ほととぎす和歌集 百人一首、古今、拾遺、詞花、新古今など勅撰八代集から260首!

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ほととぎすの歌

後徳大寺ごとくだいじの左大臣さだいじん
ほととぎす
きつるかた
ながむれば
ただ有明ありあけ
つきのこれる

「ほととぎす」は夏の訪れを知らせる初夏の鳥。時鳥、霍公鳥、子規とも書く。

今は「かっこう」と読む、郭公とも書かれ、和歌ではほととぎすと読みます。夏歌を中心に、恋歌などでも用いらています。

ここでは八代集において詠われた「ほととぎす」260首を紹介します。

万葉集(153首)のほととぎす

ほととぎすの歌集ごとの数と割合

万葉 古今 後撰 拾遺 後拾 金葉 詞花 千載 新古
153 42 39 40 34 19 9 31 46
3.4 3.8 2.7 3 2.8 2.9 2.2 2.4 2.3
※上は歌の数、下は割合(パーセント)です

百人一首 81番

千載集 – 夏 – 161 後徳大寺左大臣(藤原実定)ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる

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古今和歌集

135-春歌下 読人知らず我が宿の 池の藤波 咲きにけり 山郭公 いつか来鳴かむ

137-夏歌 読人知らず五月待つ 山郭公 うちはぶき 今も鳴かなむ 去年のふる声

138-夏歌 伊勢五月こば 鳴きもふりなむ 郭公 まだしきほどの 声を聞かばや

140-夏歌 読人知らずいつの間に 五月来ぬらむ あしひきの 山郭公 今ぞ鳴くなる

141-夏歌 読人知らず今朝き鳴き いまだ旅なる 郭公 花橘に 宿はからなむ

142-夏歌 紀友則音羽山 今朝越えくれば 郭公 梢はるかに 今ぞ鳴くなる

143-夏歌 素性法師郭公 初声聞けば あぢきなく 主さだまらぬ 恋せらるはた

144-夏歌 素性法師いそのかみ ふるきみやこの 郭公 声ばかりこそ 昔なりけれ

145-夏歌 読人知らず夏山に 鳴く郭公 心あらば 物思ふ我に 声な聞かせそ

146-夏歌 読人知らず郭公 鳴く声聞けば 別れにし ふるさとさへぞ 恋しかりける

147-夏歌 読人知らず郭公 なが鳴く里の あまたあれば なほうとまれぬ 思ふものから

148-夏歌 読人知らず思ひいづる ときはの山の 郭公 唐紅の ふりいでてぞ鳴く

149-夏歌 読人知らず声はして 涙は見えぬ 郭公 我が衣手の ひつをからなむ

150-夏歌 読人知らずあしひきの 山郭公 をりはへて 誰かまさると 音をのみぞ鳴く

151-夏歌 読人知らず今さらに 山へかへるな 郭公 声のかぎりは 我が宿に鳴け

152-夏歌 三国町やよやまて 山郭公 ことづてむ 我れ世の中に 住みわびぬとよ

153-夏歌 紀友則五月雨に 物思ひをれば 郭公 夜深く鳴きて いづち行くらむ

154-夏歌 紀友則夜や暗き 道や惑へる 郭公 我が宿をしも すぎがてに鳴く

155-夏歌 大江千里宿りせし 花橘も 枯れなくに など郭公 声絶えぬらむ

