第8章 決算整理とは何か – 減価償却を詳しく解説
簿記3級の学習で「減価償却」は苦手と感じる人が多い項目です。言葉も仕組みも抽象的に見えますが、実はとても理にかなった考え方です。この記事では、減価償却の目的・仕組み・仕訳の流れを、簿記3級レベルに合わせて丁寧に解説します。
減価償却とは?
減価償却とは、建物・車・備品などのように長期間使う資産の価値が、時間の経過や使用によって少しずつ減っていくことを、会計上で費用として表す仕組みです。
たとえば、パソコンを10万円で購入し、4年間使うとします。お金は最初の年に全額払っていますが、パソコンの価値は1年目で全部なくなるわけではありません。4年間使えるのですから、1年目・2年目・3年目・4年目それぞれに価値が減っていきます。
この「価値の減少分」を各期の費用として計上するのが減価償却です。
なぜ減価償却をするのか
目的は利益を正しく計算するためです。
もし購入した年に10万円を全額費用として処理すると、その年だけ大赤字になり、翌年以降は費用がゼロになりかねません。これでは、各年の利益を正しく比較できません。
そこで、会計では「使用期間に応じて費用を分配する」考え方を採用します。これにより、毎期の利益が実態に近くなり、税金計算も公平になります。
減価償却の基本構造
減価償却の仕訳は、次のように構成されています。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
| 減価償却費 | 20,000 | 備品減価償却累計額 | 20,000 |
備品/現金は購入時で、減価償却は決算時に行います。
借方の減価償却費はその期の費用。 貸方の備品減価償却累計額は、資産の価値が減った分をまとめて記録しておく「マイナス資産(控除勘定)」です。
会計上の資産の残り方
たとえば、10万円の備品を4年で償却する場合、毎年2万円ずつ減価償却します。
| 年度 | 備品の取得価額 | 減価償却累計額 | 帳簿価額(残りの価値) |
|---|---|---|---|
| 取得時 | 100,000 | 0 | 100,000 |
| 1年後 | 100,000 | 20,000 | 80,000 |
| 2年後 | 100,000 | 40,000 | 60,000 |
| 3年後 | 100,000 | 60,000 | 40,000 |
| 4年後 | 100,000 | 80,000 | 20,000 |
| 5年目以降 | 100,000 | 100,000 | 0 |
このように、「備品」勘定は常に取得時の金額のまま残り、価値の減少分は「減価償却累計額」で管理します。これが間接法と呼ばれる方法で、簿記3級でもこの考え方だけを理解すれば十分です。
間接法と直接法の違い
| 方法 | 仕訳の形 | 特徴 |
|---|---|---|
| 間接法 | 減価償却費 / 減価償却累計額 | 資産の取得価額を残したまま、累計で価値減少を記録(簿記3級の標準) |
| 直接法 | 減価償却費 / 備品 | 資産勘定が減る。実務ではほぼ使われない。 |
耐用年数とは?
耐用年数とは、税務上「何年かけて費用化してよいか」を示す年数です。 実際に使える年数ではなく、あくまで会計上・税務上の目安です。
したがって、耐用年数が4年の備品を5年目も使っても問題ありません。 帳簿上は価値がゼロになっていますが、実際には使い続けることができます。
減価償却をしないとどうなるか
| 状況 | 影響 |
|---|---|
| 購入年に全額を費用にする | その年の利益が不当に小さくなる |
| 翌年以降は費用がなくなる | 利益が不当に大きく見える |
| 税務上の処理を無視 | 税金を不当に抑える扱いとなり、違反の可能性 |
そのため、会計上も税務上も、減価償却は義務とされています。 特に税務上は「減価償却をしなければならない」と法律で定められています。
補助管理の重要性(備考欄・固定資産台帳)
減価償却は数年にわたる処理のため、「どの資産の何年目か」が分からなくなることがあります。 そのため、備考欄や補助簿(固定資産台帳)にメモを残すことが大切です。
| 資産名 | 取得日 | 取得価額 | 耐用年数 | 償却方法 | 累計償却額 | 帳簿価額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ノートパソコン | 2023年4月1日 | 100,000 | 4年 | 定額法 | 40,000 | 60,000 | 事務所用・2年目償却 |
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 資産の価値減少を毎期の費用として反映し、正しい利益を示すため |
| 方法 | 簿記3級では「間接法」を使用(減価償却累計額で管理) |
| 耐用年数 | 税務上の費用配分の目安。期間を過ぎても使用可 |
| 義務性 | 会計上・税務上ともに実施義務あり |
| 補助管理 | 固定資産台帳や備考欄で詳細をメモしておくことが重要 |
減価償却は「難しい計算」ではなく、「使った分の価値を毎年の費用にする」だけのシンプルな考え方です。 会計の目的は、資産や利益を正しく表すこと。減価償却は、そのためのとても合理的な仕組みなのです。