第8章 決算整理とは何か – 前払・未払・見越・繰延の考え方
決算整理では、「お金の動き」と「実際に発生した取引の時期」がズレている場合に、正しい期間へ修正する必要があります。
このとき登場するのが、前払・未払・見越・繰延(くりのべ)という4つの調整です。
名前が似ていて混乱しやすいですが、仕組みはシンプルです。
4つの調整の考え方
まずは全体像をつかみましょう。
お金の支払いや受取と、費用や収益の発生時期を比べたときに、どちらが先かによって勘定科目が変わります。
| 種類 | お金の動き | 内容 | 代表的な勘定科目 |
|---|---|---|---|
| 前払 | お金の支払いが先 | 来期の分を先に払っている | 前払費用 |
| 未払 | お金の支払いが後 | 当期分をまだ払っていない | 未払費用 |
| 見越 | お金の受取が後 | 当期分の収益をまだ受け取っていない | 未収収益 |
| 繰延 | お金の受取が先 | 来期分の収益を先に受け取っている | 前受収益 |
前払費用の仕訳
次の年度の分を先に支払っている場合、その分は当期の費用から除き、資産として扱います。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 来期分の保険料3,000円を当期に支払った | 前払費用 | 3,000 | 保険料 | 3,000 |
このように、来期分は「費用」ではなく「資産(前払費用)」として翌期に繰り越します。
未払費用の仕訳
まだ支払っていないが、当期に発生している費用は、追加で計上します。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 12月分の家賃5,000円をまだ支払っていない | 支払家賃 | 5,000 | 未払費用 | 5,000 |
「未払費用」は負債として翌期に繰り越されます。
未収収益の仕訳
当期に発生した収益だが、まだお金を受け取っていない場合に使います。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 当期分の利息収入1,000円が未収である | 未収収益 | 1,000 | 受取利息 | 1,000 |
「未収収益」は資産として翌期に繰り越します。
前受収益の仕訳
来期の分を先に受け取っている場合、その分は当期の収益から除き、負債として扱います。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 来期分の家賃収入2,000円を当期に受け取った | 受取家賃 | 2,000 | 前受収益 | 2,000 |
「前受収益」はまだ提供していないサービスの分なので、負債とみなされます。
4つの調整のイメージ
全体をまとめると、次のように整理できます。
| 区分 | お金の動きが先 | お金の動きが後 |
|---|---|---|
| 費用 | 前払費用(資産) | 未払費用(負債) |
| 収益 | 前受収益(負債) | 未収収益(資産) |
まとめ
- 前払・未払・見越・繰延は、発生主義に基づいて期間を正しく区切るための処理。
- お金の支払・受取の時期と、収益・費用の発生時期がズレたときに調整する。
- 前払・未収は資産、未払・前受は負債として扱う。
- 決算整理の中心となる考え方なので、4つの違いをしっかり理解しよう。
これらを理解しておくと、次に学ぶ「減価償却」「貸倒引当金」「棚卸」などの決算整理もスムーズに理解できます。