156-夏歌 紀貫之夏の夜の ふすかとすれば 郭公 鳴くひと声に 明くるしののめ

157-夏歌 壬生忠岑くるるかと 見れば明けぬる 夏の夜を あかずとや鳴く 山郭公

158-夏歌 紀秋岑夏山に 恋しき人や 入りにけむ 声ふりたてて 鳴く郭公

159-夏歌 読人知らず去年の夏 鳴きふるしてし 郭公 それかあらぬか 声のかはらぬ

160-夏歌 紀貫之五月雨の 空もとどろに 郭公 何を憂しとか 夜ただ鳴くらむ

161-夏歌 凡河内躬恒郭公 声も聞こえず 山彦は ほかになく音を 答へやはせぬ

162-夏歌 紀貫之郭公 人まつ山に 鳴くなれば 我うちつけに 恋ひまさりけり

163-夏歌 壬生忠岑昔べや 今も恋しき 郭公 ふるさとにしも 鳴きてきつらむ

164-夏歌 凡河内躬恒郭公 我とはなしに 卯の花の うき世の中に 鳴き渡るらむ

359-賀歌 紀友則めづらしき 声ならなくに 郭公 ここらの年を あかずもあるかな

384-離別歌 紀貫之音羽山 こだかく鳴きて 郭公 君が別れを 惜しむべらなり

447-物名 平篤行郭公 峰の雲にや まじりにし ありとは聞けど 見るよしもなき

469-恋歌一 読人知らず郭公 鳴くや五月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな

499-恋歌一 読人知らずあしひきの 山郭公 我がごとや 君に恋ひつつ いねがてにする

578-恋歌二 藤原敏行我がごとく ものやかなしき 郭公 時ぞともなく 夜ただ鳴くらむ

579-恋歌二 紀貫之五月山 梢を高み 郭公 鳴く音空なる 恋もするかな

641-恋歌三 読人知らず郭公 夢かうつつか 朝露の おきて別れし 暁の声

710-恋歌四 読人知らずたが里に 夜がれをしてか 郭公 ただここにしも 寝たる声する

719-恋歌四 読人知らず忘れなむ 我をうらむな 郭公 人の秋には あはむともせず

849-哀傷歌 紀貫之郭公 今朝鳴く声に おどろけば 君に別れし 時にぞありける

855-哀傷歌 読人知らずなき人の 宿にかよはば 郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ

1002-雑体 紀貫之ちはやぶる 神の御代より 呉竹の 世よにも絶えず 天彦の 音羽の山の 春霞 思ひ乱れて 五月雨の 空もとどろに 小夜ふけて 山郭公 鳴くごとに 誰も寝ざめて 唐錦 竜田の山の もみぢ葉を 見てのみしのぶ 神無月 時雨しぐれて 冬の夜の 庭もはだれに 降る雪の なほ消えかへり 年ごとに 時につけつつ あはれてふ ことを言ひつつ 君をのみ 千代にと祝ふ 世の人の 思ひするがの 富士の嶺の もゆる思ひも あかずして わかるる涙 藤衣 おれる心も 八千草の 言の葉ごとに すべらぎの おほせかしこみ まきまきの 中につくすと 伊勢の海の 浦のしほ貝 拾ひ集め 取れりとすれど 玉の緒の 短き心 思ひあへず なほあらたまの 年をへて 大宮にのみ 久方の 昼夜わかず つかふとて かへりみもせぬ 我が宿の しのぶ草おふる 板間あらみ ふる春雨の もりやしぬらむ

