枕詞 「ひさかたの/久方の」の和歌集 万葉集、古今、後撰、拾遺、新古今和歌集などから88首!

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「ひさかたの」の歌

「ひさかたの」は天(あめ、あま)、雨、月、雲、空、光などにかかる枕詞

「久方の」と書く。天に関係のある語にかかる。日射す方、など諸説ある。

和歌を詠んで、「久方の」から感じる各々の感覚が答えです。

「ひさかたの」の歌集ごとの数と割合

万葉 古今 後撰 拾遺 後拾 金葉 詞花 千載 新古
50 10 2 12 0 1 2 3 8
1.1 0.9 0.1 0.9 0 0.2 0.5 0.2 0.4
※上は歌の数、下は割合(パーセント)です
※カウントは枕詞、そのままの意味の両方をカウントしています

百人一首

33番 古今 84-春下 紀友則 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ

76番 詞花 382-雑下 藤原忠通 わたのはら漕ぎいでてみればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波

万葉集

1巻-82 長田王うらさぶる心さまねしひさかたの天のしぐれの流らふ見れば

2巻-167 柿本人麻呂天地の 初めの時 ひさかたの 天の河原に 八百万 千万神の 神集ひ 集ひいまして 神分り 分りし時に 天照らす 日女の命 (さしのぼる 日女の命) 天をば 知らしめすと 葦原の 瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命と 天雲の 八重かき別きて (天雲の八重雲別きて) 神下し いませまつりし 高照らす 日の御子は 飛ぶ鳥の 清御原の宮に 神ながら 太敷きまして すめろきの 敷きます国と 天の原 岩戸を開き 神上り 上りいましぬ (神登り いましにしかば) 我が大君 皇子の命の 天の下 知らしめしせば 春花の 貴くあらむと 望月の 満しけむと 天の下 食す国 四方の人の 大船の 思ひ頼みて 天つ水 仰ぎて待つに いかさまに 思ほしめせか つれもなき 真弓の岡に 宮柱 太敷きいまし みあらかを 高知りまして 朝言に 御言問はさぬ 日月の 数多くなりぬれ そこ故に 皇子の宮人 ゆくへ知らずも (さす竹の 皇子の宮人 ゆくへ知らにす)

2巻-168 柿本人麻呂ひさかたの天見るごとく仰ぎ見し皇子の御門の荒れまく惜しも

2巻-199 柿本人麻呂かけまくも ゆゆしきかも (ゆゆしけれども) 言はまくも あやに畏き 明日香の 真神の原に ひさかたの 天つ御門を 畏くも 定めたまひて 神さぶと 磐隠ります やすみしし 我が大君の きこしめす 背面の国の 真木立つ 不破山超えて 高麗剣 和射見が原の 仮宮に 天降りいまして 天の下 治めたまひ (掃ひたまひて) 食す国を 定めたまふと 鶏が鳴く 東の国の 御いくさを 召したまひて ちはやぶる 人を和せと 奉ろはぬ 国を治めと (掃へと) 皇子ながら 任したまへば 大御身に 大刀取り佩かし 大御手に 弓取り持たし 御軍士を 率ひたまひ 整ふる 鼓の音は 雷の 声と聞くまで 吹き鳴せる 小角の音も (笛の音は) 敵見たる 虎か吼ゆると 諸人の おびゆるまでに (聞き惑ふまで) ささげたる 幡の靡きは 冬こもり 春さり来れば 野ごとに つきてある火の (冬こもり 春野焼く火の) 風の共 靡くがごとく 取り持てる 弓弭の騒き み雪降る 冬の林に (木綿の林) つむじかも い巻き渡ると 思ふまで 聞きの畏く (諸人の 見惑ふまでに) 引き放つ 矢の繁けく 大雪の 乱れて来れ (霰なす そちより来れば) まつろはず 立ち向ひしも 露霜の 消なば消ぬべく 行く鳥の 争ふはしに (朝霜の 消なば消とふに うつせみと 争ふはしに) 渡会の 斎きの宮ゆ 神風に い吹き惑はし 天雲を 日の目も見せず 常闇に 覆ひ賜ひて 定めてし 瑞穂の国を 神ながら 太敷きまして やすみしし 我が大君の 天の下 申したまへば 万代に しかしもあらむと (かくしもあらむと) 木綿花の 栄ゆる時に 我が大君 皇子の御門を (刺す竹の 皇子の御門を) 神宮に 装ひまつりて 使はしし 御門の人も 白栲の 麻衣着て 埴安の 御門の原に あかねさす 日のことごと 獣じもの い匍ひ伏しつつ ぬばたまの 夕になれば 大殿を 振り放け見つつ 鶉なす い匍ひ廻り 侍へど 侍ひえねば 春鳥の さまよひぬれば 嘆きも いまだ過ぎぬに 思ひも いまだ尽きねば 言さへく 百済の原ゆ 神葬り 葬りいまして あさもよし 城上の宮を 常宮と 高く奉りて 神ながら 鎮まりましぬ しかれども 我が大君の 万代と 思ほしめして 作らしし 香具山の宮 万代に 過ぎむと思へや 天のごと 振り放け見つつ 玉たすき 懸けて偲はむ 畏かれども

