さくら和歌集 百人一首、古今、拾遺、金葉、詞花、新古今など勅撰八代集から303首!

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八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ

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さくらの歌

権中納言ごんちゅうなごん匡房まさふさ
高砂たかさご
さくら
きにけり
外山とやまかすみ
たずもあらな

桜を詠った和歌の数々です。古今以降において「花」といえば桜を指すとされていますが、ここでは、「桜」という語を使って詠っている歌を紹介します。

春歌を中心に、雑歌、離別などにおいて多く詠われました。

ここでは八代集において詠われた「さくら」303首を紹介します。

万葉集(45首)のさくら

さくらの歌集ごとの数と割合

万葉 古今 後撰 拾遺 後拾 金葉 詞花 千載 新古
45 44 28 38 50 31 18 46 48
1 4.1 2.0 2.8 4.1 4.8 4.3 3.6 2.5
※上は歌の数、下は割合(パーセント)です

百人一首 61番

詞花集 29-春 伊勢大輔 古への奈良の都の八重ざくら今日九重に匂ひぬるかな

百人一首 66番

金葉集 556-雑上 前大僧正行尊 諸共にあはれと思へ山ざくら花よりほかに知る人もなし

百人一首 73番

後拾遺 120-春上 大江匡房 高砂の尾上のさきにけり外山のかすみたたずもあらなむ

古今和歌集

49-春上 紀貫之 今年より 春知りそむる 花 散ると言ふことは ならはざらなむ

50-春上 読人知らず 山高み 人もすさめぬ 花 いたくなわびそ 我見はやさむ

51-春上 読人知らず 我が見にくれば 春霞 峰にもをにも 立ち隠しつつ

53-春上 在原業平 世の中に 絶えての なかりせば 春の心は のどけからまし

54-春上 読人知らず 石ばしる 滝なくもがな 花 手折りてもこむ 見ぬ人のため

55-春上 素性法師 見てのみや 人にかたらむ 花 手ごとに折りて いへづとにせむ

56-春上 素性法師 見渡せば 柳を こきまぜて みやこぞ春の 錦なりける

58-春上 紀貫之 誰しかも とめて折りつる 春霞 立ち隠すらむ 山の

59-春上 紀貫之 花 さきにけらしな あしひきの 山のかひより 見ゆる白雲

60-春上 紀友則 み吉野の 山辺にさける 花 雪かとのみぞ あやまたれける

61-春上 伊勢 花 春くははれる 年だにも 人の心に あかれやはせぬ

62-春上 読人知らず あだなりと 名にこそたてれ 花 年にまれなる 人も待ちけり

64-春上 読人知らず 散りぬれば 恋ふれどしるし なきものを 今日こそ 折らば折りてめ

65-春上 読人知らず 折りとらば 惜しげにもあるか 花 いざ宿かりて 散るまでは見む

66-春上 紀有朋 色に 衣は深く 染めて着む 花の散りなむ のちの形見に

68-春上 伊勢 見る人も なき山里の 花 ほかの散りなむ のちぞ咲かまし

69-春下 読人知らず 春霞 たなびく山の 花 うつろはむとや 色かはりゆく

70-春下 読人知らず 待てと言ふに 散らでしとまる ものならば 何をに 思ひまさまし

71-春下 読人知らず 残りなく 散るぞめでたき 花 ありて世の中 はての憂ければ

72-春下 読人知らず この里に 旅寝しぬべし 花 散りのまがひに 家路忘れて

73-春下 読人知らず 空蝉の 世にも似たるか 花 咲くと見しまに かつ散りにけり

74-春下 惟喬親王 花 散らば散らなむ 散らずとて ふるさと人の きても見なくに

