第13章 例題で解く第1問対策:貸倒引当金と貸倒損失(売掛金)
第1問の仕訳問題では、「売掛金の貸倒れ」に関する取引がよく出題されます。ポイントは、その売掛金が前期から繰り越されたものか(=前期売掛金)、それとも当期の取引で発生したものか(=当期売掛金)で、仕訳が変わることです。
ここでは、簿記3級の本試験で出る形に合わせて、例題と仕訳で丁寧に整理していきます。
貸倒引当金と貸倒損失の基本
まずは用語の整理です。
- 売掛金:商品を掛けで販売したときの未収代金(資産)
- 貸倒引当金:将来の「貸倒れ」に備えて、売掛金などに対して見積もる「見積負債」のようなもの(貸倒損失の見積額)
- 貸倒損失:実際に貸倒れが起きたときの費用勘定(当期の損益計算書に出てくる)
簿記3級では、原則として
- 前期末までに発生している売掛金 → 貸倒引当金を設定しておく → 貸倒れが起きたらまず貸倒引当金を使う
- 当期に新しく発生した売掛金 → まだ引当金の対象ではない → 貸倒損失で処理する
という考え方で処理します。
売掛金の「前期・当期」による処理の違い
前期から繰り越された売掛金が貸倒れた場合
前期末に貸倒引当金を設定しているので、その範囲内の貸倒れなら貸倒引当金を取り崩すだけで済みます。足りない分だけ貸倒損失になります。
当期に発生した売掛金が貸倒れた場合
当期に新しく発生した売掛金は、前期末の貸倒引当金の対象になっていません。そのため、その貸倒れは全額を貸倒損失で処理します。
この違いを、第1問形式の例題で確認していきます。
例題1:前期売掛金が貸倒引当金の範囲内で貸倒れた場合
(問題)
前期から繰り越されている得意先A社に対する売掛金300円について、同社の倒産により回収不能となった。なお、この売掛金は前期末に貸倒引当金が設定されており、その残高は300円である。仕訳を示しなさい。
(考え方)
- 貸倒れた売掛金は前期から繰り越された売掛金である。
- 前期末に設定していた貸倒引当金の残高300円が、まさにこの売掛金に対応している。
- したがって、貸倒れは予想済みなので、費用(貸倒損失)は発生しない。
- 貸倒引当金を取り崩して売掛金を消す。
(仕訳)
| 貸倒引当金 | 300 | 売掛金 | 300 |
ポイント:前期売掛金で、引当金残高が十分な場合は「貸倒損失」は出てこないという点です。
例題2:前期売掛金で、貸倒引当金が不足している場合
(問題)
前期から繰り越されている得意先B社に対する売掛金300円について、同社の倒産により回収不能となった。なお、この売掛金に対応する貸倒引当金の残高は200円である。仕訳を示しなさい。
(考え方)
- 貸倒れた売掛金は前期売掛金。
- 貸倒引当金は200円 → 予想していた貸倒損失は200円分。
- 実際の貸倒額は300円なので、200円までは予想どおり、残り100円は予想外の追加損失。
- したがって、「貸倒引当金200」「貸倒損失100」で合計300を借方とし、「売掛金300」を貸方に計上して消す。
(仕訳:複合仕訳)
| 貸倒引当金 貸倒損失 |
200 100 |
売掛金 | 300 |
ポイント:
- 貸倒引当金の残高をマイナスにしてはいけないので、実際の貸倒額が引当金を超えた分だけ貸倒損失とする。
- 前期売掛金なら、まず貸倒引当金を使うのが鉄則。
例題3:当期に発生した売掛金が貸倒れた場合
(問題)
当期に商品を販売して生じた得意先C社に対する売掛金400円が、同社の経営悪化により回収不能となった。貸倒引当金は400円が設定されている。仕訳を示しなさい。
(考え方)
- 貸倒れた売掛金は当期に発生した売掛金。
- 前期末に設定した貸倒引当金の対象ではないため、貸倒引当金400円は使えない。
- 全額が当期の予想外の損失なので、全額を貸倒損失として処理する。
(仕訳)
| 貸倒損失 | 400 | 売掛金 | 400 |
ポイント:
- 当期売掛金の貸倒れ → 迷ったら「貸倒損失/売掛金」の形を思い出す。
- 問題文から「当期に発生した売掛金」と判断出来たら、貸倒引当金は使えないと考えるのが基本。
第1問での出題パターンと解き方のまとめ
仕訳問題(第1問)での「貸倒引当金・貸倒損失」関連は、次のようなパターンで出題されます。
- パターン1:前期売掛金が貸倒引当金の範囲内で貸倒れ
→ 貸倒引当金/売掛金 - パターン2:前期売掛金が貸倒引当金を超えて貸倒れ
→ (借方)貸倒引当金+貸倒損失/(貸方)売掛金 - パターン3:当期に発生した売掛金が貸倒れ
→ 貸倒損失/売掛金
注意点・ミスしやすいポイント
- その売掛金が前期か当期かを必ず確認する
問題文には「前期から繰り越された売掛金」「当期に発生した売掛金」といった表現が必ずあります。ここを読み落とすと、貸倒引当金を使うのか、貸倒損失だけにするのかを間違えます。 - 貸倒引当金は前期末の売掛金等が対象
当期に新たに発生した売掛金は、その期末の決算整理で「貸倒引当金繰入」によって見積もることになります。第1問は「決算整理前の個別仕訳」が多いので、当期売掛金の貸倒れなら、基本的に貸倒損失で処理します。 - 貸倒引当金をマイナスにしない
貸倒引当金の残高よりも多く貸倒れた場合、足りない部分は必ず貸倒損失に振り替えます。「貸倒引当金300」「貸倒損失100」のように、合計で貸倒額になるように仕訳を組み立てましょう。 - 売掛金以外の債権にも注意(受取手形など)
今回の記事では売掛金に絞っていますが、考え方は受取手形などでも同じです。本試験では「売掛金と受取手形が混ざって出題される」こともあるので、勘定科目だけ読み間違えないようにしましょう。 - 勘定科目名を正確に書く
「貸倒引当金」「貸倒損失」「償却債権取立益」などは、語順を正確に覚えておく必要があります。特に第1問は仕訳の正確さが点数に直結します。
以上が、「売掛金に関する貸倒引当金と貸倒損失」の第1問対策です。まずは前期売掛金か当期売掛金かを読むクセをつけ、それに応じたパターン仕訳を確実に覚えておくと、本試験の第1問で安定して得点源にすることができます。