ほととぎす和歌集 万葉集に収録された153首を紹介!

スポンサーリンク

八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ

スポンサーリンク

ほととぎすの歌 万葉集

夏の訪れを知らせる「ほととぎす」。霍公鳥とも書く。

ここでは万葉集において詠われた「ほととぎす」、153首を紹介します。

勅撰八代集(260首)のほととぎす

万葉集

2巻-112 額田王いにしへに恋ふらむ鳥はほととぎすけだしや鳴きし我が念へるごと

3巻-424 山前王(柿本人麻呂?)つのさはふ 磐余の道を 朝さらず 行きけむ人の 思ひつつ 通ひけまくは ほととぎす 鳴く五月には あやめぐさ 花橘を 玉に貫き (貫き交へ) かづらにせむと 九月の しぐれの時は 黄葉を 折りかざさむと 延ふ葛の いや遠長く (葛の根の いや遠長に) 万代に 絶えじと思ひて (大船の 思ひたのみて) 通ひけむ 君をば明日ゆ (君を明日ゆは) 外にかも見む

6巻-1058 田辺福麻呂歌集狛山に鳴くほととぎす泉川渡りを遠みここに通はず (渡り遠みか通はずあるらむ)

8巻-1465 藤原夫人ほととぎすいたくな鳴きそ汝が声を五月の玉にあへ貫くまでに

8巻-1466 志貴皇子神奈備の石瀬の社のほととぎす毛無の岡にいつか来鳴かむ

8巻-1467 弓削皇子ほととぎすなかる国にも行きてしかその鳴く声を聞けば苦しも

8巻-1468 小治田広瀬王ほととぎす声聞く小野の秋風に萩咲きぬれや声の乏しき

8巻-1469 沙弥あしひきの山ほととぎす汝が鳴けば家なる妹し常に偲はゆ

8巻-1470 刀理宣令もののふの石瀬の社のほととぎす今も鳴かぬか山の常蔭に

8巻-1472 石上堅魚ほととぎす来鳴き響もす卯の花の伴にや来しと問はましものを

8巻-1473 大伴旅人橘の花散る里のほととぎす片恋しつつ鳴く日しぞ多き

8巻-1474 坂上郎女今もかも大城の山にほととぎす鳴き響むらむ我れなけれども

8巻-1475 坂上郎女何しかもここだく恋ふるほととぎす鳴く声聞けば恋こそまされ

8巻-1476 小治田広耳ひとり居て物思ふ宵にほととぎすこゆ鳴き渡る心しあるらし

8巻-1477 大伴家持卯の花もいまだ咲かねばほととぎす佐保の山辺に来鳴き響もす

8巻-1480 大伴書持我が宿に月おし照れりほととぎす心あれ今夜来鳴き響もせ

8巻-1481 大伴書持我が宿の花橘にほととぎす今こそ鳴かめ友に逢へる時

8巻-1482 大伴清縄皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴くほととぎす我れ忘れめや

8巻-1483 奄君諸立我が背子が宿の橘花をよみ鳴くほととぎす見にぞ我が来し

8巻-1484 坂上郎女ほととぎすいたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえぬに聞けば苦しも

8巻-1486 大伴家持我が宿の花橘をほととぎす来鳴かず地に散らしてむとか

8巻-1487 大伴家持ほととぎす思はずありき木の暗のかくなるまでに何か来鳴かぬ

8巻-1488 大伴家持いづくには鳴きもしにけむほととぎす我家の里に今日のみぞ鳴く

8巻-1490 大伴家持ほととぎす待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか

8巻-1491 大伴家持卯の花の過ぎば惜しみかほととぎす雨間も置かずこゆ鳴き渡る

8巻-1493 大伴村上我が宿の花橘をほととぎす来鳴き響めて本に散らしつ

8巻-1494 大伴家持夏山の木末の茂にほととぎす鳴き響むなる声の遥けさ

8巻-1495 大伴家持あしひきの木の間立ち潜くほととぎすかく聞きそめて後恋ひむかも

8巻-1497 高橋虫麻呂歌集筑波嶺に我が行けりせばほととぎす山彦響め鳴かましやそれ

8巻-1498 坂上郎女暇なみ来まさぬ君にほととぎす我れかく恋ふと行きて告げこそ

8巻-1499 大伴四綱言繁み君は来まさずほととぎす汝れだに来鳴け朝戸開かむ

8巻-1501 小治田広耳ほととぎす鳴く峰の上の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ

8巻-1505 大神女郎ほととぎす鳴きしすなはち君が家に行けと追ひしは至りけむかも

8巻-1506 田村大嬢故郷の奈良思の岡のほととぎす言告げ遣りしいかに告げきや

8巻-1507 大伴家持いかといかと ある我が宿に 百枝さし 生ふる橘 玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見るごとに 息の緒に 我が思ふ妹に まそ鏡 清き月夜に ただ一目 見するまでには 散りこすな ゆめと言ひつつ ここだくも 我が守るものを うれたきや 醜ほととぎす 暁の うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 地に散らせば すべをなみ 攀ぢて手折りつ 見ませ我妹子

