枕詞 「あづさゆみ/梓弓」の和歌集 万葉集、古今、後撰、拾遺、後拾遺、金葉、千載、新古今から52首!

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「あづさゆみ」の歌

簡単な説明

  • 「あづさゆみ(あつさゆみ)」は引く、張る、射る、本、末、寄る、たつ、や、音などにかかる枕詞。「梓弓」と書く。
  • 弓を射る時の音から音の枕詞となっていると考えられる。
  • 「梓弓」そのものとして詠まれることもあり(万葉集前半など)、必ずしも枕詞としての用いられているわけではない。

解説

「あづさゆみ」(梓弓)は、「引く」「張る」「音」などにかかる枕詞です。「梓弓」は梓の木で作られた弓を指し、古代日本で弓は武具や狩猟、儀式に使われた重要な道具でした。弓を引く動作や弦を張る音を連想させるこの枕詞は、力強さや緊張感を和歌に与えます。弓がもつしなやかさと張力から、恋愛の心情を表現することもあり、引き寄せるような想いを暗示する効果もあります。

「あづさゆみ」の歌集ごとの数と割合

万葉 古今 後撰 拾遺 後拾 金葉 詞花 千載 新古
31 6 1 7 2 1 0 3 1
0.7 0.5 0.1 0.5 0.2 0.2 0 0.2 0.1
※上は歌の数、下は割合(パーセント)です
※カウントは枕詞、そのままの意味の両方をカウントしています

百人一首

なし

万葉集

2巻-98 石川郎女梓弓引かばまにまに寄らめども後の心を知りかてぬかも (郎女)

2巻-99 久米禅師梓弓弦緒取りはけ引く人は後の心を知る人ぞ引く (禅師)

2巻-207 柿本人麻呂天飛ぶや 軽の道は 我妹子が 里にしあれば ねもころに 見まく欲しけど やまず行かば 人目を多み 数多く行かば 人知りぬべみ さね葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼みて 玉かぎる 岩垣淵の 隠りのみ 恋ひつつあるに 渡る日の 暮れぬるがごと 照る月の 雲隠るごと 沖つ藻の 靡きし妹は 黄葉の 過ぎて去にきと 玉梓の 使の言へば 梓弓 音に聞きて (音のみ聞きて) 言はむすべ 為むすべ知らに 音のみを 聞きてありえねば 我が恋ふる 千重の一重も 慰もる 心もありやと 我妹子が やまず出で見し 軽の市に 我が立ち聞けば 玉たすき 畝傍の山に 鳴く鳥の 声も聞こえず 玉桙の 道行く人も ひとりだに 似てし行かねば すべをなみ 妹が名呼びて 袖ぞ振りつる (名のみを聞きてありえねば)

2巻-217 柿本人麻呂秋山の したへる妹 なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひ居れか 栲縄の 長き命を 露こそば 朝に置きて 夕は 消ゆといへ 霧こそば 夕に立ちて 朝は 失すといへ 梓弓 音聞く我れも おほに見し こと悔しきを 敷栲の 手枕まきて 剣太刀 身に添へ寝けむ 若草の その嬬の子は 寂しみか 思ひて寝らむ 悔しみか 思ひ恋ふらむ 時ならず 過ぎにし子らが 朝露のごと 夕霧のごと

2巻-230 笠金村梓弓 手に取り持ちて ますらをの さつ矢手挟み 立ち向ふ 高円山に 春野焼く 野火と見るまで 燃ゆる火を 何かと問へば 玉鉾の 道来る人の 泣く涙 こさめに降れば 白栲の 衣ひづちて 立ち留まり 我れに語らく なにしかも もとなとぶらふ 聞けば 哭のみし泣かゆ 語れば 心ぞ痛き 天皇の 神の御子の いでましの 手火の光りぞ ここだ照りたる

3巻-311 按作益人梓弓引き豊国の鏡山見ず久ならば恋しけむかも

3巻-478 大伴家持かけまくも あやに畏し 我が大君 皇子の命の もののふの 八十伴の男を 召し集へ 率ひたまひ 朝狩に 鹿猪踏み起し 夕狩に 鶉雉踏み立て 大御馬の 口抑へとめ 御心を 見し明らめし 活道山 木立の茂に 咲く花も うつろひにけり 世間は かくのみならし ますらをの 心振り起し 剣太刀 腰に取り佩き 梓弓 靫取り負ひて 天地と いや遠長に 万代に かくしもがもと 頼めりし 皇子の御門の 五月蝿なす 騒く舎人は 白栲に 衣取り着て 常なりし 笑ひ振舞ひ いや日異に 変らふ見れば 悲しきろかも

