける | 源道済 | 五 | 秋下 |
| 342 | いかなればおなじ時雨に紅葉するははその杜の薄くこからん いかなれはおなししくれにもみちするははそのもりのうすくこからむ | 藤原頼宗 | 五 | 秋下 |
| 343 | 日をへつつ深くなり行くもみぢばの色にぞ秋のほどはしらるる ひをへつつふかくなりゆくもみちはのいろにそあきのほとはしりぬる | 藤原経衡 | 五 | 秋下 |
| 344 | このころは木々の梢に紅葉して鹿こそはなけ秋の山里 このころはききのこすゑにもみちしてしかこそはなけあきのやまさと | 上東門院中将 | 五 | 秋下 |
| 345 | ふるさとはまだ遠けれどもみぢばの色に心のとまりぬるかな ふるさとはまたとほけれともみちはのいろにこころのとまりぬるかな | 藤原兼房 | 五 | 秋下 |
| 346 | いかなれば船木の山のもみぢばの秋はすぐれどこがれざるらん いかなれはふなきのやまのもみちはのあきはすくれとこかれさるらむ | 右大辨通俊 | 五 | 秋下 |
| 347 | うゑおきしあるじはなくて菊の花おのれひとりぞ露けかりける うゑおきしあるしはなくてきくのはなおのれひとりそつゆけかりける | 惠慶法師 | 五 | 秋下 |
| 348 | つらからん方こそあらめ君ならでたれにか見せん白菊の花 つらからむかたこそあらめきみならてたれにかみせむしらきくのはな | 大弐三位 | 五 | 秋下 |
| 349 | めもかれず見つつくらさん白菊の花より後の花しなければ めもかれすみつつくらさむしらきくのはなよりのちのはなしなけれは | 伊勢大輔 | 五 | 秋下 |
| 350 | むらさきにやしほそめたる菊の花うつろふ色と誰かいひけん むらさきにやしほそめたるきくのはなうつろふいろとたれかいひけむ | 藤原義忠 | 五 | 秋下 |
| 351 | あさまだき八重さく菊の九重にみゆるは霜のおけるなりけり あさまたきやへさくきくのここのへにみゆるはしものおけはなりけり | 藤原長房 | 五 | 秋下 |
| 352 | きくにだに心は移る花の色を見に行く人はかへりしもせじ きくにたにこころはうつるはなのいろをみにゆくひとはかへりしもせし | 赤染衛門 | 五 | 秋下 |
| 353 | うすくこく色ぞ見えける菊の花露や心のわきて置くらん うすくこくいろそみえけるきくのはなつゆやこころをわきておくらむ | 清原元輔 | 五 | 秋下 |
| 354 | 狩に来ん人に折らるな菊の花うつろひはてむ末までもみん かりにこむひとにをらるなきくのはなうつろひはてむすゑまてもみむ | 大中臣能宣 | 五 | 秋下 |
| 355 | 白菊のうつろひ行くぞあはれなるかくしつつこそ人も枯れしか しらきくのうつろひゆくそあはれなるかくしつつこそひともかれしか | 良暹法師 | 五 | 秋下 |
| 356 | 植ゑおきし人の心は白菊の花よりさきにうつろひにけり うゑおきしひとのこころはしらきくのはなよりさきにうつろひにけり | 藤原経衡 | 五 | 秋下 |
| 357 | 我のみやかかると思へばふるさとの籬の菊もうつろひにけり われのみやかかるとおもへはふるさとのまかきにきくもうつろひにけり | 藤原定頼 | 五 | 秋下 |
| 358 | むらさきにうつろひにひしを置く露のなほ白菊とみするなりけり むらさきにうつろひにしをおくしものなほしらきくとみするなりけり | 源資綱 | 五 | 秋下 |
| 359 | 山里の紅葉見にとや思ふらん散りはててこそとふべかりけれ やまさとのもみちみにとやおもふらむちりはててこそとふへかりけれ | 藤原公任 | 五 | 秋下 |
| 360 | からにしき色見えまがふもみぢばの散る木のもとは立ち憂かりけり からにしきいろみえまかふもみちはのちるこのもとはたちうかりけり | 平兼盛 | 五 | 秋下 |
| 361 | 紅葉ちるころなりけりな山里のことぞともなく袖のぬるるは もみちちるころなりけりなやまさとのことそともなくそてのぬるるは | 清原元輔 | 五 | 秋下 |
| 362 | もみぢばの雨とふるなる木の間よりあやなく月の影ぞもりくる もみちはのあめとふるなるこのまよりあやなくつきのかけそもりくる | 白河院 | 五 | 秋下 |
| 363 | もみぢちる秋の山邊はしらかしの下ばかりこそ道はみえけれ もみちちるあきのやまへはしらかしのしたはかりこそみちはみえけれ | 法印清成 | 五 | 秋下 |
| 364 | 水上にもみぢながれて大井河むらごにみゆる瀧の白絲 みなかみにもみちなかれておほゐかはむらこにみゆるたきのしらいと | 藤原頼宗 | 五 | 秋下 |
| 365 | 水もなく見えこそわたれ大井河きしのもみぢば雨とふれども みつもなくみえこそわたれおほゐかはきしのもみちはあめとふれとも | 藤原定頼 | 五 | 秋下 |
| 366 | 嵐吹く三室の山のもみぢばは立田の川のにしきなりけり あらしふくみむろのやまのもみちははたつたのかはのにしきなりけり | 能因法師 | 五 | 秋下 |
| 367 | 見しよりも荒れぞしにける磯の上秋は時雨のふりまさりつつ みしよりもあれそしにけるいそのかみあきはしくれのふりまさりつつ | 藤原範永 | 五 | 秋下 |
| 368 | 秋の夜は山田のいほに稲妻の光のみこそもりあかしけれ あきのよはやまたのいほにいなつまのひかりのみこそもりあかしけれ | 伊勢大輔 | 五 | 秋下 |
| 369 | 宿近き山田のひたにてもかけで吹く秋風にまかせてぞみる やとちかきやまたのひたにてもかけてふくあきかせにまかせてそみる | 源頼家 | 五 | 秋下 |
| 370 | 秋の田になみよる稲は山川の水ひきかけし早苗なりけり あきのたになみよるいねはやまかはのみつひきうゑしさなへなりけり | 相模 | 五 | 秋下 |
| 371 | 夕日さす裾野のすすき方よりにまねくや秋を送るなるらん ゆふひさすすそののすすきかたよりにまねくやあきをおくるなるらむ | 源頼綱 | 五 | 秋下 |
| 372 | あすよりはいとど時雨やふりそはん暮れ行く秋を惜しむ袂に あすよりはいととしくれやふりそはむくれゆくあきををしむたもとに | 藤原範永 | 五 | 秋下 |
| 373 | 明けはてば野邊をまづ見ん花薄まねくけしきは秋にかはらじ あけはてはのへをまつみむはなすすきまねくけしきはあきにかはらし | 藤原範永 | 五 | 秋下 |
| 374 | 秋はただけふばかりぞとながむれば夕暮れにさへなりにけるかな あきはたたけふはかりそとなかむれはゆふくれにさへなりにけるかな | 法眼源賢 | 五 | 秋下 |
| 375 | としつもる人こそいとど惜しまるれ今日なかりなる秋の夕暮 としつもるひとこそいととをしまるれけふはかりなるあきのゆふくれ | 大貮資通 | 五 | 秋下 |
| 376 | 夜もすがら眺めてだにもなぐさまん明けてみるべき秋の空かは よもすからなかめてたにもなくさめむあけてみるへきあきのそらかは | 源兼長 | 五 | 秋下 |
| 377 | おちつもる紅葉をみれば大井川ゐぜきに秋もとまるなりけり おちつもるもみちをみれはおほゐかはゐせきにあきもとまるなりけり | 藤原公任 | 六 | 冬 |
| 378 | たむけにもすべきもみぢの錦こそ神無月にはかひなかりけれ たむけにもすへきもみちのにしきこそかみなつきにはかひなかりけれ | 大僧正深覚 | 六 | 冬 |
| 379 | 大井川ふるきながれを尋ねきてあらしの山のもみぢをぞみる おほゐかはふるきなかれをたつねきてあらしのやまのもみちをそみる | 白河院 | 六 | 冬 |
| 380 | あはれにもたえず音する時雨かなとふべき人もとはぬすみかを あはれにもたえすおとするしくれかなとふへきひともとはぬすみかに | 藤原兼房 | 六 | 冬 |
| 381 | 神無月ふかくなりゆくこずゑよりしぐれてわたるみやまべの里 かみなつきふかくなりゆくこすゑよりしくれてわたるみやまへのさと | 永胤法師 | 六 | 冬 |
| 382 | 木の葉ちる宿はききわくことぞなき時雨する夜も時雨せぬよも このはちるやとはききわくことそなきしくれするよもしくれせぬよも | 源頼実 | 六 | 冬 |
| 383 | もみぢちる音は時雨のここちしてこずゑの空はくもらざりけり もみちちるおとはしくれのここちしてこすゑのそらはくもらさりけり | 藤原家経 | 六 | 冬 |
| 384 | かみなづきねざめにきけば山里のあらしのこゑは木の葉なりけり かみなつきねさめにきけはやまさとのあらしのこゑはこのはなりけり | 能因法師 | 六 | 冬 |
| 385 | 網代木に紅葉こきまぜよる氷魚は錦をあらふ心地こそすれ あしろきにもみちこきませよるひをはにしきをあらふここちこそすれ | 橘義通 | 六 | 冬 |
| 386 | 宇治河の早く網代はなかりけりなにによりてか日をば暮さむ うちかはのはやくあしろはなかりけりなにによりてかひをはくらさむ | 中宮内侍 | 六 | 冬 |
| 387 | 霧はれぬあやの河べになく千鳥こゑにや友の行くかたをしる きりはれぬあやのかはへになくちとりこゑにやとものゆくかたをしる | 藤原孝善 | 六 | 冬 |
| 388 | 佐保河のきりのあなたになく千鳥こゑはへだてぬものにぞありける さほかはのきりのあなたになくちとりこゑはへたてぬものにそありける | 藤原頼宗 | 六 | 冬 |
| 389 | なにはがたあさみつしほにたつ千鳥浦づたひする声きこゆなり なにはかたあさみつしほにたつちとりうらつたひするこゑきこゆなり | 相模 | 六 | 冬 |
| 390 | さびしさに煙をだにもたたじとて柴をりくぶる冬の山里 さひしさにけふりをたにもたたしとてしはをりくふるふゆのやまさと | 和泉式部 | 六 | 冬 |
| 391 | 山の端はなのみなりけり見る人の心にぞいる冬の夜の月 やまのははなのみなりけりみるひとのこころにそいるふゆのよのつき | 大弐三位 | 六 | 冬 |
| 392 | 冬の夜にいくたびばかりねざめして物おもふやどのひましらむらむ ふゆのよにいくたひはかりねさめしてものおもふやとのひましらむらむ | 増基法師 | 六 | 冬 |
| 393 | とやかへるしらふの鷹のこゐをなみ雪げの空にあはせつるかな とやかへるしらふのたかのこゐをなみゆきけのそらにあはせつるかな | 藤原長家 | 六 | 冬 |
| 394 | 打ち拂ふ雪もやまなむみ狩野のすすきのあともたづぬばかりに うちはらふゆきもやまなむみかりののききすのあともたつぬはかりに | 能因法師 | 六 | 冬 |
| 395 | 萩原も霜枯れにけりみ狩野はあさるきぎすのかくれなきまで はきはらもしもかれにけりみかりのはあさるききすのかくれなきまて | 律師長濟 | 六 | 冬 |
| 396 | 霜枯れの草のとざしはあだなれどなべての人をいるるものかは しもかれのくさのとさしはあたなれとなへてのひとをいるるものかは | 能宣 | 六 | 冬 |
| 397 | 霜がれは一つ色にぞなりにける千種にみえし野邊にはあらずや しもかれはひとついろにそなりにけるちくさにみえしのへにあらすや | 少輔 | 六 | 冬 |
| 398 | おちつもる庭の木の葉を夜のほどに拂ひてけりと見する朝霜 おちつもるにはのこのはをよのほとにはらひてけりとみするあさしも | 読人知らず | 六 | 冬 |
| 399 | 杉の板をまばらにふける閨の上におどろくばかり霰ふるらし すきのいたをまはらにふけるねやのうへにおとろくはかりあられふるらし | 大江公資 | 六 | 冬 |
| 400 | とふ人もなぎ蘆ぶきの我が宿は降る霰さへ音せざりけり とふひともなきあしふきのわかやとはふるあられさへおとせさりけり | 橘俊綱 | 六 | 冬 |
| 401 | 都にも初雪ふれば小野山のまきの炭がま焼きまさるらん みやこにもはつゆきふれはをのやまのまきのすみかまたきまさるらむ | 相模 | 六 | 冬 |
| 402 | 埋火のあたりは春の心地して散りくる雪を花とこそみれ うつみひのあたりははるのここちしてちりくるゆきをはなとこそみれ | 素意法師 | 六 | 冬 |
| 403 | 淡雪も松の上にし降りぬれば久しく消えぬものにぞありける あはゆきもまつのうへにしふりぬれはひさしくきえぬものにそありける | 藤原國行 | 六 | 冬 |
| 404 | いづ方と甲斐の白根はしらねども雪ふるごとに思ひこそやれ いつかたとかひのしらねはしらねともゆきふることにおもひこそやれ | 紀伊式部 | 六 | 冬 |
| 405 | もみぢゆゑ心の中にしめゆひし山の高嶺は雪ふりにけり もみちゆゑこころのうちにしめゆひしやまのたかねはゆきふりにけり | 能因法師 | 六 | 冬 |
| 406 | あさぼらけ雪ふる空を見渡せば山の端ごとに月ぞのこれる あさほらけゆきふるそらをみわたせはやまのはことにつきそのこれる | 源道済 | 六 | 冬 |
| 407 | こし道も見えず雪こそ降りにけれ今や解くると人やまつらん こしみちもみえすゆきこそふりにけれいまやとくるとひとはまつらむ | 慶尋法師 | 六 | 冬 |
| 408 | いかばかり降る雪なればしなが鳥ゐなのしば山道まどふらん いかはかりふるゆきなれはしなかとりゐなのしはやまみちまとふらむ | 藤原國房 | 六 | 冬 |
| 409 | ひとりぬる草の枕は冴ゆれども降り積む雪を拂はでぞみる ひとりぬるくさのまくらはさゆれともふりつむゆきをはらはてそみる | 津守國基 | 六 | 冬 |
| 410 | 春やくる人やとふとも待たれけりけさ山里の雪をながめて はるやくるひとやとふともまたれけりけさやまさとのゆきをなかめて | 赤染衛門 | 六 | 冬 |
| 411 | 雪ふかき道にぞしるき山里は我よりさきに人こざりけり ゆきふかきみちにそしるきやまさとはわれよりさきにひとこさりけり | 藤原経衡 | 六 | 冬 |
| 412 | 山里は雪こそ深くなりにけれ訪はでも年の暮れにけるかな やまさとはゆきこそふかくなりにけれとはてもとしのくれにけるかな | 源頼家 | 六 | 冬 |
| 413 | おもひやれ雪も山路も深くして跡たえにける人のすみかを おもひやれゆきもやまちもふかくしてあとたえにけるひとのすみかを | 信寂法師 | 六 | 冬 |
| 414 | こりつみてまきのすみやくけをぬるみ大原山の雪のむらぎえ こりつめてまきのすみやくけをぬるみおほはらやまのゆきのむらきえ | 和泉式部 | 六 | 冬 |
| 415 | 我が宿に降りしく雪を春よまだ年越えぬ間の花とこそみれ わかやとにふりしくゆきをはるにまたとしこえぬまのはなとこそみれ | 清原元輔 | 六 | 冬 |
| 416 | 同じくぞ雪つもるらんと思へども君ふる里はまづぞとはるる おなしくそゆきつもるらむとおもへともきみふるさとはまつそとはるる | 藤原道長 | 六 | 冬 |
| 417 | ふる雪は年とともにぞ積もりけるいづれか高くなりまさるらん ふるゆきはとしとともにそつもりけるいつれかたかくなりまさるらむ | 藤原公任 | 六 | 冬 |
| 418 | さむしろはむべ冴えけらし隠れ沼の蘆間の氷ひとへしにけり さむしろはうへさえけらしかくれぬのあしまのこほりひとへしにけり | 頼慶法師 | 六 | 冬 |
| 419 | 小夜更くるままに汀や氷るらん遠ざかり行く志賀の浦浪 さよふくるままにみきはやこほるらむとほさかりゆくしかのうらなみ | 快覚法師 | 六 | 冬 |
| 420 | 鴎こそよがれにけらし猪名野なる昆陽の池水うは氷りせり かもめこそよかれにけらしゐなのなるこやのいけみつうはこほりせり | 僧都長算 | 六 | 冬 |
| 421 | 岩間には氷のくさび打ちてけり玉ゐし水も今はもりこず いはまにはこほりのくさひうちてけりたまゐしみつもいまはもりこす | 曾禰好忠 | 六 | 冬 |
| 422 | むばたまの夜をへて氷る原の池は春とともにや波もたつべき うはたまのよをへてこほるはらのいけははるとともにやなみもたつへき | 藤原孝善 | 六 | 冬 |
| 423 | 白妙にかしらのかみはなりにけり我が身に年の雪つもりつつ しろたへにかしらのかみはなりにけりわかみにとしのゆきつもりつつ | 藤原明衡 | 六 | 冬 |
| 424 | 都へは年とともにぞ帰るべきやがて春をもむかへがてらに みやこへはとしとともにそかへるへきやかてはるをもむかへかてらに | 源為善 | 六 | 冬 |
| 425 | けふとくる氷にかへて結ぶらし千歳の春にあはむちぎりを けふとくるこほりにかへてむすふらしちとせのはるにあはむちきりを | 順 | 七 | 賀 |
| 426 | 朽ちもせぬ長柄の橋のはし柱ひさしきことの見えもするかな くちもせぬなからのはしのはしはしらひさしきほとのみえもするかな | 兼盛 | 七 | 賀 |
| 427 | 武蔵野を霧の晴れ間に見渡せば行く末とほき心地こそすれ むさしのをきりのたえまにみわたせはゆくすゑとほきここちこそすれ | 兼盛 | 七 | 賀 |
| 428 | 霞さへたなびく野辺の松なれば空にぞ君が千代しらるる かすみさへたなひくのへのまつなれはそらにそきみかちよはしらるる | 源兼澄 | 七 | 賀 |
| 429 | 君をいのる年の久しくなりぬれば老いの坂ゆく杖ぞうれしき きみをいのるとしのひさしくなりぬれはおいのさかゆくつゑそうれしき | 前律師慶暹 | 七 | 賀 |
| 430 | 春秋もしらで年ふる我が身かな松と鶴との年をかぞへて はるもあきもしらてとしふるわかみかなまつとつるとのとしをかそへて | 兼盛 | 七 | 賀 |
| 431 | ひともとの松のしるしぞたのもしきふた心なき千世とみつれば ひともとのまつのしるしそたのもしきふたこころなきちよとみつれは | 源兼澄 | 七 | 賀 |
| 432 | 君が代をなににたとへむときはなる松の緑も千代をこそふれ きみかよをなににたとへむときはなるまつのみとりもちよをこそふれ | 読人知らず | 七 | 賀 |
| 433 | めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千世もめぐらめ めつらしきひかりさしそふさかつきはもちなからこそちよもめくらめ | 紫式部 | 七 | 賀 |
| 434 | いとけなき衣の袖はせばくとも劫のいしをばなでつくしてむ いとけなきころものそてはせはくともこふのうへをはなてつくしてむ | 藤原公任 | 七 | 賀 |
| 435 | 君が代はかぎりもあらじ浜椿ふたたび色はあらたまるとも きみかよはかきりもあらしはまつはきふたたひいろはあらたまるとも | 読人知らず | 七 | 賀 |
| 436 | これもまた千代のけしきのしるきかな生ひそふ松の双葉ながらに これもまたちよのけしきのしるきかなおひそふまつのふたはなからに | 源顕房 | 七 | 賀 |
| 437 | ひめこまつ大原山のたねなればちとせはここにまかせてをみむ ひめこまつおほはらやまのたねなれはちとせはたたにまかせてをみむ | 清原元輔 | 七 | 賀 |
| 438 | 雲の上に昇らむまでもみてしがな鶴の毛ごろも年ふとならば くものうへにのほらむまてもみてしかなつるのけころもとしふとならは | 赤染衛門 | 七 | 賀 |
| 439 | 千代をいのる心のうちのすずしきはたえせぬ家の風にぞありける ちよをいのるこころのうちのすすしきはたえせぬいへのかせにそありける | 赤染衛門 | 七 | 賀 |
| 440 | ちとせふる双葉の松にかけてこそ藤のわかえもはるひ栄えめ ちとせふるふたはのまつにかけてこそふちのわかえもはるひさかえめ | 源顕房 | 七 | 賀 |
| 441 | おもふこといまはなきかな撫子の花さくばかりなりぬとおもへば おもふこといまはなきかななてしこのはなさくはかりなりぬとおもへは | 花山院 | 七 | 賀 |
| 442 | 君みればちりもくもらでよろづ代のよはひをのみもます鏡かな きみみれはちりもくもらてよろつよのよはひをのみもますかかみかな | 伊勢大輔 | 七 | 賀 |
| 443 | くもりなき鏡の光ますますも照さむ影にかくれざらめや くもりなきかかみのひかりますますもてらさむかけにかくれさらめや | 藤原能信 | 七 | 賀 |
| 444 | おもひやれまだ鶴のこのおひさきを千世もとなづる袖のせばさを おもひやれまたつるのこのおひさきをちよもとなつるそてのせはさを | 藤三位 | 七 | 賀 |
| 445 | よろづよをかぞへむものは紀の國のちひろのはまの真砂なりけり よろつよをかそへむものはきのくにのちひろのはまのまさこなりけり | 清原元輔 | 七 | 賀 |
| 446 | 住吉の浦の玉藻をむすびあげて渚の松の影をこそみめ すみよしのうらのたまもをむすひあけてなきさのまつのかけをこそみめ | 清原元輔 | 七 | 賀 |
| 447 | いろいろにあまた千歳のみゆるかな小松が原にたづやむれゐる いろいろにあまたちとせのみゆるかなこまつかはらにたつやむれゐる | 源重之 | 七 | 賀 |
| 448 | かたがたの親の親どち祝ふめり子のこの千代を思ひこそやれ かたかたのおやのおやとちいはふめりこのこのちよをおもひこそやれ | 藤原保昌 | 七 | 賀 |
| 449 | 君が代は千代にひとたびゐるちりの白雲かかる山となるまで きみかよはちよにひとたひゐるちりのしらくもかかるやまとなるまて | 大江嘉言 | 七 | 賀 |
| 450 | 君が代はつきじとぞおもふ神風やみもすそ河のすまむかぎりは きみかよはつきしとそおもふかみかせやみもすそかはのすまむかきりは | 源経信 | 七 | 賀 |
| 451 | 思ひやれやそうぢ人の君が為ひとつ心にいのるいのりを おもひやれやそうちひとのきみかためひとつこころにいのるいのりを | 藤原為盛女 | 七 | 賀 |
| 452 | かすが山いはねの松は君がためちとせのみかはよろづよぞへむ かすかやまいはねのまつはきみかためちとせのみかはよろつよそへむ | 能因法師 | 七 | 賀 |
| 453 | 君が代はしらたま椿八千代ともなににかぞへむ限りなければ きみかよはしらたまつはきやちよともなににかそへむかきりなけれは | 式部大輔資業 | 七 | 賀 |
| 454 | 岩くぐる瀧の白糸たえせでぞ久しくよよにへつつみるべき いはくくるたきのしらいとたえせてそひさしくよよにへつつみるへき | 後冷泉院 | 七 | 賀 |
| 455 | 君すめばにごれる水もなかりけり汀のたづも心してゐよ きみすめはにこれるみつもなかりけりみきはのたつもこころしてゐよ | 小大君 | 七 | 賀 |
| 456 | ことしだに鏡と見ゆる池水の千代へてすまむ影ぞゆかしき ことしたにかかみとみゆるいけみつのちよへてすまむかけそゆかしき | 藤原範永 | 七 | 賀 |
| 457 | ちよをへむ君がかざせる藤の花松にかかれる心地こそすれ ちとせへむきみかかさせるふちのはなまつにかかれるここちこそすれ | 良暹法師 | 七 | 賀 |