8巻-1509 大伴家持妹が見て後も鳴かなむほととぎす花橘を地に散らしつ

9巻-1755 高橋虫麻呂歌集鴬の 卵の中に ほととぎす 独り生れて 己が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り 来鳴き響もし 橘の 花を居散らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 賄はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥

9巻-1756 高橋虫麻呂歌集かき霧らし雨の降る夜をほととぎす鳴きて行くなりあはれその鳥

10巻-1937 大夫の 出で立ち向ふ 故郷の 神なび山に 明けくれば 柘のさ枝に 夕されば 小松が末に 里人の 聞き恋ふるまで 山彦の 相響むまで ほととぎす 妻恋ひすらし さ夜中に鳴く

10巻-1938 旅にして妻恋すらしほととぎす神なび山にさ夜更けて鳴く

10巻-1939 ほととぎす汝が初声は我れにもが五月の玉に交へて貫かむ

10巻-1940 朝霞たなびく野辺にあしひきの山ほととぎすいつか来鳴かむ

10巻-1942 ほととぎす鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛引く娘女

10巻-1943 月夜よみ鳴くほととぎす見まく欲り我れ草取れり見む人もがも

10巻-1944 藤波の散らまく惜しみほととぎす今城の岡を鳴きて越ゆなり

10巻-1945 朝霧の八重山越えてほととぎす卯の花辺から鳴きて越え来ぬ

10巻-1946 木高くはかつて木植ゑじほととぎす来鳴き響めて恋まさらしむ

10巻-1947 逢ひかたき君に逢へる夜ほととぎす他時ゆは今こそ鳴かめ

10巻-1948 木の暗の夕闇なるに (なれば) ほととぎすいづくを家と鳴き渡るらむ

10巻-1949 ほととぎす今朝の朝明に鳴きつるは君聞きけむか朝寐か寝けむ

10巻-1950 ほととぎす花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散りつつ

10巻-1951 うれたきや醜ほととぎす今こそば声の嗄るがに来鳴き響めめ

10巻-1952 今夜のおほつかなきにほととぎす鳴くなる声の音の遥けさ

10巻-1953 五月山卯の花月夜ほととぎす聞けども飽かずまた鳴かぬかも

10巻-1954 ほととぎす来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に落ちむ見む

10巻-1955 ほととぎすいとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ

10巻-1956 大和には鳴きてか来らむほととぎす汝が鳴くごとになき人思ほゆ

10巻-1957 卯の花の散らまく惜しみほととぎす野に出で山に入り来鳴き響もす

10巻-1958 橘の林を植ゑむほととぎす常に冬まで棲みわたるがね

10巻-1959 雨晴れの雲にたぐひてほととぎす春日をさしてこゆ鳴き渡る

10巻-1960 物思ふと寐ねぬ朝明にほととぎす鳴きてさ渡るすべなきまでに

10巻-1961 我が衣を君に着せよとほととぎす我れをうながす袖に来居つつ

10巻-1962 本つ人ほととぎすをやめづらしく今か汝が来る恋ひつつ居れば

10巻-1963 かくばかり雨の降らくにほととぎす卯の花山になほか鳴くらむ

10巻-1968 ほととぎす来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や誰れ

10巻-1976 卯の花の咲き散る岡ゆほととぎす鳴きてさ渡る君は聞きつや

10巻-1977 聞きつやと君が問はせるほととぎすしののに濡れてこゆ鳴き渡る

10巻-1978 橘の花散る里に通ひなば山ほととぎす響もさむかも

10巻-1979 春さればすがるなす野のほととぎすほとほと妹に逢はず来にけり

10巻-1980 五月山花橘にほととぎす隠らふ時に逢へる君かも

10巻-1981 ほととぎす来鳴く五月の短夜もひとりし寝れば明かしかねつも

