レベッカ 登場人物とあらすじ、時代背景を解説! ダフネ・デュ・モーリアの名作を読み解く

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“Last night I dreamt I went to Manderley again.”

「昨夜、私は再びマンダレーに行く夢を見た。」

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レベッカの作者と作品について

ダフネ・デュ・モーリア(Daphne du Maurier, 1907年〜1989年)は、イギリスの作家で、サスペンスやミステリー、ゴシック要素を取り入れた独特な作風で知られています。彼女の作品は、心理的な緊張感や謎めいた雰囲気に満ちており、多くの映画やテレビドラマに翻案されました。デュ・モーリアの代表作である『レベッカ』(Rebecca, 1938年)は、ゴシック・ロマンスの名作として評価され、アルフレッド・ヒッチコック監督によって映画化されたことでも有名です。その他の代表作には、『鳥』(The Birds, 1952年)や『ジャマイカ・イン』(Jamaica Inn, 1936年)などがあります。

『レベッカ』(Rebecca, 1938年)は、謎めいた邸宅「マンダレイ」を舞台にした心理サスペンスであり、デュ・モーリアの代表作です。物語は、若く名も無き女性(語り手)が裕福な未亡人であるマキシム・ド・ウィンターと結婚し、彼の広大な屋敷マンダレイに住むことになります。しかし、屋敷の中には前妻レベッカの影が色濃く残っており、語り手は常にレベッカと比較され、彼女の存在に圧倒されていきます。

物語は次第に暗い陰謀と秘密が明らかになり、レベッカの死にまつわる謎が解き明かされていきます。デュ・モーリアは、この物語を通じて、愛と嫉妬、過去の影響力、個人のアイデンティティといったテーマを巧みに描き出しています。

発表当時のイギリスの状況

『レベッカ』が発表された1938年、ヨーロッパは第二次世界大戦の直前にあり、社会全体に不安と緊張感が漂っていました。デュ・モーリアの物語は、そのような時代背景の中で、人間の内面的な恐怖や不安を描くことに成功しています。特に、個人のアイデンティティの喪失や、過去の影響が現在に影を落とすというテーマは、当時の読者に強く訴えるものがありました。

また、1930年代のイギリスは階級社会が色濃く残っており、マンダレイのような豪華な屋敷や貴族的な生活が、現実の中でも象徴的な存在でした。『レベッカ』は、そのような階級社会の中での女性の立場や圧力を描き、時代背景を反映した作品ともいえます。

おすすめする読者層

『レベッカ』は、心理サスペンスやゴシック小説、ミステリーに興味がある読者に特におすすめです。緊張感が張り詰めたストーリー展開や、登場人物たちの複雑な感情の絡み合いに引き込まれるでしょう。また、愛と嫉妬、個人のアイデンティティのテーマが深く描かれているため、心理的な描写を楽しむ読者にも適しています。さらに、ゴシック文学やヒッチコックの映画を好むファンにも、この作品は大きな魅力を持っています。

なぜ名作と言われるか

『レベッカ』が名作とされる理由は、物語のミステリアスな雰囲気と巧みなプロット構成にあります。特に、語り手が感じる前妻レベッカの「見えざる存在」による心理的な圧迫感や、マンダレイという舞台そのものが持つ不穏な雰囲気は、読者を物語に引き込みます。また、デュ・モーリアは、人間関係や感情の複雑さを緻密に描写し、登場人物の内面的な葛藤を浮き彫りにしています。

さらに、この作品は「謎が少しずつ解明されていく」形式の物語で、読者に予想外の展開を提供し続けます。そのため、物語の結末に至るまでの緊張感が途切れることがなく、最後まで読者を引きつけます。特に、真実が明らかになったときの衝撃は、読後感を深く残すものとなっています。