| 458 | よろつよに千代のかさねてみゆるかな亀のをかなる松のみどりは よろつよにちよのかさねてみゆるかなかめのをかなるまつのみとりは | 式部大輔資業 | 七 | 賀 |
| 459 | 動きなき大倉山をたてたればをさまれるよぞ久しかるべき うこきなきおほくらやまをたてたれはをさまれるよそひさしかるへき | 式部大輔資業 | 七 | 賀 |
| 460 | 紫の雲のよそなる身なれどもたつときくこそうれしかりけれ むらさきのくものよそなるみなれともたつときくこそうれしかりけれ | 江侍従 | 七 | 賀 |
| 461 | もみぢ見む残りの秋もすくなきに君ながゐせば誰とをらまし もみちみむのこりのあきもすくなきにきみなかゐせはたれとをらまし | 恵慶法師 | 八 | 別 |
| 462 | をしむべき都の紅葉まだちらぬ秋のうちにはかへらざらめや をしむへきみやこのもみちまたちらぬあきのうちにはかへらさらめや | 祭主輔親 | 八 | 別 |
| 463 | つねならばあはでかへるも歎かじをみやこいづとか人のつげける つねならはあはてかへるもなけかしをみやこいつとかひとのつけける | 源道済 | 八 | 別 |
| 464 | みやこ出づるけさばかりだにはつかにもあひみて人を別れましかば みやこいつるけさはかりたにはつかにもあひみてひとをわかれましかは | 増基法師 | 八 | 別 |
| 465 | 別れての四年の春の春ごとに花のみやこを思ひおこせよ わかれてのよとせのはるのはることにはなのみやこをおもひおこせよ | 藤原道信 | 八 | 別 |
| 466 | あふさかの関うちこゆる程もなくけさはみやこの人ぞこひしき あふさかのせきうちこゆるほともなくけさはみやこのひとそこひしき | 藤原惟規 | 八 | 別 |
| 467 | よのつねにおもふ別れの旅ならば心見えなる手向けせましや よのつねにおもふわかれのたひならはこころみえなるたまけせましや | 藤原長能 | 八 | 別 |
| 468 | 行く春とともにたちぬるふな道を祈りかけたる藤なみの花 ゆくはるとともにたちぬるふなみちをいのりかけたるふちなみのはな | 選子内親王 | 八 | 別 |
| 469 | 祈りつつちよをかけたる藤なみにいきの松こそ思ひやらるれ いのりつつちよをかけたるふちなみにいきのまつこそおもひやらるれ | 筑後守藤原為正 | 八 | 別 |
| 470 | たれがよもわがよもしらぬ世の中にまつほどいかがあらむとすらむ たれかよもわかよもしらぬよのなかにまつほといかかあらむとすらむ | 藤原道信 | 八 | 別 |
| 471 | 君をのみたのむたひなる心には行く末とほくおもほゆるかな きみをのみたのむたひなるこころにはゆくすゑとほくおもほゆるかな | 藤原倫寧 | 八 | 別 |
| 472 | 我をのみたのむといはば行く末の松のちよをも君こそはみめ われをのみたのむといははゆくすゑのまつのちよをもきみこそはみめ | 入道摂政 | 八 | 別 |
| 473 | 山のはに月かげみえば思ひ出でよ秋風ふかば我も忘れじ やまのはにつきかけみえはおもひいてよあきかせふかはわれもわすれし | 堪圓法師 | 八 | 別 |
| 474 | たびたびのちよをはるかに君やへむ末の松よりいきの松まて たひたひのちよをはるかにきみやみむすゑのまつよりいきのまつまて | 相模 | 八 | 別 |
| 475 | いとはしきわが命さへゆく人のかへらむまでとをしくなりぬる いとはしきわかいのちさへゆくひとのかへらむまてとをしくなりぬる | 相模 | 八 | 別 |
| 476 | 命あらば今かへりこむ津の国の難波ほり江の蘆のうら葉に いのちあらはいまかへりこむつのくにのなにはほりえのあしのうらはに | 大江嘉言 | 八 | 別 |
| 477 | かりそめの別れとおもへど白河のせきとどめぬは涙なりけり かりそめのわかれとおもへとしらかはのせきととめぬはなみたなりけり | 藤原定頼 | 八 | 別 |
| 478 | 別れ路にたつけふよりもかへるさを哀れくもゐにきかむとすらむ わかれちにたつけふよりもかへるさをあはれくもゐにきかむとすらむ | 橘則長 | 八 | 別 |
| 479 | 誰よりも我ぞかなしきめぐりみむ程をまつべき命ならねば ゆくよりもわれそかなしきめくりあはむほとをまつへきいのちならねは | 慶範法師 | 八 | 別 |
| 480 | 別るべきなかとしるしる睦まじくならひにけるぞけふはくやしき わかるへきなかとしるしるむつましくならひにけるそけふはくやしき | 読人知らず | 八 | 別 |
| 481 | 名残ある命と思はば友綱の又もやくるとまたましものを なこりあるいのちとおもははともつなのまたもやくるとまたましものを | 良勢法師 | 八 | 別 |
| 482 | 春は花秋は月にとちぎりつつけふを別れとおもはざりける はるははなあきはつきにとちきりつつけふをわかれとおもはさりける | 藤原家経 | 八 | 別 |
| 483 | 思へただたのめていにし春だにも花の盛りはいかがまたまし おもへたたたのめていにしはるたにもはなのさかりはいかかまたれし | 源兼長 | 八 | 別 |
| 484 | おもひいでよ道は遙かになりぬとも心のうちは山もへだてじし おもひいてよみちははるかになりぬともこころのうちはやまもへたてし | 源道済 | 八 | 別 |
| 485 | とまるべき道にはあらず中々にあはでぞけふはあるべかりける とまるへきみちにはあらすなかなかにあはてそけふはあるへかりける | 源道済 | 八 | 別 |
| 486 | 松山の松のうら風吹きよせばひろひてしのべこひわすれ貝 まつやまのまつのうらかせふきよせはひろひてしのへこひわすれかひ | 藤原定頼 | 八 | 別 |
| 487 | たたぬよりしぼりもあへぬ衣手にまだきなかけそ松がうらなみ たたぬよりしほりもあへぬころもてにまたきなかけそまつかうらなみ | 源光成 | 八 | 別 |
| 488 | かくしつつ多くの人はをしみきぬ我をおくらむ事はいつぞも かくしつつおほくのひとはをしみきぬわれをおくらむことはいつそは | 源兼澄 | 八 | 別 |
| 489 | 暮れて行く年とともにぞ別れぬる道にや春はあはむとすらむ くれてゆくとしとともにそわかれぬるみちにやはるはあはむとすらむ | 源為善 | 八 | 別 |
| 490 | あふさかの関ぢこゆともみやこなる人に心のかよはざらめや あふさかのせきちこゆともみやこなるひとにこころのかよはさらめや | 祭主輔親 | 八 | 別 |
| 491 | 行く人もとまるもいかにおもふらむ別れてのちの又の別れを ゆくひともとまるもいかにおもふらむわかれてのちのまたのわかれを | 赤染衛門 | 八 | 別 |
| 492 | いづちともしらぬ別れのたびなれどいかで涙のさきにたつらむ いつちともしらぬわかれのたひなれといかてなみたのさきにたつらむ | 中原頼成 | 八 | 別 |
| 493 | あふことは雲井はるかにへだつとも心かよはぬ程はあらじを あふことはくもゐはるかにへたつともこころかよはぬほとはあらしを | 祭主輔親 | 八 | 別 |
| 494 | 帰りては誰を見むとかおもふらむ老いて久しき人はありやは かへりてはたれをみむとかおもふらむおいてひさしきひとはありやは | 藤原節信 | 八 | 別 |
| 495 | 筑紫舟まだともづなもとかなくにさしいづるものは涙なりけり つくしふねまたともつなもとかなくにさしいつるものはなみたなりけり | 連敏法師 | 八 | 別 |
| 496 | ふるさとの花のみやこに住み侘びて八雲たつてふ出雲へぞ行く ふるさとのはなのみやこにすみわひてやくもたつてふいつもへそゆく | 大江正言 | 八 | 別 |
| 497 | 天の河のちのけふだにはるけきをいつともしらぬ舟出かなしな あまのかはのちのけふたにはるけきをいつともしらぬふなてかなしな | 藤原公任 | 八 | 別 |
| 498 | そのほどとちぎれる旅の別れだに逢ふ事まれにありとこそきけ そのほととちきれるたひのわかれたにあふことまれにありとこそきけ | 寂昭法師 | 八 | 別 |
| 499 | いかばかり空をあふぎてなげくらむいく雲井ともしらぬ別れを いかはかりそらをあふきてなけくらむいくくもゐともしらぬわかれを | 読人知らず | 八 | 別 |
| 500 | 逢坂の関とはきけどはしり井の水をばえこそとどめざりけれ あふさかのせきとはきけとはしりゐのみつをはえこそととめさりけれ | 藤原兼通 | 九 | 羈旅 |
| 501 | ゆく道の紅葉の色も見るべきを霧とともにやいそぎたつべき ゆくみちのもみちのいろもみるへきをきりとともにやいそきたつへき | 藤原公任 | 九 | 羈旅 |
| 502 | 霧わけていそぎたちなむ紅葉ばの色にみえなば道もゆかれじ きりわけていそきたちなむもみちはのいろしみえなはみちもゆかれし | 藤原定頼 | 九 | 羈旅 |
| 503 | たびの空よはの煙とのぼりなばあまのもしほ火たくかとやみむ たひのそらよはのけふりとのほりなはあまのもしほひたくかとやみむ | 花山院 | 九 | 羈旅 |
| 504 | みやこにてふきあげの浜を人とはばけふ見るばかりいかがかたらむ みやこにてふきあけのはまをひととははけふみるはかりいかかかたらむ | 懐圓法師 | 九 | 羈旅 |
| 505 | 山のはにさはるかとこそ思ひしか峯にてもなほ月ぞまたるる やまのはにさはるかとこそおもひしかみねにてもなほつきそまたるる | 少輔 | 九 | 羈旅 |
| 506 | すぎがてにおぼゆるものは蘆間かな堀江のほどは綱手ゆるめよ すきかてにおほゆるものはあしまかなほりえのほとはつなてゆるめよ | 藤原國行 | 九 | 羈旅 |
| 507 | 蘆の屋のこやの渡りに日は暮れぬいづちゆくらむ駒にまかせて あしのやのこやのわたりにひはくれぬいつちゆくらむこまにまかせて | 能因法師 | 九 | 羈旅 |
| 508 | みやこのみかへり見られて東路をこまの心にまかせてぞ行く みやこのみかへりみられてあつまちをこまのこころにまかせてそゆく | 増基法師 | 九 | 羈旅 |
| 509 | こととはばありのまにまに都鳥みやこのことを我にきかせよ こととははありのまにまにみやことりみやこのことをわれにきかせよ | 和泉式部 | 九 | 羈旅 |
| 510 | 鏡山こゆるけふしも春雨のかきくもりやはふるべかりける かかみやまこゆるけふしもはるさめのかきくもりやはふるへかりける | 恵慶法師 | 九 | 羈旅 |
| 511 | こえはてば都も遠くなりぬべし関の夕風しばしすずまむ こえはてはみやこもとほくなりぬへしせきのゆふかせしはしすすまむ | 赤染衛門 | 九 | 羈旅 |
| 512 | けふばかり霞まざらなむあかで行くみやこの山はそれとだにみむ けふはかりかすまさらなむあかてゆくみやこのやまはそれとたにみむ | 増基法師 | 九 | 羈旅 |
| 513 | わたのべや大江のきしにやどりして雲井にみゆる生駒山かな わたのへやおほえのきしにやとりしてくもゐにみゆるいこまやまかな | 良暹法師 | 九 | 羈旅 |
| 514 | しらくものうへよりみゆるあしひきの山のたかねやみさかなるらむ しらくものうへよりみゆるあしひきのやまのたかねやみさかなるらむ | 能因法師 | 九 | 羈旅 |
| 515 | 東路にここをうるまといふことは ゆきかふ人のあればなりけり あつまちにここをうるまといふことはゆきかふひとのあれはなりけり | 源重之 | 九 | 羈旅 |
| 516 | あつまぢの浜名の橋をきてみれは昔こひしきわたりなりけり あつまちのはまなのはしをきてみれはむかしこひしきわたりなりけり | 大江廣経 | 九 | 羈旅 |
| 517 | おもふ人ありとなけれどふるさとはしかすがにこそ恋しかりけれ おもふひとありとなけれとふるさとはしかすかにこそこひしかりけれ | 能因法師 | 九 | 羈旅 |
| 518 | みやこをば霞とともに立ちしかど秋風ぞふく白川の関 みやこをはかすみとともにたちしかとあきかせそふくしらかはのせき | 能因法師 | 九 | 羈旅 |
| 519 | 世の中はかくてもへけりきさがたのあまの苫屋を我が宿にして よのなかはかくてもへけりきさかたのあまのとまやをわかやとにして | 能因法師 | 九 | 羈旅 |
| 520 | 須磨の浦をけふすぎ行くときし方へ帰る浪にやことをつてまし すまのうらをけふすきゆくとこしかたへかへるなみにやことをつてまし | 大中臣能宣 | 九 | 羈旅 |
| 521 | 風ふけば藻塩の煙うちなびき我もおもはぬかたにこそゆけ かせふけはもしほのけふりうちなひきわれもおもはぬかたにこそゆけ | 大貮高遠 | 九 | 羈旅 |
| 522 | 月影はたびの空とてかはらねどなほみやこのみこひしきやなぞ つきかけはたひのそらとてかはらねとなほみやこのみこひしきやなそ | 花山院 | 九 | 羈旅 |
| 523 | おぼつかなみやこの空やいかならむこよひあかしの月をみるにも おほつかなみやこのそらやいかならむこよひあかしのつきをみるにも | 源資綱 | 九 | 羈旅 |
| 524 | ながむらむあかしのうらのけしきにて都の月を空にしらなむ なかむらむあかしのうらのけしきにてみやこのつきはそらにしらなむ | 繪式部 | 九 | 羈旅 |
| 525 | 月はかく雲井なれども見るものをあはれみやこのかからましかば つきはかくくもゐなれともみるものをあはれみやこのかからましかは | 康資王母 | 九 | 羈旅 |
| 526 | 都にて山のはに見し月影をこよひはなみのうへにこそまて みやこにてやまのはにみしつきかけをこよひはなみのうへにこそまて | 橘為義 | 九 | 羈旅 |
| 527 | 都いでて雲井はるかにきたれども猶にしにこそ月は入りけれ みやこいててくもゐはるかにきたれともなほにしにこそつきはいりけれ | 藤原國行 | 九 | 羈旅 |
| 528 | なぬかにもあまりにけりな便りあらばかぞへきかせよ沖の嶋守 なぬかにもあまりにけりなたよりあらはかそへきかせよおきのしまもり | 源高明 | 九 | 羈旅 |
| 529 | ものをおもふ心のやみしくらければあかしの浦もかひなかりけり ものをおもふこころのやみしくらけれはあかしのうらもかひなかりけり | 帥前内大臣 | 九 | 羈旅 |
| 530 | さもこそは都のほかにやどりせめうたて露けき草枕かな さもこそはみやこのほかにやとりせめうたてつゆけきくさまくらかな | 藤原隆家 | 九 | 羈旅 |
| 531 | いそぎつつ舟出ぞしつる年の内に花のみやこの春にあふべく いそきつつふなてそしつるとしのうちにはなのみやこのはるにあふへく | 式部大輔資業 | 九 | 羈旅 |
| 532 | あなし吹くせとのしほあひに舟出して早くぞ過ぐるさやかた山を あなしふくせとのしほあひにふなてしてはやくそすくるさやかたやまを | 右大弁通俊 | 九 | 羈旅 |
| 533 | これやこの月見るたびに思ひやる姨捨山のふもとなりけり これやこのつきみるたひにおもひやるをはすてやまのふもとなりける | 橘為伸 | 九 | 羈旅 |
| 534 | 見わたせばみやこは近くなりぬらむ過ぎぬる山は霞へだてつ みわたせはみやこはちかくなりぬらむすきぬるやまはかすみへたてつ | 源道済 | 九 | 羈旅 |
| 535 | さよ更けて嶺のあらしやいかならむ汀の浪の聲まさるなり さよふけてみねのあらしやいかならむみきはのなみのこゑまさるなり | 源道済 | 十 | 哀傷 |
| 536 | 夜もすがら契りしことを忘れずばこひむ涙のいろぞゆかしき よもすからちきりしことをわすれすはこひむなみたのいろそゆかしき | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 537 | しる人もなき別れ路に今はとて心ぼそくもいそぎたつかな しるひともなきわかれちにいまはとてこころほそくもいそきたつかな | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 538 | ありしこそ限りなりけれあふことをなどのちのよと契らざりけむ ありしこそかきりなりけれあふことをなとのちのよとちきらさりけむ | 源兼長 | 十 | 哀傷 |
| 539 | たちのぼるけぶりにつけておもふかないつまたわれを人のかくみむ たちのほるけふりにつけておもふかないつまたわれをひとのかくみむ | 和泉式部 | 十 | 哀傷 |
| 540 | などてかく雲がくるらむかくばかりのどかにすめる月もあるよに なとてかくくもかくれけむかくはかりのとかにすめるつきもあるよに | 命婦乳母 | 十 | 哀傷 |
| 541 | むらさきの雲のかけても思ひきや春の霞になしてみむとは むらさきのくものかけてもおもひきやはるのかすみになしてみむとは | 藤原朝光 | 十 | 哀傷 |
| 542 | おくれじと常のみゆきは急ぎしを煙にそはぬたびのかなしさ おくれしとつねのみゆきはいそきしをけふりにそはぬたひのかなしさ | 大納言行成 | 十 | 哀傷 |
| 543 | のべまでに心一つは通へどもわがみゆきとはしらずやありけむ のへまてにこころひとつはかよへともわかみゆきとはしらすやあるらむ | 一條院 | 十 | 哀傷 |
| 544 | たきぎつき雪ふりしけるとりべ野はつるの林の心地こそすれ たききつきゆきふりしけるとりへのはつるのはやしのここちこそすれ | 法橋忠命 | 十 | 哀傷 |
| 545 | はれずこそかなしかりけれ鳥部山たちかへりつるけさの霞は はれすこそかなしかりけれとりへやまたちかへりつるけさのかすみは | 小侍従命婦 | 十 | 哀傷 |
| 546 | いにしへの薪もけふの君がよもつきはてぬるを見るぞ悲しき いにしへのたききもけふのきみかよもつきはてぬるをみるそかなしき | 小侍従命婦 | 十 | 哀傷 |
| 547 | 時しもあれ春のなかばにあやまたぬよはの煙はうたがひもなし ときしもあれはるのなかはにあやまたぬよはのけふりはうたかひもなし | 相模 | 十 | 哀傷 |
| 548 | そなはれし玉のをぐしをさしながら哀れかなしき秋にあひぬる そなはれしたまのをくしをさしなからあはれかなしきあきにあひぬる | 山田中務 | 十 | 哀傷 |
| 549 | とはばやと思ひやるだに露けきをいかにぞ君が袖はくちぬや とははやとおもひやるたにつゆけきをいかにそきみかそてはくちぬや | 相模 | 十 | 哀傷 |
| 550 | 涙河ながるるみをとしらねばや袖ばかりをば人のとふらむ なみたかはなかるるみをとしらねはやそてはかりをはひとのとふらむ | 大和宣旨 | 十 | 哀傷 |
| 551 | いかばかり君なげくらむ數ならぬ身だにしぐれし秋のあはれを いかはかりきみなけくらむかすならぬみたにしくれしあきのあはれを | 前中宮出雲 | 十 | 哀傷 |
| 552 | よそにきく袖も露けき柏木のもとのしづくを思ひこそやれ よそにきくそてもつゆけきかしはきのもとのしつくをおもひこそやれ | 小左近 | 十 | 哀傷 |
| 553 | 主なしとこたふる人はなけれども宿の気色ぞいふにまされる ぬしなしとこたふるひとはなけれともやとのけしきそいふにまされる | 能因法師 | 十 | 哀傷 |
| 554 | いかばかりさびしかるらむ木枯しの吹きにし宿の秋のゆふぐれ いかはかりさひしかるらむこからしのふきにしやとのあきのゆふくれ | 右大臣北方 | 十 | 哀傷 |
| 555 | 山ざとのははその紅葉散り木のもといかに寂しかるらむ やまてらのははそのもみちちりにけりこのもといかにさひしかるらむ | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 556 | おもふらむ別れし人の悲しさはけふまでふべき心地やはせし おもふらむわかれしひとのかなしさはけふまてふへきここちやはせし | 源隆国 | 十 | 哀傷 |
| 557 | かなしさのたぐひになにを思はまし別れをしれる君なかりせば かなしさのたくひになにをおもはましわかれをしれるきみなかりせは | 出羽辨 | 十 | 哀傷 |
| 558 | をしまるる人なくなどてなりにけむ捨てたる身だにあればあるよに をしまるるひとなくなとてなりにけむすてたるみたにあれはあるよに | 中宮内侍 | 十 | 哀傷 |
| 559 | 宵のまの空の煙となりにきとあまのはらからなどかつげこぬ よひのまのそらのけふりとなりにきとあまのはらからなとかつけこぬ | 源順 | 十 | 哀傷 |
| 560 | 思ひいづや思ひいづるに悲しきは別れながらのわかれなりけり おもひいつやおもひいつるにかなしきはわかれなからのわかれなりけり | 橘季通 | 十 | 哀傷 |
| 561 | 思ひやれかねて別れしくやしさにそへてかなしき心づくしを おもひやれかねてわかれしくやしさにそへてかなしきこころつくしを | 式部命婦 | 十 | 哀傷 |
| 562 | 五月雨にあらぬけふさへ晴れせねば空も悲しき事やしるらむ さみたれにあらぬけふさへはれせぬはそらもかなしきことやしるらむ | 周防内侍 | 十 | 哀傷 |
| 563 | あだにかくおつとおもひしむば玉の髪こそ長き形見なりけれ あたにかくおつとおもひしうはたまのかみこそなかきかたみなりけれ | 藤原定頼母 | 十 | 哀傷 |
| 564 | うたたねのこのよの夢のはかなきにさめぬやがての命ともがな うたたねのこのよのゆめのはかなきにさめぬやかてのいのちともかな | 藤原実方 | 十 | 哀傷 |
| 565 | 夢みずとなげきし人をほどもなく又わが夢にみぬぞかなしき ゆめみすとなけきしひとをほともなくまたわかゆめにみぬそかなしき | 藤原相如女 | 十 | 哀傷 |
| 566 | 契りありてこのよに又もうまるとも面がはりしてみもや忘れむ ちきりありてこのよにまたはうまるともおもかはりしてみもやわすれむ | 藤原実方 | 十 | 哀傷 |
| 567 | 今はとてとびわかるめるむら鳥の古巣にひとりながむべきかな いまはとてとひわかるめるむらとりのふるすにひとりなかむへきかな | 藤原義孝 | 十 | 哀傷 |
| 568 | とどめおきて誰をあはれとおもふらむこはまさるらむこはまさりけり ととめおきてたれをあはれとおもふらむこはまさるらむこはまさりけり | 和泉式部 | 十 | 哀傷 |
| 569 | 見るままに露ぞこぼるる遅れにし心もしらぬ撫子の花 みるままにつゆそこほるるおくれにしこころもしらぬなてしこのはな | 上東門院 | 十 | 哀傷 |
| 570 | 見むといひし人ははかなく消えにしを独り露けき秋の花かな みむといひしひとははかなくきえにしをひとりつゆけきあきのはなかな | 藤原実方 | 十 | 哀傷 |