1013-雑体 藤原敏行いくばくの 田をつくればか 郭公 しでの田をさを 朝な朝な呼ぶ

後撰和歌集

148-夏 読人知らず 卯花のさけるかきねの月きよみいねすきけとやなくほとときす

149-夏 読人知らず 郭公きゐるかきねはちかなからまちとほにのみ声のきこえぬ

150-夏 読人知らず ほとときす声まつほとはとほからてしのひになくをきかぬなるらん

156-夏 読人知らず 鳴きわひぬいつちかゆかん郭公猶卯花の影ははなれし

157-夏 読人知らず あひ見しもまた見ぬこひも郭公月になくよそよににさりける

158-夏 読人知らず 有りとのみおとはの山の郭公ききにきこえてあはすもあるかな

159-夏 伊勢 こかくれてさ月まつとも郭公はねならはしに枝うつりせよ

163-夏 読人知らず このころはさみたれちかみ郭公思ひみたれてなかぬ日そなき

164-夏 読人知らず まつ人は誰ならなくにほとときす思ひの外になかはうからん

166-夏 大春日師範 さみたれに春の宮人くる時は郭公をやうくひすにせん

172-夏 伊勢 ふた声と聞くとはなしに郭公夜深くめをもさましつるかな

174-夏 読人知らず うとまるる心しなくは郭公あかぬ別にけさはけなまし

175-夏 読人知らず 折りはへてねをのみそなく郭公しけきなけきの枝ことにゐて

176-夏 読人知らず ほとときすきては旅とや鳴渡る我は別のをしき宮こを

177-夏 読人知らず 独ゐて物思ふ我を郭公ここにしもなく心あるらし

178-夏 読人知らず 玉匣あけつるほとのほとときすたたふたこゑもなきてこしかな

179-夏 読人知らず かすならぬわか身山への郭公このはかくれのこゑはきこゆや

180-夏 読人知らず とこ夏に鳴きてもへなんほとときすしけきみ山になに帰るらむ

181-夏 読人知らず ふすからにまつそわひしき郭公なきもはてぬにあくるよなれは

184-夏 読人知らず 葦引の山郭公うちはへて誰かまさるとねをのみそなく

185-夏 読人知らず つれつれとなかむる空の郭公とふにつけてそねはなかれける

186-夏 読人知らず 色かへぬ花橘に郭公ちよをならせるこゑきこゆなり

187-夏 読人知らず たひねしてつまこひすらし郭公神なひ山にさよふけてなく

189-夏 伊勢 郭公はつかなるねをききそめてあらぬもそれとおほめかれつつ

191-夏 読人知らず 郭公ひとこゑにあくる夏の夜の暁かたやあふこなるらむ

196-夏 藤原師尹朝臣 如何せむをくらの山の郭公おほつかなしとねをのみそなく

197-夏 読人知らず 郭公暁かたのひとこゑはうき世中をすくすなりけり

208-夏 読人知らず 秋ちかみ夏はてゆけは郭公なく声かたき心ちこそすれ

211-夏 紀貫之 花もちり郭公さへいぬるまて君にもゆかすなりにけるかな

547-恋一 源たのむかむすめ つらしともいかか怨みむ郭公わかやとちかくなく声はせて

548-恋一 敦慶親王 里ことに鳴きこそ渡れ郭公すみか定めぬ君たつぬとて

549-恋一 春道列樹 かすならぬみ山かくれの郭公人しれぬねをなきつつそふる

867-恋四 読人知らず 君かねにくらふの山の郭公いつれあたなるこゑまさるらん

912-恋五 読人知らず 郭公なつきそめてしかひもなくこゑをよそにもききわたるかな

950-恋五 左太臣(実頼) 今ははやみ山をいてて郭公けちかきこゑを我にきかせよ

951-恋五 大輔 人はいさみ山かくれの郭公ならはぬさとはすみうかるへし

1006-恋六 読人知らず わすられて年ふるさとの郭公なににひとこゑなきてゆくらん

1020-恋六 読人知らず いかにして事かたらはん郭公歎のしたになけはかひなし

1261-雑四 読人知らず 有りと聞くおとはの山の郭公何かくるらんなくこゑはして

拾遺和歌集

95-夏 読人知らず 春かけてきかむともこそ思ひしか山郭公おそくなくらん

96-夏 読人知らず はつこゑのきかまほしさに郭公夜深くめをもさましつるかな

97-夏 久米広縄 家にきてなにをかたらむあしひきの山郭公ひとこゑもかな

98-夏 紀貫之 山さとにしる人もかな郭公なきぬときかはつけにくるかに

99-夏 読人知らず やまさとにやとらさりせは郭公きく人もなきねをやなかまし