75-春下 承均法師 散る 花のところは 春ながら 雪ぞ降りつつ 消えがてにする

77-春下 承均法師 いざ 我も散りなむ ひとさかり ありなば人に うきめ見えなむ

78-春下 紀貫之 ひと目見し 君もや来ると 花 今日は待ちみて 散らば散らなむ

79-春下 紀貫之 春霞 何隠すらむ 花 散る間をだにも 見るべきものを

80-春下 藤原因香 たれこめて 春のゆくへも 知らぬ間に 待ちしも うつろひにけり

82-春下 紀貫之 ことならば 咲かずやはあらぬ 花 見る我さへに しづ心なし

83-春下 紀貫之 花 とく散りぬとも 思ほえず 人の心ぞ 風も吹きあへぬ

86-春下 凡河内躬恒 雪とのみ 降るだにあるを 花 いかに散れとか 風の吹くらむ

87-春下 紀貫之 山高み 見つつ我がこし 花 風は心に まかすべらなり

88-春下 大友黒主 春雨の 降るは涙か 花 散るを惜しまぬ 人しなければ

89-春下 紀貫之 花 散りぬる風の なごりには 水なき空に 浪ぞたちける

349-賀 在原業平 花 散りかひくもれ 老いらくの 来むと言ふなる 道まがふがに

358-賀 凡河内躬恒 山高み 雲ゐに見ゆる 花 心のゆきて 折らぬ日ぞなき

393-離別 幽仙法師 別れをば 山のに まかせてむ とめむとめじは 花のまにまに

394-離別 僧正遍昭 山風に 吹きまき 乱れなむ 花のまぎれに 君とまるべく

403-離別 読人知らず しひて行く 人をとどめむ 花 いづれを道と 惑ふまで散れ

427-物名 紀貫之 かづけども 浪のなかには さぐられで 風吹くごとに 浮き沈む玉

479-恋一 紀貫之 霞の間より ほのかにも 見てし人こそ 恋しかりけれ

588-恋二 紀貫之 越えぬ間は 吉野の山の 花 人づてにのみ 聞き渡るかな

590-恋二 坂上是則 我が恋に くらぶの山の 花 間なく散るとも 数はまさらじ

684-恋四 紀友則 春霞 たなびく山の 花 見れどもあかぬ 君にもあるかな

832-哀傷 上野岑雄 深草の 野辺のし 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け

後撰和歌集

5-春上 左太臣(実頼) 松もひきわかなもつます成りぬるをいつしかはやもさかなむ

49-春中 僧正遍昭 いその神ふるの山への花うゑけむ時をしる人そなき

50-春中 素性法師 山守はいははいはなん高砂のをのへの折りてかささむ

51-春中 読人知らず さくらはな色はひとしき枝なれとかたみに見れはなくさまなくに

53-春中 読人知らず 吹く風をならしの山の花のとけくそ見るちらしとおもへは

54-春中 坂上是則 花けふよく見てむくれ竹のひとよのほとにちりもこそすれ

55-春中 読人知らず さくらはなにほふともなく春くれはなとか歎のしけりのみする

56-春中 源融 けふしつくにわか身いさぬれむかこめにさそふ風のこぬまに

57-春中 菅原道真 桜花ぬしをわすれぬ物ならはふきこむ風に事つてはせよ

61-春中 大将御息所 さきさかす我になつけそ桜花人つてにやはきかんと思ひし

63-春中 読人知らず 立渡る霞のみかは山高み見ゆるの色もひとつを

68-春中 藤原師尹 山さとにちりなましかは花にほふさかりもしられさらまし

77-春中 読人知らず わかやとのの色はうすくとも花のさかりはきてもをらなむ

82-春下 紀貫之 ひさしかれあたにちるなと桜花かめにさせれとうつろひにけり

83-春下 中務 千世ふへきかめにさせれと花とまらん事は常にやはあらぬ

105-春下 読人知らず 今よりは風にまかせむ花ちるこのもとに君とまりけり

106-春下 藤原敦忠 風にしも何かまかせん桜花匂あかぬにちるはうかりき