| 571 | 別れにしそのさみだれの空よりも雪ふればこそ恋しかりけれ わかれにしそのさみたれのそらよりもゆきふれはこそこひしかりけれ | 大江匡房 | 十 | 哀傷 |
| 572 | なにしかは今はいそがむ都には待つべき人もなくなりにけり なにしにかいまはいそかむみやこにはまつへきひともなくなりにけり | 大江嘉言 | 十 | 哀傷 |
| 573 | 今はただそよその事と思ひいでて忘るばかりの憂き事もがな いまはたたそよそのこととおもひいててわするはかりのうきこともかな | 和泉式部 | 十 | 哀傷 |
| 574 | 捨てはてむと思ふさへこそ悲しけれ君になれにし我が身と思へば すてはてむとおもふさへこそかなしけれきみになれにしわかみとおもへは | 和泉式部 | 十 | 哀傷 |
| 575 | なき人のくるよときけど君もなし我がすむやどやたまなきの里 なきひとのくるよときけときみもなしわかすむやとやたまなきのさと | 和泉式部 | 十 | 哀傷 |
| 576 | 別れにし人は来べくもあらなくにいかに振舞ふささがにぞこは わかれにしひとはくへきもあらなくにいかにふるまふささかにそこは | 源師房女 | 十 | 哀傷 |
| 577 | こひしさにぬる夜なけれど世の中のはかなき時は夢とこそみれ こひしさにぬるよなけれとよのなかのはかなきときはゆめとこそみれ | 大貮高遠 | 十 | 哀傷 |
| 578 | ゆゆしさに包めどあまる涙かなかけじとおもふ旅のころもに ゆゆしさにつつめとあまるなみたかなかけしとおもふたひのころもに | 源道成 | 十 | 哀傷 |
| 579 | のりのためつみける花を数々に今はこのよのかたみとぞおもふ のりのためつみけるはなをかすかすにいまはこのよのかたみとそおもふ | 選子内親王 | 十 | 哀傷 |
| 580 | ふかさこそ藤のたもとはまさるらめ涙はおなじ色にこそしめ ふかさこそふちのたもとはまさるらめなみたはおなしいろにこそしめ | 伊勢大輔 | 十 | 哀傷 |
| 581 | 君のみや花のいろにもたちかへで袂の露はおなじ秋なる きみのみやはなのいろにもたちかへてたもとのつゆはおなしあきなる | 康資王母 | 十 | 哀傷 |
| 582 | 墨染の袂はいとどこひぢにてあやめの草のねやしげるらむ すみそめのたもとはいととこひちにてあやめのくさのねやしけるらむ | 美作三位 | 十 | 哀傷 |
| 583 | これをだに形見とおもふを都には葉がへやしつるしひしばの袖 これをたにかたみとおもふをみやこにははかへやしつるしひしはのそて | 一條院 | 十 | 哀傷 |
| 584 | こぞよりも色こそこけれ萩の花なみだの雨のかかる秋には こそよりもいろこそこけれはきのはななみたのあめのかかるあきには | 麗景殿前女御 | 十 | 哀傷 |
| 585 | 別れにしその日ばかりは巡りきて生きもかへらぬ人ぞこひしき わかれにしそのひはかりはめくりきていきもかへらぬひとそかなしき | 伊勢大輔 | 十 | 哀傷 |
| 586 | 年をへてなれたる人も別れにしこぞは今年のけふにぞありける としをへてなれたるひともわかれにしこそはことしのけふにそありける | 紀時文 | 十 | 哀傷 |
| 587 | わかれけむ心をくみて涙川おもひやるかなこぞのけふをも わかれけむこころをくみてなみたかはおもひやるかなこそのけふをも | 清原元輔 | 十 | 哀傷 |
| 588 | 我が身には悲しきことの尽きせねば昨日をはてと思はざりけり わかみにはかなしきことのつきせねはきのふをはてとおもはさりけり | 江侍従 | 十 | 哀傷 |
| 589 | おもひかねかたみにそめし墨染の衣にさへも別れぬるかな おもひかねかたみにそめしすみそめのころもにさへもわかれぬるかな | 平棟仲 | 十 | 哀傷 |
| 590 | うすくこく衣のいろはかはれどもおなじ涙のかかる袖かな うすくこくころものいろはかはれともおなしなみたのかかるそてかな | 平教成 | 十 | 哀傷 |
| 591 | うきながらかたみにみつる藤衣はては涙にながしつるかな うきなからかたみにみつるふちころもはてはなみたになかしつるかな | 藤原定輔女 | 十 | 哀傷 |
| 592 | きえにける衛士のたく火の跡をみて煙となりし君ぞかなしき きえにけるゑしのたくひのあとをみてけふりとなりしきみそかなしき | 赤染衛門 | 十 | 哀傷 |
| 593 | いかにしてうつしとめけむ雲井にてあかずかくれし月の光を いかにしてうつしとめけむくもゐにてあかすわかれしつきのひかりを | 出羽辨 | 十 | 哀傷 |
| 594 | ひとりこそあれ行くとこは歎きつれ主なき宿はまたもありけり ひとりこそあれゆくとこはなけきつれぬしなきやとはまたもありけり | 赤染衛門 | 十 | 哀傷 |
| 595 | いにしへになにはの事はかはらねど涙のかかる旅はなかりき いにしへになにはのことはかはらねとなみたのかかるたひはなかりき | 源信宗 | 十 | 哀傷 |
| 596 | 思ひやるあはれなにはのうらさびて蘆の浮き寝はさぞながれけむ おもひやるあはれなにはのうらさひてあしのうきねはさそなかれけむ | 伊勢大輔 | 十 | 哀傷 |
| 597 | 年ごとにむかしは遠くなりゆけど憂かりし秋は又もきにけり としことにむかしはとほくなりゆけとうかりしあきはまたもきにけり | 源重之 | 十 | 哀傷 |
| 598 | しかばかり契りしものをわたり川かへるほどには忘るべしやは しかはかりちきりしものをわたりかはかへるほとにはわするへしやは | 藤原義孝 | 十 | 哀傷 |
| 599 | 時雨とは千草の花ぞ散りまがふなにふるさとに袖ぬらすらむ しくれとはちくさのはなそちりまかふなにふるさとのそてぬらすらむ | 藤原義孝 | 十 | 哀傷 |
| 600 | 着てなれし衣の袖もかわかぬに別れし秋になりにけるかな きてなれしころものそてもかわかぬにわかれしあきになりにけるかな | 藤原義孝 | 十 | 哀傷 |
| 601 | あふことをみな暮ごとにいでたてど夢路ならではかひなかりけり あふことをみなくれことにいてたてとゆめちならてはかひなかりけり | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 602 | なくなくも君にはつげつなき人のまたかへり事いかがいはまし なくなくもきみにはつけつなきひとのまたかへりこといかかいはまし | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 603 | さきにたつ涙を道のしるべにて我こそ行きていはまほしけれ さきにたつなみたをみちのしるへにてわれこそゆきていはまほしけれ | 読人知らず | 十 | 哀傷 |
| 604 | ほのかにもしらせてしがな春霞かすみのうちにおもふ心を ほのかにもしらせてしかなはるかすみかすみのうちにおもふこころを | 後朱雀院 | 十一 | 恋一 |
| 605 | 木の葉ちる山の下水うづもれて流れもやらぬものをこそおもへ このはちるやまのしたみつうつもれてなかれもやらぬものをこそおもへ | 叡覚法師 | 十一 | 恋一 |
| 606 | いかなればしらぬに生ふるうきぬなは苦しやこころ人しれずのみ いかなれはしらぬにおふるうきぬなはくるしやこころひとしれすのみ | 馬内侍 | 十一 | 恋一 |
| 607 | かくなむとあまの漁火ほのめかせ磯辺の浪のをりもよからば かくなむとあまのいさりひほのめかせいそへのなみのをりもよからは | 源頼光 | 十一 | 恋一 |
| 608 | おきつ浪うちいでむことぞつつましき思ひよるべき汀ならねば おきつなみうちいてむことそつつましきおもひよるへきみきはならねは | 源頼家母 | 十一 | 恋一 |
| 609 | 霜がれの冬野にたてるむらすすきほのめかさばや思ふこころを しもかれのふゆのにたてるむらすすきほのめかさはやおもふこころを | 平経章 | 十一 | 恋一 |
| 610 | しのびつつやみなむよりは思ふことありけるとだに人にしらせむ しのひつつやみなむよりはおもふことありけるとたにひとにしらせむ | 大江嘉言 | 十一 | 恋一 |
| 611 | おぼめくなたれともなくて宵々に夢にみえけむ我ぞそのひと おほめくなたれともなくてよひよひにゆめにみえけむわれそそのひと | 和泉式部 | 十一 | 恋一 |
| 612 | かくとだにえやは伊吹のさしも草さしもしらじなもゆるおもひを かくとたにえやはいふきのさしもくささしもしらしなもゆるおもひを | 藤原実方 | 十一 | 恋一 |
| 613 | なき名たつ人だに世にはあるものを君恋ふる身としられぬぞ憂き なきなたつひとたによにはあるものをきみこふるみとしられぬそうき | 實源法師 | 十一 | 恋一 |
| 614 | 年もへぬながつきの夜の月影の有明がたの空をこひつつ としもへぬなかつきのよのつきかけのありあけかたのそらをこひつつ | 源則成 | 十一 | 恋一 |
| 615 | 汲みてしる人もあらなむ夏山の木のした水は草かくれつつ くみてしるひともあらなむなつやまのこのしたみつはくさかくれつつ | 藤原長能 | 十一 | 恋一 |
| 616 | 小舟さしわたのはらからしるべせよいづれかあまの玉藻刈る浦 をふねさしわたのはらからしるへせよいつれかあまのたまもかるうら | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
| 617 | ひとりしてながむる宿のつまに生ふる忍ぶとだにもしらせてしかな ひとりしてなかむるやとのつまにおふるしのふとたにもしらせてしかな | 藤原通頼 | 十一 | 恋一 |
| 618 | おもひあまりいひいづる程に數ならぬ身をさへ人にしられぬるかな おもひあまりいひいつるほとにかすならぬみをさへひとにしられぬるかな | 道命法師 | 十一 | 恋一 |
| 619 | しのすすき忍びもあへぬ心にて今日はほにいづる秋としらなむ しのすすきしのひもあへぬこころにてけふはほにいつるあきとしらなむ | 祭主輔親 | 十一 | 恋一 |
| 620 | いはぬまはまだしらじかし限りなく我がおもふべき人はわれとも いはぬまはまたしらしかしかきりなくわかおもふへきひとはわれとも | 藤原兼房 | 十一 | 恋一 |
| 621 | わぎもこが袖ふりかけし移り香の今朝は身にしむものをこそおもへ わきもこかそてふりかけしうつりかのけさはみにしむものをこそおもへ | 源兼澄 | 十一 | 恋一 |
| 622 | 雲の上にさばかりさしし日影にも君がつららはとけずなりにき くものうへにさはかりさししひかりにもきみかつららはとけすなりにき | 藤原公成 | 十一 | 恋一 |
| 623 | 年へつる山した水のうすこほりけふ春風にうちもとけなむ としへつるやましたみつのうすこほりけふはるかせにうちもとけなむ | 藤原良通 | 十一 | 恋一 |
| 624 | 氷とも人の心を思はばやけふ立つ春の風ぞとくやと こほりともひとのこころをおもははやけさたつはるのかせにとくへく | 能因法師 | 十一 | 恋一 |
| 625 | みつしほのひるまだになき浦なれやかよふ千鳥の跡もみえぬは みつしほのひるまたになきうらなれやかよふちとりのあともみえぬは | 祭主輔親 | 十一 | 恋一 |
| 626 | しほたるるわが身のかたはつれなくてこと浦にこそ煙たつなれ しほたるるわかみのかたはつれなくてことうらにこそけふりたちけれ | 道命法師 | 十一 | 恋一 |
| 627 | おもひわび昨日やまべに入りしかどふみみぬ道はゆかれざりけり おもひわひきのふやまへにいりしかとふみみぬみちはゆかれさりけり | 道命法師 | 十一 | 恋一 |
| 628 | 雲井にて契りし中はたなばたをうらやむばかりなりにけるかな くもゐにてちきりしなかはたなはたをうらやむはかりなりにけるかな | 藤原公任 | 十一 | 恋一 |
| 629 | あふことのいつとなきには織女の別るるさへぞうらやまれける あふことのいつとなきにはたなはたのわかるるさへそうらやまれける | 藤原隆資 | 十一 | 恋一 |
| 630 | 逢ふことのとどこほるまはいかばかり身にさへしみて歎くとかしる あふことのととこほるまはいかはかりみにさへしみてなけくとかしる | 馬内侍 | 十一 | 恋一 |
| 631 | 鴫のふす刈田にたてる稲茎の否とは人のいはずもあらなん しきのふすかりたにたてるいなくきのいなとはひとのいはすもあらなむ | 藤原顕季 | 十一 | 恋一 |
| 632 | あふさかの名をも頼まじ恋すればせきの清水に袖もぬれけり あふさかのなをもたのましこひすれはせきのしみつにそてもぬれけり | 白河院 | 十一 | 恋一 |
| 633 | 逢ふことはさもこそ人めかたからめ心ばかりはとけてみえなん あふことはさもこそひとめかたからめこころはかりはとけてみえなむ | 道命法師 | 十一 | 恋一 |
| 634 | 思ふらんしるしだになき下紐に心ばかりのなにかとくべき おもふらむしるしたになきしたひもにこころはかりのなにかとくへき | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
| 635 | 下きゆる雪間の草のめづらしく我が思ふ人に逢ひ見てしがな したきゆるゆきまのくさのめつらしくわかおもふひとにあひみてしかな | 和泉式部 | 十一 | 恋一 |
| 636 | 奥山のまきの葉しろく降る雪のいつとくべしとみえぬ君かな おくやまのまきのはしのきふるゆきのいつとくへしとみえぬきみかな | 源頼綱 | 十一 | 恋一 |
| 637 | うれしきを忘るる人もあるものを辛きをこふる我や何なる うれしきをわするるひともあるものをつらきをこふるわれやなになり | 源政成 | 十一 | 恋一 |
| 638 | 恋ひそめし心をのみぞ恨みつる人のつらさをわれになしつつ こひそめしこころをのみそうらみつるひとのつらさをわれになしつつ | 平兼盛 | 十一 | 恋一 |
| 639 | いかにせんかけても今はたのまじと思ふにいとどぬるる袂を いかにせむかけてもいまはたのましとおもふにいととぬるるたもとを | 藤原為時 | 十一 | 恋一 |
| 640 | あふことのなきよりかねてつらければさてもあらましぬるる袖かな あふことのなきよりかねてつらけれはさもあらましにぬるるそてかな | 相模 | 十一 | 恋一 |
| 641 | まてといひし秋もなかばになりぬるを頼めかおきし露はいかにぞ まてといひしあきもなかはになりぬるをたのめかおきしつゆはいかにそ | 大中臣能宣 | 十一 | 恋一 |
| 642 | 逢ふまでとせめて命の惜しければ恋こそ人の命なりけれ あふまてとせめていのちのをしけれはこひこそひとのいのりなりけれ | 藤原頼宗 | 十一 | 恋一 |
| 643 | つきもせず恋に涙をながすかなこやななくりの出湯なるらん つきもせすこひになみたをわかすかなこやななくりのいてゆなるらむ | 相模 | 十一 | 恋一 |
| 644 | あふみにかありといふなるみくりくる人苦しめのつくま江の沼 あふみにかありといふなるみくりくるひとくるしめのつくまえのぬま | 藤原道信 | 十一 | 恋一 |
| 645 | こひしてふことをしらでややみなましつれなき人のなき世なりせば こひしてふことをしらてややみなましつれなきひとのなきよなりせは | 永源法師 | 十一 | 恋一 |
| 646 | つれもなき人もあはれといひてまし恋する程を知らせだにせば つれもなきひともあはれといひてましこひするほとをしらせたにせは | 赤染衛門 | 十一 | 恋一 |
| 647 | 身をすてて深き淵にも入りぬべし底の心の知らまほしさに みをすててふかきふちにもいりぬへしそこのこころのしらまほしさに | 源道済 | 十一 | 恋一 |
| 648 | こひこひてあふとも夢にみつる夜はいとど寝覚めぞわびしかりける こひこひてあふともゆめにみつるよはいととねさめそわひしかりける | 大中臣能宣 | 十一 | 恋一 |
| 649 | 唐衣むすびしひもはさしながら袂ははやく朽ちにしものを からころもむすひしひもはさしなからたもとははやくくちにしものを | 大中臣能宣 | 十一 | 恋一 |
| 650 | 朽ちにける袖のしるしは下紐のとくるになどか知らせざりけん くちにけるそてのしるしはしたひものとくるになとかしらせさりけむ | 読人知らず | 十一 | 恋一 |
| 651 | 錦木はたてながらこそ朽ちにけれけふのほそ布胸あはじとや にしききはたてなからこそくちにけれけふのほそぬのむねあはしとや | 能因法師 | 十一 | 恋一 |
| 652 | 須磨の蜑の浦こぐ船の跡もなく見ぬ人こふる我やなになり すまのあまのうらこくふねのあともなくみぬひとこふるわれやなになり | 源高明 | 十一 | 恋一 |
| 653 | さりともと思ふ心にひかされて今まで世にもふるわが身かな さりともとおもふこころにひかされていままてよにもふるわかみかな | 源高明 | 十一 | 恋一 |
| 654 | たのむるに命ののぶる物ならば千年もかくてあらんとや思ふ たのむるにいのちののふるものならはちとせもかくてあらむとやおもふ | 藤原実頼女 | 十一 | 恋一 |
| 655 | 思ひしる人もこそあれあぢきなくつれなき恋に身をやかへてん おもひしるひともこそあれあちきなくつれなきこひにみをやかへてむ | 小辨 | 十一 | 恋一 |
| 656 | 人しれず逢ふをまつまに恋ひ死なば何にかへたる命とかいはん ひとしれすあふをまつまにこひしなはなににかへたるいのちとかいはむ | 平兼盛 | 十一 | 恋一 |
| 657 | 恋ひ死なん命はことのかずならでつれなき人の果ぞゆかしき こひしなむいのちはことのかすならてつれなきひとのはてそゆかしき | 永成法師 | 十一 | 恋一 |
| 658 | つれなくてやみぬる人に今はただ恋ひ死ぬとだにきかせてしがな つれなくてやみぬるひとにいまはたたこひしぬとたにきかせてしかな | 中原政義 | 十一 | 恋一 |
| 659 | あさねがみ乱れて恋ぞしどろなる逢ふ由もがな元結にせん あさねかみみたれてこひそしとろなるあふよしもかなもとゆひにせむ | 良暹法師 | 十一 | 恋一 |
| 660 | 唐衣そでしの浦のうつせ貝むなしき恋に年のへぬらむ からころもそてしのうらのうつせかひむなしきこひにとしのへぬらむ | 藤原國房 | 十一 | 恋一 |
| 661 | われが身はと帰る鷹となりにけり年はふれどももとは忘れず われかみはとかへるたかとなりにけりとしはふれともこひはわすれす | 左大臣俊房 | 十一 | 恋一 |
| 662 | 年を経て葉がへぬ山の椎柴やつれなき人の心なるらん としをへてはかへぬやまのしひしはやつれなきひとのこころなるらむ | 源顕房 | 十一 | 恋一 |
| 663 | 嬉しとも思ふべかりし今日しもぞいとど歎きのそふ心地する うれしともおもふへかりしけふしもそいととなけきのそふここちする | 道命法師 | 十一 | 恋一 |
| 664 | ほどもなく恋ふる心は何なれや知らでだにこそ年は経にしか ほともなくこふるこころはなになれやしらてたにこそとしはへにしか | 祭主輔親 | 十二 | 恋二 |
| 665 | いにしへの人さへ今朝はつらきかな明くればなどか帰りそめけん いにしへのひとさへけさはつらきかなあくれはなとかかへりそめけむ | 源頼綱 | 十二 | 恋二 |
| 666 | 夜をこめてかへる空こそなかりけれうらやましきは有明の月 よをこめてかへるそらこそなかりつれうらやましきはありあけのつき | 永源法師 | 十二 | 恋二 |
| 667 | 暮るる間は千歳を過ぐす心地して待つはまことに久しかりけり くるるまのちとせをすくすここちしてまつはまことにひさしかりけり | 藤原隆方 | 十二 | 恋二 |
| 668 | けふよりはとく呉竹の節ごとに夜はながかれと思ほゆるかな けふよりはとくくれたけのふしことによはなかかれとおもほゆるかな | 源定季 | 十二 | 恋二 |
| 669 | 君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな きみかためをしからさりしいのちさへなかくもかなとおもひけるかな | 藤原義孝 | 十二 | 恋二 |
| 670 | けふくるる程待つだにも久しきにいかで心をかけてすぎけん けふくるるほとまつたにもひさしきにいかてこころをかけてすきけむ | 伊勢大輔 | 十二 | 恋二 |
| 671 | かへるさの道やはかはる変らねど解くるにまどふ今朝の淡雪 かへるさのみちやはかはるかはらねととくるにまとふけさのあはゆき | 藤原道信 | 十二 | 恋二 |
| 672 | 明けぬれば暮るる物とは知りながら猶恨めしき朝ぼらけかな あけぬれはくるるものとはしりなからなほうらめしきあさほらけかな | 藤原道信 | 十二 | 恋二 |
| 673 | 千賀の浦に浪よせかくる心地してひるまなくてもくらしつるかな ちかのうらになみよせまさるここちしてひるまなくてもくらしつるかな | 藤原道信 | 十二 | 恋二 |
| 674 | 逢ひ見ての後こそ恋はまさりけれつれなき人をいまは恨みじ あひみてののちこそこひはまさりけれつれなきひとをいまはうらみし | 永源法師 | 十二 | 恋二 |
| 675 | うつつにて夢ばかりなる逢ふ事をうつつばかりの夢になさばや うつつにてゆめはかりなるあふことをうつつはかりのゆめになさはや | 源高明 | 十二 | 恋二 |
| 676 | たまさかにゆき逢坂の関守は夜をとほさぬぞ侘しかりける たまさかにゆきあふさかのせきもりはよをとほさぬそわひしかりける | 藤原道信 | 十二 | 恋二 |
| 677 | 知る人もなくてやみぬる逢ふことをいかでなみだの袖にもるらん しるひともなくてやみぬるあふことをいかてなみたのそてにもるらむ | 清原元輔 | 十二 | 恋二 |
| 678 | 頼むるを頼むべきにはあらねども待つとはなくて待たれもやせん たのむるにたのむへきにはあらねともまつとはなくてまたれもやせむ | 相模 | 十二 | 恋二 |
| 679 | 眺めつつ事ありがほに暮しても必ず夢にみえばこそあらめ なかめつつことありかほにくらしてもかならすゆめにみえはこそあらめ | 相模 | 十二 | 恋二 |
| 680 | やすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月をみしかな やすらはてねなましものをさよふけてかたふくまてのつきをみしかな | 赤染衛門 | 十二 | 恋二 |
| 681 | おきながらあかしつるかなともねせぬ鴨の上毛の霜ならなくに おきなからあかしつるかなともねせぬかものうはけのしもならなくに | 和泉式部 | 十二 | 恋二 |
