第12章 似ているけど違うシリーズ – 前払金と前受金の違いは?
簿記3級でよく混同されるのが「前払金」と「前受金」です。どちらも「前もってお金が動く」点は共通していますが、方向がまったく逆です。この記事では、それぞれの意味と仕組みを図解のようにわかりやすく整理し、勘違いしないための考え方を説明します。
前払金とは(こちらが先に支払うお金)
前払金は、会社が商品やサービスを受け取る前に、代金を先に支払ったときに使う資産科目です。つまり「これからもらうものに対して、先にお金を払った」状態です。
たとえば、来月納品予定の商品の代金10万円を、先に振り込んだとします。この時点では商品はまだ届いていないため、費用(仕入や経費)ではなく「前払金」という一時的な資産として処理します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
商品を受け取った時点で、前払金を「仕入」などの費用や資産に振り替えます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 100,000 | 前払金 | 100,000 |
つまり、前払金は「これから受け取るもののために、先に払ったお金」です。支払ったお金は将来の経済的価値があるため、資産として処理されます。
前受金とは(こちらが先に受け取るお金)
前受金は、会社が商品やサービスを提供する前に、代金を先に受け取ったときに使う負債科目です。つまり「これから渡すものに対して、先にお金をもらった」状態です。
たとえば、来月納品予定の商品代金10万円を先に受け取った場合、まだ売上を認識できません。会社には「商品を渡す義務」があるため、一時的に負債として記録します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,000 | 前受金 | 100,000 |
商品を引き渡した時点で、前受金を「売上」として振り替えます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前受金 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
前受金は「これから提供するサービスや商品に対して先に受け取ったお金」であり、義務があるため負債として処理します。
前払金と前受金の違いを仕組みで理解する
「前払金」と「前受金」は、名前が似ていますが、立場が正反対です。次のようにイメージするとわかりやすいです。
- 前払金:こちらが「先に支払う」。→ 相手に商品をもらう立場。
- 前受金:こちらが「先に受け取る」。→ 相手に商品を渡す立場。
つまり、「誰の立場で見るか」が大きなポイントです。売る側は前受金、買う側は前払金になります。同じ取引でも、立場が違えば使う勘定科目が変わるのです。
イメージで整理するとこうなります
| 観点 | 前払金(買う側) | 前受金(売る側) |
|---|---|---|
| お金の動き | 先に支払う | 先に受け取る |
| 性質 | 資産(あとで商品を受け取る権利) | 負債(あとで商品を渡す義務) |
| 相手との関係 | 買主の立場 | 売主の立場 |
| 仕訳の方向 | 借方に記入(資産の増加) | 貸方に記入(負債の増加) |
| 解消のタイミング | 商品やサービスの受領時 | 商品やサービスの提供時 |
このように、前払金と前受金の違いは「立場の違い」と「性質の違い」です。前払金は資産(払ったお金の権利)、前受金は負債(もらったお金の義務)であることを意識すれば、混同することはなくなります。
まとめ
同じ「前もってお金が動く」取引でも、立場が逆になると使う勘定科目が変わります。買う側が使うのが前払金(資産)、売る側が使うのが前受金(負債)。この対比を意識することが簿記3級の理解を深めるポイントです。