登場人物の紹介

  • 語り手(名前は明かされていない): 本作の主人公であり、物語は彼女の視点で語られます。
  • マキシム・ド・ウィンター: 語り手の夫で、マンダレイの所有者。
  • レベッカ: マキシムの亡き前妻。物語全体にわたってその存在感を放っています。
  • ダンヴァース夫人: マンダレイの家政婦で、前妻レベッカに対して強い忠誠心を抱いています。
  • ジャック・ファヴェル: レベッカのいとこで、彼女の死に関連する陰謀に関わる人物。
  • フランク・クロウリー: マキシムの友人であり、マンダレイの執事。
  • ベアトリス・レイシー: マキシムの姉で、語り手に友好的に接します。
  • ジャイルズ・レイシー: ベアトリスの夫で、マキシムの義兄。
  • ベン: マンダレイの近くに住む知的障害を持つ男性。
  • ヴァン・ホッパー夫人: 語り手が以前仕えていた雇い主。

3分で読めるあらすじ

ネタバレを含むあらすじを読む

若く名も無い女性(語り手)は、裕福な寡夫であるマキシム・ド・ウィンターと出会い、恋に落ち、結婚します。彼女はマキシムと共に、彼の豪邸マンダレイに移り住みますが、そこでは前妻レベッカの存在がなおも大きく残っており、家政婦のダンヴァース夫人をはじめ、周囲の人々から常にレベッカと比較されることに苦しみます。

やがて、レベッカの死にまつわる謎が徐々に明らかになり、彼女が完璧な妻ではなく、暗い秘密を抱えた人物であったことが判明します。マキシムは、実はレベッカを殺したことを告白し、物語は緊迫した結末へと進んでいきます。

作品を理解する難易度

『レベッカ』は、デュ・モーリアの巧みな筆致とゴシック的な要素に満ちた作品であるため、特に文学作品に慣れた読者にとっては楽しめる作品です。しかし、心理的な葛藤や感情の微妙な動きが描かれているため、サスペンスやミステリーに不慣れな読者には少し難解に感じる部分もあるかもしれません。とはいえ、物語自体はスリリングで分かりやすく、読み進めやすい作品です。

後世への影響

『レベッカ』は、後世のミステリーや心理サスペンスに多大な影響を与えました。特に、愛と嫉妬、個人のアイデンティティに対する葛藤というテーマは、さまざまな作家にインスピレーションを与えています。アルフレッド・ヒッチコック監督による1940年の映画『レベッカ』は、作品の評価をさらに高め、映画史に残る作品となりました。

読書にかかる時間

『レベッカ』は約400〜450ページの長編小説で、1日1〜2時間の読書時間を確保すれば、2〜3週間ほどで読み終えることができるでしょう。物語の展開がスリリングで、ページをめくる手が止まらない読者も多いはずです。

読者の感想

「マンダレイの不気味な雰囲気に引き込まれ、最後まで緊張感を持って読み続けた。」
「レベッカの存在感が圧倒的で、彼女がいなくても物語全体に影を落としているところが素晴らしい。」
「心理サスペンスとして完璧。結末に向けての緊張感がたまらない。」
「ダンヴァース夫人の冷酷さが怖い。彼女の存在が物語を一層不穏にしている。」
「愛、嫉妬、恐怖が見事に絡み合った物語。これこそがゴシック文学の名作。」

作品についての関連情報

『レベッカ』は、1940年にアルフレッド・ヒッチコック監督により映画化され、アカデミー賞で作品賞を受賞しました。また、2020年にはNetflixで新たに映画化され、再び注目を集めています。舞台化やテレビドラマ化もされており、今でも多くのファンに愛され続けています。

作者のその他の作品

  • 『鳥』(The Birds, 1952年): 謎の鳥の襲撃によって人間が恐怖に直面するスリリングな短編小説。アルフレッド・ヒッチコックによる映画化が有名。

  • 『ジャマイカ・イン』(Jamaica Inn, 1936年): 英国の海辺の宿を舞台にしたゴシック冒険小説。