第13章 例題で解く第1問対策:決算と受取家賃
ここでは、受取家賃の決算処理について解説します。 家賃収入のように、ある一定期間に対応して発生する収益は、その期間に応じて正しく区分する必要があります。この期間をまたぐ取引を正確に処理するために前受家賃という勘定科目を用います。
なぜ「前受家賃」を使うのか(仕組みの理由)
家賃を1年分などまとめて受け取る場合、そのお金の中にはまだ提供していない期間の分が含まれています。 会計上は、サービス(建物の貸与など)を提供していない期間の分を、まだ「稼いでいない収益」とみなします。
したがって、次のように整理されます:
- すでに提供済みの期間分 → 受取家賃(収益)
- まだ提供していない期間分 → 前受家賃(負債)
前受家賃は「将来の義務(家を貸す義務)」を表すため負債に分類されます。 つまり、借主から先にお金をもらっているため、今後その分のサービスを提供しなければならない立場にあるということです。
未だ提供していないサービスに付随する次期分の受取家賃を収益として計上できません。そこで、負債である前受家賃として翌期に繰り越し、翌期で再度、受取家賃に戻す流れとします。
例題1:向こう1年分の家賃を受け取った場合
(問題)
当社は9月1日に、貸している建物の1年分の家賃24,000円を現金で受け取った。決算日は12月31日である。 当期に収益として計上すべき金額と、次期に繰り越す金額を求め、決算整理仕訳を示しなさい。
(考え方)
受け取った家賃24,000円は9月〜翌年8月までの1年分です。 当期(9月〜12月)は4か月、残り8か月は翌期に属します。
当期分:24,000 × 4/12 = 8,000円
次期分:24,000 × 8/12 = 16,000円
| 9/1に1年分受け取り | 1/1 |
| 当期 | 次期 |
|---|---|
| 4か月分 | 8か月分 |
| 受取家賃 | 前受家賃 |
よって、次期に属する16,000円を前受家賃に振り替えます。
(仕訳)
| 受取家賃 | 16,000 | 前受家賃 | 16,000 |
ポイント: 受取家賃(収益)のうち、次期分はまだ「稼いでいない収益」であるため、負債である前受家賃に振り替えます。 これにより、当期の収益は正しく8,000円のみとなります。
受取家賃 16,000 を借方に置くことで、貸方である受取家賃24,000のうち、16000を前受家賃とすることができます。
決算は必ずしも3月31とは限りません。問題文をよく注意して読むようにしてください。
例題2:翌期首の再振分仕訳
(問題)
上記の前受家賃16,000円について、翌期首(1月1日)に再振分仕訳を行う。
(仕訳)
| 前受家賃 | 16,000 | 受取家賃 | 16,000 |
ポイント: 前期末に負債として繰り越した分を、翌期では提供済みの期間分として再び収益に戻します。
前受家賃を使う理由をもう少し詳しく
決算では、当期の業績を正しく把握するため、発生主義の原則と期間対応の原則に従って処理します。
- 発生主義の原則: 収益や費用は「現金の受け取り・支払い時点」ではなく、「その発生した期間」で認識する。
- 期間対応の原則: 収益とそれに対応する費用を、同じ期間に計上する。
この原則により、家賃を1年分まとめて受け取った場合でも、当期の4か月分だけを収益にし、残りは前受家賃(負債)として翌期に繰り越すのです。
受取家賃と前受家賃の関係
| 勘定科目 | 性質 | タイミング | 貸借対照表での区分 |
|---|---|---|---|
| 受取家賃 | 収益 | 当期分 | 損益計算書(収益の部) |
| 前受家賃 | 負債 | 次期分 | 貸借対照表(流動負債の部) |
例題まとめ(第1問での出題パターン)
- ① 当期に属する分だけを収益に:
受取家賃/前受家賃 - ② 翌期首で再振分:
前受家賃/受取家賃 - ③ 計算式:
当期分 = 全額 × 当期月数 ÷ 12
注意点・試験でのポイント
- 「前受家賃」は負債である
→ 「まだ貸していない期間の分」を預かっているだけ。 - 「収益の繰延べ」処理に該当する
→ 次期に属する分を当期の収益から控除。 - 発生主義と期間対応の原則
→ 現金主義ではなく、サービス提供期間で判断。 - 第1問での出題パターン
→ 「9月1日に1年分受け取った」などの形式が多く、月割計算を要求される。
このように、「前受家賃」を用いる理由は、受け取った現金のうち、まだ稼いでいない部分を負債として扱うためです。 これにより、企業の収益と負債を正確に区分し、期間ごとの業績を適切に表すことができます。