2巻-200 柿本人麻呂ひさかたの天知らしぬる君故に日月も知らず恋ひわたるかも

2巻-204 置始東人やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 ひさかたの 天つ宮に 神ながら 神といませば そこをしも あやに畏み 昼はも 日のことごと 夜はも 夜のことごと 伏し居嘆けど 飽き足らぬかも

3巻-239 柿本人麻呂やすみしし 我が大君 高照らす 我が日の御子の 馬並めて 御狩り立たせる 若薦を 狩路の小野に 獣こそば い匍ひ拝め 鶉こそ い匍ひ廻れ 獣じもの い匍ひ拝み 鶉なす い匍ひ廻り 畏みと 仕へまつりて ひさかたの 天見るごとく まそ鏡 仰ぎて見れど 春草の いやめづらしき 我が大君かも

3巻-240 柿本人麻呂ひさかたの天行く月を網に刺し我が大君は蓋にせり

3巻-261 柿本人麻呂やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 敷きいます 大殿の上に ひさかたの 天伝ひ来る 雪じもの 行き通ひつつ いや常世まで

3巻-292 角麻呂ひさかたの天の探女が岩船の泊てし高津はあせにけるかも

3巻-379 坂上郎女ひさかたの 天の原より 生れ来る 神の命 奥山の 賢木の枝に しらか付け 木綿取り付けて 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 繁に貫き垂れ 獣じもの 膝折り伏して たわや女の 襲取り懸け かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも

3巻-420 丹生王なゆ竹の とをよる御子 さ丹つらふ 我が大君は こもりくの 初瀬の山に 神さびに 斎きいますと 玉梓の 人ぞ言ひつる およづれか 我が聞きつる たはことか 我が聞きつるも 天地に 悔しきことの 世間の 悔しきことは 天雲の そくへの極み 天地の 至れるまでに 杖つきも つかずも行きて 夕占問ひ 石占もちて 我が宿に みもろを立てて 枕辺に 斎瓮を据ゑ 竹玉を 間なく貫き垂れ 木綿たすき かひなに懸けて 天なる ささらの小野の 七節菅 手に取り持ちて ひさかたの 天の川原に 出で立ちて みそぎてましを 高山の 巌の上に いませつるかも

3巻-475 大伴家持かけまくも あやに畏し 言はまくも ゆゆしきかも 我が大君 皇子の命 万代に 見したまはまし 大日本 久迩の都は うち靡く 春さりぬれば 山辺には 花咲きををり 川瀬には 鮎子さ走り いや日異に 栄ゆる時に およづれの たはこととかも 白栲に 舎人よそひて 和束山 御輿立たして ひさかたの 天知らしぬれ 臥いまろび ひづち泣けども 為むすべもなし

