八代古今後撰拾遺後拾遺金葉詞花千載新古今百人一首六歌仙三十六歌仙枕詞動詞光る君へ
「ももしきの」の歌
簡単な説明
- 「ももしきの」は大宮にかかる枕詞。
- 「百敷の」、「百敷城の」と書く。皇居、宮中、代理を意味するが、これは枕詞としての使用から転じて発生した意味。
- 多くの石が敷かれているということから、大宮にかかる。
解説
「ももしきの」(百敷の)は、古典和歌において宮殿や皇居を意味する枕詞で、主に「宮」や「大宮」などにかかります。「百敷」という言葉自体は、広々とした宮殿の敷地や立派な建物を指し、華やかで格式の高い王朝文化を象徴します。また、単に宮廷の壮麗さを表すだけでなく、その裏にある無常観や哀愁をも含んでいます。宮殿は栄華の象徴である一方、歴史の移り変わりの中で栄枯盛衰を繰り返す場所でもあります。そのため、和歌において「ももしきの」が使われると、時代の移ろいや過去への思い、あるいは儚さといった深い情緒が込められるのです。たとえば、「ももしきの大宮人」といった表現で、宮廷に仕える人々の生活を描写する際に用いられることが多く、その生活の華やかさだけでなく、彼らの運命や宮廷の中で生きることの苦楽も暗示されます。
「ももしきの」の歌集ごとの数と割合
万葉 | 古今 | 後撰 | 拾遺 | 後拾 | 金葉 | 詞花 | 千載 | 新古 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
0.4 | 0 | 0.1 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.2 |
百人一首
ももしき(宮中)を詠った歌。(参考)
100番 続後撰1202 雑下 順徳院 ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほあまりある むかしなりけり
万葉集
1巻-29 柿本人麻呂玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御代ゆ (或云 宮ゆ) 生れましし 神のことごと 栂の木の いや継ぎ継ぎに 天の下 知らしめししを (或云 めしける) そらにみつ 大和を置きて あをによし 奈良山を越え (或云 そらみつ 大和を置き あをによし 奈良山越えて) いかさまに 思ほしめせか (或云 思ほしけめか) 天離る 鄙にはあれど 石走る 近江の国の 楽浪の 大津の宮に 天の下 知らしめしけむ 天皇の 神の命の 大宮は ここと聞けども 大殿は ここと言へども 春草の 茂く生ひたる 霞立つ 春日の霧れる (或云 霞立つ 春日か霧れる 夏草か 茂くなりぬる) ももしきの 大宮ところ 見れば悲しも (或云 見れば寂しも)
1巻-36 柿本人麻呂やすみしし 我が大君の きこしめす 天の下に 国はしも さはにあれども 山川の 清き河内と 御心を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺に 宮柱 太敷きませば ももしきの 大宮人は 舟並めて 朝川渡る 舟競ひ 夕川渡る この川の 絶ゆることなく この山の いや高知らす 水激る 瀧の宮処は 見れど飽かぬかも
2巻-155 額田王やすみしし 我ご大君の 畏きや 御陵仕ふる 山科の 鏡の山に 夜はも 夜のことごと 昼はも 日のことごと 哭のみを 泣きつつありてや ももしきの 大宮人は 行き別れなむ
3巻-257 鴨足人天降りつく 天の香具山 霞立つ 春に至れば 松風に 池波立ちて 桜花 木の暗茂に 沖辺には 鴨妻呼ばひ 辺つ辺に あぢ群騒き ももしきの 大宮人の 退り出て 遊ぶ船には 楫棹も なくて寂しも 漕ぐ人なしに
3巻-260 鴨足人天降りつく 神の香具山 うち靡く 春さり来れば 桜花 木の暗茂に 松風に 池波立ち 辺つ辺には あぢ群騒き 沖辺には 鴨妻呼ばひ ももしきの 大宮人の 退り出て 漕ぎける船は 棹楫も なくて寂しも 漕がむと思へど
3巻-323 山部赤人ももしきの大宮人の熟田津に船乗りしけむ年の知らなく
