ナルニア国物語 登場人物とあらすじ、時代背景を解説! C・S・ルイスの名作を読み解く

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“Courage, dear heart.”

「勇気を出して、愛しい心よ。」

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ナルニア国物語の作者と作品について

C・S・ルイス(Clive Staples Lewis, 1898年~1963年)は、イギリスの作家であり、文学者、そしてキリスト教思想家としても知られています。ルイスは多くの児童文学や神学的エッセイを執筆し、彼の作品は幅広い読者層に影響を与えました。彼の代表作である『ナルニア国物語』(The Chronicles of Narnia)は、1950年から1956年にかけて全7巻が発表され、今日では児童文学の古典として知られています。ルイスは生涯にわたって、神学的・哲学的な問題に取り組み、彼の作品の多くには深い宗教的テーマが織り込まれています。彼の他の著名な作品には『悪魔の手紙』(The Screwtape Letters, 1942年)や『奇跡を考える』(Miracles, 1947年)などがあります。

『ナルニア国物語』(The Chronicles of Narnia)は、魔法と冒険、そして深い寓意に満ちた全7巻のファンタジーシリーズです。この物語は、ナルニアという架空の世界を舞台に、子供たちがその世界に召喚され、冒険を通じて成長し、善と悪の戦いに巻き込まれる姿を描いています。シリーズの第1巻『ライオンと魔女と衣装だんす』(The Lion, the Witch and the Wardrobe, 1950年)は、第二次世界大戦中に田舎へ疎開したペベンシー家の4人の兄妹が、衣装だんすを通じてナルニア国に入り、邪悪な白い魔女に支配された世界を救うために立ち上がる物語です。ナルニア国では、ライオンのアスランが救世主として登場し、兄妹たちと共に魔女との戦いを繰り広げます。シリーズ全体を通じて、キリスト教的な寓意が強く反映されており、アスランはイエス・キリストの象徴として描かれています。一方で、物語は宗教に限定されず、読者を魅了する壮大な冒険や魔法の要素も豊富に含まれています。

発表当時のイギリスの状況

『ナルニア国物語』が発表された1950年代のイギリスは、第二次世界大戦の影響から復興を進めていた時期でした。戦争の記憶がまだ生々しい中で、疎開や家族の絆といったテーマが共感を呼び、多くの読者に受け入れられました。また、この時代は児童文学が成長を遂げた時期でもあり、ルイスの作品は子供たちだけでなく、戦争による心の癒しを求める大人にも愛されました。

おすすめする読者層

『ナルニア国物語』は、ファンタジーや冒険物語が好きな子供から大人まで、幅広い読者層におすすめです。特に、想像力を刺激する物語や、善と悪の戦い、勇気や自己犠牲といった普遍的なテーマに興味のある読者にとって、非常に魅力的な作品です。また、キリスト教的な寓意を読み解きたい文学愛好家や、児童文学の古典に触れたい人にも適しています。

なぜ名作と言われるか

『ナルニア国物語』が名作とされる理由は、その物語の壮大なスケールと普遍的なテーマにあります。ルイスは、子供たちが楽しめるファンタジーの中に、勇気、希望、友情、愛、そして自己犠牲といった重要な価値観を巧みに織り込んでいます。また、キリスト教的な象徴や寓意を含みながらも、物語は宗教的に限定されず、多様な読者層に受け入れられる内容となっています。

さらに、ルイスの想像力豊かな描写や、個性的で魅力的なキャラクターたち、そして魔法に満ちたナルニア国の世界観が、多くの読者を魅了してきました。このシリーズは児童文学の枠を超えた文学作品として評価されています。

登場人物の紹介

  • ピーター・ペベンシー: ペベンシー兄弟の長男。冷静でリーダーシップを持つ。
  • スーザン・ペベンシー: ペベンシー兄弟の長女。慎重で思慮深い性格。
  • エドマンド・ペベンシー: ペベンシー兄弟の次男。成長と贖罪の物語を持つ。
  • ルーシィ・ペベンシー: ペベンシー兄弟の末娘。純真で冒険心旺盛。
  • アスラン: ライオンの姿をしたナルニアの創造主であり守護者。
  • 白い魔女(ジェイディス): ナルニアを永遠の冬に閉じ込めた冷酷な支配者。
  • カスピアン王: テルマール人の王子。ナルニアの正当な王位継承者。
  • ユースチス・スクラブ: ペベンシー兄弟のいとこ。最初は自己中心的な少年。
  • リーピチープ: 勇敢で名誉を重んじる剣士ネズミ。
  • タムナスさん: ルーシィが最初に出会うフォーン。親切で音楽好き。
  • ビーバー夫妻: ペベンシー兄弟を助けるビーバーの夫婦。忠実で親切。
  • トランプキン: 赤小人の戦士。カスピアン王に忠誠を誓う。
  • 泥足にがえもん: 悲観的だが勇敢な沼人。ユースチスとジルを助ける。
  • ジル・ポール: ユースチスの友人。勇気と決断力を持つ少女。
  • チリアン王: ナルニア最後の王。正義感と勇気を持つ。
  • ポリー・プラマー: ディゴリーの友人。ナルニア創造の瞬間に立ち会う。
  • ディゴリー・カーク: ナルニア創造の目撃者。後にペベンシー兄弟の後見人。
  • エメス: カロールメンの兵士。真実を追求する心を持つ。
  • ラバダシ王子: カロールメンの王子。高慢で野心的な性格。
  • シャスタ: カロールメンから逃げ出す少年。自身の出自を探る。
  • アラビス: カロールメンの貴族の娘。自由を求めて旅立つ。
  • ブリー: 話す馬。シャスタと共に自由を求める。
  • フレッチャー: アラビスの馬。知的で冷静な性格。
  • ミラース王: カスピアンの叔父。ナルニアの簒奪者。
  • グレンストーム: 予言者のケンタウロス。星読みの名手。
  • タルマール人: ナルニアを支配した人間の一族。
  • カロールメン人: 南方の国の住民。独自の文化と信仰を持つ。
  • 時の翁: 夜見の国に住む巨人。ナルニアの終焉を告げる。
  • エメラルドの魔女: 地下世界を支配する邪悪な存在。