| 682 | 夕露を浅茅が上とみしものを袖におきても明かしつるかな ゆふつゆをあさちかうへとみしものをそてにおきてもあかしつるかな | 大輔命婦 | 十二 | 恋二 |
| 683 | いかにせんあなあやにくの春の日や夜半のけしきのかからましかば いかにせむあなあやにくのはるのひやよはのけしきのかからましかは | 藤原隆経 | 十二 | 恋二 |
| 684 | むばたまの夜半のけしきはさもあらばあれ人の心を春日ともがな うはたまのよはのけしきはさもあらはあれひとのこころのはるひともかな | 童木 | 十二 | 恋二 |
| 685 | 淀野へとみまくさ刈りに行く人も暮れにはただに帰るものかは よとのへとみまくさかりにゆくひともくれにはたたにかへるものかは | 源重之 | 十二 | 恋二 |
| 686 | 帰りしは我が身ひとつと思ひしを涙さへこそとまらざりけれ かへりしはわかみひとつとおもひしをなみたさへこそとまらさりしか | 源師賢 | 十二 | 恋二 |
| 687 | あま雲のかへるばかりのむら雨に所せきまで濡れし袖かな あまくものかへるはかりのむらさめにところせきまてぬれしそてかな | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 688 | わが恋は天の原なる月なれや暮るれば出づる影をのみみる わかこひはあまのはらなるつきなれやくるれはいつるかけをのみみる | 一宮紀伊 | 十二 | 恋二 |
| 689 | 過ぎて行く月をもなにか恨むべき待つわが身こそあはれなりけり すきてゆくつきをもなにかうらむへきまつわかみこそあはれなりけれ | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 690 | 杉たてる門ならませば訪ひてまし心のまつはいかがしるべき すきたてるかとならませはとひてましこころのまつはいかかしるへき | 大貮高遠 | 十二 | 恋二 |
| 691 | 津の國のこやとも人をいふべきにひまこそなけれ蘆の八重葺き つのくにのこやともひとをいふへきにひまこそなけれあしのやへふき | 和泉式部 | 十二 | 恋二 |
| 692 | 人目のみしげき深山の青つづら苦しき世をも思ひ侘びぬる ひとめのみしけきみやまのあをつつらくるしきよをそおもひわひぬる | 高階章行女 | 十二 | 恋二 |
| 693 | 来ぬも憂く来るも苦しき靑つづらいかなる方に思ひ絶えなん こぬもうくくるもくるしきあをつつらいかなるかたにおもひたえなむ | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 694 | しるらめや身こそ人目をはばかりの関に涙はとまらざりけり しるらめやみこそひとめをははかりのせきになみたはとまらさりけり | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 695 | もろともにいつかとくべきあふことのかた結びなる夜半の下紐 もろともにいつかとくへきあふことのかたむすひなるよはのしたひも | 相模 | 十二 | 恋二 |
| 696 | 淵やさは瀬にはなりける明日香川浅きを深くなす世なりせば ふちやさはせにはなりけるあすかかはあさきをふかくなすよなりせは | 赤染衛門 | 十二 | 恋二 |
| 697 | あひみではありぬべしやとこころみる程は苦しきものにぞありける あひみてはありぬへしやとこころみるほとはくるしきものにそありける | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 698 | わが心こころにもあらでつらからば夜がれん床の形見ともせよ わかこころこころにもあらてつらからはよかれむとこのかたみともせよ | 源顕房 | 十二 | 恋二 |
| 699 | 来ぬまでも待たましものを中々に頼む方なきこの夕占かな こぬまてもまたましものをなかなかにたのむかたなきこのゆふけかな | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 700 | きえ返り露もまだひぬ袖の上に今朝はしぐるる空もわりなし きえかへりつゆもまたひぬそてのうへにけさはしくるるそらもわりなし | 藤原道綱母 | 十二 | 恋二 |
| 701 | あかつきの露は枕に置きけるを草葉のうへとなに思ひけん あかつきのつゆはまくらにおきけるをくさはのうへとなにおもひけむ | 高内侍 | 十二 | 恋二 |
| 702 | きのふけふ歎くばかりの心地せば明日に我が身や逢はじとすらん きのふけふなけくはかりのここちせはあすにわかみやあはしとすらむ | 相模 | 十二 | 恋二 |
| 703 | 見し人に忘れられてふる袖ににこそ身をしる雨はいつもをやまね みしひとにわすられてふるそてにこそみをしるあめはいつもをやまね | 和泉式部 | 十二 | 恋二 |
| 704 | 忘らるる身をしる雨はふらねども袖ばかりこそ乾かざりけれ わすらるるみをしるあめはふらねともそてはかりこそかわかさりけれ | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 705 | こえにける浪をばしらで末の松ちよまでとのみ頼みけるかな こえにけるなみをはしらてすゑのまつちよまてとのみたのみけるかな | 藤原能通 | 十二 | 恋二 |
| 706 | 浦風になびきにけりな里のあまの焚く藻のけぶり心よわさは うらかせになひきにけりなさとのあまのたくものけふりこころよわさは | 藤原實方 | 十二 | 恋二 |
| 707 | 忘れずよまた忘れずよかはらやの下焚くけぶり下むせびつつ わすれすよまたわすれすよかはらやのしたたくけふりしたむせひつつ | 藤原實方 | 十二 | 恋二 |
| 708 | 風の音の身にしむばかり聞ゆるは我が身に秋や近くなるらん かせのおとのみにしむはかりきこゆるはわかみにあきやちかくなるらむ | 読人知らず | 十二 | 恋二 |
| 709 | ありま山ゐなの篠原風ふけばいでそよ人を忘れやはする ありまやまゐなのささはらかせふけはいてそよひとをわすれやはする | 大貮三位 | 十二 | 恋二 |
| 710 | 恨むとも今はみえじと思ふこそせめてつらさのあまりなりけれ うらむともいまはみえしとおもふこそせめてつらさのあまりなりけれ | 赤染衛門 | 十二 | 恋二 |
| 711 | 今宵さへあらばかくこそ思ほえめ今日暮れぬまの命ともがな こよひさへあらはかくこそおもほえめけふくれぬまのいのちともかな | 和泉式部 | 十二 | 恋二 |
| 712 | あすならば忘らるる身になりぬべし今日をすぐさぬ命ともがな あすならはわすらるるみになりぬへしけふをすくさぬいのちともかな | 赤染衛門 | 十二 | 恋二 |
| 713 | いとふとは知らぬにあらず知りながら心にもあらぬ心なりけり いとふとはしらぬにあらすしりなからこころにもあらぬこころなりけり | 藤原長能 | 十二 | 恋二 |
| 714 | あふことは七夕つめにかしつれど渡らまほしきかささぎの橋 あふことはたなはたつめにかしつれとわたらまほしきかささきのはし | 後冷泉院 | 十二 | 恋二 |
| 715 | あやめ草かけしたもとのねを絶えて更に恋路にまよふころかな あやめくさかけしたもとのねをたえてさらにこひちにまとふころかな | 後朱雀院 | 十三 | 恋三 |
| 716 | 藤衣はつるる袖の絲よわみたえてあひみぬほどぞわりなき ふちころもはつるるそてのいとよわみたえてあひみぬほとそわりなき | 清原元輔 | 十三 | 恋三 |
| 717 | みるめこそ近江のうみにかたからめ吹きだに通へ志賀の浦風 みるめこそあふみのうみにかたからめふきたにかよへしかのうらかせ | 伊勢大輔 | 十三 | 恋三 |
| 718 | 秋風になびきながらも葛の葉のうらめしくのみなどかみゆらん あきかせになひきなからもくすのはのうらめしくのみなとかみゆらむ | 叡覺法師 | 十三 | 恋三 |
| 719 | こひしきになにはのこともおもほえずたれ住吉の松といひけん こひしきになにはのこともおもほえすたれすみよしのまつといひけむ | 大江匡衡 | 十三 | 恋三 |
| 720 | わが思ふ都の花の遠さゆゑ君もしづえのしづ心あらじ わかおもふみやこのはなのとふさゆゑきみもしつえのしつこころあらし | 祭主輔親 | 十三 | 恋三 |
| 721 | かたしきの衣のすそは氷りつついかですぐさむ解くる春まで かたしきのころものそてはこほりつついかてすくさむとくるはるまて | 光朝法師母 | 十三 | 恋三 |
| 722 | 恋しさは思ひやるだになぐさむを心におとる身こそつらけれ こひしさはおもひやるたになくさむをこころにおとるみこそつらけれ | 藤原國房 | 十三 | 恋三 |
| 723 | いづ方をわれながめましたまさかにゆき逢坂の関なかりせば いつかたをわれなかめましたまさかにゆきあふさかのせきなかりせは | 大中臣能宣 | 十三 | 恋三 |
| 724 | ゆきかへり後にあふともこの度はこれより越ゆる物思ひぞなき ゆきかへりのちにあふともこのたひはこれよりこゆるものおもひそなき | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
| 725 | 東路の旅の空をぞおもひやるそなたにいづる月をながめて あつまちのたひのそらをそおもひやるそなたにいつるつきをなかめて | 源経信 | 十三 | 恋三 |
| 726 | 思ひやれしらぬ雲路も入る方の月よりほかのながめやはある おもひやれしらぬくもちもいるかたのつきよりほかのなかめやはする | 康資王母 | 十三 | 恋三 |
| 727 | 帰るべき程をかぞへて待つ人は過ぐる月日ぞうれしかりける かへるへきほとをかそへてまつひとはすくるつきひそうれしかりける | 源隆綱 | 十三 | 恋三 |
| 728 | あづまやの茅が下にし乱るればいさや月日の行くもしられず あつまやのかやかしたにしみたるれはいさやつきひのゆくもしられす | 康資王母 | 十三 | 恋三 |
| 729 | 霜枯れの茅が下をれとにかくに思ひみだれて過ぐすころかな しもかれのかやかしたをれとにかくにおもひみたれてすくすころかな | 藤原惟規 | 十三 | 恋三 |
| 730 | かひなきは猶人知れず逢ふことの遙かなるみのうらみなりけり かひなきはなほひとしれすあふことのはるかなるみのうらみなりけり | 増基法師 | 十三 | 恋三 |
| 731 | 思ひやる心の空にゆきかへりおぼつかなさをかたらましかば おもひやるこころのそらにゆきかへりおほつかなさをかたらましかは | 右大辨通俊 | 十三 | 恋三 |
| 732 | 心をば生田のもりにかくれども恋しきにこそしぬべかりけれ こころをはいくたのもりにかくれともこひしきにこそしぬへかりけれ | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
| 733 | 頼めしを待つに日數の過ぎぬれば玉の緒よわみたえぬべきかな たのめしをまつにひころのすきぬれはたまのをよわみたえぬへきかな | 律師慶意 | 十三 | 恋三 |
| 734 | あさましや見しは夢かととふ程に驚かすにもなりぬべきかな あさましやみしはゆめかととふほとにおとろかすにもなりぬへきかな | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
| 735 | はるばると野中に見ゆる忘れ水絶えま絶えまを歎くころかな はるはるとのなかにみゆるわすれみつたえまたえまをなけくころかな | 大和宣旨 | 十三 | 恋三 |
| 736 | いかばかり嬉しからまし面影に見ゆるばかりの逢ふ夜なりせば いかはかりうれしからましおもかけにみゆるはかりのあふよなりせは | 藤原忠家 | 十三 | 恋三 |
| 737 | わがやどの軒のしのぶにことよせてやがてもしげる忘れ草かな わかやとののきのしのふにことよせてやかてもしけるわすれくさかな | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
| 738 | 逢ふことを今はかぎりと三輪の山杉の過ぎにし方ぞこひしき あふことをいまはかきりとみわのやますきのすきにしかたそこひしき | 皇太后宮陸奥 | 十三 | 恋三 |
| 739 | 杉村といひてしるしもなかりけり人のたづねぬ三輪の山もと すきむらといひてしるしもなかりけりひともたつねぬみわのやまもと | 読人知らず | 十三 | 恋三 |
| 740 | 住吉の岸ならねども人知れぬ心のうちの松ぞ侘しき すみよしのきしならねともひとしれぬこころのうちのまつそわひしき | 相模 | 十三 | 恋三 |
| 741 | 逢坂の関の清水や濁るらん入りにし人のかげもみえぬは あふさかのせきのしみつやにこるらむいりにしひとのかけのみえぬは | 僧都遍救 | 十三 | 恋三 |
| 742 | なみだやはまたもあふべきつまならん泣くよりほかの慰めぞなき なみたやはまたもあふへきつまならむなくよりほかのなくさめそなき | 藤原道雅 | 十三 | 恋三 |
| 743 | よそ人になりはてぬとや思ふらん恨むるからに忘れやはする よそひとになりはてぬとやおもふらむうらむるからにわすれやはする | 前律師慶暹 | 十三 | 恋三 |
| 744 | つらしとも思ひしらでぞやみなまし我もはてなき心なりせば つらしともおもひしらてそやみなましわれもはてなきこころなりせは | 大中臣輔弘 | 十三 | 恋三 |
| 745 | なかなかに憂かりしままにやみにせば忘るる程になりもしなまし なかなかにうかりしままにやみにせはわするるほとになりもしなまし | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
| 746 | 憂き世をもまたたれにかはなぐさめん思ひしらずもとはぬ君かな うきよをもまたたれにかはなくさめむおもひしらすもとはぬきみかな | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
| 747 | あふまでや限りなるらんと思ひしを恋はつきせぬものにぞありける あふまてやかきりなるらむとおもひしをこひはつきせぬものにそありける | 源政成 | 十三 | 恋三 |
| 748 | 逢坂は東路とこそききしかど心づくしのせきにぞありける あふさかはあつまちとこそききしかとこころつくしのせきにそありける | 藤原道雅 | 十三 | 恋三 |
| 749 | 榊葉やゆふしでかけしそのかみにおしかへしても渡るころかな さかきはのゆふしてかけしそのかみにおしかへしてもにたるころかな | 藤原道雅 | 十三 | 恋三 |
| 750 | 今はただ思ひたえなんとばかりを人づてならでいふ由もがな いまはたたおもひたえなむとはかりをひとつてならていふよしもかな | 藤原道雅 | 十三 | 恋三 |
| 751 | みちのくの緒絶の橋やこれならん踏みみ踏まずみ心まどはす みちのくのをたえのはしやこれならむふみみふますみこころまとはす | 藤原道雅 | 十三 | 恋三 |
| 752 | 恋ひしさも忘れやはするなかなかに心さわがす志賀の浦浪 こひしさもわすれやはするなかなかにこころさわかすしかのうらなみ | 藤原経輔 | 十三 | 恋三 |
| 753 | 来じとだにいはで絶えなば憂かりける人のまことをいかでしらまし こしとたにいはてたえなはうかりけるひとのまことをいかてしらまし | 相模 | 十三 | 恋三 |
| 754 | ただ袖に君かさぬらん唐衣夜な夜なわれにかたしかせつつ たかそてにきみかさぬらむからころもよなよなわれにかたしかせつつ | 相模 | 十三 | 恋三 |
| 755 | 黒髪の乱れてしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき くろかみのみたれもしらすうちふせはまつかきやりしひとそこひしき | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
| 756 | 移り香の薄くなりゆく薫物のくゆる思ひに消えぬべきかな うつりかのうすくなりゆくたきもののくゆるおもひにきえぬへきかな | 清原元輔 | 十三 | 恋三 |
| 757 | なきながす涙にたへでたえぬればはなだの帯の心地こそすれ なきなかすなみたにたへてたえぬれははなたのおひのここちこそすれ | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
| 758 | なかたゆるかづらき山の岩ばしはふみみることもかたくぞありける なかたゆるかつらきやまのいははしはふみみることもかたくそありける | 相模 | 十三 | 恋三 |
| 759 | 忘れなんと思ふさへこそ思ふこと叶はぬ身には叶はざりけれ わすれなむとおもふさへこそおもふことかなはぬみにはかなはさりけれ | 大貮良基 | 十三 | 恋三 |
| 760 | 忘れなんと思ふに濡るる袂かな心ながきは涙なりけり わすれなむとおもふにぬるるたもとかなこころなかきはなみたなりけり | 高橋良成 | 十三 | 恋三 |
| 761 | いかばかり覚束なさを歎かましこの世のつねと思ひなさずば いかはかりおほつかなさをなけかましこのよのつねとおもひなさすは | 藤原忠家母 | 十三 | 恋三 |
| 762 | あふことのただひたぶるの夢ならばおなじ枕にまたもねなまし あふことのたたひたふるのゆめならはおなしまくらにまたもねなまし | 權僧正静圓 | 十三 | 恋三 |
| 763 | あらざらむこの世のほかのおもひでに今ひとたびの逢ふこともがな あらさらむこのよのほかのおもひいてにいまひとたひのあふこともかな | 和泉式部 | 十三 | 恋三 |
| 764 | 都にも恋しきことのおほかれば猶このたびはいかんとぞ思ふ みやこにもこひしきひとのおほかれはなほこのたひはいかむとそおもふ | 藤原惟規 | 十三 | 恋三 |
| 765 | 契りしにあらぬつらさも逢ふことの無きにはえこそ恨みざりけれ ちきりしにあらぬつらさもあふことのなきにはえこそうらみさりけれ | 周防内侍 | 十三 | 恋三 |
| 766 | 忘れなんそれも恨みず思ふらん恋ふらんとだに思ひおこせよ わすれなむそれもうらみすおもふらむこふらむとたにおもひおこせは | 源高明 | 十三 | 恋三 |
| 767 | 年の内に逢はぬためしの名を立ててわれ七夕にいまるべきかな としのうちにあはぬためしのなをたててわれたなはたにいまるへきかな | 藤原道信 | 十三 | 恋三 |
| 768 | 七夕をもどかしとのみ我が見しも果ては逢ひ見ぬためしとぞなる たなはたをもとかしとみしわかみしもはてはあひみぬためしにそなる | 増基法師 | 十三 | 恋三 |
| 769 | 蜘蛛手さへかきたえにけるささがにの命を今は何にかけまし くもてさへかきたえにけるささかにのいのちをいまはなににかけまし | 馬内侍 | 十三 | 恋三 |
| 770 | 契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山浪こさじとは ちきりきなかたみにそてをしほりつつすゑのまつやまなみこさしとは | 清原元輔 | 十四 | 恋四 |
| 771 | 蘆のねのうき身の程と知りぬれば恨みぬ袖も波は立ちけり あしのねのうきみのほととしりぬれはうらみぬそてもなみはたちけり | 公圓法師母 | 十四 | 恋四 |
| 772 | 逢ひ見しを嬉しきことと思ひしは帰りて後の歎きなりけり あひみしをうれしきこととおもひしはかへりてのちのなけきなりけり | 道命法師 | 十四 | 恋四 |
| 773 | 深山木のこりやしぬらんと思ふ間にいとど思ひの燃えまさるかな みやまきのこりやしぬらむとおもふまにいととおもひのもえまさるかな | 藤原元眞 | 十四 | 恋四 |
| 774 | 岩代の杜のいはじと思へども雫に濡るる身をいかにせん いはしろのもりのいはしとおもへともしつくにぬるるみをいかにせむ | 惠慶法師 | 十四 | 恋四 |
| 775 | あぢきなし我が身にまさる物やあると恋せし人をもどきしものを あちきなしわかみにまさるものやあるとこひせしひとをもときしものを | 曾禰好忠 | 十四 | 恋四 |
| 776 | われといかにつれなくなりて試みんつらき人こそ忘れがたけれ われといかてつれなくなりてこころみむつらきひとこそわすれかたけれ | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 777 | 怪しくもあらはれぬべき袂かな忍びねにのみ濡らすと思へば あやしくもあらはれぬへきたもとかなしのひねにのみなくとおもふを | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 778 | うちしのびなくとせしかど君こふる涙はいろにいでにけるかな うちしのひなくとせしかときみこふるなみたはいろにいてにけるかな | 源高明 | 十四 | 恋四 |
| 779 | こひすとも涙の色のなかりせばしばしは人に知られざらまし こひすともなみたのいろのなかりせはしはしはひとにしられさらまし | 辨乳母 | 十四 | 恋四 |
| 780 | 人知れぬ恋にし死なばおほかたの世のはかなきと人や思はん ひとしれぬこひにししなはおほかたのよのはかなきとひとやおもはむ | 源道済 | 十四 | 恋四 |
| 781 | 人知れずかほには袖をおほいつつ泣くばかりをぞ慰めにする ひとしれすかほにはそてをおほひつつなくはかりをそなくさめにする | 藤原頼宗 | 十四 | 恋四 |
| 782 | 思ひ侘び返す衣の袂より散るや涙の氷なるらん おもひわひかへすころものたもとよりちるやなみたのこほりなるらむ | 藤原國房 | 十四 | 恋四 |
| 783 | なぐさむる心はなくて夜もすがら返す衣のうらぞぬれける なくさむるこころはなくてよもすからかへすころものうらそぬれつる | 清原元輔 | 十四 | 恋四 |
| 784 | 世の中にあらばぞ人のつらからんと思ふにしもぞものは悲しき よのなかにあらはそひとのつらからむとおもふにしもそものはかなしき | 読人知らず | 十四 | 恋四 |
| 785 | 夜な夜なは目のみ覚めつつ思ひやる心やゆきて驚かすらん よなよなはめのみさめつつおもひやるこころやゆきておとろかすらむ | 道命法師 | 十四 | 恋四 |
| 786 | 思ふてふことはいはでも思ひけり辛きも今は辛しと思はじ おもふてふことはいはてもおもひけりつらきもいまはつらしとおもはし | 平兼盛 | 十四 | 恋四 |
| 787 | おもひやる方なきままに忘れ行く人の心ぞうらやまれける おもひやるかたなきままにわすれゆくひとのこころそうらやまれける | 中原頼成妻 | 十四 | 恋四 |