107-春下 紀貫之 常よりも春へになれはさくら河花の浪こそまなくよすらめ

115-春下 伊勢 君見よと尋ねてをれる山桜ふりにし色と思はさらなん

117-春下 読人知らず み吉野のよしのの山の花白雲とのみ見えまかひつつ

118-春下 読人知らず 山桜さきぬる時は常よりも峰の白雲たちまさりけり

119-春下 紀貫之 白雲と見えつるものを桜花けふはちるとや色ことになる

132-春下 躬恒 いつのまにちりはてぬらん花おもかけにのみ色を見せつつ

133-春下 源仲宣 ちることのうきもわすれてあはれてふ事をさくらにやとしつるかな

134-春下 読人知らず 色にきたる衣のふかけれはすくる春日もをしけくもなし

498-冬 読人知らず いつしかと山のもわかことく年のこなたにはるをまつらん

1255-雑四 読人知らず いつしかとまつちの山の花まちてもよそにきくかかなしさ

1305-離別羈旅 読人知らず あた人のたむけにをれる桜花相坂まてはちらすもあらなん

拾遺和歌集

36-春 中務 さけはちるさかねはこひし山思ひたえせぬ花のうへかな

38-春 読人知らず さきさかすよそにても見む山桜峯の白雲たちなかくしそ

39-春 読人知らず 吹く風にあらそひかねてあしひきの山のはほころひにけり

40-春 読人知らず 浅緑のへの霞はつつめともこほれてにほふ花さくらかな

41-春 読人知らず 吉野山きえせぬ雪と見えつるは峯つつきさくさくらなりけり

42-春 清原元輔 春霞立ちなへたてそ花さかりみてたにあかぬ山のさくら

44-春 藤原千景 さきそめていく世へぬらん桜花色をは人にあかす見せつつ

48-春 紀貫之 あたなれとさくらのみこそ旧里の昔なからの物には有りけれ

50-春 読人知らず さくらかり雨はふりきぬおなしくはぬるとも花の影にかくれむ

53-春 読人知らず さくら色にわか身は深く成りぬらん心にしめて花ををしめは

58-春 読人知らず つけやらんまにもちりなは桜花いつはり人に我やなりなん

61-春 読人知らず あさことにわかはくやとのには桜花ちるほとはてもふれて見む

62-春 恵慶法師 あさちはらぬしなきやとの花心やすくや風にちるらん

63-春 紀貫之 春ふかくなりぬと思ふを桜花ちるこのもとはまた雪そふる

64-春 紀貫之 さくらちるこのした風はさむからてそらにしられぬゆきそふりける

65-春 読人知らず あしひきの山ちにちれる花きえせぬはるの雪かとそ見る

66-春 小弐命婦 あしひきの山かくれなる桜花ちりのこれりと風にしらるな

279-賀 平兼盛 わかやとにさけるさくらの花さかりちとせ見るともあかしとそ思ふ

286-賀 九条右大臣 桜花今夜かさしにさしなからかくてちとせの春をこそへめ

302-別 読人知らず 桜花つゆにぬれたるかほみれはなきて別れし人そこひしき

355-物名 読人知らず 花の色をあらはにめてはあためきぬいさくらやみになりてかささむ

1034-雑春 読人知らず かきくらし雪もふらなん花またさかぬまはよそへても見む

1036-雑春 凡河内躬恒 さかさらむ物とはなしに桜花おもかけにのみまたき見ゆらん

1038-雑春 凡河内躬恒 桜花わかやとにのみ有りと見はなき物くさはおもはさらまし

1040-雑春 壬生忠見 もろともに我しをらねは花思ひやりてやはるをくらさん

1041-雑春 御導師浄蔵 霞立つ山のあなたの花思ひやりてやはるをくらさむ

1045-雑春 藤原忠房 ふるさとにさくとわひつる桜花ことしそ君に見えぬへらなる

1048-雑春 清原元輔 桜花そこなるかけそをしまるるしつめる人のはるとおもへは

1050-雑春 兼盛弟 ひのもとにさけるさくらの色見れは人のくににもあらしとそ思ふ