作品を読む順番について

ナルニア国物語は順番どおりに第1巻から必ず読まなければならないわけではありません。出版順と時系列は異なっており、以下のようになっています。そうはいっても、やはり、出版順に読むことが一番楽しめる読み順でしょう。

出版順の例:

  1. ライオンと魔女
  2. カスピアン王子の角笛
  3. 朝びらき丸 東の海へ
  4. 銀のいす
  5. 馬と少年
  6. 魔術師のおい
  7. 最後の戦い

時系列順の例:

  1. 魔術師のおい(ナルニアの創造)
  2. ライオンと魔女
  3. 馬と少年
  4. カスピアン王子の角笛
  5. 朝びらき丸 東の海へ
  6. 銀のいす
  7. 最後の戦い

3分で読めるあらすじ(第1巻)

第二次世界大戦中、ペベンシー兄妹は田舎の屋敷に疎開します。ある日、妹のルーシーが衣装だんすの中に入り、魔法の国ナルニアに迷い込みます。そこでは、白い魔女が国を支配しており、永遠の冬が続いています。兄妹たちは次々にナルニアを訪れ、ライオンのアスランと協力して魔女に立ち向かい、ナルニアを救うための戦いに参加します。

最終的に、兄妹たちは勇気と団結で魔女を打ち破り、ナルニア国を救います。そして彼らは、ナルニア国の王と女王として即位し、長く平和な時代を築きます。

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作品を理解する難易度

『ナルニア国物語』は、子供から大人まで楽しめるように書かれており、比較的読みやすい作品です。ただし、キリスト教的な寓意や象徴を深く理解するには、ある程度の宗教的・哲学的知識が役立つでしょう。物語そのものはシンプルで親しみやすいですが、寓意を読み解くことでより深い楽しみを得られます。

後世への影響

『ナルニア国物語』は、ファンタジー文学の金字塔として、多くの作家や読者に影響を与えてきました。特にJ.R.R.トールキンの『指輪物語』とともに、現代ファンタジー文学の基礎を築いた作品として評価されています。また、映画や舞台、テレビドラマとしても数多くのアダプテーションが制作され、幅広い世代に愛されています。

読書にかかる時間

シリーズ全7巻を通して読む場合、1巻あたり約200~300ページで、合計約2,000ページほどになります。1日1~2時間の読書時間を確保すれば、1~2ヶ月ほどで全シリーズを読み終えることができるでしょう。物語はテンポよく進むため、長編ながらも飽きずに楽しめます。

読者の感想

「子供の頃に読んでワクワクした気持ちが、大人になって再読しても蘇る。」
「アスランの言葉や行動に深い感動を覚え、希望を感じる作品。」
「ナルニア国の世界観が魅力的で、ページをめくるたびに冒険の続きを知りたくなる。」
「キリスト教的な寓意を意識せずとも楽しめるが、気づくとより深い理解が得られる。」
「子供と一緒に読みたい本として、世代を超えて愛される理由が分かる。」

作者のその他の作品

  • 『悪魔の手紙』(The Screwtape Letters, 1942年): 悪魔が新人悪魔に送る手紙形式で、人間の罪深さや誘惑を風刺的に描いた作品。
  • 『奇跡を考える』(Miracles, 1947年): キリスト教信仰における奇跡の意味を哲学的に考察したエッセイ。
  • 『天国と地獄の離婚』(The Great Divorce, 1945年): 天国と地獄を象徴的に描いた寓話的な作品。

ナルニア国物語と聖書

『ナルニア国物語(The Chronicles of Narnia)』は、聖書との深い関わりを持つファンタジー作品です。このシリーズ全体がキリスト教的な世界観に基づいて構築されており、特に新約聖書のテーマ、象徴、教訓が物語の中心に組み込まれています。ナルニアの世界を通じて、ルイスは善と悪の戦い、贖罪と救済、信仰と忠誠の重要性を描き出しています。