4巻-531 聖武天皇梓弓爪引く夜音の遠音にも君が御幸を聞かくしよしも

7巻-1279 柿本人麻呂歌集梓弓引津の辺なるなのりその花摘むまでに逢はずあらめやもなのりその花

9巻-1738 高橋虫麻呂歌集しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周淮の珠名は 胸別けの 広き我妹 腰細の すがる娘子の その顔の きらきらしきに 花のごと 笑みて立てれば 玉桙の 道行く人は おのが行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻離れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく惑へれば たちしなひ 寄りてぞ妹は たはれてありける

10巻-1829 梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声

10巻-1930 梓弓引津の辺なるなのりその花咲くまでに逢はぬ君かも

11巻-2505 柿本人麻呂歌集梓弓引きてゆるさずあらませばかかる恋にはあはざらましを

11巻-2638 梓弓末のはら野に鳥狩する君が弓弦の絶えむと思へや

11巻-2640 梓弓引きみ緩へみ来ずは来ず来ば来そをなぞ来ずは来ばそを

11巻-2830 梓弓弓束巻き替へ中見さしさらに引くとも君がまにまに

12巻-2985 梓弓末はし知らずしかれどもまさかは君に寄りにしものを

12巻-2985 梓弓末のたづきは知らねども心は君に寄りにしものを

12巻-2986 梓弓引きみ緩へみ思ひみてすでに心は寄りにしものを

12巻-2987 梓弓引きて緩へぬ大夫や恋といふものを忍びかねてむ

12巻-2988 梓弓末の中ごろ淀めりし君には逢ひぬ嘆きはやめむ

12巻-2989 今さらに何をか思はむ梓弓引きみ緩へみ寄りにしものを

12巻-3149 梓弓末は知らねど愛しみ君にたぐひて山道越え来ぬ

13巻-3302 紀の国の 牟婁の江の辺に 千年に 障ることなく 万代に かくしもあらむと 大船の 思ひ頼みて 出立の 清き渚に 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る縄海苔 深海松の 深めし子らを 縄海苔の 引けば絶ゆとや 里人の 行きの集ひに 泣く子なす 行き取り探り 梓弓 弓腹振り起し しのぎ羽を 二つ手挟み 放ちけむ 人し悔しも 恋ふらく思へば

14巻-3487 梓弓末に玉巻きかくすすぞ寝なななりにし奥をかぬかぬ

14巻-3489 梓弓欲良の山辺の茂かくに妹ろを立ててさ寝処払ふも

14巻-3490 柿本人麻呂歌集梓弓末は寄り寝むまさかこそ人目を多み汝をはしに置けれ (柿本朝臣人麻呂歌集出也)

16巻-3885 乞食者いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは 韓国の 虎といふ神を 生け捕りに 八つ捕り持ち来 その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に 四月と 五月との間に 薬猟 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓 八つ手挟み ひめ鏑 八つ手挟み 獣待つと 我が居る時に さを鹿の 来立ち嘆かく たちまちに 我れは死ぬべし 大君に 我れは仕へむ 我が角は み笠のはやし 我が耳は み墨の坩 我が目らは ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭 我が毛らは み筆はやし 我が皮は み箱の皮に 我が肉は み膾はやし 我が肝も み膾はやし 我がみげは み塩のはやし 老いたる奴 我が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと 申しはやさね 申しはやさね

18巻-4094 大伴家持葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らしめしける すめろきの 神の命の 御代重ね 天の日継と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方の国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調宝は 数へえず 尽くしもかねつ しかれども 我が大君の 諸人を 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地の 神相うづなひ すめろきの 御霊助けて 遠き代に かかりしことを 我が御代に 顕はしてあれば 食す国は 栄えむものと 神ながら 思ほしめして もののふの 八十伴の緒を まつろへの 向けのまにまに 老人も 女童も しが願ふ 心足らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠つ神祖の その名をば 大久米主と 負ひ持ちて 仕へし官 海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見は せじと言立て 大夫の 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖の子どもぞ 大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大君に まつろふものと 言ひ継げる 言の官ぞ 梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き 朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大君の 御言のさきの (を) 聞けば貴み (貴くしあれば)