1052-雑春 藤原長能 かた山にはたやくをのこかの見ゆるみ山桜はよきてはたやけ

1053-雑春 読人知らず うしろめたいかてかへらん山桜あかぬにほひを風にまかせて

1054-雑春 紀貫之 ひさしかれあたにちるなと桜花かめにさせれとうつろひにけり

1056-雑春 読人知らず 桜花みかさの山のかけしあれは雪とふれともぬれしとそ思ふ

1274-哀傷 藤原実頼 桜花のとけかりけりなき人をこふる涙そまつはおちける

1275-哀傷 平兼盛 おもかけに色のみのこる花いく世の春をこひむとすらん

1277-哀傷 大中臣能宣 花にほふものから露けきはこのめも物を思ふなるへし

1278-哀傷 源延光 君まさはまつそをらまし花風のたよりにきくそかなしき

後拾遺和歌集

78-春上 藤原隆経 山ざくら見に行く道をへだつれば人の心ぞかすみなりける

81-春上 永源法師 花さかばちりなむとおもふよりかねても風のいとはしきかな

82-春上 中原致時 梅が香をの花ににほはせて柳がえだにさかせてしがな

83-春上 橘元任 明けばまづたづねにゆかむ山こればかりだに人に遅れじ

84-春上 源雅通 折らばをし折らではいかが山けふをすぐさず君にみすべき

85-春上 盛少将 をらでただかたりにかたれ山風にちるだにをしきにほひを

86-春上 一宮駿河 思ひやる心ばかりは桜花たづぬる人におくれやはする

87-春上 右大臣北方 あくがるる心ばかりは山たづぬる人にたぐへてぞやる

89-春上 祭主輔親 いづれをかわきてをらまし山こころうつらぬえだしなければ

91-春上 小弁 やまざくら心のままにたづねきてかへさぞ道のほどはしらるる

92-春上 上東門院中将 にほふらむ花のみやこのこひしくてをるにものうき山ざくらかな

95-春上 大貮實政 春ごとに見るとはすれど花あかでもとしのつもりぬるかな

96-春上 能宣 桜花にほふなごりに大かたの春さへをしくおもほゆるかな

97-春上 平兼盛 道とほみ行きてはみねど桜花こころをやりてけふはかへりぬ

98-春上 能因法師 さくら咲く春はよるだになかりせば夢にもものは思はざらまし

99-春上 読人知らず うゑおきし人なき宿の花にほひばかりぞかはらざりける

100-春上 和泉式部 みやこ人いかにととはば見せもせむかの山ざくら一枝もがな

101-春上 和泉式部 人も見ぬ宿にをうゑたれば花もてやつす身とぞなりぬる

102-春上 和泉式部 わかやどのはかひもなかりけりあるじからこそ人も見にくれ

104-春上 紫式部 世の中をなになげかまし山ざくら花見るほどの心なりせば

107-春上 藤原元真 おもひつつ夢にぞ見つる花春はねざめのなからましかば

108-春上 右大弁通俊 春のうちはちらぬとみてしがなさてもや風のうしろめたきに

112-春上 源縁法師 山ざくら白雲にのみまがへばや春の心の空になるらむ

114-春上 藤原定頼 花さかりになればふるさとのむぐらのかどもさされざりけり

115-春上 坂上定成 よそながらをしきさくらのにほひかな誰わがやどの花とみるらむ

116-春上 源縁法師 春ごとにみれどもあかず山年にや花の咲きまさるらむ

118-春上 能因法師 よよふとも我わすれめや花苔のたもとにちりてかかりし

120-春上 大江匡房 高砂の尾上のさきにけり外山のかすみたたずもあらなむ

121-春上 藤原清家 吉野山八重たつ峯の白雲にかさねてみゆる花ざくらかな

122-春上 藤原通宗 おもひおくことなからまし庭ちりての後の舟出なりせば

123-春上 良暹法師 とふ人も宿にはあらじ山ざくらちらでかへりし春しなければ

125-春上 源道済 ちりはてて後やかへらむふるさとも忘られぬべき山ざくらかな

