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ドストエフスキーの傑作「悪霊」
ロシア文学を読む上での障壁となる、人物名を対照表として一覧表示します。しおりとしてご利用いただけます。
悪霊の概要
- 「悪霊」は、フョードル・ドストエフスキーの長編小説であり、1871年から翌年にかけて雑誌に連載され、1873年に単行本として出版された。
- 無政府主義、無神論、ニヒリズム、信仰、社会主義革命、ナロードニキなどがテーマであり、著者の代表作の1つである。
- 当初は第2部第8章に続く章として執筆されたが、連載されていた雑誌の編集長から掲載を拒否されたため、後半の構成を変更して完成させた。
- 1921年から1922年にかけてこの章の原稿が2つの形で発見され、いずれも出版されることとなった。
- 章題は「スタヴローギンより」となっているが、これは正教において福音書を「ヨハネより」「マタイより」などと呼ぶことになぞらえている。
1861年の農奴解放令によっていっさいの旧価値が崩壊し、動揺と混乱を深める過渡期ロシア。青年たちは、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織してロシア社会の転覆を企てる。――聖書に、悪霊に憑かれた豚の群れが湖に飛び込んで溺死するという記述があるが、本書は、無神論的革命思想を悪霊に見たて、それに憑かれた人々とその破滅を、実在の事件をもとに描いたものである。 – 新潮文庫
この作品においてドストエーフスキイ(一八二一‐八一)は人間の魂を徹底的に悪と反逆と破壊の角度から検討し解剖しつくした.聖書のルカ伝に出てくる,悪霊にとりつかれて湖に飛びこみ溺死したという豚の群れさながらに,無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織した青年たちは,革命を企てながらみずからを滅ぼしてゆく.- 岩波文庫
登場人物 人名対照表
本名 | 愛称 | |
---|---|---|
ニコライ・フセヴォロドヴィチ・スタヴローギン | ニコラ | 主人公 |
ワルワーラ・ペトローヴナ・スタヴローギナ | ワルワーラ夫人 | スタヴローギンの母 |
リザヴェータ・ニコラエヴナ・トゥシナ | リーザ | ワルワーラ夫人の旧友ドロズドワ夫人の娘 |
マリヤ・チモフェーヴナ・レビャートキナ | 足の悪い女性 | |
レビャートキン | イグナート・レビャートキ | マリヤの兄 |
ステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー | 元大学教授 | |
ピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキー | ペトルーシャ、ピエール | ステパンの息子、政治的詐欺師 |
アレクセイ・ニーロイチ・キリーロフ | キリーロフ | 建築技師 |
イワン・パーヴロヴィチ・シャートフ | シャートフ | スタヴローギン家の農奴の息子 |
ダーリヤ・パヴロヴナ・シャートワ | ダーシャ | シャートフの妹 |
マリヤ・シャートワ | マリイ | シャートフの元妻 |
カルマジーノフ | 作家 | |
アンドレイ・アントーノヴィチ・フォン・レンプケ | 知事 | |
リプーチン | 役人 | |
ヴィルギンスキー | 役人 | |
シガリョフ | ヴィルギンスキーの妻の弟 | |
リャムシン | 郵便局の役人 | |
トルカチェンコ | 詐欺師 | |
エルケリ | 少尉補の少年 | |
アントン・ラヴレンチエヴィチ | G | 物語の語り手 |
チホン僧正 | 元大主教 | |
マトリョーシャ | 12歳の少女 |
印刷用しおり
印刷のしかた – パソコンの場合
①マウスを右クリックして印刷をクリックします。
②用紙をA4に設定して、カスタムで縮尺を変更して登場人物表の横幅が全体の2分の1以下になるように調整してください。
※プリンターやブラウザによって設定画面は異なります。下の場合は35%に設定しています。(chromeは、詳細設定をクリックします)
印刷の仕方 – スマートフォンの場合
①各メーカーのアプリを使用して印刷してください。A4用紙の場合は35%前後に設定をすれば文庫本のしおりサイズとなります。
青空文庫
なし
ロシア語による原文
ロシア語の原文になります。google翻訳などで読むこともできます。下記にリンクを掲載しておりますがロシア語のため文字化けして表示されていることがあります。
悪霊と聖書
『悪霊』というタイトルは、聖書のルカによる福音書(8:30)にある「レギオン」の話から取られています。このエピソードでは、イエスが悪霊に取り憑かれた男を癒す際、悪霊が「私たちの名はレギオンです」と名乗り、多数の悪霊が存在していることを示します。この話は、人間が悪霊に囚われる様子を象徴し、作品全体において登場人物たちが堕落や混乱に陥る姿と重なります。ドストエフスキーは、無神論的な思想や革命的な過激主義を「悪霊」として描き、それらが社会や個人に与える破壊的な影響を示しました。
19世紀ロシアの社会的混乱を背景に、聖書的なモチーフを用いて人間の堕落と救済のテーマを深く掘り下げた作品です。ドストエフスキーは、信仰を失った人間の空虚さと、そこから立ち上がる救済の可能性を描くことで、読者に信仰と人間性の本質を問いました。
登場人物と聖書的モチーフ
登場人物たちの中には、聖書的なモチーフを持つキャラクターが存在します。
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スタヴローギン
主人公的存在であるスタヴローギンは、聖書の堕天使ルシファーを想起させる人物です。彼は魅力的でカリスマ性がある一方、道徳的に堕落しており、自らの行動に責任を取ることなく他者を破滅に追い込みます。その内面の空虚さや自己破壊的な行動は、神とのつながりを失った人間の姿を象徴しています。 -
シャートフ
シャートフは、信仰を取り戻そうとする人物であり、彼の宗教的な議論や内面的な苦悩は、ドストエフスキー自身の宗教観を反映しています。彼のキャラクターは、聖書における「悔悟者」や「預言者」のような役割を担っています。 -
ピョートル・ヴェルホーヴェンスキー
ピョートルは無神論的な革命思想を推進するキャラクターであり、サタン的な象徴として描かれています。彼は他者を操り、社会秩序を崩壊させることを目的としています。
無神論と信仰の対立
『悪霊』では、無神論的思想や過激なイデオロギーが宗教的信仰と鋭く対立しています。ドストエフスキーは、信仰を失った人々が道徳的な基盤を失い、悪霊に取り憑かれたように暴走する様子を描きました。これにより、彼は信仰が人間社会においていかに重要な役割を果たすかを強調しています。
聖書の象徴と救済の可能性
作品の中には、救済の可能性を示す聖書的な象徴も含まれています。たとえば、シャートフの信仰への回帰や、イエスの存在を巡る議論は、絶望の中でも救済が可能であるという希望を暗示しています。また、聖書の「豚の中に入った悪霊」のように、破壊的な思想が最終的には自らを滅ぼすというメッセージが込められています。