4巻-691 大伴家持ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹
6巻-920 笠金村あしひきの み山もさやに 落ちたぎつ 吉野の川の 川の瀬の 清きを見れば 上辺には 千鳥しば鳴く 下辺には かはづ妻呼ぶ ももしきの 大宮人も をちこちに 繁にしあれば 見るごとに あやに乏しみ 玉葛 絶ゆることなく 万代に かくしもがもと 天地の 神をぞ祈る 畏くあれども
6巻-923 山部赤人やすみしし 我ご大君の 高知らす 吉野の宮は たたなづく 青垣隠り 川なみの 清き河内ぞ 春へは 花咲きををり 秋されば 霧立ちわたる その山の いやしくしくに この川の 絶ゆることなく ももしきの 大宮人は 常に通はむ
6巻-948 ま葛延ふ 春日の山は うち靡く 春さりゆくと 山の上に 霞たなびく 高円に 鴬鳴きぬ もののふの 八十伴の男は 雁が音の 来継ぐこの頃 かく継ぎて 常にありせば 友並めて 遊ばむものを 馬並めて 行かまし里を 待ちかてに 我がする春を かけまくも あやに畏し 言はまくも ゆゆしくあらむと あらかじめ かねて知りせば 千鳥鳴く その佐保川に 岩に生ふる 菅の根採りて 偲ふ草 祓へてましを 行く水に みそぎてましを 大君の 命畏み ももしきの 大宮人の 玉桙の 道にも出でず 恋ふるこの頃
6巻-1005 山部赤人やすみしし 我が大君の 見したまふ 吉野の宮は 山高み 雲ぞたなびく 川早み 瀬の音ぞ清き 神さびて 見れば貴く よろしなへ 見ればさやけし この山の 尽きばのみこそ この川の 絶えばのみこそ ももしきの 大宮所 やむ時もあらめ
6巻-1026 豊島采女ももしきの大宮人は今日もかも暇をなみと里に出でずあらむ
6巻-1061 田辺福麻呂歌集咲く花の色は変らずももしきの大宮人ぞたち変りける
7巻-1076 ももしきの大宮人の罷り出て遊ぶ今夜の月のさやけさ
7巻-1218 黒牛の海紅にほふももしきの大宮人しあさりすらしも
7巻-1267 古歌集ももしきの大宮人の踏みし跡ところ沖つ波来寄らずありせば失せずあらましを
10巻-1852 ももしきの大宮人のかづらけるしだり柳は見れど飽かぬかも
10巻-1883 ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる
13巻-3234 やすみしし 我ご大君 高照らす 日の御子の きこしをす 御食つ国 神風の 伊勢の国は 国見ればしも 山見れば 高く貴し 川見れば さやけく清し 水門なす 海もゆたけし 見わたす 島も名高し ここをしも まぐはしみかも かけまくも あやに畏き 山辺の 五十師の原に うちひさす 大宮仕へ 朝日なす まぐはしも 夕日なす うらぐはしも 春山の しなひ栄えて 秋山の 色なつかしき ももしきの 大宮人は 天地 日月とともに 万代にもが
18巻-4040 田辺福麻呂布勢の浦を行きてし見てばももしきの大宮人に語り継ぎてむ
古今和歌集
なし
後撰和歌集
1266-雑四 伊勢 ちりに立つわかなきよめんももしきの人の心をまくらともかな
拾遺和歌集
569-雑下 柿本人麻呂(人麿) ちはやふるわかおほきみのきこしめすあめのしたなる草の葉もうるひにたりと山河のすめるかうちとみこころをよしののくにの花さかり秋つののへに宮はしらふとしきましてももしきの大宮人は舟ならへあさ河わたりふなくらへゆふかはわたりこの河のたゆる事なくこの山のいやたかからしたま水のたきつの宮こ見れとあかぬかも
1106-雑秋 読人知らず ももしきの大宮なからやそしまを見る心地する秋のよの月
後拾遺和歌集
なし
金葉和歌集
なし
詞花和歌集
なし
千載和歌集
なし
新古今和歌集
104-春下 山辺赤人 ももしきの大宮人はいとまあれやさくらかさしてけふもくらしつ
1719-雑下 如覚 ももしきのうちのみつねにこひしくて雲のやへたつ山はすみうし
1722-雑下 伊勢 白露はをきてかはれとももしきのうつろふ秋は物そかなしき