4巻-519 大伴女郎雨障み常する君はひさかたの昨夜の夜の雨に懲りにけむかも

4巻-520 大伴女郎ひさかたの雨も降らぬか雨障み君にたぐひてこの日暮らさむ

4巻-651 坂上郎女ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ

4巻-769 大伴家持ひさかたの雨の降る日をただ独り山辺に居ればいぶせかりけり

5巻-801 山上憶良ひさかたの天道は遠しなほなほに家に帰りて業を為まさに

5巻-822 大伴旅人我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも(主人)

5巻-894 山上憶良神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり 人さはに 満ちてはあれども 高照らす 日の朝廷 神ながら 愛での盛りに 天の下 奏したまひし 家の子と 選ひたまひて 大御言 (反云 大みこと) 戴き持ちて もろこしの 遠き境に 遣はされ 罷りいませ 海原の 辺にも沖にも 神づまり 領きいます もろもろの 大御神たち 船舳に (反云 ふなのへに) 導きまをし 天地の 大御神たち 大和の 大国御魂 ひさかたの 天のみ空ゆ 天翔り 見わたしたまひ 事終り 帰らむ日には またさらに 大御神たち 船舳に 御手うち掛けて 墨縄を 延へたるごとく あぢかをし 値嘉の崎より 大伴の 御津の浜びに 直泊てに 御船は泊てむ 障みなく 幸くいまして 早帰りませ

6巻-1040 大伴家持ひさかたの雨は降りしけ思ふ子がやどに今夜は明かして行かむ

7巻-1080 ひさかたの天照る月は神代にか出で反るらむ年は経につつ

7巻-1083 霜曇りすとにかあるらむ久方の夜渡る月の見えなく思へば

7巻-1371 ひさかたの雨には着ぬをあやしくも我が衣手は干る時なきか

8巻-1485 大伴家持夏まけて咲きたるはねずひさかたの雨うち降らば移ろひなむか

8巻-1519 山上憶良久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ

8巻-1520 山上憶良彦星は 織女と 天地の 別れし時ゆ いなうしろ 川に向き立ち 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 青波に 望みは絶えぬ 白雲に 涙は尽きぬ かくのみや 息づき居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 真櫂もがも (小棹もがも) 朝なぎに い掻き渡り 夕潮に (夕にも) い漕ぎ渡り 久方の 天の川原に 天飛ぶや 領巾片敷き 真玉手の 玉手さし交へ あまた夜も 寐ねてしかも (寐もさ寝てしか) 秋にあらずとも (秋待たずとも)

8巻-1566 大伴家持久方の雨間も置かず雲隠り鳴きぞ行くなる早稲田雁がね

8巻-1661 紀少鹿女郎久方の月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君

9巻-1764 藤原房前久方の 天の川に 上つ瀬に 玉橋渡し 下つ瀬に 舟浮け据ゑ 雨降りて 風吹かずとも 風吹きて 雨降らずとも 裳濡らさず やまず来ませと 玉橋渡す

10巻-1812 柿本人麻呂歌集ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも

10巻-1997 柿本人麻呂歌集久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつすべなきまでに

10巻-2007 柿本人麻呂歌集ひさかたの天つしるしと水無し川隔てて置きし神代し恨めし

10巻-2070 久方の天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか

10巻-2092 天地と 別れし時ゆ 久方の 天つしるしと 定めてし 天の川原に あらたまの 月重なりて 妹に逢ふ 時さもらふと 立ち待つに 我が衣手に 秋風の 吹きかへらへば 立ちて居て たどきを知らに むらきもの 心いさよひ 解き衣の 思ひ乱れて いつしかと 我が待つ今夜 この川の 流れの長く ありこせぬかも