10巻-1991 ほととぎす来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや

12巻-3181 ほととぎす飛幡の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがも

14巻-3375 信濃なる須我の荒野にほととぎす鳴く声聞けば時過ぎにけり

15巻-3799 中臣宅守過所なしに関飛び越ゆるほととぎす多我子尓毛止まず通はむ

15巻-3825 中臣宅守恋ひ死なば恋ひも死ねとやほととぎす物思ふ時に来鳴き響むる

15巻-3826 中臣宅守旅にして物思ふ時にほととぎすもとなな鳴きそ我が恋まさる

15巻-3827 中臣宅守雨隠り物思ふ時にほととぎす我が住む里に来鳴き響もす

15巻-3828 中臣宅守旅にして妹に恋ふればほととぎす我が住む里にこよ鳴き渡る

15巻-3829 中臣宅守心なき鳥にぞありけるほととぎす物思ふ時に鳴くべきものか

15巻-3830 中臣宅守ほととぎす間しまし置け汝が鳴けば我が思ふ心いたもすべなし

17巻-3954 大伴書持橘は常花にもがほととぎす住むと来鳴かば聞かぬ日なけむ

17巻-3955 大伴書持玉に貫く楝を家に植ゑたらば山ほととぎす離れず来むかも

17巻-3956 大伴家持あしひきの山辺に居ればほととぎす木の間立ち潜き鳴かぬ日はなし

17巻-3957 大伴家持ほととぎす何の心ぞ橘の玉貫く月し来鳴き響むる

17巻-3958 大伴家持ほととぎす楝の枝に行きて居ば花は散らむな玉と見るまで

17巻-3959 田口馬長ほととぎす今し来鳴かば万代に語り継ぐべく思ほゆるかも

17巻-3961 大伴家持橘のにほへる香かもほととぎす鳴く夜の雨にうつろひぬらむ

17巻-3962 大伴家持ほととぎす夜声なつかし網ささば花は過ぐとも離れずか鳴かむ

17巻-3963 大伴家持橘のにほへる園にほととぎす鳴くと人告ぐ網ささましを

17巻-3964 大伴家持あをによし奈良の都は古りぬれどもとほととぎす鳴かずあらなくに

17巻-3991 大伴池主ほととぎす鳴きて過ぎにし岡びから秋風吹きぬよしもあらなくに

17巻-4023 大伴家持妹も我れも 心は同じ たぐへれど いやなつかしく 相見れば 常初花に 心ぐし めぐしもなしに はしけやし 我が奥妻 大君の 命畏み あしひきの 山越え野行き 天離る 鄙治めにと 別れ来し その日の極み あらたまの 年行き返り 春花の うつろふまでに 相見ねば いたもすべなみ 敷栲の 袖返しつつ 寝る夜おちず 夢には見れど うつつにし 直にあらねば 恋しけく 千重に積もりぬ 近くあらば 帰りにだにも うち行きて 妹が手枕 さし交へて 寝ても来ましを 玉桙の 道はし遠く 関さへに へなりてあれこそ よしゑやし よしはあらむぞ ほととぎす 来鳴かむ月に いつしかも 早くなりなむ 卯の花の にほへる山を よそのみも 振り放け見つつ 近江道に い行き乗り立ち あをによし 奈良の我家に ぬえ鳥の うら泣けしつつ 下恋に 思ひうらぶれ 門に立ち 夕占問ひつつ 我を待つと 寝すらむ妹を 逢ひてはや見む

17巻-4028 大伴家持あしひきの山も近きをほととぎす月立つまでに何か来鳴かぬ

17巻-4033 大伴家持ぬばたまの月に向ひてほととぎす鳴く音遥けし里遠みかも

17巻-4038 大伴池主藤波は 咲きて散りにき 卯の花は 今ぞ盛りと あしひきの 山にも野にも ほととぎす 鳴きし響めば うち靡く 心もしのに そこをしも うら恋しみと 思ふどち 馬打ち群れて 携はり 出で立ち見れば 射水川 港の渚鳥 朝なぎに 潟にあさりし 潮満てば 夫呼び交す 羨しきに 見つつ過ぎ行き 渋谿の 荒礒の崎に 沖つ波 寄せ来る玉藻 片縒りに 蘰に作り 妹がため 手に巻き持ちて うらぐはし 布勢の水海に 海人船に ま楫掻い貫き 白栲の 袖振り返し あどもひて 我が漕ぎ行けば 乎布の崎 花散りまがひ 渚には 葦鴨騒き さざれ波 立ちても居ても 漕ぎ廻り 見れども飽かず 秋さらば 黄葉の時に 春さらば 花の盛りに かもかくも 君がまにまと かくしこそ 見も明らめめ 絶ゆる日あらめや

