枕詞 「たまくしげ/玉櫛笥」の和歌集 万葉集と古今、後撰、拾遺、金葉、新古今などから33首!

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「たまくしげ」の歌

「たまくしげ」はふた、身、みもろ、あく、覆ふ、奥に思ふなどにかかる枕詞

玉櫛笥と書く。櫛を入れる箱のこと。玉は美しさを表現している。「玉(宝石)のように美しい」といった意味。

くしげに関係のある言葉にかかる。

箱の「ふた」から、2の「ふた」となるなど、枕詞として連想される範囲は広い。

「たまくしげ」の歌集ごとの数と割合

万葉 古今 後撰 拾遺 後拾 金葉 詞花 千載 新古
18 2 3 3 1 4 1 0 1
0.4 0.2 0.2 0.2 0.1 0.6 0.2 0 0.1
※上は歌の数、下は割合(パーセント)です
※カウントは枕詞、そのままの意味の両方をカウントしています

百人一首

なし

万葉集

2巻-93 鏡王女玉櫛笥覆ふを安み明けていなば君が名はあれど吾が名し惜しも

2巻-94 藤原鎌足玉櫛笥みむろの山のさな葛さ寝ずはつひに有りかつましじ (玉くしげ三室戸山の)

3巻-376 湯原王あきづ羽の袖振る妹を玉櫛笥奥に思ふを見たまへ我が君

4巻-522 藤原麻呂娘子らが玉櫛笥なる玉櫛の神さびけむも妹に逢はずあれば

4巻-591 笠女郎我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる

7巻-1098 紀道にこそ妹山ありといへ玉櫛笥二上山も妹こそありけれ

7巻-1240 古集玉櫛笥みもろと山を行きしかばおもしろくしていにしへ思ほゆ

8巻-1531 玉櫛笥蘆城の川を今日見ては万代までに忘らえめやも

9巻-1693 柿本人麻呂歌集玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を衣手離れて独りかも寝む

9巻-1740 高橋虫麻呂歌集春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の 我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと 言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て 今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと そこらくに 堅めし言を 住吉に 帰り来りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に 垣もなく 家失せめやと この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける 水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ

11巻-2678 はしきやし吹かぬ風ゆゑ玉櫛笥開けてさ寝にし我れぞ悔しき

12巻-2884 恋ひつつも今日はあらめど玉櫛笥明けなむ明日をいかに暮らさむ

15巻-3726 狭野弟上娘子このころは恋ひつつもあらむ玉櫛笥明けてをちよりすべなかるべし

17巻-3955 土師道良ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ

17巻-3985 大伴家持射水川 い行き廻れる 玉櫛笥 二上山は 春花の 咲ける盛りに 秋の葉の にほへる時に 出で立ちて 振り放け見れば 神からや そこば貴き 山からや 見が欲しからむ 統め神の 裾廻の山の 渋谿の 崎の荒礒に 朝なぎに 寄する白波 夕なぎに 満ち来る潮の いや増しに 絶ゆることなく いにしへゆ 今のをつつに かくしこそ 見る人ごとに 懸けて偲はめ

17巻-3987 大伴家持玉櫛笥二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり

17巻-3991 大伴家持もののふの 八十伴の男の 思ふどち 心遣らむと 馬並めて うちくちぶりの 白波の 荒礒に寄する 渋谿の 崎た廻り 松田江の 長浜過ぎて 宇奈比川 清き瀬ごとに 鵜川立ち か行きかく行き 見つれども そこも飽かにと 布勢の海に 舟浮け据ゑて 沖辺漕ぎ 辺に漕ぎ見れば 渚には あぢ群騒き 島廻には 木末花咲き ここばくも 見のさやけきか 玉櫛笥 二上山に 延ふ蔦の 行きは別れず あり通ひ いや年のはに 思ふどち かくし遊ばむ 今も見るごと

18巻-4038 田辺福麻呂玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の浦を行きつつ玉も拾はむ

古今和歌集

417-羇旅 藤原兼輔 夕月夜 おぼつかなきを 玉くしげ ふたみのうらは あけてこそ見め

642-恋三 読人知らず 玉くしげ あけば君が名 立ちぬべみ 夜深くこしを 人見けむかも

後撰和歌集

178-夏 読人知らず 玉匣あけつるほとのほとときすたたふたこゑもなきてこしかな

1123-雑一 源公忠 玉匣ふたとせあはぬ君かみをあけなからやはあらむと思ひし

1124-雑一 小野好古 あけなから年ふることは玉匣身のいたつらになれはなりけり

拾遺和歌集

696-恋一 柿本人麻呂(人麿) 恋ひつつもけふは有りなんたまくしけあけんあしたをいかてくらさむ

697-恋一 読人知らず 君をのみ思ひかけこのたまくしけあけたつことにこひぬ日はなし

1209-雑賀 則忠女 いきたるかしぬるかいかにおもほえす身よりほかなるたまくしけかな

後拾遺和歌集

923-雑二 馬内侍 たまくしげ身はよそよそになりぬともふたり契りしことな忘れそ

金葉和歌集

143-夏 源親房 たまくしげ二上山の雲間よりいづれば明くる夏の夜の月

537-雑上 大中臣顕弘 たまくしげ二見の浦のかひしげみまきゑに見ゆる松のむらだち

601-雑下 読人知らず 玉くしげかけごに塵も据ゑざりしふた親ながらなき身とを知れ

602-雑下 律師実源 今朝こそはあけても見つれ玉くしげふたよりみより涙流して

詞花和歌集

226-恋上 読人知らず わが恋やふたみかはれる玉くしげいかにすれども逢ふかたもなき

千載和歌集

なし

新古今和歌集

1429-恋五 読人知らず たまくしけあけまくおしきあたら夜を衣てかれてひとりかもねん