| 788 | 閨ちかき梅の匂ひに朝な朝なあやしくこひのまさるころかな ねやちかきうめのにほひにあさなあさなあやしくこひのまさるころかな | 能因法師 | 十四 | 恋四 |
| 789 | あやうしと見ゆるとだえのまろ橋のまろなどかかる物おもふらん あやふしとみゆるとたえのまろはしのまろなとかかるものおもふらむ | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 790 | 世の中に恋てふ色はなけれども深く身にしむ物にぞありける よのなかにこひてふいろはなけれともふかくみにしむものにそありける | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 791 | ささがにのいづくに人はありとだに心細くも知らでふるかな ささかにのいつこにひとをありとたにこころほそくもしらてふるかな | 清原元輔 | 十四 | 恋四 |
| 792 | こひしさの憂きにまぎるる物ならば又ふたたびと君を見ましや こひしさのうきにまきるるものならはまたふたたひときみをみましや | 大貮三位 | 十四 | 恋四 |
| 793 | あればこそ人もつらけれあやしきは命もがなと頼むなりけり あれはこそひともつらけれあやしきはいのちもかなとたのむなりけり | 藤原有親 | 十四 | 恋四 |
| 794 | 庭のおもの萩のうへにて知りぬらん物思ふ人の夜半の袂は にはのおものはきのうへにてしりぬらむものおもふひとのよはのたもとは | 源道済 | 十四 | 恋四 |
| 795 | 我が袖を秋の草葉にくらべばやいづれか露のおきはまさると わかそてをあきのくさはにくらへはやいつれかつゆのおきはまさると | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 796 | ありそうみの濱の真砂をみなもがなひとりぬる夜の數にとるべく ありそうみのはまのまさこをみなもかなひとりぬるよのかすにとるへく | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 797 | かぞふれば空なる星もしるものを何をつらさの數にとらまし かそふれはそらなるほしもしるものをなにをつらさのかすにおかまし | 藤原長能 | 十四 | 恋四 |
| 798 | つれづれと思へば長き春の日に頼むこととはながめをぞする つれつれとおもへはなかきはるのひにたのむこととはなかめをそする | 藤原道信 | 十四 | 恋四 |
| 799 | ひたすらに軒のあやめのつくづくと思へばねのみかかる袖かな ひたすらにのきのあやめのつくつくとおもへはねのみかかるそてかな | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 800 | たぐひなき憂き身なりけり思ひしる人だにあらばとひこそはせめ たくひなくうきみなりけりおもひしるひとたにあらはとひこそはせめ | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 801 | 君こふる心はちぢに砕くれど一つもうせぬものにぞありける きみこふるこころはちちにくたくれとひとつもうせぬものにそありける | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 802 | なみだ川おなじ身よりは流るれど恋をば消たぬものにぞありける なみたかはおなしみよりはなかるれとこひをはけたぬものにそありける | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 803 | わが恋はます田の池のうきぬなは苦しくてのみ年をふるかな わかこひはますたのいけのうきぬなはくるしくてのみとしをふるかな | 小辨 | 十四 | 恋四 |
| 804 | おほかたにふるとぞみえし五月雨は物思ふ袖の名にこそありけれ おほかたにふるとそみえしさみたれはものおもふそてのなにこそありけれ | 源道済 | 十四 | 恋四 |
| 805 | よそにふる人は雨とや思ふらん我が目に近き袖のしづくを よそにふるひとはあめとやおもふらむわかめにちかきそてのしつくを | 源高明 | 十四 | 恋四 |
| 806 | 日にそへて憂きことのみも増るかな暮れてはやがて明けずもあらなん ひにそへてうきことのみもまさるかなくれてはやかてあけすもあらなむ | 源高明 | 十四 | 恋四 |
| 807 | 君こふと且は消えつつ程ふるをかくてもいける身とやみるらん きみこふとかつはきえつつふるほとをかくてもいけるみとやみるらむ | 藤原元眞 | 十四 | 恋四 |
| 808 | 恋しさの忘られぬべき物ならば何にかいける身をも恨みん こひしさのわすられぬへきものならはなににかいけるみをもうらみむ | 藤原元眞 | 十四 | 恋四 |
| 809 | 恋しさを忍びもあへずうつせみのうつし心も無くなりにけり こひしさをしのひもあへぬうつせみのうつしこころもなくなりにけり | 大和宣旨 | 十四 | 恋四 |
| 810 | 君がため落つる涙の玉ならば貫きかけてみせましものを きみかためおつるなみたのたまならはつらぬきかけてみせましものを | 源経信 | 十四 | 恋四 |
| 811 | 契りあらば思ふがごとぞ思はまし怪しや何のむくいなるらん ちきりあらはおもふかことそおもはましあやしやなにのむくひなるらむ | 源高明 | 十四 | 恋四 |
| 812 | けふしなばあすまで物は思はじと思ふにだにもかなはぬぞ憂き けふしなはあすまてものはおもはしとおもふにたにもかなはぬそうき | 源高明 | 十四 | 恋四 |
| 813 | 思ひには露の命ぞ消えぬべき言の葉にだにかけよかし君 おもひにはつゆのいのちそきえぬへきことのはにたにかけよかしきみ | 藤原兼家 | 十四 | 恋四 |
| 814 | やくとのみ枕の下にしほたれてけぶりたえせぬとこの浦かな やくとのみまくらのうへにしほたれてけふりたえせぬとこのうらかな | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 815 | 恨み侘び干さぬ袖だにあるものを恋に朽ちなん名こそ惜しけれ うらみわひほさぬそてたにあるものをこひにくちなむなこそをしけれ | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 816 | かみなづき夜半の時雨にことよせて片しく袖を干しぞわづらふ かみなつきよはのしくれにことよせてかたしくそてをほしそわつらふ | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 817 | さまざまに思ふ心はあるものをおしひたすらに濡るる袖かな さまさまにおもふこころはあるものをおしひたすらにぬるるそてかな | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 818 | わが心かはらんものかかはらやの下たくけぶりわきかへりつつ わかこころかはらむものかかはらやのしたたくけふりわきかへりつつ | 藤原長能 | 十四 | 恋四 |
| 819 | うちはへてくゆるも苦しいかでなほ世にすみがまの煙たゆらん うちはへてくゆるもくるしいかてなほよにすみかまのけふりたえなむ | 藤原範永女 | 十四 | 恋四 |
| 820 | 人の身も恋ひはかへつ夏蟲のあらはにもゆとみえぬばかりぞ ひとのみもこひにはかへつなつむしのあらはにもゆとみえぬはかりそ | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 821 | かるもかき臥す猪の床のいを安みさこそねざらめかからずもがな かるもかきふすゐのとこのいをやすみさこそねさらめかからすもかな | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 822 | わが恋は春の山邊につけてしをもえても君が目にもみえなん わかこひははるのやまへにつけてしをもえいててきみかめにもみえなむ | 藤原兼家 | 十四 | 恋四 |
| 823 | 春の野につくる思ひのあまたあればいづれを君がもゆるとかみん はるののにつくるおもひのあまたあれはいつれをきみかもゆとかはみむ | 藤原道綱母 | 十四 | 恋四 |
| 824 | 春日野は名のみなりけり我が身こそ飛火ならねどもえ渡りけれ かすかのはなのみなりけりわかみこそとふひならねともえわたりけれ | 藤原兼家 | 十四 | 恋四 |
| 825 | いつとなく心空なる我が恋や富士のたかねにかかる白雲 いつとなくこころそらなるわかこひやふしのたかねにかかるしらくも | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 826 | うしとても更に思ひぞかへされぬ恋はうらなきものにぞありける うしとてもさらにおもひそかへされぬこひはうらなきものにそありける | 藤原頼宗 | 十四 | 恋四 |
| 827 | 松嶋や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくは濡れしか まつしまやをしまのいそにあさりせしあまのそてこそかくはぬれしか | 源重之 | 十四 | 恋四 |
| 828 | かぎりぞと思ふにつきぬ涙かなおさふる袖も朽ちにばかりに かきりそとおもふにつきぬなみたかなおさふるそてもくちぬはかりに | 盛少将 | 十四 | 恋四 |
| 829 | かきくらし雲間もみえぬ五月雨はたえず物思ふ我が身なりけり かきくらしくもまもみえぬさみたれはたえすものおもふわかみなりけり | 藤原長能 | 十四 | 恋四 |
| 830 | 涙こそあふみの海となりにけれ見るめなしてふながめせしまに なみたこそあふみのうみとなりにけれみるめなしてふなかめせしまに | 相模 | 十四 | 恋四 |
| 831 | 白露も夢もこの世もまぼろしもたとへていはば久しかりけり しらつゆもゆめもこのよもまほろしもたとへていへはひさしかりけり | 和泉式部 | 十四 | 恋四 |
| 832 | 年ふればあれのみまさる宿のうちに心ながくもすめる月かな としふれはあれのみまさるやとのうちにこころなかくもすめるつきかな | 善滋為政 | 十五 | 雑一 |
| 833 | 月影のいるを惜しむもくるしきに西には山のなからましかば つきかけのいるををしむもくるしきににしにはやまのなからましかは | 宇治忠信女 | 十五 | 雑一 |
| 834 | われひとりながむとおもひし山里に思ふことなき月もすみけり われひとりなかむとおもひしやまさとにおもふことなきつきもすみけり | 藤原為時 | 十五 | 雑一 |
| 835 | みなれさをとらでぞくだす高瀬舟月の光のさすにまかせて みなれさをとらてそくたすたかせふねつきのひかりのさすにまかせて | 源師賢 | 十五 | 雑一 |
| 836 | 月影のかたぶくままに池水をにしへながると思ひけるかな つきかけのかたふくままにいけみつをにしへなかるとおもひけるかな | 良暹法師 | 十五 | 雑一 |
| 837 | 月影は山のはいづるよひよりも更け行く空ぞてりまさりける つきかけはやまのはいつるよひよりもふけゆくそらそてりまさりける | 藤原長房 | 十五 | 雑一 |
| 838 | しきたへのまくらの塵やつもるらむ月のさかりはいこそねられね しきたへのまくらのちりやつもるらむつきのさかりはいこそねられね | 源頼家 | 十五 | 雑一 |
| 839 | 池水はあまの川にやかよふらむ空なる月のそこにみゆるは いけみつはあまのかはにやかよふらむそらなるつきのそこにみゆるは | 懐圓法師 | 十五 | 雑一 |
| 840 | いづかたへ行くとも月のみえぬかなたなびく雲の空になければ いつかたへゆくともつきのみえぬかなたなひくくものそらになけれは | 永胤法師 | 十五 | 雑一 |
| 841 | いつよりも曇りなきよの月なればみる人さへに入りがたきかな いつよりもくもりなきよのつきなれはみるひとさへにいりかたきかな | 江侍従 | 十五 | 雑一 |
| 842 | 山のはのかからましかば池水に入れども月はかくれざりけり やまのはのかからましかはいけみつにいれともつきはかくれさりけり | 藤原頼宗 | 十五 | 雑一 |
| 843 | やどごとにかはらぬものは山のはの月まつほどのこころなりけり やとことにかはらぬものはやまのはのつきまつほとのこころなりけり | 加賀左衛門 | 十五 | 雑一 |
| 844 | 我ひとり眺めてのみやあかさまし今宵の月のおぼろなりせば われひとりなかめてのみやあかさましこよひのつきのおほろなりせは | 永源法師 | 十五 | 雑一 |
| 845 | 岩間よりながるる水ははやけれどうつれる月の影ぞのどけき いはまよりなかるるみつははやけれとうつれるつきのかけそのとけき | 後冷泉院 | 十五 | 雑一 |
| 846 | 板間あらみあれたる宿の寂しきは心にもあらぬ月をみるかな いたまあらみあれたるやとのさひしきはこころにもあらぬつきをみるかな | 弾正尹清仁親王 | 十五 | 雑一 |
| 847 | 雨ふれば閨の板間もふきつらむもりくる月はうれしかりしを あめふれはねやのいたまもふきつらむもりくるつきはうれしかりしを | 藤原定頼 | 十五 | 雑一 |
| 848 | 月みてはたれもこころぞなぐさまぬ姨捨山のふもとならねど つきみてはたれもこころそなくさまぬをはすてやまのふもとならねと | 藤原範永 | 十五 | 雑一 |
| 849 | かくばかり隈なき月をおなじくは心のはれて見るよしもがな かくはかりくまなきつきをおなしくはこころもはれてみるよしもかな | 賀茂成助 | 十五 | 雑一 |
| 850 | すみなるる都の月のさやけきになにか鞍馬の山は恋しき すみなるるみやこのつきのさやけきになにかくらまのやまはこひしき | 齋院中務 | 十五 | 雑一 |
| 851 | もろともに山のは出でし月なれば都ながらも忘れやはする もろともにやまのはいてしつきなれはみやこなからもわすれやはする | 齋院中将 | 十五 | 雑一 |
| 852 | 天の原月はかはらぬ空ながらありしむかしの世をやこふらむ あまのはらつきはかはらぬそらなからありしむかしのよをやこふらむ | 清原元輔 | 十五 | 雑一 |
| 853 | いつとても変らぬ秋の月みればただいにしへの空ぞ恋しき いつとてもかはらぬあきのつきみれはたたいにしへのそらそこひしき | 藤原實綱 | 十五 | 雑一 |
| 854 | つねよりもさやけき秋の月をみてあはれ恋しき雲のうへかな つねよりもさやけきあきのつきをみてあはれこひしきくものうへかな | 源師光 | 十五 | 雑一 |
| 855 | もろともに眺めし人も我もなき宿にはひとり月やすむらむ もろともになかめしひともわれもなきやとにはつきやひとりすむらむ | 藤原長家 | 十五 | 雑一 |
| 856 | 月みれば山のはたかくなりにけりいでばといひし人にみせばや つきみれはやまのはたかくなりにけりいてはといひしひとにみせはや | 江侍従 | 十五 | 雑一 |
| 857 | 山のはに入りぬる月のわれならば憂き世の中にまたはいでじを やまのはにいりぬるつきのわれならはうきよのなかにまたはいてしを | 源為善 | 十五 | 雑一 |
| 858 | むかし見し月の影にもにたるかな我とともにや山をいでけむ むかしみしつきのかけにもにたるかなわれとともにややまをいてけむ | 聖梵法師 | 十五 | 雑一 |
| 859 | いりぬとて人のいそぎし月影は出でての後も久しくぞみし いりぬとてひとのいそきしつきかけはいててののちもひさしくそみし | 赤染衛門 | 十五 | 雑一 |
| 860 | 心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな こころにもあらてうきよになからへはこひしかるへきよはのつきかな | 三條院 | 十五 | 雑一 |
| 861 | いまはただ雲ゐの月をながめつつめぐりあふべき程もしられず いまはたたくもゐのつきをなかめつつめくりあふへきほともしられす | 陽明門院 | 十五 | 雑一 |
| 862 | なほざりの空だのめせで哀れにもまつにかならずいづる月かな なほさりのそらたのめせてあはれにもまつにかならすいつるつきかな | 小弁 | 十五 | 雑一 |
| 863 | 頼めずば待たでぬる夜ぞかさねましたれゆゑか見る有明の月 たのめすはまたてぬるよそかさねましたれゆゑかみるありあけのつき | 小式部内侍 | 十五 | 雑一 |
| 864 | たれとてかあれたる宿といひながら月よりほかの人をいるべき たれとてかあれたるやとといひなからつきよりほかのひとをいるへき | 読人知らず | 十五 | 雑一 |
| 865 | よしさらばまたれぬ身をばおきながら月みぬ君は名こそをしけれ よしさらはまたれぬみをはおきなからつきみぬきみかなこそをしけれ | 藤原隆方 | 十五 | 雑一 |
| 866 | ながむれば月かたぶきぬ哀れわがこの世のほどもかばかりぞかし なかむれはつきかたふきぬあはれわかこのよのほともかはかりそかし | 僧正深覚 | 十五 | 雑一 |
| 867 | 山のはに隠れな果てそ秋の月このよをだにも闇にまどはじ やまのはにかくれなはてそあきのつきこのよをたにもやみにまとはし | 藤原範永 | 十五 | 雑一 |
| 868 | もろともにおなじうき世にすむ月のうらやましくも西へ行くかな もろともにおなしうきよにすむつきのうらやましくもにしへゆくかな | 中原長國妻 | 十五 | 雑一 |
| 869 | いかがせむ山のはにだにとどまらで心の空にいづる月をば いかかせむやまのはにたにととまらてこころのそらにいつるつきをは | 藤原道綱母 | 十五 | 雑一 |
| 870 | 曇る夜の月とわが身の行く末とおばつかなさはいづれまされり くもるよのつきとわかみのゆくすゑとおほつかなさはいつれまされり | 藤原道綱母 | 十五 | 雑一 |
| 871 | 隠れ沼に生ふる菖蒲のうきねして果はつれなくなる心かな かくれぬにおふるあやめのうきねしてはてはつれなくなるこころかな | 斎宮女御 | 十五 | 雑一 |
| 872 | 川かみやあらふの池のうきぬなはうきことあれやくる人もなし かはかみやあちふのいけのうきぬなはうきことあれやくるひともなし | 曾禰好忠 | 十五 | 雑一 |
| 873 | あらはれて恨みやせまし隠れ沼の汀によせし浪のこころを あらはれてうらみやせましかくれぬのみきはによせしなみのこころを | 小式部内侍 | 十五 | 雑一 |
| 874 | 岸とほみただよふ浪はなかぞらによる方もなきなげきをぞせし きしとほみたたよふなみはなかそらによるかたもなきなけきをそせし | 小弁 | 十五 | 雑一 |
| 875 | ひきすつる岩かきぬまのあやめ草思ひしらずもけふにあふかな ひきすつるいはかきぬまのあやめくさおもひしらすもけふにあふかな | 小弁 | 十五 | 雑一 |
| 876 | ゆかばこそあはずもあらめ帚木のありとばかりはおとづれよかし ゆかはこそあはてもあらめははききのありとはかりはおとつれよかし | 馬内侍 | 十五 | 雑一 |
| 877 | おもひいでてとふ言の葉をたれみましつらきに堪へぬ命なりせば おもひいててとふことのはをたれみましつらきにたへぬいのちなりせは | 読人知らず | 十五 | 雑一 |
| 878 | 山里をたづねてとふと思ひしはつらき心をみするなりけり やまさとをたつねてとふとおもひしはつらきこころをみするなりけり | 中務典侍 | 十五 | 雑一 |
| 879 | 夢のごとおぼめかれゆく世の中にいつとはむとかおとづれもせぬ ゆめのことおほめかれゆくよのなかにいつとはむとかおとつれもせぬ | 斎宮女御 | 十五 | 雑一 |
| 880 | ふみみてもものおもふ身とぞなりにける眞野の継橋とだえのみして ふみみてもものおもふみとそなりにけるまののつきはしとたえのみして | 相模 | 十五 | 雑一 |
| 881 | 野飼はねどあれゆく駒をいかがせむ森の下草さかりならねば のかはねとあれゆくこまをいかかせむもりのしたくささかりならねは | 相模 | 十五 | 雑一 |
| 882 | いたづらに身はなりぬともつらからぬ人ゆゑとだに思はましかば いたつらにみはなりぬともつらからぬひとゆゑとたにおもはましかは | 読人知らず | 十五 | 雑一 |
| 883 | あるが上に又ぬぎかくる唐衣いかがみさをもつくりあふべき あるかうへにまたぬきかくるからころもいかかみさをもつくりあふへき | 大江匡衡 | 十五 | 雑一 |
| 884 | わりなしや心にかなふ涙だに身のうき時はとまりやはする わりなしやこころにかなふなみたたにみのうきときはとまりやはする | 源雅通女 | 十五 | 雑一 |
| 885 | わするなよわするときかばみ熊野の浦の浜木綿恨みかさねむ わするなよわするときかはみくまののうらのはまゆふうらみかさねむ | 道命法師 | 十五 | 雑一 |
| 886 | 忘れじといひつる中は忘れけり忘れむとこそいふべかりけれ わすれしといひつるなかはわすれけりわすれむとこそいふへかりけれ | 道命法師 | 十五 | 雑一 |
| 887 | ものいはで人の心をみるほどにやがてとはれでやみぬべきかな ものいはてひとのこころをみるからにやかてとはれてやみぬへきかな | 道命法師 | 十五 | 雑一 |
| 888 | 天の河おなじながれとききながらわたらむことのなほぞ悲しき あまのかはおなしなかれとききなからわたらむことのなほそかなしき | 周防内侍 | 十五 | 雑一 |
| 889 | この頃の夜半のねざめは思ひやるいかなる鴛鴦か霜はらふらむ このころのよはのねさめはおもひやるいかなるをしかしもははらはむ | 小大君 | 十五 | 雑一 |
| 890 | おもひきや秋の夜風の寒けきにいもなき床にひとりねむとは おもひきやあきのよかせのさむけきにいもなきとこにひとりねむとは | 清原元輔 | 十五 | 雑一 |
| 891 | いかなれば花のにほひもかはらぬを過ぎにし春の恋しかるらむ いかなれやはなのにほひもかはらぬをすきにしはるのこひしかるらむ | 具平親王 | 十五 | 雑一 |
| 892 | すみぞめにあけの衣をかさねきて涙のいろのふたへなるかな すみそめにあけのころもをかさねきてなみたのいろのふたへなるかな | 祭主輔親 | 十五 | 雑一 |
| 893 | 浅茅原あれたるやどはむかし見し人をしのぶのわたりなりけり あさちはらあれたるやとはむかしみしひとをしのふのわたりなりけり | 能因法師 | 十五 | 雑一 |
| 894 | なき人はおとづれもせで琴の緒をたちし月日ぞかへり来にける なきひとはおとつれもせてことのををたちしつきひそかへりきにける | 藤原道綱母 | 十五 | 雑一 |