17巻-4041 内蔵縄麻呂我が背子が国へましなばほととぎす鳴かむ五月は寂しけむかも

17巻-4042 大伴家持我れなしとなわび我が背子ほととぎす鳴かむ五月は玉を貫かさね

17巻-4051 大伴家持かき数ふ 二上山に 神さびて 立てる栂の木 本も枝も 同じときはに はしきよし 我が背の君を 朝去らず 逢ひて言どひ 夕されば 手携はりて 射水川 清き河内に 出で立ちて 我が立ち見れば 東風の風 いたくし吹けば 港には 白波高み 妻呼ぶと 渚鳥は騒く 葦刈ると 海人の小舟は 入江漕ぐ 楫の音高し そこをしも あやに羨しみ 偲ひつつ 遊ぶ盛りを 天皇の 食す国なれば 御言持ち 立ち別れなば 後れたる 君はあれども 玉桙の 道行く我れは 白雲の たなびく山を 岩根踏み 越えへなりなば 恋しけく 日の長けむぞ そこ思へば 心し痛し ほととぎす 声にあへ貫く 玉にもが 手に巻き持ちて 朝夕に 見つつ行かむを 置きて行かば惜し

17巻-4052 大伴家持我が背子は玉にもがもなほととぎす声にあへ貫き手に巻きて行かむ

17巻-4053 大伴池主あをによし 奈良を来離れ 天離る 鄙にはあれど 我が背子を 見つつし居れば 思ひ遣る こともありしを 大君の 命畏み 食す国の 事取り持ちて 若草の 足結ひ手作り 群鳥の 朝立ち去なば 後れたる 我れや悲しき 旅に行く 君かも恋ひむ 思ふそら 安くあらねば 嘆かくを 留めもかねて 見わたせば 卯の花山の ほととぎす 音のみし泣かゆ 朝霧の 乱るる心 言に出でて 言はばゆゆしみ 砺波山 手向けの神に 幣奉り 我が祈ひ祷まく はしけやし 君が直香を ま幸くも ありた廻り 月立たば 時もかはさず なでしこが 花の盛りに 相見しめとぞ

18巻-4080 田辺福麻呂ほととぎすいとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ

18巻-4087 田辺福麻呂藤波の咲き行く見ればほととぎす鳴くべき時に近づきにけり

18巻-4088 大伴家持明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも (一頭云 ほととぎす)

18巻-4095 久米広縄めづらしき君が来まさば鳴けと言ひし山ほととぎす何か来鳴かぬ

18巻-4096 大伴家持多古の崎木の暗茂にほととぎす来鳴き響めばはだ恋ひめやも

18巻-4097 田辺福麻呂ほととぎす今鳴かずして明日越えむ山に鳴くとも験あらめやも

18巻-4098 久米広縄木の暗になりぬるものをほととぎす何か来鳴かぬ君に逢へる時

18巻-4099 大伴家持ほととぎすこよ鳴き渡れ燈火を月夜になそへその影も見む

18巻-4111 大伴家持卯の花の咲く月立ちぬほととぎす来鳴き響めよ含みたりとも

18巻-4112 遊行女婦土師二上の山に隠れるほととぎす今も鳴かぬか君に聞かせむ

18巻-4113 大伴家持居り明かしも今夜は飲まむほととぎす明けむ朝は鳴き渡らむぞ (二日應立夏節 故謂之明旦将喧也)

18巻-4114 能登乙美明日よりは継ぎて聞こえむほととぎす一夜のからに恋ひわたるかも

18巻-4129 大伴家持暁に名告り鳴くなるほととぎすいやめづらしく思ほゆるかも

18巻-4134 大伴家持高御座 天の日継と すめろきの 神の命の 聞こしをす 国のまほらに 山をしも さはに多みと 百鳥の 来居て鳴く声 春されば 聞きのかなしも いづれをか 別きて偲はむ 卯の花の 咲く月立てば めづらしく 鳴くほととぎす あやめぐさ 玉貫くまでに 昼暮らし 夜わたし聞けど 聞くごとに 心つごきて うち嘆き あはれの鳥と 言はぬ時なし

