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第5章 売上と仕入を学ぼう – 掛け取引とは
お金のやり取りが後日になる取引を、簿記では「掛け取引(かけとりひき)」と呼びます。
商品は今渡す(または受け取る)けれど、代金はあとで請求・支払する取り決めです。
このときに使う代表的な科目が、受け取る側の売掛金、支払う側の買掛金です。
掛け取引の全体像(流れ)
| タイミング | 出来事 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 取引日 | 商品を渡す/受け取る | 現金の受け渡しはしない |
| ② 締日 | 請求額をまとめる | 請求書の発行・受領 |
| ③ 支払日 | 現金や預金で決済 | 売掛金・買掛金を消し込む |
売り手の立場(掛けで販売:売掛金が発生)
商品を掛けで売ると、「あとで代金を受け取る権利=売掛金(資産)」が発生します。
代金回収時に、売掛金は現金や預金に置き換わって消えます。
【販売時の仕訳】(100,000円を掛けで販売)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100,000 | 売上 | 100,000 |
【回収時の仕訳】(売掛金100,000円を現金で回収)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金(または普通預金) | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
買い手の立場(掛けで仕入:買掛金が発生)
商品を掛けで仕入れると、「あとで代金を払う義務=買掛金(負債)」が発生します。
支払時に、買掛金を現金や預金で決済して消します。
(簿記3級では三分法を用い、仕入は費用として処理します)
【仕入時の仕訳】(80,000円を掛けで仕入)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 80,000 | 買掛金 | 80,000 |
【支払時の仕訳】(買掛金80,000円を普通預金から支払)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 80,000 | 普通預金 | 80,000 |
「締日・支払サイト」とは?
掛け取引では、月末などの締日にその月の取引を集計し、
翌月◯日払いなどの支払サイト(支払条件)で決済するのが一般的です。
たとえば「末締め・翌月末払い」は、当月分を翌月末に支払います。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 締日 | 請求額集計の区切り日 | 毎月末日 |
| 支払サイト | 支払までの期間 | 末締め・翌月末払い |
値引・返品・期日現金割引の扱い(概要)
掛け取引では、あとから金額が変わることがあります。簿記3級では次の科目を使います(概要)。
| 場面 | 主な科目(売り手側) | 主な科目(買い手側) | ポイント |
|---|---|---|---|
| 返品・値引 | 売上返品・売上値引 | 仕入返品・仕入値引 | 売上や仕入を減額 |
| 早期支払の割引 | 受取利息(または割引料の相手科目) | 支払利息(または割引料の相手科目) | 期日前の決済などで発生 |
※用語や処理は出題範囲・テキストによって呼称が異なることがありますが、
「売上(収益)・仕入(費用)・売掛金(資産)・買掛金(負債)」の増減関係を正しく押さえることが最重要です。
まとめ
- 掛け取引=代金の受け渡しを後日にする取引。
- 売り手は売掛金(資産)、買い手は買掛金(負債)を用いる。
- 販売・仕入の時点で売掛金・買掛金が発生し、回収・支払時に消える。
- 「締日・支払サイト」を意識し、請求→決済の流れで仕訳をつなぐ。
次の節では、この掛け取引を前提に売掛金・買掛金の具体的な仕組みをさらに詳しく学びます。