100-夏 坂上望城 髣髴にそ鳴渡るなる郭公み山をいつるけさのはつ声

101-夏 平兼盛 み山いてて夜はにやきつる郭公暁かけてこゑのきこゆる

102-夏 藤原道綱母 宮こ人ねてまつらめや郭公今そ山へをなきていつなる

103-夏 坂上是則 山かつと人はいへとも郭公まつはつこゑは我のみそきく

104-夏 壬生忠見 さ夜ふけてねさめさりせは郭公人つてにこそきくへかりけれ

105-夏 伊勢 ふたこゑときくとはなしに郭公夜深くめをもさましつるかな

106-夏 源公忠朝臣 行きやらて山ちくらしつほとときす今ひとこゑのきかまほしさに

107-夏 紀貫之 このさとにいかなる人かいへゐして山郭公たえすきくらむ

111-夏 延喜御製 葦引の山郭公けふとてやあやめの草のねにたててなく

112-夏 読人知らず たかそてに思ひよそへて郭公花橘のえたになくらん

113-夏 壬生忠見 いつ方になきてゆくらむ郭公よとのわたりのまたよふかきに

115-夏 紀貫之 かの方にはやこきよせよ郭公道になきつと人にかたらん

116-夏 凡河内躬恒 郭公をちかへりなけうなゐこかうちたれかみのさみたれのそら

117-夏 読人知らず なけやなけたか田の山の郭公このさみたれにこゑなをしみそ

118-夏 読人知らず さみたれはいこそねられね郭公夜ふかくなかむこゑをまつとて

119-夏 読人知らず うたて人おもはむものをほとときすよるしもなとかわかやとになく

120-夏 大伴坂上郎女 郭公いたくななきそひとりゐていのねられぬにきけはくるしも

121-夏 中務 夏の夜の心をしれるほとときすはやもなかなんあけもこそすれ

123-夏 読人知らず なつくれは深草山の郭公なくこゑしけくなりまさるなり

124-夏 藤原実方朝臣 さ月やみくらはし山の郭公おほつかなくもなきわたるかな

125-夏 読人知らず 郭公なくやさ月のみしかよもひとりしぬれはあかしかねつも

126-夏 源順 ほとときす松につけてやともしする人も山へによをあかすらん

344-別 伊勢 郭公ねくらなからのこゑきけは草の枕そつゆけかりける

391-物名 仙慶法師 五月雨にならぬ限は郭公なにかはなかむしのふはかりに

820-恋三 読人知らず こぬ人をまつちの山の郭公おなし心にねこそなかるれ

821-恋三 読人知らず しののめになきこそわたれ時鳥物思ふやとはしるくやあるらん

1066-雑春 清原元輔 春はをし郭公はたきかまほし思ひわつらふしつ心かな

1071-雑春 柿本人麻呂(人麿) 郭公かよふかきねの卯の花のうきことあれや君かきまさぬ

1073-雑春 実方朝臣 年をへてみ山かくれの郭公きく人もなきねをのみそなく

1074-雑春 読人知らず 声たててなくといふとも郭公たもとはぬれしそらねなりけり

1075-雑春 清原元輔 かくはかりまつとしらはや郭公こすゑたかくもなきわたるかな

1076-雑春 大中臣輔親 あしひきの山郭公さとなれてたそかれ時になのりすらしも

1077-雑春 大伴像見 ふるさとのならしのをかに郭公事つてやりきいかにつけきや

1282-哀傷 右大臣 ここにたにつれつれになく郭公ましてここひのもりはいかにそ

1307-哀傷 伊勢 しての山こえてきつらん郭公こひしき人のうへかたらなん

後拾遺和歌集

162-春下 藤原定頼 ほととぎすおもひもかけぬ春なけばことしぞまたで初音ききつる

163-春下 大中臣能宣 ほととぎすなかずばなかずいかにして暮れ行く春をまたもくはへむ

165-夏 和泉式部 桜色に染めし衣をぬぎかへて山ほととぎすけふよりぞまつ

166-夏 藤原明衡 きのふまでをしみし花は忘られてけふはまたるるほととぎすかな

178-夏 元慶法師 わがやどのかきねなすぎそほととぎすいづれの里もおなじ卯の花

179-夏 慶範法師 ほととぎすわれはまたでぞこころみるおもふことのみたがふ身なれば

180-夏 藤原頼宗 ほととぎすたづぬばかりのなのみしてきかずばさてや宿にかへらむ

181-夏 藤原尚忠 ここにわがきかまほしきをあしひきの山ほととぎすいかになくらむ

182-夏 道命法師 あしひきの山ほととぎすのみならずおほかた鳥のこゑもきこえず

183-夏 皇后宮美作 きかばやなその神山のほととぎすありし昔のおなじこゑかと

