第9章 財務諸表を作ってみよう – 繰越利益剰余金と配当・利益準備金の仕訳
会社が1年間の営業を終えると、損益振替によって生じた「利益」は繰越利益剰余金として純資産に計上されます。これは会社が自由に使える利益の蓄積であり、事業投資・内部留保・配当などに活用されます。ただし、配当を行う際には、会社法の規定により利益準備金を積み立てなければなりません。
繰越利益剰余金とは
繰越利益剰余金は、これまでの利益の累積です。株主への配当や役員賞与に使われなかった利益が内部に残り、会社の安定した経営基盤となります。損益振替により当期純利益が加えられ、配当や損失で減少します。
| 要因 | 内容 | 繰越利益剰余金の動き |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 損益振替による利益 | 増加(貸方) |
| 当期純損失 | 損益振替による損失 | 減少(借方) |
| 配当金支払い | 株主への利益分配 | 減少(借方) |
利益準備金とは
利益準備金は、会社が配当を行う際に必ず積み立てる法定準備金の一種です。
会社法では、配当のたびに次のように規定されています。
配当金の10分の1以上を利益準備金として積み立てなければならない。 ただし、利益準備金と資本準備金の合計額が資本金の4分の1に達していれば、以後の積立は不要。
つまり、配当の一部は必ず内部留保として残し、会社の財務的安定を保つ仕組みになっているのです。
配当と利益準備金の仕訳例
例:繰越利益剰余金から配当金200,000円を支払い、そのうち20,000円を利益準備金として積み立てた場合。
① 配当および利益準備金の決定(株主総会決議時)
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越利益剰余金 | 220,000 | 未払配当金 | 200,000 |
| 利益準備金 | 20,000 |
この時点で、会社は株主への配当と、会社内部に残す利益準備金の積立を決定しています。
② 配当金の支払い時
株主に現金を支払う際には、未払配当金を消します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 200,000 | 現金 | 200,000 |
源泉所得税を控除して支払う場合
実務上、配当金には所得税がかかるため、源泉徴収を行う必要があります。たとえば、配当200,000円に対して10%(20,000円)を源泉徴収した場合の支払いは次の通りです。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 200,000 | 現金 | 180,000 |
| 預り金(源泉所得税) | 20,000 |
まとめ
- 繰越利益剰余金は、過去の利益の蓄積であり、配当によって減少する。
- 配当のたびに10分の1を利益準備金として積み立てる(資本金の4分の1まで)。
- 配当決定時:「繰越利益剰余金/未払配当金・利益準備金」
- 支払い時:「未払配当金/現金」
- 実務では、源泉所得税を「預り金」として処理する。
利益準備金は、会社の財務体質を守るためのクッションのような役割を果たします。
配当によって外に出るお金と、内部に残すお金のバランスを取ることが、健全な企業経営の基本です。