| 895 | しぐるれどかひなかりけり埋もれ木は色づく方ぞ人もとひける しくるれとかひなかりけりうもれきはいろつくかたそひともとひける | 源経隆 | 十五 | 雑一 |
| 896 | 人しれずおつる涙の音をせば夜半の時雨におとらざらまし ひとしれすおつるなみたのおとをせはよはのしくれにおとらさらまし | 少将井尼 | 十五 | 雑一 |
| 897 | こぞのけふ別れし星も逢ひぬめりなどたぐひなきわが身なるらむ こそのけふわかれしほしもあひぬめりなとたくひなきわかみなるらむ | 後朱雀院 | 十五 | 雑一 |
| 898 | はかなさによそへてみれば桜花をりしらぬにやならむとすらむ はかなさによそへてみれとさくらはなをりしらぬにやならむとすらむ | 小左近 | 十五 | 雑一 |
| 899 | 形見ぞと思はで花を見しだにも風をいとはぬ春はなかりき かたみそとおもはてはなをみしにたにかせをいとはぬはるはなかりき | 辨乳母 | 十五 | 雑一 |
| 900 | かずならぬ身のうきことは世の中になきうちにだにいらぬなりけり かすならぬみのうきことはよのなかになきうちにたにいらぬなりけり | 小辨 | 十五 | 雑一 |
| 901 | かれはつる浅茅がうへの霜よりもけぬべき程を今かとぞ待つ かれはつるあさちかうへのしもよりもけぬへきほとをいまかとそまつ | 斎宮女御 | 十五 | 雑一 |
| 902 | いにしへをこふる寝覚めやまさるらむききもならはぬ峰の嵐に いにしへをこふるねさめやまさるらむききもならはぬみねのあらしに | 藤原範永 | 十五 | 雑一 |
| 903 | かしは木の杜の下草くれごとに猶たのめとやもるをみるみる かしはきのもりのしたくさくれことになほたのめとやもるをみるみる | 藤原道綱母 | 十六 | 雑二 |
| 904 | まつ程のすぎのみゆけば大井川たのむる暮もいかがとぞ思ふ まつほとのすきのみゆけはおほゐかはたのむるくれをいかかとそおもふ | 馬内侍 | 十六 | 雑二 |
| 905 | 浅き瀬をこす筏士の綱よわみ猶この暮もあやうかりけり あさきせをこすいかたしのつなよわみなほこのくれもあやふかりけり | 読人知らず | 十六 | 雑二 |
| 906 | ひとりぬる人やしるらむ秋の夜を長しとたれか君に告げつる ひとりぬるひとやしるらむあきのよをなかしとたれかきみにつけつる | 高内侍 | 十六 | 雑二 |
| 907 | 春霞たちいでむこともおもほえず浅みどりなる空のけしきに はるかすみたちいてむこともおもほえすあさみとりなるそらのけしきに | 新左衛門 | 十六 | 雑二 |
| 908 | その色の草ともみえずかれにしをいかにいひてかけふはかくべき そのいろのくさともみえすかれにしをいかにいひてかけふはかくへき | 小馬命婦 | 十六 | 雑二 |
| 909 | ふしにけりさしも思はば笛竹のおとをぞせまし夜更けたりとも ふしにけりさしもおもはてふえたけのおとをそせましよふけたりとも | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 910 | やすらはでたつにたてうき真木の戸をさしも思はぬ人もありけり やすらはてたつにたてうきまきのとをさしもおもはぬひともありけり | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 911 | 人しらでねたさもねたしむらさきのねずりの衣うはぎにもせむ ひとしらてねたさもねたしむらさきのねすりのころもうはきにをきむ | 藤原頼宗 | 十六 | 雑二 |
| 912 | ぬれぎぬと人にはいはむ紫のねずりの衣うはぎなりとも ぬれきぬとひとにはいはむむらさきのねすりのころもうはきなりとも | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 913 | 秋霧はたち隠せども萩原に鹿ふしけりと今朝みつるかな あききりはたちかくせともはきはらにしかふしけりとけさみつるかな | 兵衛内侍 | 十六 | 雑二 |
| 914 | 朝な朝なおきつつみれば白菊の霜にぞいたくうつろひにける あさなあさなおきつつみれはしらきくのしもにそいたくうつろひにける | 左兵衛督公信 | 十六 | 雑二 |
| 915 | 逢坂の関に心はかよはねど見し東路は猶ぞこひしき あふさかのせきにこころはかよはねとみしあつまちはなほそこひしき | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 916 | ねぬ縄のねぬ名のいたく立ちぬればなほ大澤のいけらしやよに ねぬなはのねぬなのおほくたちぬれはなほおほさはのいけらしやよに | 読人知らず | 十六 | 雑二 |
| 917 | すむ人のかれ行くやどは時わかず草木も秋の色にぞありける すむひとのかれゆくやとはときわかすくさきもあきのいろにそありける | 藤原兼平母 | 十六 | 雑二 |
| 918 | あかつきの鐘のこゑこそきこゆなれこれを入あひと思はましかば あかつきのかねのこゑこそきこゆなれこれをいりあひとおもはましかは | 小一條院 | 十六 | 雑二 |
| 919 | いづくにかきても隠れむ隔てつる心の隈のあらばこそあらめ いつくにかきてもかくれむへたてたるこころのくまのあらはこそあらめ | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 920 | やすらひにまきの戸こそはささざらめいかに明けぬる冬の夜ならむ やすらひにまきのとこそはさささらめいかにあけつるふゆのよならむ | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 921 | 青柳のいとになき名ぞたちにけるよるくる人は我ならねども あをやきのいとになきなそたちにけるよるくるひとはわれならねとも | 藤原顕綱 | 十六 | 雑二 |
| 922 | まだ咲かぬまがきの菊もあるものをいかなる宿にうつろひぬらむ またさかぬまかきのきくもあるものをいかなるやとにうつろひにけむ | 後三條院 | 十六 | 雑二 |
| 923 | たまくしげ身はよそよそになりぬともふたり契りしことな忘れそ たまくしけみはよそよそになりぬともふたりちきりしことなわすれそ | 馬内侍 | 十六 | 雑二 |
| 924 | いづかたに行くとばかりはつげてましとふべき人のある身と思はば いつかたへゆくとはかりはつけてましとふへきひとのあるみとおもはは | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 925 | かくばかり忍ぶる雨を人とはばなににぬれたる袖といふらむ かはかりにしのふるあめをひととははなににぬれたるそてといふらむ | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 926 | 空になる人の心はささがにのいかにけふ又かくてくらさむ そらになるひとのこころにささかにのいかにけふまたかくてくらさむ | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 927 | 三笠山さしはなれぬとききしかど雨もよにとは思ひしものを みかさやまさしはなれぬといひしかとあめもよにとはおもひしものを | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 928 | 歎かじなつひにすまじき別れかはこはある世にと思ふばかりを なけかしなつひにすましきわかれかはこれはあるよにとおもふはかりそ | 読人知らず | 十六 | 雑二 |
| 929 | いにしへのきならし衣いまさらにそのものごしのとけずしもあらじ いにしへのきならしころもいまさらにそのものこしのとけすしもあらし | 藤原定頼 | 十六 | 雑二 |
| 930 | まことにや空になき名のふりぬらむあまてる神のくもりなきよに まことにやそらになきなのふりぬらむあまてるかみのくもりなきよに | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 931 | こりぬらむ仇なる人に忘られてわれならはさむ思ふためしは こりぬらむあたなるひとにわすられてわれならはさむおもふためしは | 藤原長能 | 十六 | 雑二 |
| 932 | 春雨のふるめかしくもつぐるかなはや柏木のもりにしものを はるさめのふるめかしくもつくるかなはやかしはきのもりにしものを | 馬内侍 | 十六 | 雑二 |
| 933 | いにしへの常世の國やかはりにしもろこしばかり遠くみゆるは いにしへのとこよのくにやかはりにしもろこしはかりとほくみゆるは | 清原元輔 | 十六 | 雑二 |
| 934 | わたの原たつ白浪のいかなれば名残ひさしく見ゆるなるらむ わたのはらたつしらなみのいかなれはなこりひさしくみゆるなるらむ | 右兵衛督朝任 | 十六 | 雑二 |
| 935 | 風はただ思はぬかたに吹きしかどわたの原たつ浪はなかりき かせはたたおもはぬかたにふきしかとわたのはらたつなみもなかりき | 赤染衛門 | 十六 | 雑二 |
| 936 | 人しれず心ながくや時雨るらむ更けゆく秋の夜半の寝覚めに ひとしれすこころなからやしくるらむふけゆくあきのよはのねさめに | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 937 | 逢坂の関のあなたもまだみねば東のこともしられざりけり あふさかのせきのあなたもまたみねはあつまのこともしられさりけり | 大江匡衡 | 十六 | 雑二 |
| 938 | かきくもれ時雨るとならば神無月こころそらなる人やとまると かきくもれしくるとならはかみなつきけしきそらなるひとやとまると | 馬内侍 | 十六 | 雑二 |
| 939 | 夜をこめて鳥の空音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ よをこめてとりのそらねにはかるともよにあふさかのせきはゆるさし | 清少納言 | 十六 | 雑二 |
| 940 | ふるさとの三輪の山辺を尋ぬれど杉まの月の影だにもなし ふるさとのみわのやまへをたつぬれとすきまのつきのかけたにもなし | 素意法師 | 十六 | 雑二 |
| 941 | 東路のそのはらからはきたりとも逢坂まではこさじとぞおもふ あつまちのそのはらからはきたりともあふさかまてはこさしとそおもふ | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 942 | ちらさじと思ふあまりに桜花ことのはをさへ惜しみつるかな ちらさしとおもふあまりにさくらはなことのはをさへをしみつるかな | 兵衛姫君 | 十六 | 雑二 |
| 943 | さらでだに岩間の水はもるものを氷とけなば名こそながれめ さらてたにいはまのみつはもるものをこほりとけなはなこそなかれめ | 下野 | 十六 | 雑二 |
| 944 | 祈りけむ事は夢にて限りてよさても逢ふてふ名こそ惜しけれ いのりけむことはゆめにてかきりてよさてもあふてふなこそをしけれ | 四條宰相 | 十六 | 雑二 |
| 945 | 近きだにきかぬ禊をなにかそのから神まではとほくいのらむ ちかきたにきかぬみそきをなにかそのからかみまてはとほくいのらむ | 少将内侍 | 十六 | 雑二 |
| 946 | 忘るるも苦しくもあらずねぬなはのねたくと思ふ事しなければ わするるもくるしくもあらすねぬなはのねたくもとおもふことしなけれは | 伊賀少将 | 十六 | 雑二 |
| 947 | ならされぬみそののうりとしりながらよひあかつきとたつぞ露けき ならされぬみそののうりとしりなからよひあかつきとたつそつゆけき | 藤原義孝 | 十六 | 雑二 |
| 948 | おひたつをまつと頼めしかひもなく浪こすべしときくはまことか おひたつをまつとたのめしかひもなくなみこすへしときくはまことか | 藤原朝光 | 十六 | 雑二 |
| 949 | いつしかとまちしかひなく秋風にそよとばかりもをぎの音せぬ いつしかとまちしかひなくあきかせにそよとはかりもをきのおとせぬ | 源道済 | 十六 | 雑二 |
| 950 | 君はまだしらざりけりな秋の夜のこのまの月ははつかにぞみる きみはまたしらさりけりなあきのよのこのまのつきははつかにそみる | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 951 | さもこそは心くらべにまけざらめ早くもみえし駒のあしかな さもこそはこころくらへにまけさらめはやくもみえしこまのあしかな | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 952 | おのづからわが忘るるになりにけり人の心をこころ見しまに おのつからわかわするるになりにけりひとのこころをこころみしまに | 中原長國 | 十六 | 雑二 |
| 953 | 恨みずばいかでか人にとはれましうきもうれしきものにぞありける うらみすはいかてかひとにとはれましうきもうれしきものにそありける | 律師朝範 | 十六 | 雑二 |
| 954 | 綱たえてはなれはてにしみちのくのをぶちの駒をきのふみしかな つなたえてはなれはてにしみちのくのをふちのこまをきのふみしかな | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 955 | 言の葉につけてもなどかとはざらむ蓬の宿もわかぬあらしを ことのはにつけてもなとかとはさらむよもきのやともわかぬあらしを | 相模 | 十六 | 雑二 |
| 956 | 八重ぶきのひまだにあらば蘆のやにおとせぬ風はあらじとをしれ やへふきのひまたにあらはあしのやにおとせぬかせはあらしとをしれ | 藤原定頼 | 十六 | 雑二 |
| 957 | わりなしや身はここのへのうちながらとへとは人の恨むべしやは わりなしやみはここのへのうちなからとへとはひとのうらむへしやは | 藤原実方 | 十六 | 雑二 |
| 958 | しばしこそ思ひもいでめ津の國のながらへゆかば今わすれなむ しはしこそおもひもいてめつのくにのなからへゆかはいまわすれなむ | 中宮内侍 | 十六 | 雑二 |
| 959 | これもさはあしかりけりな津の國のこやことづくるはじめなるらむ これもさはあしかりけりやつのくにのこやことつくるはしめなるらむ | 上總大輔 | 十六 | 雑二 |
| 960 | 心えつあまのたくなはうちはへてくるをくるしと思ふなるべし こころえつあまのたくなはうちはへてくるをくるしとおもふなるへし | 土御門御くしげどの | 十六 | 雑二 |
| 961 | かずならぬ人をのがひの心にはうしともものをおもはざらなむ かすならぬひとをのかひのこころにはうしともものをおもはさらなむ | 祭主輔親 | 十六 | 雑二 |
| 962 | 磯なるる人はあまたに聞こゆるを誰がなのりそをかりて答へむ いそなるるひとはあまたにきこゆるをたかなのりそをかりてこたへむ | 大貮成章 | 十六 | 雑二 |
| 963 | とへとしも思はぬ八重の山吹をゆるすといはばをりにこむとや とへとしもおもはぬやへのやまふきをゆるすといははをりにこむとや | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 964 | あぢきなく思ひこそやれつれづれとひとりやゐでの山吹の花 あちきなくおもひこそやれつれつれとひとりやゐてのやまふきのはな | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 965 | ねぬ縄の苦しきほどのたえまかとたゆるをしらで思ひけるかな ねぬなはのくるしきほとのたえまかとたゆるをしらておもひけるかな | 少将内侍 | 十六 | 雑二 |
| 966 | 行く末を流れてなににたのみけむ絶えけるものを中河の水 ゆくすゑをなかれてなににたのみけむたえけるものをなかかはのみつ | 式部命婦 | 十六 | 雑二 |
| 967 | 長しとて明けずやはあらむ秋の夜はまてかし真木のとばかりをだに なかしとてあけすやはあらむあきのよはまてかしまきのとはかりをたに | 和泉式部 | 十六 | 雑二 |
| 968 | 天の原はるかに渡る月だにもいづるは人にしらせこそすれ あまのはらはるかにわたるつきたにもいつるはひとにしらせこそすれ | 藤原道信 | 十六 | 雑二 |
| 969 | うきこともまだ白雲の山のはにかかるやつらきこころなるらむ うきこともまたしらくものやまのはにかかるやつらきこころなるらむ | 藤原元真 | 十六 | 雑二 |
| 970 | ふく風になびく浅茅は我なれや人のこころのあきをしらする かせふくになひくあさちはわれなれやひとのこころのあきをしらする | 斎宮女御 | 十六 | 雑二 |
| 971 | たれかまた年へぬる身をふりすてて吉備の中山こえむとすらむ たれかまたとしへぬるみをふりすててきひのなかやまこえむとすらむ | 清原元輔 | 十七 | 雑三 |
| 972 | 春ごとにわすられにける埋もれ木は花の都をおもひこそやれ はることにわすられにけるうもれきははなのみやこをおもひこそやれ | 源重之 | 十七 | 雑三 |
| 973 | 河舟にのりて心の行くときはしづめる身ともおもほえぬかな かはふねにのりてこころのゆくときはしつめるみともおもほえぬかな | 大江匡衡 | 十七 | 雑三 |
| 974 | よのなかをきくにたもとのぬるるかな涙はよそのものにぞありける よのなかをきくにたもとのぬるるかななみたはよそのものにそありける | 大江為基 | 十七 | 雑三 |
| 975 | いたづらになりぬる人のまたもあらばいひあはせてぞねをばなかまし いたつらになりぬるひとのまたもあらはいひあはせてそねをはなかまし | 藤原國行 | 十七 | 雑三 |
| 976 | みちのくのあだちのま弓ひくやとて君にわが身をまかせつるかな みちのくのあたちのまゆみひくやとてきみにわかみをまかせつるかな | 源重之 | 十七 | 雑三 |
| 977 | 雲の上にひかりかくれしゆふべより幾夜といふに月を見つらむ くものうへにひかりかくれしゆふへよりいくよといふにつきをみるらむ | 天台座主明快 | 十七 | 雑三 |
| 978 | かぎりあればあまの羽衣ぬぎかへておりぞわづらふ雲のかけはし かきりあれはあまのはころもぬきかへておりそわつらふくものかけはし | 源経任 | 十七 | 雑三 |
| 979 | うれしといふことはなべてになりぬればいはで思ふに程ぞへにける うれしといふことはなへてになりぬれはいはておもふにほとそへにける | 周防内侍 | 十七 | 雑三 |
| 980 | 澤水におりゐるたづはとしふともなれし雲井ぞこひしかるべき さはみつにおりゐるたつはとしふともなれしくもゐそこひしかるへき | 橘為伸 | 十七 | 雑三 |
| 981 | 思ひきや衣の色はみどりにてみよまで竹をかざすべしとは おもひきやころものいろをみとりにてみよまてたけをかさすへしとは | 橘俊宗 | 十七 | 雑三 |
| 982 | おしなべてさく白菊はやへやへの花の霜とぞみえわたりける おしなへてさくしらきくはやへやへのはなのしもとそみえわたりける | 藤原公任 | 十七 | 雑三 |
| 983 | まつことのあるとや人の思ふらむ心にもあらでながらふる身を まつことのあるとやひとのおもふらむこころにもあらてなからふるみを | 藤原兼綱 | 十七 | 雑三 |
| 984 | 君をだにうかべてしがな涙川しづむなかにもふちせありやと きみをたにうかへてしかななみたかはしつむなかにもふちせありやと | 藤原元真 | 十七 | 雑三 |
| 985 | 我のみと思ひしかども高砂のをのへの松もまだたてりけり われのみとおもひこしかとたかさこのをのへのまつもまたたてりけり | 藤原義定 | 十七 | 雑三 |
| 986 | 世の中を今はかぎりと思ふには君こひしくやならむとすらむ よのなかをいまはかきりとおもふにはきみこひしくやならむとすらむ | 平兼盛 | 十七 | 雑三 |
| 987 | もみぢするかつらの中に住吉の松のみひとりみどりなるかな もみちするかつらのなかにすみよしのまつのみひとりみとりなるかな | 津守國基 | 十七 | 雑三 |
| 988 | われ舟のしづみぬる身の悲しきは渚によする浪さへぞなき われふねのしつみぬるみのかなしきはなきさによするなみさへそなき | 藤原基長 | 十七 | 雑三 |
| 989 | たづねつる雪のあしたのはなれ駒きみばかりこそ跡をしるらめ たつねつるゆきのあしたのはなれこまきみはかりこそあとをしるらめ | 源兼俊母 | 十七 | 雑三 |
| 990 | 雲居までたちのぼるべき煙かと見えし思ひのほかにもあるかな くもゐまてたちのほるへきけふりかとみしはおもひのほかにもあるかな | 堀河女御 | 十七 | 雑三 |
| 991 | 松風は色やみどりにふきつらむもの思ふ人の身にぞしみぬる まつかせはいろやみとりにふきつらむものおもふひとのみにそしみける | 堀河女御 | 十七 | 雑三 |
| 992 | 世の中を思ひ乱れてつくづくと眺むる宿に松風ぞ吹く よのなかをおもひみたれてつくつくとなかむるやとにまつかせそふく | 源道済 | 十七 | 雑三 |
| 993 | 心には月見むとしも思はねどうきには空ぞながめられける こころにはつきみむとしもおもはねとうきにはそらそなかめられける | 藤原為任 | 十七 | 雑三 |
| 994 | 世の中のうきにおひたるあやめ草けふは袂にねぞかかりける よのなかのうきにおひたるあやめくさけふはたもとにねそかかりける | 藤原隆家 | 十七 | 雑三 |
| 995 | けふとてもあやめしられぬ袂にはひきたがへたるねをやかくらむ けふまてもあやめしられぬたもとにはひきたかへたるねをやかくらむ | 小弁 | 十七 | 雑三 |
| 996 | 五月闇ここひのもりのほととぎす人しれずのみなきゐたるかな さつきやみここひのもりのほとときすひとしれすのみなきわたるかな | 藤原兼房 | 十七 | 雑三 |
| 997 | ほととぎすここひの森に啼く聲はきくよぞ人の袖もぬれけり ほとときすここひのもりになくこゑはきくよそひとのそてもぬれけり | 大弐三位 | 十七 | 雑三 |
| 998 | すめらぎもあらひとかみもなごむまでなきけるもりのほととぎすかな すめらきもあらひとかみもなこむまてなきけるもりのほとときすかな | 素意法師 | 十七 | 雑三 |
| 999 | ことわりやいかでか鹿のなかざらむこよひばかりの命とおもへば ことわりやいかてかしかのなかさらむこよひはかりのいのちとおもへは | 和泉式部 | 十七 | 雑三 |