18巻-4135 大伴家持ゆくへなくありわたるともほととぎす鳴きし渡らばかくや偲はむ

18巻-4136 大伴家持卯の花のともにし鳴けばほととぎすいやめづらしも名告り鳴くなへ

18巻-4137 大伴家持ほととぎすいとねたけくは橘の花散る時に来鳴き響むる

18巻-4146 大伴家持珠洲の海人の 沖つ御神に い渡りて 潜き取るといふ 鰒玉 五百箇もがも はしきよし 妻の命の 衣手の 別れし時よ ぬばたまの 夜床片さり 朝寝髪 掻きも梳らず 出でて来し 月日数みつつ 嘆くらむ 心なぐさに ほととぎす 来鳴く五月の あやめぐさ 花橘に 貫き交へ かづらにせよと 包みて遣らむ

18巻-4156 大伴家持かけまくも あやに畏し 天皇の 神の大御代に 田道間守 常世に渡り 八桙持ち 参ゐ出来し時 時じくの かくの木の実を 畏くも 残したまへれ 国も狭に 生ひ立ち栄え 春されば 孫枝萌いつつ ほととぎす 鳴く五月には 初花を 枝に手折りて 娘子らに つとにも遣りみ 白栲の 袖にも扱入れ かぐはしみ 置きて枯らしみ あゆる実は 玉に貫きつつ 手に巻きて 見れども飽かず 秋づけば しぐれの雨降り あしひきの 山の木末は 紅に にほひ散れども 橘の なれるその実は ひた照りに いや見が欲しく み雪降る 冬に至れば 霜置けども その葉も枯れず 常磐なす いやさかはえに しかれこそ 神の御代より よろしなへ この橘を 時じくの かくの木の実と 名付けけらしも

18巻-4161 大伴家持大君の 任きのまにまに 取り持ちて 仕ふる国の 年の内の 事かたね持ち 玉桙の 道に出で立ち 岩根踏み 山越え野行き 都辺に 参ゐし我が背を あらたまの 年行き返り 月重ね 見ぬ日さまねみ 恋ふるそら 安くしあらねば ほととぎす 来鳴く五月の あやめぐさ 蓬かづらき 酒みづき 遊びなぐれど 射水川 雪消溢りて 行く水の いや増しにのみ 鶴が鳴く 奈呉江の菅の ねもころに 思ひ結ぼれ 嘆きつつ 我が待つ君が 事終り 帰り罷りて 夏の野の さ百合の花の 花笑みに にふぶに笑みて 逢はしたる 今日を始めて 鏡なす かくし常見む 面変りせず

18巻-4164 大伴家持いにしへよ偲ひにければほととぎす鳴く声聞きて恋しきものを

19巻-4211 大伴家持時ごとに いやめづらしく 八千種に 草木花咲き 鳴く鳥の 声も変らふ 耳に聞き 目に見るごとに うち嘆き 萎えうらぶれ 偲ひつつ 争ふはしに 木の暗の 四月し立てば 夜隠りに 鳴くほととぎす いにしへゆ 語り継ぎつる 鴬の 現し真子かも あやめぐさ 花橘を 娘子らが 玉貫くまでに あかねさす 昼はしめらに あしひきの 八つ峰飛び越え ぬばたまの 夜はすがらに 暁の 月に向ひて 行き帰り 鳴き響むれど なにか飽き足らむ

19巻-4213 大伴家持毎年に来鳴くものゆゑほととぎす聞けば偲はく逢はぬ日を多み (毎年謂之等之乃波)

19巻-4214 大伴家持ほととぎす 来鳴く五月に 咲きにほふ 花橘の かぐはしき 親の御言 朝夕に 聞かぬ日まねく 天離る 鄙にし居れば あしひきの 山のたをりに 立つ雲を よそのみ見つつ 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきものを 奈呉の海人の 潜き取るといふ 白玉の 見が欲し御面 直向ひ 見む時までは 松柏の 栄えいまさね 貴き我が君 (御面謂之美於毛和)

19巻-4216 大伴家持常人も起きつつ聞くぞほととぎすこの暁に来鳴く初声

19巻-4217 大伴家持ほととぎす来鳴き響めば草取らむ花橘を宿には植ゑずて

19巻-4220 大伴家持ほととぎす今来鳴きそむあやめぐさかづらくまでに離るる日あらめや (毛能波三箇辞闕之)

19巻-4221 大伴家持我が門ゆ鳴き過ぎ渡るほととぎすいやなつかしく聞けど飽き足らず (毛能波C尓乎六箇辞闕之)

