預金者保護法は、偽造・盗難キャッシュカードなどによる不正な預貯金の払戻しから、預貯金者を保護するための法律です。一定の条件を満たす場合、金融機関が被害額を補償します。
この記事では、補償の対象、補償されない場合、補償を受けるための手続き、過失の考え方についてわかりやすく解説します。

預金者保護法とは?
預金者保護法は、正式には偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律といいます。
主に、偽造・盗難されたキャッシュカードを使ってATMなどから預貯金が不正に引き出された場合に、個人の預貯金者を保護する法律です。
なお、金融機関が破綻した場合に預金を保護する預金保険制度とは別の制度です。預金者保護法は、金融機関の破綻ではなく、カードの偽造・盗難などによる不正払戻しを対象とします。
補償の対象
預金者保護法の主な補償対象は、個人の預貯金者が被害を受けた次のようなケースです。
- 偽造キャッシュカードによる不正払戻し
スキミングなどで偽造されたカードを使い、ATMから預金が引き出された場合。 - 盗難キャッシュカードによる不正払戻し
盗まれたキャッシュカードを使い、ATMから預金が引き出された場合。 - カードによる不正な借入れ
カードを使って、預金者の意思に反して機械式の金銭借入れが行われた場合。
法律上の中心は、キャッシュカードを用いたATMなどでの不正な払戻しです。インターネットバンキングや盗難通帳による被害については、法律そのものではなく、全国銀行協会の申し合わせや各金融機関の補償方針に基づいて対応されることがあります。
補償の対象外となる場合
補償の対象となる被害でも、預金者側に重大な問題がある場合は、補償されないことがあります。
- 預金者に故意がある場合
本人が不正払戻しに関与している場合。 - 預金者に重大な過失がある場合
暗証番号をカードに書いていた、暗証番号を他人に教えていた、カードと暗証番号を一緒に保管していた場合など。 - 届出や説明に協力しない場合
被害発覚後に金融機関へ速やかに連絡しない、必要な説明や警察への届出に協力しない場合など。
また、法人名義の口座や、事業用口座の一部については、個人預貯金者と同じ扱いにならない場合があります。補償の有無は、法律の対象範囲や金融機関の規定を確認する必要があります。
補償額の考え方
補償額は、偽造カードによる被害か、盗難カードによる被害か、預金者に過失があるかによって変わります。
| ケース | 補償の考え方 |
|---|---|
| 偽造カードによる被害 | 預金者に故意または重大な過失がなければ、原則として金融機関が補償します。 |
| 盗難カードによる被害 | 預金者に故意または重大な過失がなければ補償対象となります。ただし、過失がある場合は補償額が減額されることがあります。 |
| 重大な過失がある場合 | 補償されないことがあります。 |
| 軽い過失がある場合 | 盗難カードの被害では、補償額が一部減額されることがあります。 |
実際の補償額は、被害の内容、届出の時期、預金者の管理状況などをもとに判断されます。
補償を受けるための手続き
不正な払戻しに気づいた場合は、できるだけ早く金融機関に連絡することが重要です。対応が遅れると、被害が拡大したり、補償に影響したりすることがあります。
- 金融機関へすぐに連絡する
カードの利用停止や口座の確認を依頼します。 - 警察へ届出を行う
盗難や不正利用の事実を届け出ます。 - 被害状況を説明する
いつ、どこで、どのような被害に気づいたかを金融機関に説明します。 - 調査に協力する
カードや暗証番号の管理状況、利用履歴などの確認に協力します。
金融機関は、被害の内容や預金者の過失の有無を調査したうえで、補償の可否や補償額を判断します。
過失の立証責任
預金者保護法では、預金者の過失の有無が重要になります。
たとえば、偽造カードによる被害では、預金者に故意または重大な過失があることを金融機関側が主張・立証する必要があります。盗難カードによる被害でも、補償の可否や減額の判断では、カードや暗証番号の管理状況が確認されます。
預金者としては、暗証番号を他人に教えない、推測されやすい番号を避ける、カードと暗証番号を一緒に保管しないなど、基本的な管理を徹底することが大切です。
インターネットバンキング被害との関係
インターネットバンキングの不正送金やフィッシング被害は、預金者保護法そのものの中心的な対象ではありません。
ただし、全国銀行協会の申し合わせや各金融機関の規定により、個人のインターネットバンキング被害についても補償の対象となる場合があります。補償の条件は金融機関ごとに異なるため、利用している銀行の規定を確認することが重要です。
ワンタイムパスワードの利用、不審なメールやSMSを開かないこと、公式サイトや公式アプリからログインすることも、被害防止に役立ちます。
まとめ
預金者保護法は、偽造・盗難キャッシュカードなどによる不正な預貯金の払戻しから、個人の預貯金者を守るための法律です。預金者に故意や重大な過失がない場合、金融機関による補償を受けられる可能性があります。
一方で、暗証番号の管理が不十分な場合や、被害後の届出が遅れた場合には、補償されない、または補償額が減額されることがあります。不正利用に気づいたら、すぐに金融機関と警察へ連絡し、カードや暗証番号を適切に管理することが大切です。