19巻-4164 大伴家持ちちの実の 父の命 ははそ葉の 母の命 おほろかに 心尽して 思ふらむ その子なれやも 大夫や 空しくあるべき 梓弓 末振り起し 投矢持ち 千尋射わたし 剣大刀 腰に取り佩き あしひきの 八つ峰踏み越え さしまくる 心障らず 後の世の 語り継ぐべく 名を立つべしも

19巻-4214 大伴家持天地の 初めの時ゆ うつそみの 八十伴の男は 大君に まつろふものと 定まれる 官にしあれば 大君の 命畏み 鄙離る 国を治むと あしひきの 山川へだて 風雲に 言は通へど 直に逢はず 日の重なれば 思ひ恋ひ 息づき居るに 玉桙の 道来る人の 伝て言に 我れに語らく はしきよし 君はこのころ うらさびて 嘆かひいます 世間の 憂けく辛けく 咲く花も 時にうつろふ うつせみも 常なくありけり たらちねの 御母の命 何しかも 時しはあらむを まそ鏡 見れども飽かず 玉の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の 失せぬるごとく 置く露の 消ぬるがごとく 玉藻なす 靡き臥い伏し 行く水の 留めかねつと たはことか 人の言ひつる およづれか 人の告げつる 梓弓 爪引く夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ にはたづみ 流るる涙 留めかねつも

古今和歌集

20-春上 読人知らず 梓弓 押してはるさめ 今日降りぬ 明日さへ降らば 若菜つみてむ

115-春下 紀貫之 梓弓 はるの山辺を 越えくれば 道もさりあへず 花ぞ散りける

127-春下 凡河内躬恒 梓弓 春たちしより 年月の いるがごとくも 思ほゆるかな

610-恋二 春道列樹 梓弓 ひけば本末 我が方に よるこそまされ 恋の心は

702-恋四 読人知らず 梓弓 ひき野のつづら 末つひに 我が思ふ人に ことのしげけむ

907-雑上 読人知らず 梓弓 磯辺の小松 たが世にか よろづ世かねて 種をまきけむ

後撰和歌集

379-秋下 源宗于 梓弓いるさの山は秋きりのあたることにや色まさるらむ

拾遺和歌集

533-雑下 大中臣能宣 あつさゆみはるかに見ゆる山のはをいかてか月のさして入るらん

568-雑下 源かけあきら あつさゆみおもはすにしていりにしをさもねたくひきととめてそふすへかりける

812-恋三 読人知らず あつさゆみ春のあら田をうち返し思ひやみにし人そこひしき

1029-雑春 源順 ひく人もなしと思ひしあつさゆみ今そうれしきもろやしつれは

1062-雑春 一条のきみ このまよりちりくる花をあつさゆみえやはととめぬはるのかたみに

1196-雑賀 柿本人麻呂(人麿) あつさゆみひきみひかすみこすはこすこはこそをなそよそにこそ見め

1357-異本歌 不記 よもやまのまほりにたのむあつさゆみ神のたからにいましつるかな

後拾遺和歌集

79-春上 皇后宮美作 うらやましいる身ともがな梓弓ふしみの里の花のまどゐに

1039-雑三 律師朝範 思はずにいるとはみえき梓弓かへらばかへれ人のためかは

金葉和歌集

547-雑上 藤原時房 梓弓さこそはそりの高からめ張る程もなく返るべしやは

詞花和歌集

なし

千載和歌集

974-雑上 藤原伊通 やとせまて手ならしたりしあつさ弓かへるをみるにねそなかれける

975-雑上 源雅定 なにかそれおもひすつへきあつさ弓又ひきかへす時もありなん

1086-雑中 菅原是忠 ひく人もなくてすてたるあつさ弓心つよきもかひなかりけり

新古今和歌集

29-春上 山辺赤人 あつさゆみはる山ちかくいゑゐしてたえすききつる鴬のこゑ