10巻-2093 妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月ぞ経にける

10巻-2325 誰が園の梅の花ぞもひさかたの清き月夜にここだ散りくる

11巻-2395 柿本人麻呂歌集行き行きて逢はぬ妹ゆゑひさかたの天露霜に濡れにけるかも

11巻-2463 柿本人麻呂歌集久方の天照る月の隠りなば何になそへて妹を偲はむ

11巻-2676 ひさかたの天飛ぶ雲にありてしか君をば相見むおつる日なしに

11巻-2685 妹が門行き過ぎかねつひさかたの雨も降らぬかそをよしにせむ

12巻-3004 久方の天つみ空に照る月の失せなむ日こそ我が恋止まめ

12巻-3125 ひさかたの雨の降る日を我が門に蓑笠着ずて来る人や誰れ

12巻-3208 久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇の夜に見ゆ

13巻-3252 ひさかたの都を置きて草枕旅行く君をいつとか待たむ

15巻-3650 ひさかたの天照る月は見つれども我が思ふ妹に逢はぬころかも

15巻-3672 ひさかたの月は照りたり暇なく海人の漁りは灯し合へり見ゆ

16巻-3837 ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たる見む

20巻-4443 大伴家持ひさかたの雨は降りしくなでしこがいや初花に恋しき我が背

20巻-4465 大伴家持久方の 天の門開き 高千穂の 岳に天降りし 皇祖の 神の御代より はじ弓を 手握り持たし 真鹿子矢を 手挟み添へて 大久米の ますらたけをを 先に立て 靫取り負ほせ 山川を 岩根さくみて 踏み通り 国求ぎしつつ ちはやぶる 神を言向け まつろはぬ 人をも和し 掃き清め 仕へまつりて 蜻蛉島 大和の国の 橿原の 畝傍の宮に 宮柱 太知り立てて 天の下 知らしめしける 天皇の 天の日継と 継ぎてくる 君の御代御代 隠さはぬ 明き心を すめらへに 極め尽して 仕へくる 祖の官と 言立てて 授けたまへる 子孫の いや継ぎ継ぎに 見る人の 語り継ぎてて 聞く人の 鏡にせむを 惜しき 清きその名ぞ おぼろかに 心思ひて 空言も 祖の名絶つな 大伴の 氏と名に負へる 大夫の伴

古今和歌集

84-春下 紀友則 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ

173-秋上 読人知らず 秋風の 吹きにし日より 久方の 天の河原に 立たぬ日はなし

174-秋上 読人知らず 久方の 天の河原の 渡し守 君渡りなば かぢかくしてよ

194-秋上 壬生忠岑 久方の 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ

269-秋下 藤原敏行 久方の 雲の上にて 見る菊は 天つ星とぞ あやまたれける

334-冬 読人知らず 梅の花 それとも見えず 久方の あまぎる雪の なべて降れれば

452-物名 景式王 小夜ふけて なかばたけゆく 久方の 月吹きかへせ 秋の山風

751-恋五 在原元方 久方の 天つ空にも すまなくに 人はよそにぞ 思ふべらなる

968-雑下 伊勢 久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる

1002-雑体 紀貫之 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも絶えず 天彦の 音羽の山の 春霞 思ひ乱れて 五月雨の 空もとどろに 小夜ふけて 山郭公 鳴くごとに 誰も寝ざめて 唐錦 竜田の山の もみぢ葉を 見てのみしのぶ 神無月 時雨しぐれて 冬の夜の 庭もはだれに 降る雪の なほ消えかへり 年ごとに 時につけつつ あはれてふ ことを言ひつつ 君をのみ 千代にと祝ふ 世の人の 思ひするがの 富士の嶺の もゆる思ひも あかずして わかるる涙 藤衣 おれる心も 八千草の 言の葉ごとに すべらぎの おほせかしこみ まきまきの 中につくすと 伊勢の海の 浦のしほ貝 拾ひ集め 取れりとすれど 玉の緒の 短き心 思ひあへず なほあらたまの 年をへて 大宮にのみ 久方の 昼夜わかず つかふとて かへりみもせぬ 我が宿の しのぶ草おふる 板間あらみ ふる春雨の もりやしぬらむ

