第8章 決算整理とは何か – 減価償却・貸倒引当金・棚卸の流れ
決算整理では、「時間の経過によって価値が変わるもの」や「回収できない可能性のある債権」、「残っている商品の確認」なども調整します。
ここでは、減価償却・貸倒引当金・棚卸という3つの重要な決算整理を学びましょう。
減価償却(げんかしょうきゃく)とは
建物や備品などのように、長く使う資産は、使用するうちに少しずつ価値が減っていきます。
この「減っていく価値」を毎期の費用として計上するのが減価償却です。
例えば、50,000円の備品を5年間使う場合、毎年10,000円ずつ価値が減ると考え、次のように仕訳します。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 備品50,000円を5年で減価償却(当期分10,000円) | 減価償却費 | 10,000 | 備品減価償却累計額 | 10,000 |
「減価償却費」は費用、「備品減価償却累計額」は資産のマイナス項目(評価減)です。
つまり、資産の価値を少しずつ減らす形で費用化していきます。
貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは
売掛金などは、必ずしも全額が回収できるとは限りません。
「将来、一定の割合で回収不能になるかもしれない」という見込みを費用として見積もるのが貸倒引当金です。
たとえば、売掛金100,000円に対して2%を見積もる場合、次のように仕訳します。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 売掛金100,000円に対して2%(2,000円)を貸倒引当金として設定 | 貸倒引当金繰入 | 2,000 | 貸倒引当金 | 2,000 |
「貸倒引当金繰入」は費用、「貸倒引当金」は資産のマイナス(控除)項目です。
実際に貸倒れたときには、この引当金を取り崩して処理します。
棚卸(たなおろし)とは
期末時点で、会社に残っている商品を確認し、その分を「資産」として繰り越します。
これを棚卸(たなおろし)といい、商業簿記ではとても重要な処理です。
期中では「仕入」をすべて費用として記録していますが、実際にはまだ売れていない商品も残っています。
このままでは「今期の利益が少なく見える」ため、期末に在庫分を費用から差し引き、資産として扱います。
| 取引内容 | 借方(左) | 貸方(右) | ||
|---|---|---|---|---|
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 | |
| 期末に商品10,000円分が残っている | 繰越商品 | 10,000 | 仕入 | 10,000 |
この処理により、「売れた分だけを費用にする」形になり、正しい利益が算出されます。
翌期の期首には、逆仕訳(仕入/繰越商品)を行ってリセットします。
3つの決算整理の目的をまとめると
| 項目 | 目的 | 費用・資産の関係 |
|---|---|---|
| 減価償却 | 固定資産の価値を期間ごとに分ける | 資産の減少を費用にする |
| 貸倒引当金 | 売掛金の回収不能を見積もる | 将来の損失を今期の費用にする |
| 棚卸 | 期末の在庫を資産として計上する | 売れた分だけを費用に残す |
まとめ
- 減価償却は「使うほど減る資産」を毎期少しずつ費用化する。
- 貸倒引当金は「回収できない恐れのある売掛金」を見積もって費用化する。
- 棚卸は「売れ残りの商品」を費用から除いて資産に戻す。
- 3つとも、「期間ごとに正しい利益を出すための調整」である。
これらの処理を正しく行うことで、会社の「1年間の本当の成績」が見えるようになります。
次章では、いよいよこれらの整理をもとに「財務諸表(損益計算書・貸借対照表)」を作っていきます。