19巻-4222 大伴家持我が背子と 手携はりて 明けくれば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つつ 思ひ延べ 見なぎし山に 八つ峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば ほととぎす いやしき鳴きぬ 独りのみ 聞けば寂しも 君と我れと 隔てて恋ふる 砺波山 飛び越え行きて 明け立たば 松のさ枝に 夕さらば 月に向ひて あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響め 安寐寝しめず 君を悩ませ

19巻-4223 大伴家持我れのみし聞けば寂しもほととぎす丹生の山辺にい行き鳴かにも

19巻-4224 大伴家持ほととぎす夜鳴きをしつつ我が背子を安寐な寝しめゆめ心あれ

19巻-4225 大伴家持春過ぎて 夏来向へば あしひきの 山呼び響め さ夜中に 鳴くほととぎす 初声を 聞けばなつかし あやめぐさ 花橘を 貫き交へ かづらくまでに 里響め 鳴き渡れども なほし偲はゆ

19巻-4226 大伴家持さ夜更けて暁月に影見えて鳴くほととぎす聞けばなつかし

19巻-4227 大伴家持ほととぎす聞けども飽かず網捕りに捕りてなつけな離れず鳴くがね

19巻-4228 大伴家持ほととぎす飼ひ通せらば今年経て来向ふ夏はまづ鳴きなむを

19巻-4234 大伴家持天離る 鄙としあれば そこここも 同じ心ぞ 家離り 年の経ゆけば うつせみは 物思ひ繁し そこゆゑに 心なぐさに ほととぎす 鳴く初声を 橘の 玉にあへ貫き かづらきて 遊ばむはしも 大夫を 伴なへ立てて 叔羅川 なづさひ上り 平瀬には 小網さし渡し 早き瀬に 鵜を潜けつつ 月に日に しかし遊ばね 愛しき我が背子

19巻-4237 大伴家持桃の花 紅色に にほひたる 面輪のうちに 青柳の 細き眉根を 笑み曲がり 朝影見つつ 娘子らが 手に取り持てる まそ鏡 二上山に 木の暗の 茂き谷辺を 呼び響め 朝飛び渡り 夕月夜 かそけき野辺に はろはろに 鳴くほととぎす 立ち潜くと 羽触れに散らす 藤波の 花なつかしみ 引き攀ぢて 袖に扱入れつ 染まば染むとも

19巻-4238 大伴家持ほととぎす鳴く羽触れにも散りにけり盛り過ぐらし藤波の花 (散りぬべみ袖に扱入れつ藤波の花)

19巻-4239 大伴家持ほととぎす鳴き渡りぬと告ぐれども我れ聞き継がず花は過ぎつつ

19巻-4240 大伴家持我がここだ偲はく知らにほととぎすいづへの山を鳴きか越ゆらむ

19巻-4241 大伴家持月立ちし日より招きつつうち偲ひ待てど来鳴かぬほととぎすかも

19巻-4248 久米広縄家に行きて何を語らむあしひきの山ほととぎす一声も鳴け

19巻-4252 大伴家持ここにして そがひに見ゆる 我が背子が 垣内の谷に 明けされば 榛のさ枝に 夕されば 藤の繁みに はろはろに 鳴くほととぎす 我が宿の 植木橘 花に散る 時をまだしみ 来鳴かなく そこは恨みず しかれども 谷片付きて 家居れる 君が聞きつつ 告げなくも憂し

19巻-4253 大伴家持我がここだ待てど来鳴かぬほととぎすひとり聞きつつ告げぬ君かも

19巻-4254 久米広縄谷近く 家は居れども 木高くて 里はあれども ほととぎす いまだ来鳴かず 鳴く声を 聞かまく欲りと 朝には 門に出で立ち 夕には 谷を見渡し 恋ふれども 一声だにも いまだ聞こえず

19巻-4255 久米広縄藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山ほととぎすなどか来鳴かぬ

19巻-4284 大伴家持二上の峰の上の茂に隠りにしそのほととぎす待てど来鳴かず

20巻-4350 大伴家持木の暗の茂き峰の上をほととぎす鳴きて越ゆなり今し来らしも

20巻-4482 元正天皇ほととぎすなほも鳴かなむ本つ人かけつつもとな我を音し泣くも

20巻-4483 薩妙觀ほととぎすここに近くを来鳴きてよ過ぎなむ後に験あらめやも

20巻-4508 大伴家持ほととぎすまづ鳴く朝明いかにせば我が門過ぎじ語り継ぐまで

20巻-4509 大伴家持ほととぎす懸けつつ君が松蔭に紐解き放くる月近づきぬ