126-春上 源道済 わが宿に咲きみちにけり花ほかには春もあらじとぞおもふ

131-春下 藤原頼宗 花あかぬあまりに思ふかな散らずば人や惜しまざらまし

133-春下 平兼盛 ももとせに散らずもあらなむ花あかぬ心はいつかたゆべき

134-春下 大中臣能宣 花まだきな散りそ何により春をば人の惜しむとか知る

136-春下 右大弁通俊 しめゆひしそのかみならば花をしまれつつやけふはちらまし

137-春下 橘成元 花道みえぬまで散りにけりいかがはすべき志賀の山ごえ

138-春下 坂上定成 ちるとなりにいとふ春風は花なき宿ぞうれしかりける

140-春下 藤原通宗 をしむにはちりもとまらで花あかぬ心ぞときはなりける

141-春下 永源法師 心らものをこそおもへ山ざくら尋ねざりせば散るを見ましや

143-春下 大貮三位 ふく風ぞおもへばつらき花こころとちれる春しなければ

145-春下 大江嘉言 ここにこぬ人もみよとて花水の心にまかせてぞやる

148-春下 和泉式部 風だにもふきはらはずば庭ちるとも春のうちはみてまし

165-夏 和泉式部 色に染めし衣をぬぎかへて山ほととぎすけふよりぞまつ

898-雑一 小左近 はかなさによそへてみれば花をりしらぬにやならむとすらむ

942-雑二 兵衛姫君 ちらさじと思ふあまりに花ことのはをさへ惜しみつるかな

1081-雑四 読人知らず あけぬよの心地ながらにやみにしをあさくらといひし声はきききや

1110-雑五 上東門院中将 みゆきとか世にはふらせて今はただこずゑのちらすなりけり

1152-雑五 源重之 つねならぬ山のにこころいりて池のはちすをいひなはなちそ

1200-雑六 源道済 さかざらばを人の折らましやのあだはなりけり

金葉和歌集

36-春 藤原忠通 吉野山みねのや咲きぬらむ麓の里に匂ふ春風

40-春 源雅兼 年ごとに咲きそふ宿の花なほゆくすゑの春ぞゆかしき

42-春 藤原公実 白雲と遠ちの高嶺に見えつるは心まどはすなりけり

43-春 花山院 わが宿のなれども散るときは心にえこそまかせざりけれ

45-春 源俊頼 さきそめしより久方の雲ゐに見ゆる瀧の白糸

46-春 待賢門院中納言 白雲にまがふのこずゑにて千歳の春を空にしるかな

47-春 藤原顕季 花さきぬるときは吉野山たちものぼらぬ峰の白雲

48-春 大中臣公長 斧の柄は木のもとにてや朽ちなまし春をかぎらぬなりせば

51-春 源俊頼 こずゑには吹くとも見えぬ花かをるぞ風のしるしなりける

52-春 前斎宮筑前乳母 春ごとにあかぬ匂ひを花いかなる風の惜しまざるらむ

53-春 僧正行尊 よそにては惜しみに来つる山折らではえこそ帰るまじけれ

54-春 藤原頼宗 春雨に濡れて尋ねむ山雲のかへしの嵐もぞ吹く

56-春 源雅兼 花さそふ嵐や峰をわたるらむなみよる谷川の水

57-春 藤原登平 手ごとに折りて帰るをば春の行くとや人はみるらむ

58-春 伊勢大輔 いにしへの奈良の都の八重けふここのへに匂ひぬるかな

61-春 藤原長実母 春ごとにおなじの花なれば惜しむ心もかはらざりけり

64-春 御匣殿 花雲かかるまでかきつめて吉野の山とけふは見るかな

66-春 大中臣能宣 花風にし散らぬものならば思ふことなき春にぞあらまし

68-春 隆源法師 衣手に晝はちりつる花夜は心にかかるなりけり

69-春 高階経成 咲く山田をつくる賤の男はかへすがへすや花を見るらむ

70-春 藤原隆頼 花また見むこともさだめなきよはひぞ風よ心して吹け

97-春 中務 夏衣たちきる今日は花かたみの色をぬぎやかふらむ

99-夏 藤原盛房 夏山の青葉まじりの遅はつ花よりもめづらしきかな

315-賀 權藤原実行 九重に久しくにほへ八重のどけき春の風としらずや