アスランとイエス・キリスト

アスラン(Aslan)は、ナルニア国物語の中心人物であり、明確にイエス・キリストを象徴しています。

  • 贖罪の死: 『ライオンと魔女と衣装だんす』では、アスランがエドマンドの罪を贖うために自らを犠牲にします。この場面は、新約聖書のイエスの磔刑と復活を明確に反映しています。

  • 愛と慈悲の象徴: アスランの行動は常に無条件の愛と慈悲に基づいています。彼の姿勢は、新約聖書におけるイエスの教えそのものです。

  • 王としての象徴: アスランはナルニアの正当な王であり、キリスト教における「天の王」や「王の王」というイエスの役割を反映しています。

主要キャラクターと聖書的象徴

登場人物たちは、それぞれ聖書の中の人物やテーマを象徴しています。

  • ペベンシー兄妹: ペベンシー兄妹は、信仰と忠誠の象徴であり、特にピーターは聖書のペトロ(Peter)を彷彿とさせます。

  • エドマンド: エドマンドは、裏切りと贖罪の物語を持つキャラクターであり、新約聖書に登場するユダのような役割を担いながらも、最終的に悔悟と救済を得ます。

  • 白い魔女: 白い魔女は、悪と誘惑の象徴であり、聖書におけるサタンや悪魔の役割を反映しています。彼女がナルニア国を永遠の冬に閉じ込める描写は、罪による堕落や死を象徴しています。

聖書的テーマ

『ナルニア国物語』全体にわたって、聖書的なテーマが中心に据えられています。

  • 罪と贖罪: シリーズ全体を通じて、罪を犯した登場人物が悔悟し、贖罪を得る物語が繰り返されます。特に、アスランが彼らを赦す場面は、神の無条件の愛と赦しを象徴しています。

  • 信仰と忠誠: 登場人物たちは、しばしばアスランへの信仰と忠誠を試されます。この試練は、キリスト教における信仰の重要性を反映しています。

  • 善と悪の戦い: ナルニア国をめぐる善と悪の戦いは、聖書全体における神とサタンの戦いの寓意として描かれています。

  • 希望と復活: アスランの復活やナルニア国の再生は、キリスト教における希望と復活のテーマを象徴しています。

ナルニア国物語と子どもへの教訓

C.S.ルイスは、子どもたちにキリスト教の教えを寓話的な物語を通じて伝えようとしました。

  • 道徳教育: 物語を通じて、誠実さ、勇気、自己犠牲、信仰の価値が強調されます。子どもたちが直接的に聖書に触れるのではなく、物語を通じてその価値観を学べるように設計されています。

  • 象徴としてのアスラン: アスランの存在を通じて、キリスト教的な愛、赦し、希望を自然に理解することができます。

書籍案内

岩波少年文庫版

定番にして決定版!

  4人のきょうだいが,ある日大きな衣装だんすに入ると,雪のふりつもる別世界へとつづいていました.このナルニア国で,子どもたちは正義のライオンとともに悪い魔女の軍と戦います.

角川文庫版

原作の拡張高さを再現した訳。

両親と離れ、田舎の風変わりな教授の家に預けられた4人の兄妹。ある日末っ子のルーシーが空き部屋で大きな洋服だんすをみつけるが、扉を開くとそこは残酷な魔女が支配する国ナルニアだった! 「4人の人間がナルニアを救う王になる」という予言のせいで、子どもたちは魔女に命を狙われることに。4人は聖なるライオン“アスラン”と共に魔女に戦いを挑むが…。カーネギー賞受賞シリーズ第1弾。不朽の名作が新訳でよみがえる!

10歳までに読みたい世界名作版

はじめてのナルニア国物語として。

★★小学生に読まれてシリーズ累計215万部突破★★
お子さんに、お孫さんに、入学やお誕生日のプレゼントに!
[はじめて読む「ナルニア国物語」としておすすめ]
子どもたちが洋服ダンスに入ると、向こう側には別世界のナルニア国が広がっていました。壮大な冒険が始まり、やがてライオンのアスランとともに、魔女と戦うことに――! さくさく読める世界名作シリーズ第25弾。

光文社古典新訳文庫

時系列順に刊行!

魔法の指輪で異世界に迷い込んだディゴリーとポリーは、廃都に眠る悪の女王を誤って復活させ、ロンドンに連れ帰ってしまう。街で大騒動を引き起こす女王を元の世界に戻そうと再び魔法の指輪に触れるが、入り込んだのはまた別の世界。そこでは今まさに一頭のライオンが、新たな国を創造しようとしていたところだった……ナルニア創世と最初の冒険を描く第1巻(全7巻)。著者も生前に推奨した、「物語の年代順」に刊行

新潮文庫版

期待の新訳。

「指輪物語」「ゲド戦記」に並ぶ世界三大ファンタジーが、新訳でよみがえる!
古い屋敷を探検していた四人きょうだいの末っ子ルーシーは衣装だんすから別世界ナルニアに迷い込む。そこは白い魔女が支配する常冬の国だった。「人間の世界から来た四人の王と女王により魔女は滅ぼされる」という伝説のためルーシーらは追われる身となるが――。ナルニアは光を取り戻すことができるのか。美しい挿画と読みやすい新訳で堪能するファンタジーの最高峰。いま冒険の扉が開かれる。