八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ
「たまのをの」の歌
簡単な説明
- 「たまのをの」は長し、短し、継ぐ、乱る、命などにかかる枕詞。
- 「玉の緒の」と書く。玉の緒とは、玉(宝石)を貫くひものこと。
- 長し、短し、など、玉の緒に関連した言葉にかかっている。
- 短い事の例えとして用いられることもあり、その意味から命にもかかる。
解説
「たまのをの」(玉の緒の)は、主に「長し」「絶ゆ」などにかかり、「玉の緒」は玉をつなぐ細い糸を意味します。繊細で切れやすいことから、儚い命や短い人生を象徴し、和歌で無常感を表現する際に用いられます。糸が容易に切れる様子を、命の終わりや運命のはかなさになぞらえ、人の生の脆さや愛のもろさを示す効果があります。「たまのをの」は、命や愛が続くことを願う気持ちと、それがいつかは途絶えるかもしれないという切なさを同時に表現します。長い道のりや長く続く思いを詠むときにも使われ、時間の流れと命の儚さが巧みに重ね合わされます。
「たまのをの」の歌集ごとの数と割合
万葉 | 古今 | 後撰 | 拾遺 | 後拾 | 金葉 | 詞花 | 千載 | 新古 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
19 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
0.4 | 0.2 | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 |
百人一首
なし
万葉集
3巻-481 高橋白栲の 袖さし交へて 靡き寝し 我が黒髪の ま白髪に なりなむ極み 新世に ともにあらむと 玉の緒の 絶えじい妹と 結びてし ことは果たさず 思へりし 心は遂げず 白栲の 手本を別れ にきびにし 家ゆも出でて みどり子の 泣くをも置きて 朝霧の おほになりつつ 山背の 相楽山の 山の際に 行き過ぎぬれば 言はむすべ 為むすべ知らに 我妹子と さ寝し妻屋に 朝には 出で立ち偲ひ 夕には 入り居嘆かひ 脇ばさむ 子の泣くごとに 男じもの 負ひみ抱きみ 朝鳥の 哭のみ泣きつつ 恋ふれども 験をなみと 言とはぬ ものにはあれど 我妹子が 入りにし山を よすかとぞ思ふ
7巻-1280 柿本人麻呂歌集うちひさす宮道を行くに我が裳は破れぬ玉の緒の思ひ乱れて家にあらましを
7巻-1321 世間は常かくのみか結びてし白玉の緒の絶ゆらく思へば
10巻-1936 相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緒の長き春日を思ひ暮らさく
11巻-2365 うちひさす宮道に逢ひし人妻ゆゑに玉の緒の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き
11巻-2366 まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ
11巻-2787 天地の寄り合ひの極み玉の緒の絶えじと思ふ妹があたり見つ
11巻-2788 息の緒に思へば苦し玉の緒の絶えて乱れな知らば知るとも
11巻-2789 玉の緒の絶えたる恋の乱れなば死なまくのみぞまたも逢はずして
11巻-2790 玉の緒のくくり寄せつつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ
11巻-2792 玉の緒の現し心や年月の行きかはるまで妹に逢はずあらむ
11巻-2793 玉の緒の間も置かず見まく欲り我が思ふ妹は家遠くありて
11巻-2826 かくしつつあり慰めて玉の緒の絶えて別ればすべなかるべし
12巻-3082 君に逢はず久しくなりぬ玉の緒の長き命の惜しけくもなし
12巻-3083 恋ふることまされる今は玉の緒の絶えて乱れて死ぬべく思ほゆ
12巻-3211 玉の緒の現し心や八十楫懸け漕ぎ出む船に後れて居らむ
13巻-3255 古ゆ 言ひ継ぎけらく 恋すれば 苦しきものと 玉の緒の 継ぎては言へど 娘子らが 心を知らに そを知らむ よしのなければ 夏麻引く 命かたまけ 刈り薦の 心もしのに 人知れず もとなぞ恋ふる 息の緒にして
13巻-3334 たはことか人の言ひつる玉の緒の長くと君は言ひてしものを
19巻-4214 大伴家持天地の 初めの時ゆ うつそみの 八十伴の男は 大君に まつろふものと 定まれる 官にしあれば 大君の 命畏み 鄙離る 国を治むと あしひきの 山川へだて 風雲に 言は通へど 直に逢はず 日の重なれば 思ひ恋ひ 息づき居るに 玉桙の 道来る人の 伝て言に 我れに語らく はしきよし 君はこのころ うらさびて 嘆かひいます 世間の 憂けく辛けく 咲く花も 時にうつろふ うつせみも 常なくありけり たらちねの 御母の命 何しかも 時しはあらむを まそ鏡 見れども飽かず 玉の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の 失せぬるごとく 置く露の 消ぬるがごとく 玉藻なす 靡き臥い伏し 行く水の 留めかねつと たはことか 人の言ひつる およづれか 人の告げつる 梓弓 爪引く夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ にはたづみ 流るる涙 留めかねつも
古今和歌集
667-恋三 紀友則 下にのみ 恋ふれば苦し 玉の緒の 絶えて乱れむ 人なとがめそ
1002-雑体 紀貫之 ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも絶えず 天彦の 音羽の山の 春霞 思ひ乱れて 五月雨の 空もとどろに 小夜ふけて 山郭公 鳴くごとに 誰も寝ざめて 唐錦 竜田の山の もみぢ葉を 見てのみしのぶ 神無月 時雨しぐれて 冬の夜の 庭もはだれに 降る雪の なほ消えかへり 年ごとに 時につけつつ あはれてふ ことを言ひつつ 君をのみ 千代にと祝ふ 世の人の 思ひするがの 富士の嶺の もゆる思ひも あかずして わかるる涙 藤衣 おれる心も 八千草の 言の葉ごとに すべらぎの おほせかしこみ まきまきの 中につくすと 伊勢の海の 浦のしほ貝 拾ひ集め 取れりとすれど 玉の緒の 短き心 思ひあへず なほあらたまの 年をへて 大宮にのみ 久方の 昼夜わかず つかふとて かへりみもせぬ 我が宿の しのぶ草おふる 板間あらみ ふる春雨の もりやしぬらむ
後撰和歌集
646-恋二 紀貫之 たまのをのたえてみしかきいのちもて年月なかきこひもするかな
拾遺和歌集
566-雑下 柿本人麻呂(人麿) ますかかみみしかと思ふいもにあはむかもたまのをのたえたるこひのしけきこのころ
809-恋三 柿本人麻呂(人麿) うつつにはあふことかたし玉の緒のよるはたえせすゆめに見えなん
後拾遺和歌集
なし
金葉和歌集
なし
詞花和歌集
なし
千載和歌集
なし
新古今和歌集
815-哀傷 藤原長家 たまのをの長ためしにひく人もきゆれはつゆにことならぬかな
1759-雑下 藤原定家 君かよにあはすはなにを玉のをのなかくとまてはおしまれし身を