後撰和歌集

18-春上 紀貫之 春霞たなひきにけり久方の月の桂も花やさくらむ

327-秋中 紀淑光 そらとほみ秋やよくらん久方の月のかつらの色もかはらぬ

拾遺和歌集

12-春 柿本人麻呂(人麿) 梅の花それとも見えす久方のあまきるこのなへてふれれは

422-物名 藤原輔相 久方のつきのきぬをはきたれともひかりはそはぬわか身なりけり

433-雑上 紀貫之 思ふ事有りとはなしに久方の月よとなれはねられさりけり

440-雑上 凡河内躬恒 久方のあまつそらなる月なれといつれの水に影やとるらん

473-雑上 菅原道真母 久方の月の桂もをるはかり家の風をもふかせてしかな

476-雑上 柿本人麻呂(人麿) 久方のあめにはきぬをあやしくもわか衣手のひる時もなき

571-雑下 源順 あらたまの年のはたちにたらさりし時はの山の山さむみ風もさはらぬふち衣ふたたひたちしあさきりに心もそらにまとひそめみなしこ草になりしより物思ふことの葉をしけみけぬへきつゆのよるはおきて夏はみきはにもえわたるほたるをそてにひろひつつ冬は花かと見えまかひこのもかのもにふりつもる雪をたもとにあつめつつふみみていてし道は猶身のうきにのみ有りけれはここもかしこもあしねはふしたにのみこそしつみけれたれここのつのさは水になくたつのねを久方のくものうへまてかくれなみたかくきこゆるかひありていひなかしけん人は猶かひもなきさにみつしほの世にはからくてすみの江の松はいたつらおいぬれとみとりの衣ぬきすてむはるはいつともしらなみのなみちにいたくゆきかよひゆもとりあへすなりにける舟のわれをしきみしらはあはれいまたにしつめしとあまのつりなはうちはへてひくとしきかは物はおもはし

572-雑下 大中臣能宣 世の中をおもへはくるしわするれはえもわすられすたれもみなおなしみ山の松かえとかるる事なくすへらきのちよもやちよもつかへんとたかきたのみをかくれぬのしたよりねさすあやめくさあやなき身にも人なみにかかる心を思ひつつ世にふるゆきをきみはしも冬はとりつみ夏は又草のほたるをあつめつつひかりさやけき久方の月のかつらををるまてに時雨にそほちつゆにぬれへにけむそてのふかみとりいろあせかたに今はなりかつしたはよりくれなゐにうつろひはてん秋にあははまつひらけなん花よりもこたかきかけとあふかれん物とこそ見ししほかまのうらさひしけになそもかく世をしも思ひなすのゆのたきるゆゑをもかまへつつわか身を人の身になしておもひくらへよももしきにあかしくらしてとこ夏のくもゐはるけきみな人におくれてなひく我もあるらし

