貸倒引当金の仕組みと仕訳 | 決算整理とは何か | やさしい簿記3級講座

スポンサーリンク
スポンサーリンク

第8章 決算整理とは何か – 貸倒引当金の仕組みと仕訳(貸倒引当金繰入・貸倒実績率・差額補充法)

取引先が倒産などで売掛金を回収できなくなる可能性に備えて、あらかじめ一定の金額を「貸倒引当金」として見積もり計上しておく処理を行います。これを貸倒引当金の設定といい、簿記3級では「貸倒引当金繰入」「貸倒実績率」「差額補充法」などの論点が出題されます。

貸倒引当金とは

貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)は、将来発生する可能性のある貸倒れに備えるための見積負債です。実際にはまだ貸倒れていない段階で、あらかじめ予想される損失を費用として計上しておきます。

なぜ貸倒引当金を設定するのか

貸倒引当金を設定するのは、将来の貸倒れに備えて損失を見積もり、売上と費用を同じ期間に対応させるためです。これを行わないと、貸倒れが発生した期に急な損失が出て利益が大きく変動し、正確な経営成績を示せなくなります。

貸倒引当金繰入とは

貸倒引当金を設定するときに計上する費用が貸倒引当金繰入です。当期の損益計算書では費用として扱われ、貸借対照表には貸倒引当金(資産控除)が表示されます。

例:期末に売掛金200,000円に対して2%の貸倒引当金を設定する場合

借方科目 金額 貸方科目 金額
貸倒引当金繰入 4,000 貸倒引当金 4,000

これにより、貸倒引当金が貸借対照表の「売掛金」から差し引かれた形で表示されます。

貸倒実績率とは

貸倒実績率とは、過去の貸倒実績をもとに算出される貸倒率のことです。通常、過去数年間の貸倒損失額と売掛金残高から平均率を求め、それを期末残高に掛けて貸倒引当金を設定します。

計算式:

貸倒実績率 = 過去の貸倒損失 ÷ 過去の売掛金残高

例:過去3年間の平均貸倒実績率が2%、期末売掛金残高が200,000円の場合 → 引当額 = 200,000 × 2% = 4,000円

※試験では貸倒実績率は問題文に書かれた状態で出題されます。

差額補充法とは

差額補充法とは、前期末に設定した貸倒引当金の残高を考慮し、必要な引当金との差額だけを当期に繰り入れる方法です。簿記3級では、この方法が基本となります。

例題

前期末の貸倒引当金残高:3,000円
当期末に必要な貸倒引当金:4,000円

→ 差額の1,000円だけを当期に追加計上します。

借方科目 金額 貸方科目 金額
貸倒引当金繰入 1,000 貸倒引当金 1,000

反対に、当期末に必要な金額が前期より少ない場合は、減少分を取り崩します。

例:前期末5,000円 → 当期末3,000円に減額

借方科目 金額 貸方科目 金額
貸倒引当金 2,000 貸倒引当金戻入 2,000

この場合、「貸倒引当金戻入」は当期の収益として計上されます。

貸倒発生時の処理(引当金使用)

実際に貸倒れが発生した場合、あらかじめ設定しておいた貸倒引当金を使って処理します。

この貸倒引当金は前期末に設定した貸倒引当金です。当期に設定した貸倒引当金を使って当期の貸倒れを処理することはできません。

例:売掛金5,000円が貸倒れ(引当金4,000円あり)

借方科目 金額 貸方科目 金額
貸倒引当金 4,000 売掛金 4,000
貸倒損失 1,000 売掛金 1,000

このように、引当金の範囲内で処理できる分は費用にならず、超過分だけが「貸倒損失」として費用になります。

貸倒引当金を実例でチェック

前期末に売掛金A(200,000円)に備えて貸倒引当金4,000円を設定していたとします。

当期になり、新たに売掛金B(100,000円)が発生し、そのB社が倒産した場合と、前期から残っていたA社が倒産した場合では、処理が異なります。

状況 借方科目 金額 貸方科目 金額
前期発生の売掛金Aが貸倒れ 貸倒引当金 4,000 売掛金A 200,000
貸倒損失 196,000
当期発生の売掛金Bが貸倒れ 貸倒損失 100,000 売掛金B 100,000

このように、前期末に設定した貸倒引当金は、前期までに発生していた債権の貸倒れに対してのみ使用できます。当期に新たに発生した売掛金の貸倒れは、引当金を使わずに「貸倒損失」として処理します。

売掛金Bについて、前期に設定した貸倒引当金は使用できません。

まとめ

  • 貸倒引当金は将来の貸倒れに備えるための見積負債(資産控除)。
  • 設定時は「貸倒引当金繰入/貸倒引当金」。
  • 算定には過去の貸倒実績率を用いる。
  • 前期との差額のみ計上するのが「差額補充法」。
  • 前期の貸倒発生時は「貸倒引当金」で処理、超過分のみ貸倒損失。
  • 後期の貸倒発生時は「貸倒損失」で処理。
  • 引当金が減ったときは「貸倒引当金戻入」として収益計上。

貸倒引当金の設定は、損益を適切な期間に対応させるための重要な会計処理です。
実際の貸倒発生を待つのではなく、将来のリスクをあらかじめ見積もることで、より正確な財務状況を示すことができます。