| 1000 | 松風も岸うつ浪ももろともにむかしにあらぬ聲のするかな まつかせもきしうつなみももろともにむかしにあらぬおとのするかな | 恵慶法師 | 十七 | 雑三 |
| 1001 | しぬばかり歎きにこそは歎きしか生きてとふべき身にしあらねば しぬはかりなけきにこそはなけきしかいきてとふへきみにしあらねは | 小式部内侍 | 十七 | 雑三 |
| 1002 | 大空に風まつほどのくものいの心ぼそさを思ひやらなむ おほそらにかせまつほとのくものいのこころほそさをおもひやらなむ | 斎宮女御 | 十七 | 雑三 |
| 1003 | 思ひやるわが衣手はささがにのくもらぬ空に雨のみぞふる おもひやるわかころもてはささかにのくもらぬそらにあめのみそふる | 東三條院 | 十七 | 雑三 |
| 1004 | なきかずにおもひなしてやとはざらむまだ有明の月まつものを なきかすにおもひなしてやとはさらむまたありあけのつきまつものを | 伊勢大輔 | 十七 | 雑三 |
| 1005 | ちるをこそあはれとみしか梅の花はなや今年は人をしのばむ ちるをこそあはれとみしかうめのはなはなやことしはひとをしのはむ | 小大君 | 十七 | 雑三 |
| 1006 | とへかしな幾夜もあらじ露の身をしばしも言のはにやかかると とへかしないくよもあらしつゆのみをしはしもことのはにやかかると | 読人知らず | 十七 | 雑三 |
| 1007 | ものをのみ思ひしほどにはかなくて浅茅が末によはなりにけり ものをのみおもひしほとにはかなくてあさちかすゑによはなりにけり | 和泉式部 | 十七 | 雑三 |
| 1008 | しのぶべき人もなき身はあるをりにあはれあはれといひやおかまし しのふへきひともなきみはあるをりにあはれあはれといひやおかまし | 和泉式部 | 十七 | 雑三 |
| 1009 | いかなれば同じ色にておつれども涙はめにもとまらざるらむ いかなれはおなしいろにておつれともなみたはめにもとまらさるらむ | 和泉式部 | 十七 | 雑三 |
| 1010 | 常よりもはかなきころの夕暮れになくなる人ぞかぞへられける つねよりもはかなきころのゆふくれはなくなるひとそかそへられける | 藤原頼宗 | 十七 | 雑三 |
| 1011 | 草の葉におかぬばかりの露の身はいつその數にいらむとすらむ くさのはにおかぬはかりのつゆのみはいつそのかすにいらむとすらむ | 藤原定頼 | 十七 | 雑三 |
| 1012 | 消えもあへずはかなきほどの露ばかりありやなしやと人のとへかし きえもあへすはかなきころのつゆはかりありやなしやとひとのとへかし | 赤染衛門 | 十七 | 雑三 |
| 1013 | 世の中をなににたとへむ秋の田をほのかにてらすよひのいなづま よのなかをなににたとへむあきのたをほのかにてらすよひのいなつま | 源順 | 十七 | 雑三 |
| 1014 | 明けぬなり賀茂の河瀬に千鳥鳴くけふもはかなく暮れむとすらむ あけぬなりかものかはせにちとりなくけふもはかなくくれむとすらむ | 圓松法師 | 十七 | 雑三 |
| 1015 | 恋しくば夢にも人をみるべきに窓うつ雨にめをさましつつ こひしくはゆめにもひとをみるへきをまとうつあめにめをさましつつ | 大貮高遠 | 十七 | 雑三 |
| 1016 | なげきこしみちの露にもまさりけりなれにし里をこふる涙は なけきこしみちのつゆにもまさりけりなれにしさとをこふるなみたは | 赤染衛門 | 十七 | 雑三 |
| 1017 | 思ひきや古き都をたちはなれ胡の國人にならむものとは おもひきやふるきみやこをたちはなれこのくにひとにならむものとは | 僧都懐壽 | 十七 | 雑三 |
| 1018 | みる度に鏡の影のつらきかなかからざりせばかからましやは みるからにかかみのかけのつらきかなかからさりせはかからましやは | 懐圓法師 | 十七 | 雑三 |
| 1019 | いにしへはつらくきこえし鳥のねのうれしきさへぞものは悲しき いにしへはつらくきこえしとりのねのうれしきさへそものはかなしき | ゐでのあま | 十七 | 雑三 |
| 1020 | ともすれば四方の山辺にあくがれし心に身をもまかせつるかな ともすれはよものやまへにあくかれしこころにみをもまかせつるかな | 増基法師 | 十七 | 雑三 |
| 1021 | しかすがにかなしきものは世の中をうきたつほどの心なりけり しかすかにかなしきものはよのなかをうきたつほとのこころなりけり | 馬内侍 | 十七 | 雑三 |
| 1022 | なにかその身のいろにしもたけからむ心を深き山にすませよ なにかそのみのいるにしもたけからむこころをふかきやまにすませよ | 藤原長能 | 十七 | 雑三 |
| 1023 | まことにや同じ道には入りにけるひとりは西へゆかじと思ふに まことにやおなしみちにはいりにけるひとりはにしへゆかしとおもふに | 律師長濟 | 十七 | 雑三 |
| 1024 | いかでかく花の袂をたちかへてうらなる玉をわすれざりけむ いかてかくはなのたもとをたちかへてうらなるたまをわすれさりけむ | 加賀左衛門 | 十七 | 雑三 |
| 1025 | かけてだに衣のうらに玉ありとしらで過ぎけむ方ぞくやしき かけてたにころものうらにたまありとしらてすきけむかたそくやしき | 中宮内侍 | 十七 | 雑三 |
| 1026 | きみすらもまことの道に入りぬなりひとりや長きやみにまどはむ きみすらもまことのみちにいりぬなりひとりやなかきやみにまとはむ | 選子内親王 | 十七 | 雑三 |
| 1027 | けふとしも思ひやはせし麻衣なみだの玉のかかるべしとは けふとしもおもひやはせしあさころもなみたのたまのかかるへしとは | 読人知らず | 十七 | 雑三 |
| 1028 | 思ふにもいふにもあまる事なれや衣の玉のあらはるる日は おもふにもいふにもあまることなれやころものたまのあらはるるひは | 伊勢大輔 | 十七 | 雑三 |
| 1029 | 世を捨てて宿を出でにし身なれどもなほ恋しきは昔なりけり よをすててやとをいてにしみなれともなほこひしきはむかしなりけり | 源顕基 | 十七 | 雑三 |
| 1030 | ときのまも恋しきことの慰まば世はふたたびもそむかざらまし ときのまもこひしきことのなくさまはよはふたたひもそむかさらまし | 上東門院 | 十七 | 雑三 |
| 1031 | 思ひしる人もありける世の中をいつをいつとてすぐすなるらむ おもひしるひともありけるよのなかをいつをいつとてすくすなるらむ | 藤原公任 | 十七 | 雑三 |
| 1032 | 君に人なれなならひそ奥山に入りての後はわびしかりけり きみにひとなれなならひそおくやまにいりてののちはわひしかりけり | 藤原統理 | 十七 | 雑三 |
| 1033 | 忘られず思ひいでつつ山人をしかぞこひしくわれも眺むる わすられすおもひいてつつやまひとをしかそこひしくわれもなかむる | 御三条院 | 十七 | 雑三 |
| 1034 | 見し人もわすれのみ行くふるさとに心ながくもきたる春かな みしひともわすれのみゆくふるさとにこころなかくもきたるはるかな | 藤原義懐 | 十七 | 雑三 |
| 1035 | 谷風になれずといかが思ふらむ心ははやくすみにしものを たにかせになれすといかかおもふらむこころははやくすみにしものを | 藤原公任 | 十七 | 雑三 |
| 1036 | 水草ゐしおぼろの清水底すみて心に月の影はうかぶや みくさゐしおほろのしみつそこすみてこころにつきのかけはうかふや | 素意法師 | 十七 | 雑三 |
| 1037 | 程へてや月もうかばむ大原やおぼろの清水すむなばかりに ほとへてやつきもうかはむおほはらやおほろのしみつすむなはかりそ | 良暹法師 | 十七 | 雑三 |
| 1038 | 思ひやる心さへこそさびしけれ大原山のあきのゆふぐれ おもひやるこころさへこそさひしけれおほはらやまのあきのゆふくれ | 藤原國房 | 十七 | 雑三 |
| 1039 | 思はずにいるとはみえき梓弓かへらばかへれ人のためかは おもはすにいるとはみえきあつさゆみかへらはかへれひとのためかは | 律師朝範 | 十七 | 雑三 |
| 1040 | 思ひやれとふ人もなき山里のかけひの水のこころぼそさを おもひやれとふひともなきやまさとのかけひのみつのこころほそさを | 上東門院中将 | 十七 | 雑三 |
| 1041 | 武隈の松はふたきを都人いかがととはばみきとこたへむ たけくまのまつはふたきをみやこひといかかととははみきとこたへむ | 橘季通 | 十八 | 雑四 |
| 1042 | 武隈の松はこのたび跡もなしちとせをへてや我はきつらむ たけくまのまつはこのたひあともなしちとせをへてやわれはきつらむ | 能因法師 | 十八 | 雑四 |
| 1043 | 里人のくむだに今はなかるべし岩井の清水みくさゐにけり さとひとのくむたにいまはなかるへしいはゐのしみつみくさゐにけり | 大江嘉言 | 十八 | 雑四 |
| 1044 | 年へたる松だになくば浅茅原なにかむかしのしるしならまし としへたるまつたになくはあさちはらなにかむかしのしるしならまし | 江侍従 | 十八 | 雑四 |
| 1045 | 年をへてみる人もなきふるさとにかはらぬ松ぞあるじならまし としをへてみるひともなきふるさとにかはらぬまつそあるしならまし | 左衛門督北方 | 十八 | 雑四 |
| 1046 | 君がうゑし松ばかりこそ残りけれいづれの春の子の日なりけむ きみかうゑしまつはかりこそのこりけれいつれのはるのねのひなりけむ | 源為善 | 十八 | 雑四 |
| 1047 | 誰をけふまつとはいはむかくばかり忘るるなかのねたげなるよに たれをけふまつとはいはむかくはかりわするるなかのねたけなるよに | 馬内侍 | 十八 | 雑四 |
| 1048 | みどりにて色もかはらぬ呉竹はよのながきをや秋としるらむ みとりにていろもかはらぬくれたけはよのなかきをやあきとしるらむ | 藤原師経 | 十八 | 雑四 |
| 1049 | いはしろのをのへの風に年ふれど松のみどりはかはらざりけり いはしろのをのへのかせにとしふれとまつのみとりはかはらさりけり | 前太宰帥資仲 | 十八 | 雑四 |
| 1050 | よろづよの秋をもしらですぎきたる葉がへぬ谷の岩根松かな よろつよのあきをもしらてすききたるはかへぬたにのいはねまつかな | 白河院 | 十八 | 雑四 |
| 1051 | み山木をねりぞもてゆふしづのをは猶こりずまの心とぞみる みやまきをねりそもてゆふしつのをはなほこりすまのこころとそみる | 藤原義孝 | 十八 | 雑四 |
| 1052 | 旅寝する宿はみ山にとぢられて正木のかづらくる人もなし たひねするやとはみやまにとちられてまさきのかつらくるひともなし | 源経信 | 十八 | 雑四 |
| 1053 | 鳥もゐで幾代へぬらむ勝間田の池にはいゐのあとだにもなし とりもゐていくよへぬらむかつまたのいけにはいひのあとたにもなし | 藤原範永 | 十八 | 雑四 |
| 1054 | たちのぼるもしほの煙たえせねば空にもしるき須磨の浦かな たちのほるもしほのけふりたえせねはそらにもしるきすまのうらかな | 藤原経衡 | 十八 | 雑四 |
| 1055 | くる人もなき奥山の瀧の絲は水のわくにぞまかせたりける くるひともなきおくやまのたきのいとはみつのわくにそまかせたりける | 藤原定頼 | 十八 | 雑四 |
| 1056 | ものいはばとふべきものを桃の花いくよかへたる瀧の白絲 ものいははとふへきものをもものはないくよかへたるたきのしらいと | 辨乳母 | 十八 | 雑四 |
| 1057 | せきれたるなこそ流れてとまるともたえずみるべき瀧の絲かは せきれたるなこそなかれてとまるらむたえすみるへきたきのいとかは | 藤原兼房 | 十八 | 雑四 |
| 1058 | あせにける今だにかかる瀧つ瀬の早くぞ人はみるべかりける あせにけるいまたにかかりたきつせのはやくそひとはみるへかりける | 赤染衛門 | 十八 | 雑四 |
| 1059 | 年毎にせくとはすれど大井川むかしのなこそ猶ながれけれ としことにせくとはすれとおほゐかはむかしのなこそなほなかれけれ | 源道済 | 十八 | 雑四 |
| 1060 | さきの日に桂の宿を見しゆゑはけふ月の輪にくべきなりけり さきのひにかつらのやとをみしゆゑはけふつきのわにくへきなりけり | 祭主輔親 | 十八 | 雑四 |
| 1061 | いづるゆのわくにかかれる白絲はくる人たえぬものにぞありける いつるゆのわくにかかれるしらいとはくるひとたえぬものにそありける | 源重之 | 十八 | 雑四 |
| 1062 | 住吉の神はあはれと思ふらむむなしき舟をさしてきたれば すみよしのかみはあはれとおもふらむむなしきふねをさしてきたれは | 後三條院 | 十八 | 雑四 |
| 1063 | おきつ風吹きにけらしな住吉の松のしづえをあらふ白浪 おきつかせふきにけらしなすみよしのまつのしつえをあらふしらなみ | 源経信 | 十八 | 雑四 |
| 1064 | 住吉の浦風いたく吹きぬらし岸うつ浪の聲しきるなり すみよしのうらかせいたくふきぬらしきしうつなみのこゑしきるなり | 惠慶法師 | 十八 | 雑四 |
| 1065 | 松みればたちうきものを住の江のいかなる浪かしづ心なき まつみれはたちうきものをすみのえのいかなるなみかしつこころなき | 藤原為長 | 十八 | 雑四 |
| 1066 | 忘れ草つみてかへらむ住吉のきし方のよは思ひでもなし わすれくさつみてかへらむすみよしのきしかたのよはおもひいてもなし | 平棟伸 | 十八 | 雑四 |
| 1067 | おもふこと神はしるらむ住吉の岸の白浪たが世なりとも おもふことかみはしるらむすみよしのきしのしらなみたよせなりとも | 源頼實 | 十八 | 雑四 |
| 1068 | ときかけつ衣の玉は住吉の神さびにける松のこずゑに ときかけつころものたまはすみのえのかみさひにけるまつのこすゑに | 増基法師 | 十八 | 雑四 |
| 1069 | たのみては久しくなりぬ住吉のまづこのたびのしるしみせなむ たのみてはひさしくなりぬすみよしのまつこのたひのしるしみせなむ | 赤染衛門 | 十八 | 雑四 |
| 1070 | 都いでて秋より冬になりぬれば久しき旅の心地こそすれ みやこいててあきよりふゆになりぬれはひさしきたひのここちこそすれ | 上東門院新宰相 | 十八 | 雑四 |
| 1071 | よろづよをすめる亀井の水やさはとみの小川の流れなるらむ よろつよをすめるかめゐのみつはさはとみのをかはのなかれなるらむ | 辨乳母 | 十八 | 雑四 |
| 1072 | 橋柱なからましかば流れての名をこそきかめあとをみましや はしはしらなからましかはなかれてのなをこそきかめあとをみましや | 藤原公任 | 十八 | 雑四 |
| 1073 | わればかり長柄の橋は朽ちにけり難波の事もふるる悲しさ われはかりなからのはしはくちにけりなにはのこともふるるかなしさ | 赤染衛門 | 十八 | 雑四 |
| 1074 | いにしへにふり行く身こそ哀れなれ昔ながらの橋をみるにも いにしへにふりゆくみこそあはれなれむかしなからのはしをみるにも | 伊勢大輔 | 十八 | 雑四 |
| 1075 | 名に高き錦の浦をきてみればかづかぬあまはすくなかりけり なにたかきにしきのうらをきてみれはかつかぬあまはすくなかりけり | 道命法師 | 十八 | 雑四 |
| 1076 | 山がらすかしらもしろくなりにけり我が帰るべき時やきぬらむ やまからすかしらもしろくなりにけりわかかへるへきときやきぬらむ | 増基法師 | 十八 | 雑四 |
| 1077 | わかれ行く舟は綱手にまかすれど心は君がかたにこそひけ わかれゆくふねはつなてにまかすれとこころはきみかかたにこそひけ | 藤原孝善 | 十八 | 雑四 |
| 1078 | 道すがらおちぬばかりにふる袖の袂に何をつつむなるらむ みちすからおちぬはかりにふるそてのたもとになにをつつむなるらむ | 読人知らず | 十八 | 雑四 |
| 1079 | ゆふだすき袂にかけて祈りこし神のしるしをけふみつるかな ゆふたすきたもとにかけていのりこしかみのしるしをけふみつるかな | 読人知らず | 十八 | 雑四 |
| 1080 | ととのへし賀茂の社のゆふだすき帰るあしたぞ乱れたりける ととのへしかものやしろのゆふたすきかへるあしたそみたれたりける | 安法法師 | 十八 | 雑四 |
| 1081 | あけぬよの心地ながらにやみにしをあさくらといひし聲はきききや あけぬよのここちなからにやみにしをあさくらといひしこゑはきききや | 読人知らず | 十八 | 雑四 |
| 1082 | ひとりのみきのまろどのにあらませばなのらで闇にまよはましやは ひとりのみきのまろとのにあらませはなのらてやみにかへらましやは | 藤原実方 | 十八 | 雑四 |
| 1083 | なのりせば人しりぬべしなのらずばきのまろ殿をいかで過ぎまし なのりせはひとしりぬへしなのらすはきのまろとのをいかてすきまし | 赤染衛門 | 十八 | 雑四 |
| 1084 | ひと巻にちぢの黄金をこめたれば人こそなけれ聲は残れり ひとまきにちちのこかねをこめたれはひとこそなけれこゑはのこれり | 恵慶法師 | 十八 | 雑四 |
| 1085 | いにしへのちぢの黄金はかぎりあるをあふばかりなき君が玉章 いにしへのちちのこかねはかきりあるをあふはかりなききみかたまつさ | 紀時文 | 十八 | 雑四 |
| 1086 | かへしけむ昔の人の玉章をききてぞそそぐ老の涙は かへしけむむかしのひとのたまつさをききてそそそくおいのなみたは | 清原元輔 | 十八 | 雑四 |
| 1087 | 花のしべ紅葉の下葉かきつめて木のもとよりやちらむとすらむ はなのしへもみちのしたはかきつめてこのもとよりやちらむとすらむ | 祭主輔親 | 十八 | 雑四 |
| 1088 | 尋ねずばかきやる方やなからまし昔のながれみくさつもりて たつねすはかきやるかたやなからましむかしのなかれみくさつもりて | 康資王母 | 十八 | 雑四 |
| 1089 | いにしへの家の風こそうれしけれかかる言の葉ちりくと思へば いにしへのいへのかせこそうれしけれかかることのはちりくとおもへは | 後三條院越前 | 十八 | 雑四 |
| 1090 | 秋風にあふ言の葉やちりぬらむその夜の月のもりにけるかな あきかせにあふことのはやちりにけむそのよのつきのもりにけるかな | 後三條院 | 十八 | 雑四 |
| 1091 | まことにや姨捨山の月はみるよも更級と思ふわたりを まことにやをはすてやまのつきはみるよにさらしなとおもふわたりを | 赤染衛門 | 十八 | 雑四 |
| 1092 | たえやせむいのちぞしらぬ水無瀬川よしながれても心みよ君 たえやせむいのちそしらぬみなせかはよしなかれてもこころみよきみ | 読人知らず | 十八 | 雑四 |
| 1093 | いはぬまをつつみしほどにくちなしの色にやみえし山吹の花 いはぬまはつつみしほとにくちなしのいろにやみえしやまふきのはな | 規子内親王 | 十八 | 雑四 |
| 1094 | うれしさをけふは何にか包むらむ朽ち果てにきとみえし袂を うれしさをけふはなににかつつむらむくちはてにきとみえしたもとを | 藤原孝善 | 十八 | 雑四 |
| 1095 | かたらへばなぐさむこともあるものを忘れやしなむ恋のまぎれに かたらへはなくさむこともあるものをわすれやしなむこひのまきれに | 和泉式部 | 十八 | 雑四 |
| 1096 | 忍び音をききこそわたれほととぎす通ふ垣根のかくれなければ しのひねをききこそわたれほとときすかよふかきねのかくれなけれは | 六院齋院宣旨 | 十八 | 雑四 |
| 1097 | うかりけるみのふの浦のうつせ貝むなしき名のみたつはきききや うかりけるみのふのうらのうつせかひむなしきなのみたつはきききや | 馬内侍 | 十八 | 雑四 |
| 1098 | おぼつかなつくまの神のためならばいくつかなべの數はいるべき おほつかなつくまのかみのためならはいくつかなへのかすはいるへき | 藤原顕綱 | 十八 | 雑四 |
| 1099 | 春ごとの子の日は多くすぎつれどかかる二葉の松はみざりき はることのねのひはおほくすきつれとかかるふたはのまつはみさりき | 出羽辨 | 十九 | 雑五 |
| 1100 | しのびねの涙なかけそかくばかりせばしと思ふころの袂に しのひねのなみたなかけそかくはかりせはしとおもふころのたもとに | 大弐三位 | 十九 | 雑五 |
| 1101 | 春の日に帰らざりせばいにしへの袂ながらや朽ち果てなまし はるのひにかへらさりせはいにしへのたもとなからやくちはてなまし | 出羽辨 | 十九 | 雑五 |
| 1102 | 花盛り春の山辺のあけぼのに思ひわするなあきのゆふぐれ はなさかりはるのみやまのあけほのにおもひわするなあきのゆふくれ | 源為善 | 十九 | 雑五 |
| 1103 | よろづよを君がまもりと祈りつつ太刀つくりえのしるしとをみよ よろつよをきみかまもりといのりつつたちつくりえのしるしとをみよ | 藤原道長 | 十九 | 雑五 |
| 1104 | いにしへのちかきまもりをこふるまにこれはしのぶるしるしなりけり いにしへのちかきまもりをこふるまにこれはしのふるしるしなりけり | 御三条院 | 十九 | 雑五 |
| 1105 | ちちにつけ思ひぞいづる昔をばのどけかれとも君ぞいはまし ちちにつけおもひそいつるむかしをはのとけかれともきみそいはまし | 藤原為光 | 十九 | 雑五 |
| 1106 | 高砂と高くないひそ昔きくをのへのしらべまづぞ恋しき たかさこのたかくないひそむかしきくをのへのしらへまつそこひしき | 源相方 | 十九 | 雑五 |
| 1107 | ひかりいづる葵の影をみてしかば年へにけるもうれしかりけり ひかりいつるあふひのかけをみてしかはとしへにけるもうれしかりけり | 選子内親王 | 十九 | 雑五 |
| 1108 | もろかづら二葉ながらも君にかく葵や神のしるしなるらむ もろかつらふたはなからもきみにかくあふひやかみのしるしなるらむ | 藤原道長 | 十九 | 雑五 |
| 1109 | みゆきせし賀茂の川波かへるさにたちやよるとてまちあかしつる みゆきせしかものかはなみかへるさにたちやよるとそまちあかしつる | 選子内親王 | 十九 | 雑五 |
| 1110 | みゆきとか世にはふらせて今はただこずゑの桜ちらすなりけり みゆきとかよにはふらせていまはたたこすゑのさくらちらすなりけり | 上東門院中将 | 十九 | 雑五 |
| 1111 | ゆふしでや繁き木の間をもる月のおぼろげならでみえし影かは ゆふしてやしけきこのまをもるつきのおほろけならてみえしかけかは | 六條齋院宣旨 | 十九 | 雑五 |