320-賀 堀河院 池水の底さへにほふ花みるともあかじ千代の春まで

434-恋下 読人知らず ことわりや思ひくらぶの山にほひまされる花をめづるも

512-雑上 僧正行尊 もろともに哀れと思へ山はなよりほかに知る人もなし

514-雑上 源定信 みな人は吉野の山の花をりしらぬ身や谷の埋もれ木

516-雑上 藤原惟信 山吹もおなじかざしの花なれど雲居のなほぞ恋しき

596-雑下 平基綱 ゆゑいとひし風の身にしみて花よりさきに散りぬべきかな

597-雑下 藤原有佐 あやめ草ねをのみかくる世の中に折りたがへたる花かな

詞花和歌集

17-春 源頼政 深山木のそのこずゑとも見えざりしは花にあらはれにけり

18-春 康資王母 くれなゐの薄花にほはずはみな白雲とみてや過ぎまし

19-春 藤原師実 白雲はたちへだつれどくれなゐの薄花こころにぞ染む

21-春 祐子内親王家紀伊 朝まだき霞なこめそ山たづねゆくまのよそめにもみむ

23-春 藤原公実 をしむにとまるものならは花は春ともかぎらざらまし

24-春 前斎院出雲 九重に立つ白雲と見えつるは大内山のなりけり

25-春 戒秀法師 春ごとに心をそらになすものは雲ゐにみゆるさくらなりけり

28-春 源師賢 池水のみぎはならずはさくらばな影をも波にをられましやは

29-春 伊勢大輔 いにしへの奈良のみやこの八重ざくらけふ九重ににほひぬるかな

30-春 藤原教長 ふるさとにとふ人あらば山ざくら散りなむのちを待てとこたへよ

31-春 源登平 桜花てごとにをりて帰るをば春のゆくとや人はみるらむ

35-春 藤原元真 桜花ちらさでちよも見てしがなあかぬこころはさてもありやと

36-春 大中臣能宣 桜花かぜにし散らぬものならば思ふことなき春にぞあらまし

37-春 摂津 桜花ちりしく庭をはらはねば消えせぬ雪となりにけるかな

39-春 源師賢 さくらさく木の下水は浅けれど散りしく花の淵とこそなれ

41-春 花山院 我が宿のなれども散るときは心にえこそまかせざりけれ

166-賀 中務 あかでのみ帰るとおもへば花をるべき春ぞ尽きせざりける

215-恋上 道命法師 つひに咲くべきものならば人の心をつくさざらなむ

千載和歌集

43-春上 京極前太政大臣 山桜たつぬときくにさそはれぬ老のこころのあくかるるかな

48-春上 中納言女王 山桜にほふあたりの春かすみ風をはよそにたちへたてなん

50-春上 京極前太政大臣 桜花おほくの春にあひぬれと昨日けふをやためしにはせん

53-春上 中院右のおほいまうちきみ たつねきてたをるさくらのあキふに花のたもとのぬれぬ日そなき

55-春上 前左衛門督公光 みな人の心にそむる桜花いくしほ年にいろまさるらん

56-春上 藤原顕輔 かつらきやたかまの山の桜花雲井のよそにみてや過きなん

57-春上 藤原教長 山桜かすみこめたるありかをはつらきものから風そしらする

61-春上 源俊頼 くれはてぬかへさはおくれ山桜たかためにきてまとふとかしる

63-春上 藤原公時 としをへておなしさくらの花の色をそめます物は心なりけり

66-春上 よみ人しらす ささ浪やしかのみやこはあれにしをむかしなからの山桜かな

68-春上 賀茂成保 たかさこのをのへのさきぬれはこすゑにかくるおきつ白浪

71-春上 源仲正 春をへてにほひをそふる山桜花はおいこそさかりなりけれ

72-春上 待賢門院堀河 しら雲とみねのさくらはみゆれとも月のひかりはへたてさりけり

78-春下 院 いけ水にみきはのさくらちりしきて浪の花こそさかりなりけれ

79-春下 大宮前のおほきおほいまうちきみ しら雲とみねにはみえて桜花ちれはふもとの雪にそ有りける

81-春下 内侍周防 山桜をしむこころのいくたひかちる木のもとにゆきかかるらん