184-夏 備前典侍 ほととぎすなのりしてこそしらるなれたづねぬ人につげややらまし

185-夏 大中臣能宣 ききすてて君が来にけむほととぎすたづねにわれは山路こえみむ

186-夏 増基法師 このころはねてのみぞまつほととぎすしばしみやこのものがたりせよ

187-夏 橘資成 宵のまはまどろみなましほととぎす明けてきなくとかねてしりせば

188-夏 伊勢大輔 ききつともきかずともなくほととぎす心まどはす小夜のひとこゑ

189-夏 能因法師 夜だにあけば尋ねてきかむほととぎす信太の杜のかたになくなり

190-夏 藤原兼房 夏の夜はさてもやなくとほととぎすふたこゑきける人にとはばや

191-夏 小弁 ねぬよこそ數つもりぬれほととぎすきくほどもなきひとこゑにより

192-夏 藤原頼通 ありあけの月だにあれや郭公ただひとこゑのゆくかたもみむ

193-夏 赤染衛門 なかぬ夜もなく夜も更にほととぎすまつとてやすくいやはねらるる

194-夏 赤染衛門 夜もすがら待ちつるものをほととぎすまただになかで過ぎぬなるかな

195-夏 大江公資 東路おもひいでにせむほととぎすおいそのもりの夜半の一聲

196-夏 法橋忠命 ききつるや初音なるらむほととぎす老いはねざめぞうれしかりける

197-夏 大江嘉言 いづかたとききだにわかずほととぎすただひとこゑのこころまよひに

198-夏 道命法師 ほととぎす待つ程とこそ思ひつれききての後もねられざりけり

199-夏 道命法師 ほととぎす夜ふかき聲をきくのみぞ物思ふ人のとり所なる

200-夏 律師長済 一こゑもききがたかりしほととぎすともになく身となりにけるかな

201-夏 能因法師 ほととぎす来鳴かぬよひのしるからば寝る夜もひとよあらましものを

202-夏 大弐三位 またぬ夜もまつ夜も聞きつほととぎす花たちばなの匂ふあたりは

203-夏 小弁 ねてのみや人はまつらむほととぎす物思ふやどは聞かぬ夜ぞなき

996-雑三 藤原兼房 五月闇ここひのもりのほととぎす人しれずのみなきゐたるかな

997-雑三 大弐三位 ほととぎすここひの森に啼く聲はきくよぞ人の袖もぬれけり

998-雑三 素意法師 すめらぎもあらひとかみもなごむまでなきけるもりのほととぎすかな

1096-雑四 六院齋院宣旨 忍び音をききこそわたれほととぎす通ふ垣根のかくれなければ

金葉和歌集

91-春 僧都証観 春の来る道にきむかへ郭公かたらふ聲に立ちやとまると

110-夏 藤原顕季 み山いでてまだ里なれぬほととぎす旅の空なるねをや鳴くらむ

111-夏 藤原節信 今日もまた尋ねくらしつ郭公いかで聞くべき初音なるらむ

112-夏 藤原忠通 郭公すがたは水にやどれども聲はうつらぬ物にぞありける

113-夏 藤原経忠 年ごとに聞くとはすれど郭公こゑはふりせぬ物にぞありける

114-夏 藤原顕輔 郭公こころも空にあくがれて夜がれがちなるみ山邊の里

115-夏 藤原孝善 郭公あかで過ぎぬる聲によりあとなき空を眺めつるかな

116-夏 權僧正永縁 聞くたびにめづらしければ郭公いつも初音の心地こそすれ

117-夏 坂上望城 ほのかにぞ鳴きわたるなる郭公み山を出づる夜半の初聲

118-夏 白河院 郭公まつにかかりてあかすかな藤の花とや人は見つらむ

119-夏 中納言女王 郭公ほのめく聲をいづかたと聞きまどはしつ曙の空

120-夏 前齋院六條 宿近くしばしかたらへほととぎす待つ夜の數の積もるしるしに

121-夏 源俊頼 音せぬは待つ人からか郭公たれ教へけむ數ならぬ身と

122-夏 康資王母 山ちかく浦こぐ舟は郭公なくわたりこそとまりなりけれ

123-夏 皇后宮式部 ほととぎす雲の玉江にもる月の影ほのかにも鳴きわたるかな

124-夏 源定信 わぎもこに逢坂山のほととぎす明くればかへる空に鳴くなり

125-夏 源経信 ほととぎす雲路にまよふ聲すなりをやみだにせよ五月雨の空

448-恋下 藤原公実 ほととぎす雲井のよそになりしかば我ぞなごりの空になかれし

637-雑下 田口重如 草の葉にかどではしたりほととぎす死出の山路もかくや露けき

詞花和歌集

55-夏 周防内侍 むかしにもあらぬわが身にほととぎす待つこころこそ変らざりけれ

