休業給付基礎日額と年金給付基礎日額 労災保険法 社労士試験

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苦手な人にとっては大変難しい内容となりますので、過去問、及び選択式の予想問題などをしっかり押さえるとよいでしょう。
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給付基礎日額

給付基礎日額とスライド制の趣旨 労災で支給する額は給付基礎日額から算出する。ただ、受給が長期にわたる場合に世の中の平均給与と乖離してしまうことがある。そのため、スライド制を適用して支給額を世の中に合わせて変動させ適正な支給を行う。

原則 労働基準法の平均賃金(3ヶ月間に払われた賃金総額 ÷ 3ヶ月間の総日数)

算定事由の発生した日前3ヶ月間の賃金総額 その3ヶ月間の日数(90日前後となる)

<例外> 政府による算定特例(局長基準)、最低保障額、スライド制、年齢階層別における最低最高限度額

算定特例 適当でないと認められるとき、局長が定める基準に従って算定する額とする

最低保証額 自動変更対象額(政府が算定する額)3970円(8月1日~7月31日)

スライド制適用給付であって、平均賃金相当額にスライド率を乗じても自動変更対象額に満たない場合に、自動変更対象額をスライド率で除して得た額を給付基礎日額とする
給付基礎日額は平均賃金であるが、算定特例や最低保証額が適用されうる。

自動変更対象額 前年度と比較し変動があれば、比率に応じ、翌年度8月1日から変更

 ⇔年金給付基礎日額のスライド適用は翌々年度の8月となる

最低最高限度額 年齢階層ごと(5歳刻み)に、「賃金構造基本統計」の常用労働者によって定める

給付基礎日額の端数処理 1円単位切り上げ ⇔自動変更対象額は、10円単位四捨五入

最低保証額は平均賃金についての最低保証額であり、最低限度額とは給付基礎日額についての最低限度額となる。適用する対象が異なる。

※労災で平均賃金を用いるのは給付基礎日額のみ

※事故発生日、又は、診断による疾病発生確定日から算出

※親族の疾病等の看護休業については、その期間の日数賃金を除いた額、原則額のいずれか高い額

※最低限度額、最高限度額はそれぞれの年齢階層で異なり、3970円~24806円

 

粉じん作業の給付基礎日額

粉じん作業中の給与が高いと、原則通りの疾病発生確定日の平均賃金では低くなってしまうことがあるため、以下のいずれかの日によって給付基礎日額を算定する

最高限度額の適用について

給付基礎日額-実労働に対する賃金)に対して最高限度額を適用

例)最高限度額の適用を受ける労働者の給付基礎日額が2万円、最高限度額の適用がないものとした場合における給付基礎日額が3万円の場合、当該労働者が業務上の疾病のため所定労働時間のうちその一部についてのみ労働したことにより1万円の賃金が支払われた日について、休業給付基礎日額は12000円となる

(3万円-1万円)=2万円 ←最高限度額に収まるため、2万円で計算

 →2万×60% となり、休業給付基礎日額は12000円

最低最高限度額は最後に適用する

給付基礎日額の決定方法のまとめ

  1. 平均賃金額×スライド率≧自動変更対象額 となるようにして給付基礎日額を算出
  2. 給付基礎日額×スライド率を給付基礎日額とする
  3. 一部労働がある場合は、給付基礎日額から一部労働賃金を減額する
  4. 最後に、最低最高限度額を適用し、必要に応じ調整した額を給付基礎日額とする

特別加入者、特別支給金の限度額とスライド制

 

最低保証額

最低・最高限度額

スライド

特別加入者

×

×

適用

休業特別支給金

適用

適用

特別給与を基礎とする特別支給金

×

×

一時金

×

×

⇔国民年金の賃金・物価スライド制は年金給付のみであり、死亡一時金、脱退一時金については適用しない

休業給付基礎日額

 

休業給付基礎日額のスライド

対象

休業給付のみ

対象期間

四半期単位

変動の範囲

四半期の平均給与が災害発生四半期±10%を超えて変動でスライド

スライド適用

変動があった四半期の翌々四半期の初日から

最低最高限度額適用

療養開始日から起算して1年6ヶ月を経過した日に適用

年齢(基準日)

支給事由発生日の属する四半期の初日における年齢

四半期ごとの日本全体の産業別平均給与額が90%~110%外の変動であった場合にスライド制を適用

考え方 災害四半期と四半期ごとに平均給与について比較し続ける。上記の場合、災害発生期(前年10月~12月)と比較して4月から6月の期に変動しているので、10月以降(4月~6月の翌々四半期に該当)についてスライドが適用される。

※産業別平均与額は毎月勤労統計から算定した労働者(5人以上雇用事業所)一人あたりの平均額(12ヵ月、大臣、補正率)

年金給付基礎日額

 

年金給付基礎日額のスライド

 対象

年金給付、一時金たる保険給付、葬祭料

対象期間

年度単位

変動の範囲

完全自動賃金変動(全産業の平均給与の変動)

※たとえ1円であっても変動する

スライド適用

算定事由発生年度の翌々年度の8月からスライド適用

発生年度と前年度を比較し、8月から適用する

発生年度 前年度 適用
※支給すべき月が4~7月については発生年度と前々年度となる

最低最高限度額適用

最初から適用(一時的なもの(一時金・葬祭料)の算定には適用なし)

年齢(基準日)

支給月の属する年度の8月1日の年齢(遺族年金は生存を前提として判断)

考え方 令和3年9月に事故であれば令和4年と令和3年の変動に応じて、令和5年(翌々年度)以降から必ず適用される。

最低・最高限度額が適用されない給付基礎日額

  • 療養開始から1年6ヶ月以内の休業給付基礎日額
  • 一時金たる保険給付と葬祭料(年金給付基礎日額)
※遺族補償年金の最低最高限度額は、生存と仮定した場合の8月における年齢
※算定事由発生日とは、発生確定日のこと

基礎日額の横断整理と語呂合わせ

発生比較の翌々四半期、発生前年年金給付
スライド制の適用時期

    休業給付基礎日額 年金給付基礎日額 一時金の給付基礎日額
スライド 対象 四半期ごと 年度ごと

発生日の翌々年度の8月以降であれば

年金給付基礎日額を準用

比較元

算定事由発生四半期

改定後は前々四半期

算定事由発生年度
比較対象 当四半期 前年度
変動 10%超変動で 微少でも
適用 翌々四半期から 8月から
限度額 適用 開始後1年6カ月から 最初から 適用しない
年齢 各四半期初日 8月1日
限度額、休業給付1年半、年金給付最初から、一時金には適用なし
年齢階層別最低最高限度額の適用時期。それぞれ、四半期初日と8月1日で判断

統計について

賃金構造基本統計 最低・最高限度額に用いる
毎月勤労統計

労災の平均給与額計算、雇用保険の賃金日額、高プロで用いる

※毎月決まって支給する給与
労働力調査 労働組合の組織率計算で用いる