83-春下 上東門院赤染衛門 ふめはをしふまてはゆかんかたもなし心つくしの山桜かな

84-春下 大江匡房 山桜ちちに心のくたくるはちる花ことにそふにや有るらん

85-春下 藤原仲実 はなのちる木のしたかけはおのつからそめぬさくらの衣をそきる

86-春下 藤原基俊 春をへて花ちらましやおく山のかせをさくらの心とおもはは

87-春下 右兵衛督公行 あらしふくしかの山辺の桜花ちれは雲井にささ浪そたつ

89-春下 九条良経 さくらさくひらの山かせ吹くままに花になりゆくしかのうら浪

92-春下 源通親 桜花うき身にかふるためしあらはいきてちるをはをしまさらまし

94-春下 源有房 ひとえたはをりてかへらむ山桜風にのみやはちらしはつへき

96-春下 賀盛法師 あかなくにちりぬる花のおもかけや風にしられぬさくらなるらん

97-春下 源仲綱 山桜ちるをみてこそおもひしれたつねぬ人は心ありけり

98-春下 道命法師 よそにてそきくへかりける桜花めのまへにてもちらしつるかな

99-春下 能因法師 さくらちる水のおもにはせきとむる花のしからみかくへかりけり

103-春下 源義家 吹くかせをなこそのせきとおもへともみちもせにちる山かな

104-春下 源仲正 したさゆるひむろの山のおそさくらきえのこりける雪かとそみる

547-哀傷 藤原範永 うゑおきし人のかたみとみぬたにもやとのさくらをたれかをしまぬ

552-哀傷 源道済 桜花みるにもかなし中中にことしの春はさかすそあらまし

611-賀 堀河院 千とせまてをりてみるへき桜花こすゑはるかにさきそめにけり

613-賀 藤原俊忠 千とせすむ池のみきはのやへさくらかけさヘそこにかさねてそみる

623-賀 左大臣 千代ふへきはしめの春としりかほにけしきことなる花さくらかな

1052-雑中 鳥羽院 心あらはにほひをそへよ桜花のちの春をはいつかみるへき

1053-雑中 覚性入道親王 はかなさをうらみもはてし桜花うき世はたれも心ならねは

1055-雑中 藤原基長 いにしへにかはらさりけり山桜花は我をはいかかみるらん

1065-雑中 西行法師 ちるをみてかへる心や桜花むかしにかはるしるしなるらん

1067-雑中 西行法師 ほとけにはさくらの花をたてまつれわかのちのよを人とふらはは

1068-雑中 寂然法師 この春そおもひはかへす桜花むなしき色にそめしこころを

1070-雑中 読人不知 かくはかりうき世のすゑにいかにしてはるはさくらのなほにほふらん

1071-雑中 藤原俊成 ふりにけりむかしをしらは桜花ちりのすゑをもあはれとはみよ

1072-雑中 源定宗 桜花をあるしとおもはすは人をまつへきしはのいほかは

1075-雑中 源師教 老かよにやとにさくらをうつしうゑてなほこころみに花をまつかな

1155-雑中 源通親 ちりつもるこけのしたにも桜花をしむ心やなほのこるらん

新古今和歌集

79-春上 西行法師 よしの山桜かえたにゆきちりて花をそけなるとしにもあるかな

80-春上 藤原隆時 花さかはまつ見んとおもふまに日かすへにけり春の山さと

83-春上 式子内親王 いまさくらさきぬと見えてうすくもり春にかすめるよのけしきかな

85-春上 大伴家持 ゆかむ人こん人しのへ春かすみたつたの山のはつ桜花

87-春上 寂蓮法師 かつらきやたかまのさきにけりたつたのおくにかかる白雲

90-春上 道命法師 白雲のたつたの山のやへいつれを花とわきておりけん

96-春上 堀川通具 いその神ふるののさくらたれうへて春はわすれぬかたみなるらん

98-春上 藤原有家 あさ日かけにほへる山の桜花つれなくきえぬ雪かとそ見る

99-春下 太上天皇 さくらさくとを山とりのしたりおのなかなかし日もあかぬ色かな