56-夏 藤原忠兼 ほととぎす鳴く音ならでは世の中に待つこともなきわが身なりけり

57-夏 花山院 今年だにまつ初こゑをほととぎす世にはふるさで我にきかせよ

58-夏 道命法師 山里のかひこそなけれほととぎす都の人もかくや待つらむ

59-夏 能因法師 山彦のこたふる山のほととぎす一こゑなけは二こゑぞきく

60-夏 藤原伊家 ほととぎすあかつきかけて鳴くこゑを待たぬ寝覚の人やきくらむ

61-夏 藤原実綱 待つ人は寝る夜もなきをほととぎす鳴く音は夢のここちこそすれ

62-夏 源俊頼 鳴きつとも誰にかいはむほととぎす影よりほかに人しなければ

315-雑上 読人知らず 誰が里にかたらひかねてほととぎす帰る山路のたよりなるらむ

千載和歌集

148-夏 按察使公通 ほとときすまつはひさしき夏のよをねぬにあけぬと誰かいひけん

149-夏 藤原道経 ふたこゑときかてややまむ時鳥まつにねぬ夜のかすはつもりて

150-夏 賀茂重保 ほとときすしのふるころは山ひこのこたふる声もほのかにそする

151-夏 道命法師 あやしきはまつ人からかほとときすなかぬにさへもぬるる袖かな

152-夏 康資王母 ねさめするたよりにきけは郭公つらき人をも待つへかりけり

153-夏 刑部卿頼輔母 ほとときす又もやなくとまたれつつきく夜しもこそねられさりけれ

154-夏 覚盛法師 またてきく人にとははや郭公さてもはつねやうれしかるらん

155-夏 前参議教長 たつねてもきくへきものを時鳥人たのめなる夜はの一声

156-夏 権大納言実家 おもひやる心もつきぬほとときす雲のいくへの外になくらん

157-夏 仁和寺法親王(守覚) ほとときすなほはつこゑをしのふ山ゆふゐる雲のそこに鳴くなり

158-夏 藤原清輔朝臣 かさこしをゆふこえくれはほとときすふもとの雲のそこに鳴くなり

159-夏 前右京権大夫頼政 ひとこゑはさやかに鳴きてほとときす雲ちはるかにとほさかるなり

160-夏 摂政前右大臣 おもふことなき身なりせはほとときす夢にきく夜もあらましものを

161-夏 右のおほいまうちきみ ほとときす鳴きつるかたをなかむれはたたあり明の月そのこれる

162-夏 権大納言実国 なこりなくすきぬなるかなほとときすこそかたらひしやととしらすや

163-夏 権大納言宗家 夕つくよいるさの山のこかくれにほのかにもなくほとときすかな

164-夏 前左衡門督公光 ほとときすききもわかれぬ一こゑによものそらをもなかめつるかな

165-夏 皇太后宮大夫俊成 すきぬるか夜はのねさめの時鳥こゑはまくらにある心ちして

166-夏 道因法師 よをかさねねぬよりほかにほとときすいかに待ちてか二こゑはきく

167-夏 権中納言長方 心をそつくしはてつるほとときすほのめくよひの村雨のそら

170-夏 内大臣 のきちかくけふしもきなく郭公ねをやあやめにそへてふくらん

188-夏 賀茂成保 五月雨の雲のはれまに月さえて山ほとときす空に鳴くなり

189-夏 按察使資賢 をちかへりぬるともきなけ郭公いまいくかかはさみたれのそら

190-夏 中納言師時 あふさかの山ほとときすなのるなりせきもる神やそらにとふらん

191-夏 律師慶暹 いにしへを恋ひつつひとりこえくれはなきあふ山のほとときすかな

192-夏 源俊頼朝臣 なとてかくおもひそめけん時鳥ゆきのみやまの法のすゑかは

193-夏 権中納言俊忠 五月やみふたむら山のほとときす嶺つつきなくこゑをきくかな

555-哀傷 上東門院 一こゑも君につけなんほとときすこの五月雨はやみにまとふと

582-哀傷 鳥羽院御製 つねよりもむつましきかなほとときすしての山ちのともとおもへは

588-哀傷 仁和寺後入道法親王(覚性) 故郷にけふこさりせはほとときすたれかむかしを恋ひてなかまし

971-雑上 和泉式部 かをるかによそふるよりはほとときすきかはやおなしこゑやしたると

新古今和歌集

189-夏 延喜御哥 夏草はしけりにけれとほとときすなとわかやとに一声もせぬ

190-夏 柿本人麿 なくこゑをえやはしのはぬほとときすはつうの花のかけにかくれて

191-夏 紫式部 ほとときす声まつほとはかたをかのもりのしつくにたちやぬれまし

192-夏 弁乳母 ほとときすみ山いつなるはつこゑをいつれのやとのたれかきくらん