| 1112 | わかなつむ春日の原に雪ふれば心づかひをけふさへぞやる わかなつむかすかのはらにゆきふれはこころつかひをけふさへそやる | 藤原道長 | 十九 | 雑五 |
| 1113 | 身をつみておぼつかなきは雪やまぬ春日の野辺の若菜なりけり みをつみておほつかなきはゆきやまぬかすかののへのわかななりけり | 藤原公任 | 十九 | 雑五 |
| 1114 | 三笠山春日の原の朝霧にかへりたつらむ今朝をこそまて みかさやまかすかのはらのあさきりにかへりたつらむけさをこそまて | 藤原公任 | 十九 | 雑五 |
| 1115 | 年つもるかしらの雪は大空のひかりにあたるけふぞうれしき としつもるかしらのゆきはおほそらのひかりにあたるけふそうれしき | 伊勢大輔 | 十九 | 雑五 |
| 1116 | 年をへてすめる清水に影みればみづはくむまで老いぞしにける としをへてすめるしみつにかけみれはみつはくむまておいそしにける | 源重之 | 十九 | 雑五 |
| 1117 | 春来れどきえせぬものは年をへてかしらにつもる雪にぞありける はるくれときえせぬものはとしをへてかしらにつもるゆきにそありける | 花山院 | 十九 | 雑五 |
| 1118 | よにとよむ豊の禊をよそにして小鹽の山のみゆきをや見し よにとよむとよのみそきをよそにしてをしほのやまのみゆきをやみし | 伊勢大輔 | 十九 | 雑五 |
| 1119 | 小鹽山こずゑもみえず降りつみしそやすべらぎのみゆきなるらむ をしほやまこすゑもみえすふりつみしそやすめらきのみゆきなるらむ | 少将井尼 | 十九 | 雑五 |
| 1120 | 早く見し山井の水のうす氷うちとけざまはかはらざりけり はやくみしやまゐのみつのうすこほりうちとけさまはかはらさりけり | 伊勢大輔 | 十九 | 雑五 |
| 1121 | 多かりし豊の宮人さしわけてしるき日影をあはれとぞみし おほかりしとよのみやひとさしわけてしるきひかけをあはれとそみし | 読人知らず | 十九 | 雑五 |
| 1122 | ひかげ草かがやく影やまがひけむますみの鏡くもらぬものを ひかけくさかかやくかけやまかひけむますみのかかみくもらぬものを | 藤原長能 | 十九 | 雑五 |
| 1123 | 神代よりすれる衣といひながら又かさねても珍しきかな かみよよりすれるころもといひなからまたかさねてもめつらしきかな | 選子内親王 | 十九 | 雑五 |
| 1124 | あしひきの山井の水は氷れるをいかなる紐のとくるなるらむ あしひきのやまゐのみつはこほれるをいかなるひものとくるなるらむ | 藤原実方 | 十九 | 雑五 |
| 1125 | まことにやあまた重ねしをみ衣豊のあかりのかくれなきよに まことにやあまたかさねしをみころもとよのあかりのかくれなきよに | 源頼家 | 十九 | 雑五 |
| 1126 | 思ひきやわがしめゆひし撫子を人のまがきの花とみむとは おもひきやわかしめゆひしなてしこをひとのまかきのはなとみむとは | 法眼源賢 | 十九 | 雑五 |
| 1127 | 信濃なるその原にこそあらねどもわが帚木と今はたのまむ しなのなるそのはらにこそあらねともわかははききといまはたのまむ | 平正家 | 十九 | 雑五 |
| 1128 | 都へといきの松原いきかへり君がちとせにあはむとすらむ みやこへといきのまつはらゆきかへりきみかちとせにあはむとすらむ | 源重之 | 十九 | 雑五 |
| 1129 | そのかみの人は残らじ箱崎の松ばかりこそわれをしるらめ そのかみのひとはのこらしはこさきのまつはかりこそわれをしるらめ | 中将尼 | 十九 | 雑五 |
| 1130 | こつかみの浦に年へてよる浪もおなじ所にかへるなりけり こつかみのうらにとしへてよるなみもおなしところにかへるなりけり | 藤原基房 | 十九 | 雑五 |
| 1131 | 老いの波よせじと人はいとふともまつらむものをわかの浦には おいのなみよせしとひとはいとふともまつらむものをわかのうらには | 連敏法師 | 十九 | 雑五 |
| 1132 | うちむれし駒もおとせぬ秋の野は草かれゆけど見る人もなし うちむれしこまもおとせぬあきののはくさかれゆけとみるひともなし | 源兼長 | 十九 | 雑五 |
| 1133 | にほひきや都の花は東路の東風のかへしの風につけしは にほひきやみやこのはなはあつまちのこちのかへしのかせにつけしは | 源兼俊母 | 十九 | 雑五 |
| 1134 | 吹き返す東風の返しは身にしみき都の花のしるべとおもふに ふきかへすこちのかへしはみにしみきみやこのはなのしるへとおもふに | 康資王母 | 十九 | 雑五 |
| 1135 | とりわきて我が身に露や置きつらむ花よりさきにまづぞうつろふ とりわきてわかみにつゆやおきつらむはなよりさきにまつそうつろふ | 大貮高遠 | 十九 | 雑五 |
| 1136 | やすらはで思ひたちにし東路にありけるものかはらからの関 やすらはておもひたちにしあつまちにありけるものかははかりのせき | 藤原実方 | 十九 | 雑五 |
| 1137 | みちのくの安達の真弓君にこそ思ひためたる事はかたらめ みちのくのあたちのまゆみきみにこそおもひためたることはかたらめ | 藤原実方 | 十九 | 雑五 |
| 1138 | 都にはたれをか君は思ひいづる都の人はきみをこふめり みやこにはたれをかきみはおもひいつるみやこのひとはきみをこふめり | 大江匡衡 | 十九 | 雑五 |
| 1139 | 忘られぬ人の中には忘れぬをまつらむ人のなかにまつやは わすられぬひとのなかにはわすれぬをまつらむひとのなかにまつやは | 藤原実方 | 十九 | 雑五 |
| 1140 | ありてやはおとせざるべき津の国の今ぞ生田の杜といひしは ありてやはおとせさるへきつのくにのいまそいくたのもりといひしは | 赤染衛門 | 十九 | 雑五 |
| 1141 | きのふまで神に心をかけしかどけふこそ法にあふひなりけれ きのふまてかみにこころをかけしかとけふこそのりにあふひなりけれ | 相模 | 十九 | 雑五 |
| 1142 | 帰るさをまち心みよかくながらよもただにては山しなの里 かへるさをまちこころみよかくなからよもたたにてはやましなのさと | 和泉式部 | 十九 | 雑五 |
| 1143 | ふかき海のちかひはしらず三笠山こころたかくもみえしきみかな ふかきうみのちかひはしらすみかさやまこころたかくもみえしきみかな | 藤原頼宗 | 十九 | 雑五 |
| 1144 | こも枕かりの旅寝にあかさばや入江の蘆の一夜ばかりを こもまくらかりのたひねにあかさはやいりえのあしのひとよはかりを | 伊勢大輔 | 十九 | 雑五 |
| 1145 | 日も暮れぬ人も帰りぬ山里はみねの嵐のおとばかりして ひもくれぬひともかへりぬやまさとはみねのあらしのおとはかりして | 源頼實 | 十九 | 雑五 |
| 1146 | みやこ人くるれば帰る今よりは伏見の里の名をもたのまじ みやこひとくるれはかへるいまよりはふしみのさとのなをもたのまし | 橘俊綱 | 十九 | 雑五 |
| 1147 | 杉もすぎ宿もむかしの宿ながらかはるは人の心なりけり すきもすきやともむかしのやとなからかはるはひとのこころなりけり | 読人知らず | 十九 | 雑五 |
| 1148 | 思ひきやふるさと人に身をなして花のたよりに山を見むとは おもひきやふるさとひとにみをなしてはなのたよりにやまをみむとは | 蓮仲法師 | 十九 | 雑五 |
| 1149 | たえにける僅かなるねを繰り返しかつらのをこそきかまほしけれ たえにけるはつかなるねをくりかへしかつらのをこそきかまほしけれ | 大中臣能宣 | 十九 | 雑五 |
| 1150 | いつかまたこちくなるべき鶯のさへづりそめし夜半の笛竹 いつかまたこちくなるへきうくひすのさへつりそめしよはのふえたけ | 相模 | 十九 | 雑五 |
| 1151 | を鹿ふすしげみにはへる葛の葉のうらさびしげにみゆる山里 をしかふすしけみにはへるくすのはのうらさひしけにみゆるやまさと | 大中臣能宣 | 十九 | 雑五 |
| 1152 | つねならぬ山の桜にこころいりて池のはちすをいひなはなちそ つねならぬやまのさくらにこころいりていけのはちすをいひなはなちそ | 源重之 | 十九 | 雑五 |
| 1153 | もちながらちよも巡らむさか月の清き光はさしもかけなむ もちなからちよもめくらむさかつきのきよきひかりはさしもかけなむ | 藤原為頼 | 十九 | 雑五 |
| 1154 | 七重八重花はさけども山吹のみの一つだになきぞかなしき ななへやへはなはさけともやまふきのみのひとつたになきそあやしき | 兼明親王 | 十九 | 雑五 |
| 1155 | かづきするあまのあり家をそこなりと夢いふなとやめをくはせけむ かつきするあまのありかをそこなりとゆめいふなとやめをくはせけむ | 清少納言 | 十九 | 雑五 |
| 1156 | たらちねははかなくてこそやみにしかこはいづことてたちとまるらむ たらちねははかなくてこそやみにしかこはいつことてたちとまるらむ | 源頼俊 | 十九 | 雑五 |
| 1157 | 思へどもいかにならひし道なればしらぬ境にまどふなるらむ おもへともいかにならひしみちなれはしらぬさかひにまとふなるらむ | 慶範法師 | 十九 | 雑五 |
| 1158 | 浅茅生にあれにけれどもふるさとの松はこだかくなりにけるかな あさちふにあれにけれともふるさとのまつはこたかくなりにけるかな | 帥前内大臣 | 十九 | 雑五 |
| 1159 | いにしへのまゆとしめにもあらねども君はみま草とりてかふとか いにしへのまゆとしめにもあらねともきみはみまくさとりてかふとか | 天台座主教圓 | 十九 | 雑五 |
| 1160 | 盃にさやけき影のみえぬれば塵のおこりはあらじとをしれ さかつきにさやけきかけのみえぬれはちりのおそりはあらしとをしれ | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1161 | おほぢ父うまご輔親三代までにいただきまつるすめらおほむかみ おほちちちうまこすけちかみよまてにいたたきまつるすめらおほむかみ | 祭主輔親 | 二十 | 雑六 |
| 1162 | ものおもへば澤の蛍をわが身よりあくがれいづる玉かとぞみる ものおもへはさはのほたるをわかみよりあくかれにけるたまかとそみる | 和泉式部 | 二十 | 雑六 |
| 1163 | 奥山にたきぎておつる瀧つ瀬に玉ちるばかりものな思ひそ おくやまにたきりておつるたきつせにたまちるはかりものなおもひそ | 御返し | 二十 | 雑六 |
| 1164 | 白妙のとよみてぐらをとりもちていはひぞ初むる紫の野に しろたへのとよみてくらをとりもちていはひそそむるむらさきののに | 藤原長能 | 二十 | 雑六 |
| 1165 | 今よりはあらぶる心ましますな花の都にやしろさだめつ いまよりはあらふるこころましますなはなのみやこにやしろさためつ | 藤原長能 | 二十 | 雑六 |
| 1166 | いなり山みづの玉垣うちたたきわかねぎ事を神もこたへよ いなりやまみつのたまかきうちたたきわかねきことをかみもこたへよ | 恵慶法師 | 二十 | 雑六 |
| 1167 | 住吉の松さへかはるものならばなにか昔のしるしならまし すみよしのまつさへかはるものならはなにかむかしのしるしならまし | 山口重如 | 二十 | 雑六 |
| 1168 | ちはやふる松のをやまの影みればけふぞちとせのはじめなりける ちはやふるまつのをやまのかけみれはけふそちとせのはしめなりける | 源兼澄 | 二十 | 雑六 |
| 1169 | あきらけき日吉の御神君がため山のかひあるよろづ代やへむ あきらけきひよしのみかみきみかためやまのかひあるよろつよやへむ | 大貮實政 | 二十 | 雑六 |
| 1170 | ちはやふる神のそのなる姫小松よろづよふべきはじめなりけり ちはやふるかみのそのなるひめこまつよろつよふへきはしめなりけり | 藤原経衡 | 二十 | 雑六 |
| 1171 | 榊葉にふる白雪はきえぬめり神の心も今やとくらむ さかきはにふるしらゆきはきえぬめりかみのこころはいまやとくらむ | 藤原伊房 | 二十 | 雑六 |
| 1172 | 有度浜にあまの羽衣むかしきてふりけむ袖やけふのはふりこ うとはまにあまのはころもむかしきてふりけむそてやけふのはふりこ | 能因法師 | 二十 | 雑六 |
| 1173 | 天の下はぐくむ神のみぞなればゆたけにぞたつみづの広前 あめのしたはくくむかみのみそなれはゆたけにそたつみつのひろまへ | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1174 | ここにしもわきて出でけむ岩清水神の心を汲みもしらばや ここにしもわきていてけむいはしみつかみのこころをくみてしらはや | 増基法師 | 二十 | 雑六 |
| 1175 | 住吉の松のしづえに神さびてみどりにみゆるあけの玉垣 すみよしのまつのしつえにかみさひてみとりにみゆるあけのたまかき | 蓮仲法師 | 二十 | 雑六 |
| 1176 | さもこそは宿はかはらめ住吉の松さへ椙になりにけるかな さもこそはやとはかはらめすみよしのまつさへすきになりにけるかな | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1177 | おもふことなるかはかみにあとたれてきふねは人を渡すなりけり おもふことなるかはかみにあとたれてきふねはひとをわたすなりけり | 藤原時房 | 二十 | 雑六 |
| 1178 | けふ祭る三笠の山の神ませばあめのしたには君ぞさかえむ けふまつるみかさのやまのかみませはあめのしたにはきみそさかえむ | 藤原範永 | 二十 | 雑六 |
| 1179 | いにしへの別れの庭にあへりともけふの涙ぞなみだならまし いにしへのわかれのにはにあへりともけふのなみたそなみたならまし | 光源法師 | 二十 | 雑六 |
| 1180 | つねよりもけふの霞ぞあはれなる薪つきにし煙とおもへば つねよりもけふのかすみそあはれなるたききつきにしけふりとおもへは | 前律師慶暹 | 二十 | 雑六 |
| 1181 | いかなれば今宵の月のさ夜中に照らしもはてで入りしなるらむ いかなれはこよひのつきのさよなかにてらしもはてていりしなるらむ | 慶範法師 | 二十 | 雑六 |
| 1182 | 世をてらす月かくれにしさ夜中は哀れやみにや皆まどひけむ よをてらすつきかくれにしさよなかはあはれやみにやみなまとひけむ | 伊勢大輔 | 二十 | 雑六 |
| 1183 | 山のはに入りにし夜半の月なれど名残りはまだにさやけかりけり やまのはにいりにしよはのつきなれとなこりはまたにさやけかりけり | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1184 | つもるらむ塵をもいかではらはまし法にあふぎの風のうれしさ つもるらむちりをもいかてはらはましのりにあふきのかせのうれしさ | 伊勢大輔 | 二十 | 雑六 |
| 1185 | 八重菊に蓮の露をおきそへて九しなまでうつろはしつる やへきくにはちすのつゆをおきそへてここのしなまてうつろはしつる | 弁乳母 | 二十 | 雑六 |
| 1186 | さきがたき御法の花におく露ややがて衣の玉となるらむ さきかたきみのりのはなにおくつゆややかてころものたまとなるらむ | 康資王母 | 二十 | 雑六 |
| 1187 | もろともに三つの車にのりしかどわれは一味の雨にぬれにき もろともにみつのくるまにのりしかとわれはいちみのあめにぬれにき | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1188 | 月のわに心をかけしゆふべよりよろづのことを夢とみるかな つきのわにこころをかけしゆふへよりよろつのことをゆめとみるかな | 僧都覚超 | 二十 | 雑六 |
| 1189 | 風ふけばまづ破れぬる草の葉によそふるからに袖ぞ露けき かせふけはまつやふれぬるくさのはによそふるからにそてそつゆけき | 藤原公任 | 二十 | 雑六 |
| 1190 | つねならぬ我が身は水の月なれば世にすみとけむ事もおぼえず つねならぬわかみはみつのつきなれはよにすみとけむこともおもはす | 小弁 | 二十 | 雑六 |
| 1191 | ちる花を惜しまばとまれ世の中は心のほかのものとやはきく ちるはなををしまはとまれよのなかはこころのほかのものとやはきく | 伊勢大輔 | 二十 | 雑六 |
| 1192 | こしらへてかりのやどりにやすめずばまことの道をいかでしらまし こしらへてかりのやとりにやすめすはまことのみちをいかてしらまし | 赤染衛門 | 二十 | 雑六 |
| 1193 | 道とほみ中空にてやかへらまし思へばかりの宿ぞうれしき みちとほみなかそらにてやかへらましおもへはかりのやとそうれしき | 康資王母 | 二十 | 雑六 |
| 1194 | 衣なる玉ともかけてしらざりきゑひさめてこそ嬉しかりけれ ころもなるたまともかけてしらさりきゑひさめてこそうれしかりけれ | 赤染衛門 | 二十 | 雑六 |
| 1195 | 鷲の山へだつる雲やふかからむ常にすむなる月を見ぬかな わしのやまへたつるくもやふかからむつねにすむなるつきをみぬかな | 康資王母 | 二十 | 雑六 |
| 1196 | 世を救ふうちにはたれかいらざらむ普き門は人しささねば よをすくふうちにはたれかいらさらむあまねきかとはひとしささねは | 藤原公任 | 二十 | 雑六 |
| 1197 | 津の国の難波のことか法ならぬ遊びたはぶれまてとこそきけ つのくにのなにはのことかのりならぬあそひたはふれまてとこそきけ | 遊女宮木 | 二十 | 雑六 |
| 1198 | 笛のねの春おもしろく聞ゆるは花ちりたりと吹けばなりけり ふえのねのはるおもしろくきこゆるははなちりたりとふけはなりけり | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1199 | 武隈の松はふた木をみ木といふはよくよめるにはあらぬなるべし たけくまのまつはふたきをみきといふはよくよめるにはあらぬなるへし | 僧正深覚 | 二十 | 雑六 |
| 1200 | さかざらば桜を人の折らましや桜のあだは桜なりけり さかさらはさくらをひとのをらましやさくらのあたはさくらなりけり | 源道済 | 二十 | 雑六 |
| 1201 | まだちらぬ花もやあると尋ねみむあなかま暫し風にしらすな またちらぬはなもやあるとたつねみむあなかましはしかせにしらすな | 藤原実方 | 二十 | 雑六 |
| 1202 | 桃の花宿にたてれはあるじさへすけるものとや人のみるらむ もものはなやとにたてれはあるしさへすけるものとやひとのみるらむ | 大江嘉言 | 二十 | 雑六 |
| 1203 | みかの夜のもちひはくはじわづらはしきけば淀野にははこつむなり みかのよのもちひはくはしわつらはしきけはよとのにははこつむなり | 藤原実方 | 二十 | 雑六 |
| 1204 | 思ふ事みなつきねとて麻のはをきりにきりても祓へつるかな おもふことみなつきねとてあさのはをきりにきりてもはらへつるかな | 和泉式部 | 二十 | 雑六 |
| 1205 | 君がかす夜の衣をたなばたは返しやしつるひるくさしとて きみかかすよるのころもをたなはたはかへしやしつるひるくさしとて | 皇太后宮陸奥 | 二十 | 雑六 |
| 1206 | もみぢばは錦とみゆとききしかどめもあやにこそけふはなりぬれ もみちははにしきとみゆとききしかとめもあやにこそけふはちりぬれ | 藤原頼宗 | 二十 | 雑六 |
| 1207 | おちつもる庭をだにとてみるものをうたて嵐のはきにはくかな おちつもるにはをたにとてみるものをうたてあらしのはきにはくかな | 増基法師 | 二十 | 雑六 |
| 1208 | こころざし大原山の炭ならば思ひをそへておこすばかりぞ こころさしおほはらやまのすみならはおもひをそへておこすはかりそ | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1209 | 雲井にていかであふぎと思ひしにてかくばかりもなりにけるかな くもゐにていかてあふきとおもひしにてかくはかりもなりにけるかな | 天台座主源心 | 二十 | 雑六 |
| 1210 | はかなくも忘られにける扇かなおちたりけりと人もこそみれ はかなくもわすられにけるあふきかなおちたりけりとひともこそみれ | 和泉式部 | 二十 | 雑六 |
| 1211 | さなくてもねられぬものをいとどしくつき驚かす鐘の音かな さならてもねられぬものをいととしくつきおとろかすかねのおとかな | 和泉式部 | 二十 | 雑六 |
| 1212 | 忘れてもあるべきものをこの頃の月夜よいたく人なすかせそ わすれてもあるへきものをこのころのつきよよいたくひとなすかせそ | 藤原義孝 | 二十 | 雑六 |
| 1213 | 道芝やおどろの髪にならされて移れる香こそ草枕なれ みちしはやおとろのかみにならされてうつれるかこそくさまくらなれ | 小大君 | 二十 | 雑六 |
| 1214 | まけかたのはづかしげなる朝顔を鏡草にもみせてけるかな まけかたのはつかしけなるあさかほをかかみくさにもみせてけるかな | 読人知らず | 二十 | 雑六 |
| 1215 | 思ひいづることもあらじとみえつれどやといふにこそ驚かれぬれ おもひいつることもあらしとみえつれとやといふにこそおとろかれぬれ | 藤原道綱母 | 二十 | 雑六 |
| 1216 | 白浪のたちながらだに長門なる豊浦の里のとよられよかし しらなみのたちなからたになかとなるとよらのさとのとよられよかし | 能因法師 | 二十 | 雑六 |
| 1217 | はかなくも思ひけるかな乳もなくて博士の家の乳母せむとは はかなくもおもひけるかなちもなくてはかせのいへのめのとせむとは | 大江匡衡 | 二十 | 雑六 |
| 1218 | さもあらばあれ大和心しかしこくば細ちにつけてあらすばかりぞ さもあらはあれやまとこころしかしこくはほそちにつけてあらすはかりそ | 赤染衛門 | 二十 | 雑六 |
※読人(作者)についてはできる限り正確に整えておりますが、誤りもある可能性があります。ご了承ください。官位ではなく本名で掲載しています。
※作者検索をしたいときは、藤原、源といったいわゆる氏を除いた名のみで検索することをおすすめいたします。
※濁点につきましては原文通り加えておりません。時間的余裕があれば書き加えてまいります。
※検索機能のために歌の句切れについては間隔を開けずに掲載しております。一部の歌で一つの言葉を2つの句に渡ってよまれることがあるためです。