星の王子さま 登場人物とあらすじ、時代背景を解説! サン=テグジュペリの名作を読み解く

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“On ne voit bien qu’avec le cœur. L’essentiel est invisible pour les yeux.”

「心で見なくちゃ本当のことは見えないよ。大切なものは目に見えないんだ。」

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星の王子さまの作者と作品について

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry, 1900年~1944年)は、フランスの作家であり、飛行士でもありました。彼は空を飛ぶことに深い情熱を持ち、飛行機のパイロットとして数々の冒険を経験しながら、文学的な作品を執筆しました。その中でも、彼の代表作である『星の王子さま』(Le Petit Prince, 1943年)は、世界中で広く愛されており、哲学的で詩的な物語として名高いです。サン=テグジュペリの作品は、愛、人間関係、孤独、生命の本質など、普遍的なテーマを扱いながらも、やさしく深遠なメッセージを伝えています。

『星の王子さま』(Le Petit Prince, 1943年)は、砂漠に不時着した飛行士が、小さな星からやってきた王子と出会い、彼の旅の物語を聞くことで始まります。王子は、自分の小さな星にあるバラの花を愛していたが、バラのわがままさに傷つき、他の星を旅していく過程で、大人たちの不条理さや人生の大切なことについて学んでいきます。物語の中で出会うキャラクターたちは、それぞれが象徴的な存在であり、王子が出会う大人たちは、権力、虚栄心、富、孤独といった現代社会の問題を象徴しています。

最終的に、王子は地球にたどり着き、キツネとの対話を通じて「本当に大切なものは目に見えない」という真理を学びます。物語は、王子が再び自分の星に戻り、バラの元に帰ることを決意するところで幕を閉じます。

発表当時のフランスの状況

『星の王子さま』が発表された1943年は、第二次世界大戦中の時期であり、フランスはナチス・ドイツに占領されていました。サン=テグジュペリはこの作品を亡命先のアメリカで執筆しましたが、戦争やフランスの苦境は彼の心に重くのしかかっていました。この作品は、一見して子ども向けのファンタジー物語のように見えますが、戦争や人間関係に対する深い洞察が織り込まれています。『星の王子さま』は、戦時下の不安や絶望感の中でも、人間の心の純粋さや愛、友情の重要性を訴えかけています。

おすすめする読者層

『星の王子さま』は、すべての年齢層に向けておすすめできる作品です。子どもたちは、王子の冒険や美しいイラストに魅了され、大人たちはその中に隠された深い哲学的メッセージを受け取ることができるでしょう。愛、友情、成長、孤独など、普遍的なテーマを扱っているため、人生のどの段階にいる人でも共感を得られる内容となっています。また、童話のような優しさと詩的な表現が好きな方、また人間関係や生きる意味について深く考えたい方にとっては、特に心に残る作品です。

なぜ名作と言われるか

『星の王子さま』が名作とされる理由は、その簡素で美しい語り口と、深遠な哲学的メッセージにあります。物語は、非常にシンプルでありながら、生命や愛、友情、成長についての普遍的な真実を語りかけます。王子が出会うさまざまなキャラクターは、現実社会の象徴であり、子どもたちにとってはファンタジーのように映る一方、大人にとっては現実世界に対する鋭い風刺や批評となっています。また、サン=テグジュペリ自身が描いた愛らしいイラストも作品の魅力の一つで、これにより物語の優しさが一層引き立てられています。どの時代にも、どの世代にも共感を呼び起こす普遍的なメッセージが、『星の王子さま』を名作たらしめています。

登場人物の紹介

  • 星の王子さま: 小さな星から旅をする純真な少年。
  • 語り手(パイロット): 砂漠で王子と出会う飛行士。
  • バラ: 王子の星で育つ美しい花。
  • キツネ: 王子に友情と愛の本質を教える動物。
  • ヘビ: 地球で王子と出会う謎めいた存在。
  • 王さま: 自分の星で全てを支配していると信じる人物。
  • うぬぼれ屋: 自分への賞賛しか求めない自己愛の強い人物。
  • 呑み助: 恥を忘れるために酒を飲み続ける男。
  • 実業家: 星を所有し、数えることに執着する男。
  • 点燈夫: 命令に従い続ける忠実な労働者。
  • 地理学者: 探検家の報告を記録するが、自らは探検しない学者。
  • バオバブの木: 王子の星を脅かす巨大な木。
  • 鉄道のポイント係: 列車を左右に誘導する役割を持つ。
  • 商人: 人々が時間を節約できるように、水分補給用の錠剤を売っている。

3分で読めるあらすじ

ネタバレを含むあらすじを読む

砂漠に不時着した飛行士が、そこで出会った「星の王子さま」との交流を通じて、彼が宇宙を旅してきた物語を聞きます。王子は、小さな星に住むバラを愛していましたが、彼女のわがままに傷つき、他の星を旅しながら、大人たちの持つ虚栄心や愚かさを目の当たりにします。地球にたどり着いた王子は、キツネとの対話を通じて、「本当に大切なものは目に見えない」という真実を学びます。そして、彼は再び自分の星に帰り、愛するバラの元に戻ることを決意します。物語は、王子の純粋な心と彼が学んだ教訓を通じて、愛や友情の意味を探求する優しくも深い物語です。

