第12章 似ているけど違うシリーズ – 電子記録債権と電子記録債務の違いは?
「電子記録債権」と「電子記録債務」は、簿記3級で登場する新しいタイプの取引概念です。名前だけ聞くと難しそうに感じますが、実は「受取手形」と「支払手形」を電子化したものと考えると理解しやすいです。この記事では、電子記録債権と電子記録債務の仕組み、取引の流れ、そして手形との対応関係をわかりやすく解説します。
電子記録債権・電子記録債務とは?
かつての企業間取引では、商品を販売したあと、現金の代わりに「手形(約束手形)」で代金の支払いを約束することが一般的でした。しかし、手形は紙で管理するため、紛失や偽造のリスク・印紙税の負担・管理の手間といった問題がありました。
こうした問題を解決するために導入されたのが「電子記録債権制度」です。手形のやりとりを紙ではなく電子的に記録する仕組みで、企業間の取引を安全かつ効率的に行うことができます。
- 電子記録債権:電子的に記録された「お金を受け取る権利」
- 電子記録債務:電子的に記録された「お金を支払う義務」
つまり、手形取引の「受取手形」と「支払手形」にそれぞれ対応するのが、電子記録債権と電子記録債務です。
電子記録債権の仕組み(受取手形に対応)
電子記録債権は、将来、相手からお金を受け取る権利を電子的に記録したものです。受取手形と同じく資産に分類されます。
たとえば、商品を販売して代金100,000円を電子記録債権として受け取った場合:
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債権 | 100,000 | 売掛金 | 100,000 |
期日になって相手から入金されたら、次のように処理します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 100,000 | 電子記録債権 | 100,000 |
このように、電子記録債権は「受取手形」とほぼ同じ動きをしますが、紙のやり取りがなく、電子記録機関に登録されているのが大きな違いです。
電子記録債務の仕組み(支払手形に対応)
電子記録債務は、将来、相手にお金を支払う義務を電子的に記録したものです。支払手形と同様に負債として扱います。
たとえば、商品を仕入れて代金100,000円を電子記録債務として支払う約束をした場合:
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 100,000 | 電子記録債務 | 100,000 |
期日に支払いを行うと、次のように仕訳します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債務 | 100,000 | 当座預金 | 100,000 |
支払手形と全く同じ流れですが、支払約束が電子的に記録されているため、紙の手形を発行する必要がありません。
受取手形・支払手形との対応関係
| 区分 | 従来の手形 | 電子化後 | 性質 |
|---|---|---|---|
| お金を受け取る側 | 受取手形 | 電子記録債権 | 資産(お金を受け取る権利) |
| お金を支払う側 | 支払手形 | 電子記録債務 | 負債(お金を支払う義務) |
電子化によるメリット
- 紙の手形が不要になり、紛失・盗難・偽造のリスクがなくなる
- 印紙税が不要でコスト削減ができる
- 電子記録機関によって確実に支払い記録が管理される
- 取引履歴がデータで残るため、信用情報の確認が容易になる
まとめ
電子記録債権と電子記録債務は、手形取引を電子化した現代的な仕組みです。仕訳上の扱いは「受取手形=電子記録債権」、「支払手形=電子記録債務」と同じであり、違うのは紙か電子かだけです。したがって、簿記3級では手形の電子化版として理解すれば十分です。
覚え方:
「受取手形 → 電子記録債権(もらう権利)」
「支払手形 → 電子記録債務(はらう義務)」
この対応をしっかり意識しておきましょう。