102-春下 藤原師実 白雲のたなひく山のやまいつれを花とゆきておらまし

103-春下 藤原長家 はなの色にあまきるかすみたちまよひそらさへにほふ山かな

104-春下 山辺赤人 ももしきの大宮人はいとまあれやさくらかさしてけふもくらしつ

107-春下 伊勢 山桜ちりてみゆきにまかひなはいつれか花と春にとはなん

108-春下 紀貫之 わかやとのものなりなからはなちるをはえこそととめさりけれ

109-春下 読人知らず かすみたつ春の山へにさくらはなあかすちるとや鴬のなく

110-春下 山辺赤人 春雨はいたくなふりそ花また見ぬ人にちらまくもおし

114-春下 藤原俊成 またや見んかたののみののかり花の雪ちる春のあけほの

115-春下 祝部成仲 ちりちらすおほつかなきは春かすみたなひく山のなりけり

117-春下 恵慶法師 さくらちる春の山へはうかりけりよをのかれにとこしかひもなく

118-春下 康資王母 桜花のした風ふきにけりこのもとことの雪のむらきえ

123-春下 源師頼 このしたのこけのみとりもみえぬまてやへちりしける山かな

124-春下 藤原顕輔 ふもとまておのへのちりこすはたなひく雲とみてやすきまし

131-春下 崇徳院 やまたかみいはねのちるときはあまのはころもなつるとそみる

133-春下 太上天皇 みよしののたかねのちりにけりあらしもしろき春のあけほの

134-春下 藤原定家 さくら色の庭のはる風あともなしとははそ人の雪とたにみん

137-春下 式子内親王 やへにほふのきはのさくらうつろひぬ風よりさきにとふ人もかな

138-春下 惟明親王 つらきかなうつろふまてにやへさくらとへともいはてすくる心は

139-春下 藤原家隆 桜花夢かうつつか白雲のたえてつねなきみねの春風

141-春下 徳大寺実定 はかなさをほかにもいはし花さきてはちりぬあはれよの中

146-春下 後白河院 おしめともちりはてぬれは花いまはこすゑをなかむはかりそ

150-春下 清原元輔 たかたにかあすはのこさん山桜こほれてにほへけふのかたみに

158-春下 藤原家隆 よしのかはきしの山ふきさきにけりみねのさくらはちりはてぬらん

185-夏 待賢門院安芸 さくらあさのをふのしたくさしけれたたあかてわかれし花の名なれは

523-秋下 具平親王 いつのまにもみちしぬらん山きのふか花のちるをおしみし

713-賀 源師房 君かよにあふへき春のおほけれはちるともあくまてそみん

759-哀傷 藤原兼輔 さくらちる春のすゑにはなりにけりあままもしらぬなかめせしまに

762-哀傷 成尋法師 さくらまたさかりにてちりにけんなけきのもとを思こそやれ

763-哀傷 大江嘉言 花見んとうへけん人もなきやとのさくらはこその春そさかまし

1016-恋一 清原元輔 にほふらんかすみのうちの花おもひやりてもおしき春かな

1451-雑上 円融院 かきこしに見るあた人のいへ桜花ちりはかりゆきておらはや

1452-雑上 藤原朝光 おりにことおもひやすらん花さくらありしみゆきの春をこひつつ

1457-雑上 読人知らず ふるさととおもひなはてそ花さくらかかるみゆきにあふよありけり

1462-雑上 藤原忠家 桜花おりてみしにもかはらぬにちらぬはかりそしるしなりける

1464-雑上 藤原忠教 花すきゆく春のともとてや風のをとせぬよにもちるらん

1472-雑上 安法々師 身はとめつ心はをくる山桜風のたよりにおもひをこせよ

1473-雑上 源俊頼 さくらあさのおふのうらなみたちかへり見れともあかす山なしの花

1485-雑上 紫式部 神世にはありもやしけん桜花けふのかさしにおれるためしは

1667-雑中 九条良経 わすれしの人たにとはぬ山ちかなは雪にふりかはれとも