作品を理解する難易度

『星の王子さま』は、一見すると子ども向けのファンタジーのように思えますが、実際には哲学的で深いテーマを扱っており、特に大人にとっては理解と解釈に時間がかかる部分があります。物語の中で、王子が出会う大人たちやキャラクターたちは、現代社会や人間の欠点に対する風刺であり、読み進める中で考えさせられる要素が多いです。ただし、言葉遣い自体は非常にシンプルであり、幅広い年齢層の読者が楽しむことができます。

後世への影響

『星の王子さま』は、発表以来、全世界で多くの言語に翻訳され、現代でも広く読まれ続けています。その影響は文学だけに留まらず、映画、舞台、絵本、アニメなど、さまざまなメディアで再解釈されています。また、愛や友情、人生の本質に関する哲学的なメッセージは、教育や自己啓発の分野でも引用され続けています。特に「本当に大切なものは目に見えない」というキツネの言葉は、世界中で多くの人々の心に響く名言として広く知られています。

読書にかかる時間

『星の王子さま』は、比較的短い作品で、200ページ未満の長さです。1日1~2時間の読書時間を確保すれば、1~2日で読み終えることができるでしょう。物語はシンプルでありながらも、随所に哲学的な要素が含まれているため、ゆっくりと噛み締めながら読むことをおすすめします。

読者の感想

「子どもの頃に読んだ時は、ただのファンタジーだと思っていたが、大人になって読み返すと深いメッセージに感動した。」
「キツネの教えが心に残り、自分の人生でも大切なことを再認識させられた。」
「シンプルながらも美しい文章と、愛らしいイラストが物語にぴったりと合っている。」
「大人たちの愚かさや虚栄心を風刺しながらも、全体に漂う優しさが読後感を温かいものにしてくれる。」
「この物語は、読むたびに新たな発見があり、人生のさまざまな局面で自分を見つめ直すきっかけになる。」

作品についての関連情報

『星の王子さま』は、数多くの映画や舞台、アニメとして映像化されており、特に2015年に制作されたアニメ映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』は、原作を基にした新たな視点で物語を描いています。また、サン=テグジュペリの飛行士としての経歴や人生も、この作品の背景に大きな影響を与えており、彼の他の作品『夜間飛行』や『人間の大地』も彼の飛行士としての経験を反映しています。

作者のその他の作品

  • 『夜間飛行』(Vol de nuit, 1931年): サン=テグジュペリの経験を基に書かれた小説で、危険な夜間飛行に挑むパイロットたちの葛藤や勇気、使命感を描いた物語。アカデミー・フランセーズ賞を受賞し、サン=テグジュペリの名を一躍高めた作品です。

  • 『人間の大地』(Terre des hommes, 1939年): サン=テグジュペリのエッセイ的な作品で、飛行士としての経験や、人間の生き方、友情、責任についての考察が詩的に描かれています。この作品も大変評価が高く、彼の思想や人生観が凝縮されています。

  • 『南方郵便機』(Courrier sud, 1929年): サン=テグジュペリのデビュー作で、南米の郵便飛行をテーマにした物語。パイロットとしての彼の冒険的な生活と孤独感が色濃く反映されています。

書籍案内 どの訳で読む?

河野万里子訳は、現代の日本語でシンプルに訳され、初めて読む方や若い読者に親しみやすいのが特徴です。内藤濯訳は、古典的で重厚な文体を持ち、原作の詩的な雰囲気を忠実に再現しており、深みを味わいたい読者に向いています。菅啓次郎訳は、詩的なリズムや独自の解釈を大切にしており、作品を新しい視点から楽しみたい読者におすすめです。

新潮文庫版

2006年 河野万里子訳

いちばんたいせつなことは、目に見えない

世界中の言葉に訳され、70年以上にわたって読みつがれてきた宝石のような物語。今までで最も愛らしい王子さまを甦らせたと評された新訳。

これまでで最も愛らしく、毅然とした王子さまが、優しい日本語でよみがえります。世界中の子供が、そして大人が読んできた。世紀を越えるベストセラー。
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった。
一度読んだら必ず宝物にしたくなる、この宝石のような物語は、刊行後六十年以上たった今も、世界中でみんなの心をつかんで離さない。最も愛らしく毅然とした王子さまを、優しい日本語でよみがえらせた、新訳。

岩波文庫版

1953年 内藤濯訳

「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない」――。サハラ砂漠に不時着した孤独な飛行士と、「ほんとうのこと」しか知りたがらない純粋な星の王子さまとのふれあいを描いた永遠の名作。1953年以来、600万人以上の読者を魅了してきた、内藤濯の歴史的名訳で。この岩波文庫版には、『星の王子さま』誕生の秘話を満載したエッセイを収録。〔カラー版〕

角川文庫版

2011年 菅啓次郎訳

本当の「王子」に出会える、新訳決定版!!

砂漠のまっただ中に不時着した飛行士の前に現れた不思議な金髪の少年。少年の話から、彼の存在の神秘が次第に明らかに……生きる意味を問いかける永遠の名作、斬新な新訳で登場。