第13章 例題で解く第1問対策:手形による借り入れ
ここでは、手形借入金の仕訳と仕組みについて解説します。 手形を使った取引は簿記3級でも頻出ですが、特に「手形による借入」の場合、支払手形との混同に注意が必要です。 「手形を渡しているのだから支払手形では?」と誤解しやすいため、その違いを明確にしておきましょう。
手形借入金とは
手形借入金とは、借入のために自社が約束手形を振り出して、金融機関から資金を受け取る取引をいいます。 この場合の手形は「将来の支払いを約束する証書」であり、借入の担保や返済手段の一部として使われます。
つまり、次のような流れです:
- 会社が銀行などに対して手形を振り出す(将来返す約束)
- 銀行がその手形を受け取って、現金を貸し付ける
このため、会計上は「お金を借りた」という実態が重視され、勘定科目は手形借入金を使います。
例題1:手形を振り出して借り入れた場合
(問題)
当社は銀行から現金300,000円を借り入れる際、約束手形を振り出した。仕訳を示しなさい。
(考え方)
現金を受け取っているので「現金」が増加します。 同時に、将来その手形を支払う義務があるため、「手形借入金」という負債が発生します。
(仕訳)
| 現金 | 300,000 | 手形借入金 | 300,000 |
ポイント: この取引は「手形を渡してお金を借りた」ものであり、借入金の一種です。 手形を振り出しているからといって「支払手形」とはなりません。
手形借入金と手形貸付金という科目があることをしっかり覚えておきましょう。
手形借入金と支払手形の違い
| 項目 | 手形借入金 | 支払手形 |
|---|---|---|
| 取引内容 | 借入のために手形を振り出す | 仕入代金などの支払いのために手形を振り出す |
| 取引相手 | 銀行などの金融機関 | 仕入先・取引先 |
| 性質 | 借入金(負債) | 買掛金に準ずる債務(負債) |
| 資金の流れ | 現金が入る(借入) | 現金が出ない(支払い手段) |
| 仕訳の例 | 現金/手形借入金 | 仕入/支払手形 |
混同しやすいポイント:
「手形を渡した=支払手形」と短絡的に判断してはいけません。 手形を使った取引であっても、目的が借入なら手形借入金、支払いなら支払手形と区別します。
例題2:借入金を返済した場合
(問題)
前期に銀行から借り入れた手形借入金300,000円を、満期に現金で支払って返済した。仕訳を示しなさい。
(仕訳)
| 手形借入金 | 300,000 | 現金 | 300,000 |
ポイント: 手形借入金を返済した段階で、借入金の負債が消滅します。 借入時の「現金/手形借入金」と対になる仕訳です。
例題まとめ(第1問での出題パターン)
- ① 手形を振り出して借入れた場合:
現金/手形借入金 - ② 借入金を返済した場合:
手形借入金/現金 - ③ 支払手形との違いに注意:
支払手形は仕入代金の支払い、手形借入金は資金の借入。
注意点・試験でのポイント
- 「手形を渡した=支払手形」ではない
→ 借入目的なら「手形借入金」とする。 - 現金を受け取る取引なら手形借入金
→ 現金が入っている=借入の証。 - 取引の目的を考える
→ 支払のためか、借入のためかで勘定科目が異なる。 - 第1問では混同を狙った出題が多い
→ 「銀行からの借入」「資金調達」などの文言を見逃さない。
このように、手形借入金は「資金を得るために手形を振り出す取引」であり、支払手形は代金支払いのための取引です。 取引の目的を正しく判断できるかどうかが、第1問対策の重要なポイントです。