193-夏 読人知らず さ月山うの花月よほとときすきけともあかす又なかんかも

194-夏 読人知らず をのかつまこひつつなくやさ月やみ神なひ山のやま郭公

195-夏 中納言家持 ほとときす一声なきていぬるよはいかてか人のいをやすくぬる

196-夏 大中臣能宣朝臣 ほとときすなきつついつるあしひきの山となてしこさきにけらしも

197-夏 大納言経信 ふた声となきつときかはほとときすころもかたしきうたたねはせん

198-夏 白河院御哥 郭公またうちとけぬしのひねはこぬ人をまつわれのみそきく

199-夏 花園左大臣 ききてしもなをそねられぬほとときすまちしよころ(ろ+の)心ならひに

200-夏 前中納言匡房 うの花のかきねならねとほとときす月のかつらのかけになくなり

201-夏 皇太后宮大夫俊成 むかしおもふくさのいほりのよるの雨になみたなそへそ山郭公

202-夏 読人知らず 雨そそくはなたち花に風すきて山郭公雲になくなり

203-夏 相模 きかてたたねなましものを郭公中々なりやよはの一声

204-夏 紫式部 たかさともとひもやくるとほとときす心のかきりまちそわひにし

205-夏 周防内侍 よをかさねまちかね山の郭公くもゐのよそに一こゑそきく

206-夏 按察使公通 ふた声ときかすはいてしほとときすいくよあかしのとまりなりとも

207-夏 民部卿範光 ほとときすなを一声はおもひいてよおいそのもりのよはのむかしを

208-夏 八条院高倉 一声はおもひそあへぬほとときすたそかれ時の雲のまよひに

209-夏 摂政太政大臣 ありあけのつれなくみえし月はいてぬ山ほとときすまつよなからに

210-夏 皇太后宮大夫俊成 わか心いかにせよとてほとときす雲まの月のかけになくらん

211-夏 前太政大臣 ほとときすなきているさの山の葉は月ゆへよりもうらめしきかな

212-夏 権中納言親宗 ありあけの月はまたぬにいてぬれとなを山ふかきほとときすかな

213-夏 藤原保季朝臣 すきにけりしのたのもりのほとときすたえぬしつくを袖にのこして

214-夏 藤原家隆朝臣 いかにせんこぬよあまたのほとときすまたしとおもへはむらさめのそら

215-夏 式子内親王 こゑはしてくもちにむせふほとときす涙やそそくよゐのむらさめ

216-夏 権中納言公経 ほとときすなをうとまれぬ心かななかなくさとのよそのゆふくれ

217-夏 西行法師 きかすともここをせにせんほとときす山田のはらのすきのむらたち

218-夏 読人知らず 郭公ふかきみねよりいてにけりと山のすそに声のおちくる

219-夏 後徳大寺左大臣 をささふくしつのまろやのかりのとをあけかたになく郭公かな

220-夏 摂政太政大臣 うちしめりあやめそかほるほとときすなくやさ月の雨のゆふくれ

235-夏 藤原定家朝臣 さみたれの月はつれなきみ山よりひとりもいつるほとときすかな

236-夏 太上天皇 ほとときす雲井のよそにすきぬなりはれぬおもひのさみたれの比

237-夏 二条院讃岐 五月雨の雲まの月のはれゆくをしはしまちけるほとときすかな

244-夏 読人知らず ほとときすはなたちはなのかをとめてなくはむかしの人やこひしき

248-夏 権中納言国信 ほとときすさ月みな月わきかねてやすらふ声そそらにきこゆる

456-秋 下 善滋為政朝臣 ほとときすなくさみたれにうへし田をかりかねさむみ秋そくれぬる

1043-恋一 前大納言公任 ほとときすいつかとまちしあやめくさけふはいかなるねにかなくへき

1044-恋一 馬内侍 さみたれはそらおほれするほとときすときになくねは人もとかめす

1045-恋一 法成寺入道前摂政太政大臣 ほとときす声をきけと花のえにまたふみなれぬ物をこそおもへ

1046-恋一 馬内侍 ほとときすしのふるものをかしは木のもりても声のきこえける哉

1047-恋一 読人知らず こころのみそらになりつつほとときす人たのめなるねこそなかるれ

1486-雑上 式子内親王 ほとときすそのかみ山のたひ枕ほのかたらひしそらそわすれぬ

1487-雑上 読人知らず たちいつるなこり有明の月かけにいととかたらふほとときすかな

1489-雑上 三条院女蔵人左近 むめかえにおりたかへたるほとときす声のあやめもたれかわくへき