789-恋三 柿本人麻呂(人麿) 久方のあまてる月もかくれ行く何によそへてきみをしのはむ

1127-雑秋 読人知らず 久方の月をさやけみもみちはのこさもうすさもわきつへらなり

1195-雑賀 紀貫之 こぬ人をしたにまちつつ久方の月をあはれといはぬよそなき

1252-雑恋 大伴家持 久方のあめのふるひをたたひとり山へにをれはむもれたりけり

後拾遺和歌集

なし

金葉和歌集

45-春 源俊頼 山桜さきそめしより久方の雲ゐに見ゆる瀧の白糸

詞花和歌集

379-雑下 崇徳院 ひさかたの天の香具山いづる日もわが方にこそひかりさすらめ

382-雑下 藤原忠通 わたのはら漕ぎいでてみればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波

千載和歌集

930-恋五 寂超法師 久方の月ゆゑにやは恋ひそめしなかむれはまつぬるるそてかな

1160-雑下 源俊頼 もかみ川せせのいはかとわきかへりおもふこころはおほかれと行かたもなくせかれつつそこのみくつとなることはもにすむ虫のわれからとおもひしらすはなけれともいはてはえこそなきさなるかたわれ舟のうつもれてひく人もなきなけきすと浪のたちゐにあふけともむなしき空はみとりにていふこともなきかなしさにねをのみなけはからころもおさふる袖もくちはてぬなにことにかはあはれともおもはん人にあふみなるうちいてのはまのうちいてつついふともたれかささかにのいかさまにてもかきつかんことをはのきにふくかせのはけしきころとしりなからうはの空にもをしふへきあつさのそまにみや木ひきみかきかはらにせりつみしむかしをよそにききしかとわか身のうへになりはてぬさすかに御代のはしめより雲のうへにはかよへともなにはのことも久方の月のかつらしをられねはうけらか花のさきなからひらけぬことのいふせさによもの山へにあくかれてこのもかのもにたちましりうつふしそめのあさころも花のたもとにぬきかへて後のよをたにとおもへともおもふ人人ほたしにてゆくへきかたもまとはれぬかかるうき身のつれもなくへにける年をかそふれはいつつのとをになりにけりいま行すゑはいなつまのひかりのまにもさためなしたとへはひとりなからへてすきにしはかりすくすとも夢にゆめみる心ちしてひまゆく駒にことならしさらにもいはしふゆかれのをはなかすゑの露なれはあらしをたにもまたすしてもとのしつくとなりはてんほとをはいつとしりてかはくれにとたにもしつむへきかくのみつねにあらそひてなほふるさとにすみのえのしほにたたよふうつせかひうつし心もうせはててあるにもあらぬよのなかに又なにことをみくまののうらのはまゆふかさねつつうきにたヘたるためしにはなるをの松のつれつれといたつらことをかきつめてあはれしれらん行すゑの人のためにはおのつからしのはれぬへき身なれともはかなきことも雲とりのあやにかなはぬくせなれはこれもさこそはみなしくりくち葉かしたにうつもれめそれにつけてもつのくにのいく田のもりのいくたひかあまのたくなはくり返し心にそはぬ身をうらむらん

1162-雑下 崇徳院 しきしまや大和のうたのつたはりをきけははるかに久方のあまつ神世にはしまりてみそもしあまりひともしはいつもの宮のや雲よりおこりけるとそしるすなるそれより後はもも草のことのはしけくちりちりに風につけつつきこゆれとちかきためしにほりかはのなかれをくみてささ浪のよりくる人にあつらへてつたなきことははまちとりあとをすゑまてととめしとおもひなからもつのくにのなにはのうらのなにとなくふねのさすかに此ことをしのひならひしなこりにてよの人ききははつかしのもりもやせんとおもへともこころにもあらすかきつらねつる

新古今和歌集

254-夏 藤原定家 ひさかたの中なる河のうかひ舟いかにちきりてやみをまつらん

266-夏 源俊頼 とをちにはゆふたちすらしひさかたのあまのかく山くもかくれゆく

321-秋上 式子内親王 なかむれは衣手すすしひさかたのあまのかはらの秋のゆふくれ

392-秋上 藤原家隆 なかめつつおもふもさひしひさかたの月のみやこのあけかたのそら

604-冬 飛鳥井雅経 秋の色をはらひはててやひさかたの月のかつらにこからしの風

849-哀傷 柿本人麿 ひさかたのあめにしほるる君ゆへに月日もしらてこひわたるらん

1653-雑中 藤原有家 ひさかたのあまつをとめか夏衣くも井にさらすぬのひきのたき

1866-神祇 紀淑望 ひさかたのあめのやへ雲ふりわけてくたりし君をわれそむかへし